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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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サンフランシスコ海事博物館

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サンフランシスコに住み、毎年訪れているにも関わらず、
フィッシャーマンワーフにあるこの海事博物館をわたしは今まで
ちゃんと見学したことがありませんでした。

以前「ジェレマイア・オブライエン」について書いたときに、

「ここにはバルクルーサという帆船も展示されているよ」

と教えていただいていたので、前回の訪問の時に行ってまいりました。

いつ行っても激混みなので、フィッシャーマンズワーフのお店には基本昼間入ったことがなく、
どんな店があるかも全く把握していなかったのですが、ここも
それなりに新しいお店に入れ替わっていっているようです。

スシアンドバー、フライング・ニンジャ。

ニンジャはわかるとしてなぜ「フライング」なのか。
こういうネーミングをする寿司屋はまず間違いなく日本人の経営ではありません。

メニューの見本写真が、全く海苔を外側に巻かない
(アメリカ人は黒い海苔が巻いてあると食欲が湧かないらしい)
いわゆるカリフォルニア巻きといわれるものばかりですが、
これも非日本人の経営する店であることを物語っています。

さて、サンフランシスコ海事博物館は、フィッシャマンズワーフの外れ、
埠頭側の一角全てを使って船舶と海事に関するものの展示を行っています。

これは海側からチケット売り場(右手建物)を見たところで、
サンフランシスコ名物の坂道が前方に続いていきます。

「There's more to see」(こんなものもあります)の看板で
隠されている部分から、ハイド・ストリートの坂は急斜面となり、
そこでは車は道路に対して直角に停めなくてはいけません。

(縦列駐車では転がる危険があるので)

赤い囲みがエントランスの写真の部分ですが、これを見て
ここにまだ行ったことがない「マリタイム・ミュージアム」があることを知りました。
写真左下の3番の部分です。

今度行ったら訪ねなくては・・・。

それにしても海事博物館の規模の大きなこと。

エントランスからまっすぐ歩いていくと、係留された船を見学することができる
岸壁が現れるのですが、その光景の中にあるものを発見。

「人が・・・・泳いでる・・?」

泳いでるむっちゃ泳いでる。
それもぷかぷか背泳ぎや平泳ぎなんかではない、本気のクロールだ。

まあもっとも、この辺は水温が異常に低いので(アルカトラズ監獄から囚人が
どうしても海を泳いで脱出できなかった理由の一つ)、
ちんたら泳いでいたら体が凍えて溺れてしまうこと確実。

ちなみにこれは8月の映像ですが、フィッシャーマンズワーフは夏場でも風が強く
寒いので、こんな風に砂浜で裸になっている人を見たら、大抵は

「この寒いのになんて物好きな・・・・」

という気持ちになること請け合い。

木の桟橋もあり、ゴムボートが干してあります。

砂浜に下りて泳いでも、船に乗っても咎める人はいないので、
子供達がこうやってボートごっこで遊ぶこともできます。

アメリカ映画の農場風景で見たことがあるような機械がありました。
サイロのようなボイラーのような・・・。

これは何かと言いますと、

スチーム・ドンキー・エンジン

です。
ドンキーというのはその通り、ロバのことで、その語源はwikipediaによると、
語帆船に設置して荷の積み下ろしを行うウィンチを動かしたり、帆を揚げたり、
ポンプの動力となった小さなエンジンのことを「ドンキー」と言ったから。

・・・・というのですが、それってなぜドンキーなのかという説明になってないよね。

現地の説明には

「昔は馬がやっていた仕事が置き換わったから」

いやだからなんでロバなんだよー!

写真は1920年ごろ撮られた、ここサンフランシスコの港での荷積み風景。
ここには「二つのドンキーがある」と説明があり、わたしは最初、
中央に写っている動物がロバなんだと錯覚していました。

もちろんこれはドンキーエンジンのことです。

1800年代終わり頃登場したドンキーエンジンですが、使用期間は
せいぜい1920年までと大変短い流行であったようです。

この機械は特に説明がなかったのですが、後ろに「ロープ」の
宣伝看板があるところを見ると、ロープを巻き上げるウィンチかも。

これはディズニーシーに行ったことがある人なら知ってるはず。
蒸気船の後ろで推進する水車のようなホイールですよね?

こういうのを英語では「リバーボート」「パドルボート」「パドルホイーラー」、
日本語では「蒸気外車線」「外輪船」などと称します。

中でも、これが船尾に一つついたタイプを「スターンホイール」と呼びます。

サンフランシスコ湾を内陸に北上していくと、「ペタルマ」という街があります。

このホイールは、今のように橋と陸上交通で都市間が結ばれていなかった19世紀、
そこを拠点としてサンフランシスコ湾(正確にはサンペドロ湾)
の内陸の交通に活躍したスターンホイーラーに装着してあったものです。

ここの説明によると、この地方の交通がスターンホイーラーに依存していたのは
103年間、まる一世紀の間であったということです。

海に浮いて動かすことができるので、これは何かというとボートです。
しかし、ボートというよりは家。ハウスボートです。

波が穏やかで転覆の心配のないサンフランシスコのベルヴェデア湾付近では
このような家が流行った時期がありました。

「アーク」というのは普通に「ノアの箱舟」のことですが、
そこで暮らせるだけの設備を持った箱舟は「アーク」と呼ばれました。

もちろん香港の人たちのようにそこにずっと住むのではなく、
あくまでも「サマー・ハイドウェイ」(夏の隠れ家)です。

つまり当時のリッチな人たち専用のお遊びみたいなものですね。

このアークは1900年に作られ、何人かのオーナーを経て
1960年代に海事博物館に寄付されました。

それでは中を見ていきましょう。
絨毯は豪華ですし、椅子の手すりにライオンが彫刻されているのが目を引きます。

足踏みオルガンも当時の最高級品のように思えます。
コーナーにあるのはコートハンガーでしょう。

なんと、船内に暖炉があります。
暖炉の煙突は背後から外に出ているのでしょうか。


転倒しないように低い本棚には、本がたくさん。
当時のアメリカ人の余暇の過ごし方というのは読書に音楽、
デッキから釣り糸を垂らしたり、泳ぐこともあったのでしょうか。

寝室のベッドは作りつけです。
キルトのベッドカバーが可愛らしいですね。

こちらキッチン。あれ?コンロは使わなかったのかな?

