「ミッドウェイ」シリーズ、続きです。
前回の「CPOは神」シリーズ、お楽しみいただけたでしょうか。
アドミラルから始まって、各ランクのビルを飛び越す跳躍力、
機関車と比べた場合のパワー、水面を歩けるか、神との関係、
という比較対象はは少佐まではとんでもなく人間離れしていますが、
大尉から急に「犬かき」とか「壁と喋る」とか普通の人間以下になってきて、
中尉は普通に「ダメな大人」レベル、少尉になると、
ビルに入ろうとするときにドアの階段でこける;
「見てー!ポッポー!汽車ポッポー!」と喋れる;
水鉄砲で自分がびしょ濡れになる;
水たまりで遊ぶことができる;
独り言を言う
これまんま二歳児じゃないですか・・・。
しかし、これらの段階を全てぶっちぎって、CPOは神、
と自分たちで言ってしまうのがCPOのCPOたる所以なのでしょう。
つまり海軍で一番実力があるのは俺たちだぞ、と。
「CPOから少尉になれないのはおかしい気がする」
という疑問の答えがまさにここにあります。
彼ら自身は自分より一階級上の少尉を二歳児だと思っているわけですからね。
ちなみに中尉の「救命具で浮いていることができる」ですが、
原文では
「Can stay afloat~ in the Mae West」
メイ・ウェスト?そんな女優さんいたわね。
ちなみにアメリカの俗語では、救命具のことを彼女の豊満な体型にたとえて
「メイ・ウェスト」と呼ぶこともあるんだそうです。
これか。こりゃ確かにメイ・ウェスト(救命具)だわ・・・・。
またひとつ、どうでもいい知識を得てしまった。
さて、ここからはバトルステーションから本格的に負傷者を送り込むシックベイ、
軍艦の医療施設が集まった区画となります。
シックベイに行くには、メスデッキからさらに一階下に降りなくてはなりません。
重症者はもしかしたらさっきの担架でここから降ろしたのかしら。
だとしたら、GQ(想定訓練)では早いところ怪我するか死ぬ人が勝ちってことだ。
ここからがメインの医療施設・・・なのですが、なに?
「帽子を取ってください」
だと・・・?
医療関係者、特に医師に敬意を表しましょう、ってことでしょうか。
ドアに直接貼り付けた注意書きなので、当時からあったのだと思いますが、
わざわざこんな大書しなければいけなかったのでしょうか。
それと「これは演習である」のGQの時にはもちろん無視でいいんですよね?
毎朝8時と夕方の4時、1日に二回、水兵たちは健康診断をして、その
健康診断書をシック・ベイに繋がるラッタルの下からピックアップする仕組みでした。
これを「シック・コール」と言います。
彼らは医師か医療軍曹にスクリーニングを受けるため、順序を待ちます。
もし咳が出るとか、捻挫、縫合が必要な切り傷、微熱が出たと言った場合には
最優先で手当をしてもらえます。
もし甚だ深刻な状態であれば、検査のためもう一度診察を受け、
場合によっては入院して治療を受けることになります。
一度そのような手当を受けた患者は、治れば元の配置に戻りますが、
「制限されたデューティ」、ベッドで休むことを含む軽い労働に回され、
危険だったり重労働の職場には、医師の許可が出てからでないと戻れません。
二段ベッドに風呂釜のようなもの、奥の青いドアには
「PATIENT HEAD」
とあります。
患者の、頭・・・・?
下には掃除を1000から1100の間に行うこと、とあります。
ということは、これは患者様のトイレということですね。
アメリカ海軍ではトイレのことを「ヘッド」と呼ぶ、ということは
このブログでもなんどもお話ししてきていますが、あくまでもそれは
隠語的な名称であって、まさかこんな堂々とヘッドと称してるとは思いませんでした。
なんども説明しておりますが、なぜヘッドというかというと、帆船時代
トイレは舳先に設けてあり、そこから自動的に色々を海に落下させる作りだったからです。
ここで治療を受けるのは海軍軍人以外にいないので、表記もこうしているのです。
下の方にバスと書いてあるので患者用の風呂であることは間違いありませんが、
問題はこんなお風呂にどうやって患者を入れるかですね。
いくら脚の長いアメリカ人でも跨いで入ることはできないだろうし、
そもそも患者という状態の人がそんなことできるのか?
疑問を解く鍵はバスタブの左にある器具だと思います。
覗き込んでみれば何かわかったのかもしれませんが、先を急いでいて
その余裕がありませんでした。
先ほども言ったように、「ミッドウェイ」の医療機関は大変充実していて、
1日2回、「シックコール」と呼ばれる乗員の健康報告がなされていました。
そして空母ほど大きな船となると、バトルドレッシングステーションはあちこちにあり、
ヘルスサービスが、必要に応じていくらでも受けられました。
写真は練習か本物かわかりませんが、手術中です。
手術室です。
船の中という極度に限られたスペースでありながらも、「ミッドウェイ」では
事故や戦闘で受けた外傷に幅広く対応できる手術室をふんだんに備えています。
荒天時にはあたかも航空部隊が飛行作業を中止するように、艦内で手術中、
艦長はできるだけ艦体が動揺しないような操舵を命じます。
実際にそういうことがあったかどうかは記録にありませんが、
おそらく想定訓練の時にはそういうことも訓練されたのでしょう。
検査室のようです。
船の上では人間の、例えば兵員の持ち物ロッカーひとり分のスペースなどより
ずっと大きな薬棚があります。
シャーレに入れたものを拡大する電子顕微鏡は作り付けです。
片目で覗き込むアナログのとは全く違う形をしています。
直接写真も撮れる機種ではないでしょうか。
こちらは可動式の電子顕微鏡ですが・・・メーカーはオリンパスだ!
皆さんの中には、オリンパスがカメラの会社だと思っておられる方もいるかもしれませんが、
実は1919年に高千穂製作所が創業した時から顕微鏡などの理化学機器が専門で、
現在も国内医療光学機器のシェアは70パーセントを超えるのです。
余談ですが、オリンパスという名前は、最初の社名に使った「高千穂」が
神々の山だったっことから、
ギリシャの神々の山=オリンポス→オリンパス
ということで戦後になって「オリンパス光学」を社名にしたのだそうです。
実際に「ミッドウェイ」がオリンパスを使っていたのだとしたら、
これは横須賀時代に導入されたという可能性もありますね。
薬品とビーカー、フラスコなどの器具が並んだ戸棚。
特にガラス戸などは付いていないようですが、船が動揺したとき
棚から物が落ちたりしなかったのでしょうか。
それとも空母はよっぽどのことがないとそんなに揺れない?
こちらはガラスの扉の中に薬が並んでいますが、よく見ると
サーモンから取った骨粗鬆症の薬だったり、ケトロラックトロメタミン
(非ステロイド性消炎鎮痛剤の経鼻用スプレー剤)だったりと、
言っては何ですが、大した薬はありません。
この辺りは明らかに展示用にどこからか調達してきたものだと思われます。
薬剤師の資格を持つ乗員(准尉とか?)がお仕事中。
無影灯があるのでここでも手術は可能です。
手術用器械を置くスタンドも用意してあります。
手術室がいくつもあるということは、そこで稼働できるだけの
医療関係者も乗艦していたということになります。
殺菌棚には緑色の手術着が4着スタンバイ。
「SCUTTLEBUTT」(スカットルバット)というのは「噂」という意味です。
(今息子にこんな言葉使う?と聞くと、古すぎて使わないといっています)
このウォーターファウンテン、水飲み器はもう使われていませんが、
その「噂」によると、本当に「ミッドウェイ」に乗っていたものだとか。
70年代からずっと「ミッドウェイ」の上にあって酷使に耐えてきたというのですが、
それが「噂」になるということは、これ即ち展示されている機器の類は
ほとんどがオリジナルではない、ということの証明でもありますね。
診察を受ける部屋には医師の姿なし。
右手を怪我してしまった水兵さんだけが待たされている間腹筋運動をしています。
彼の座っている診察台には紙がしいてありますが、これはアメリカの医療機関で
今でも普通に見られ、一人の患者を見終わったら、ロールを引き出して
新しい紙に取り替えてしまうという衛生的なものです。
息子をボストンのチルドレンズ・ホスピタルに(ほとんど物見遊山で)
治療に連れていったときに受けた診察室もこうなっていたのですが、
先生はわたしたちに説明しながら盛んに紙に落書き(本人は説明に使っている)
していて、そこは診療が終わればそこは捨ててしまう部分なので、
実に合理的?な仕組みだと感心した覚えがあります。
そういうことをするために使い捨て紙にしてるんじゃないとは思いますが。
こちらはレントゲン室。
何とこの乗組員、足を骨折してしまったようです。
緑のシャツを着ているということは、彼の仕事は
射出・着艦装置士官
貨物操作員、ヘリ着艦信号下士官
地上支援機材修理係
のどれかということになりますが、士官ではなさそうなので、
貨物の操作という、もっとも怪我しそうな部署の人だと推測します。
貨物の操作していて脚を骨折って、何をやった・・・・((((;゚Д゚)))))))
続く。