シンクに向かって調理台が傾斜していますが、これがもし
水はけを良くするための工夫ならちょっとすごい。

ダイニングルーム。
やはり船の上なので大仰な家具は置かないものなんですね。

右側にシャワールームがあります。

船ではバスルームのことを「ヘッド」と称することが多いですが、
このハウスボートでは普通に「バスルーム」で、
湾岸に係留されてビーチコテージにされていた時期もありました。

つまりあくまでも家主体で「船扱い」ではなかったということです。

 

食品棚、あるいはもしかしたら冷蔵庫(氷を入れて使う)でしょうか。


ハウスボートの見学を終わると、そこに工房がありました。

SHIPWRIGHT SHOP とあります。
見てもわかるように、シップライトとは「船大工」を意味します。

 

サンフランシスコベイエリアの多くの船大工は、彼のシップヤードを
しばしば高い木が多く生えている森の中に作ったという話です。

木工するのに必要な材料の輸送の必要がなかったという理由だったとか。

この木工ショップは展示などではなく、実際に展示する船の部品などを
ここで調整したり復元したりしています。

 

ショップの奥に「バルクルーサ」と書かれた何かがあります。
「バルクルーサ」はサンディエゴの「パール・オブ・インディア」の仲間で、
やはりアラスカでサーモンなどを採っていた帆船です。

この近くで展示を行っています。

「ボニータ」という名前のついたなんの変哲も無いボートがありました。

この小さな船は積荷(主に木材)を地上から船へ、船から地上に下ろすための
ワイヤ敷設を行っていたようです。

スチームによる動力で外車が回転し推進する「パドル・タグ」。
エップルトン・ホール(EPPLETON HALL )。

その気になれば船内を探索することもできましたが、先が長いので見送りました。

1914年にイギリスで建造された石炭運搬船専用タグボートです。
タグボートというだけあって、上の写真下図にも見られるように
エンジンは2基搭載されていて、それらは両翼のパドルに繋がっており、
独立して右だけ、左だけと動かすことができました。

このエンジンを「サイドレバー・エンジン」、しばしば
「メルトホルツ・エンジン」「グラスホッパー・エンジン」などと称します。

あと大きな特徴としては、ボイラーを海水で使用できるように特別に鋳造されていることです。
もともと河川などの淡水で使用されるために作られたこのタイプのボイラーは
6週間ごとに取り外し、蓄積された塩をすすぎ落とされなければならなかったのです。

高いところ(向かいのフェリーの甲板上)から見た「エップルトン・ホール」。
煙突とホイールのケースのデザインがリンクしているのもおしゃれです。

なんと1967年まで、人員輸送に使われていたという記録があります。

最後のオーナーはスクラップにするために(一応鋼鉄製ですから)
売り払われましたが、縁あってここの展示の一つに加わることになりました。

係留中に何者かが忍び込み、火災を起こして内部が全焼したにも関わらず、
彼女はイギリスのシーハムからサンフランシスコに自力でやってきたそうです。

マストも一つしかないし、なんか同じ船だと思えませんね。

この後わたしたちは「バルクルーサ」を見学したのですが、それは
別の項で詳しくお話しするとして、岸壁にはこのような、
主に子供の体験学習用の展示もあります。

セイラーたちは、重たい荷物をどうやって船に積んだのか、というとそれは滑車ですが、
滑車に通すロープと持ち上げるために持つ部分の本数の割合が
左から1:1、2:1、4:1となっていて、さてどれが一番楽でしょうか、
というのを実際に確かめることができます。

少々危険なので、係りの人がいないと動かすことができないようですが、
タルの重さは20パウンド(約9キログラム)なので、9歳くらいから
このクエストにチャレンジすることができます。

舫の結び方を紹介し、それをやってみることができるこんな展示も。

「フィギュア8ノット」、文字通り「8の字結び」です。

これが舫の結び方の王道とされる「もやい結び」。
船乗りなら何を結んでもこのやり方にいつの間にかなってしまう、
というくらいポピュラーな結び方で、英語では「ボウライン・ノット」と言います。

 

日本では「巻き結び」と呼ばれている結び方です。
昔の日本では徳利を吊るす方法として使われたので「徳利結び」とも言ったそうです。

もやい結びよりこちらを「結び目の王」であるとする専門家もいるとか。知らんけど。

小さなボートをリングや部位に係留するときにこの方法で結びます。
「ラウンド・ターン&2ハーフ・ヒッチズ」の日本語での呼び名は・・・
わかりませんでしたが「錨結び」とかかな?

さて、これからここで見学した船について、引き続きお話ししていきたいと思います。

ところで・・・よくみると「遊泳禁止」の看板があるような・・。
やっぱりあの人たちは違法だったのか・・・?!
(その答えはかなり先)

 

続く。

 

 


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