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栴檀は若葉より〜平成三十年度 海上自衛隊練習艦隊 「かしま」艦上レセプション

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平成三十年度の海上自衛隊練習艦隊出航行事の一つ、
晴海埠頭で行われた「かしま」艦上レセプションについてお話ししています。

ところで、前々回に挙げた写真の一部を拡大してもう一度お見せします。

わたしが「空自の三尉」と間違えたこれ、これが

陸自の新制服

だったなんて・・・・。
いや実はですね、わたくし今日、防衛団体の総会に出席したところ、
懇親会で、半袖のシャツに紺色のズボンを履いた一団がやってきたのです。

「あれ、空自?」

「似てますが・・空自のパンツに金線なんてなかったでしょう」

ビュッフェ台で横に来て食べ物をとっていたその幹部に、

「それが陸自の新しい制服ですか」

と聞くと、そうですとの答え。
なんと、パッと見てどちらかわかる人はいないかもというくらい似てます。
彼によると、制服は三月から支給されているのだそうですが、
別の方(一般人)に聞いたところ、

「全部が新しい制服に変わるまで3年くらいかかるそうですよ」

んー・・・それまでは新旧入り混じりってことですか。

先日、どこかの陸自駐屯地で入隊式に出席された方の話によると。
新人隊員は全員紫紺の新制服の集団、その他の自衛官は従来のOD色ということになり、
どうにも妙な構図になってしまっていたとか。

現在支給されている制服も一着だけで夏服でも洗い替えはなく、
洗濯中は旧制服を着ることでしのぐそうです。

そして肝心の新制服の評判ですが、

「なんか満州国の警察官の制服みたい。
やっぱり今までの緑の制服の方がいいなあ」

その方はきっぱりとそう言い切りました。
その人がなぜ満州国の警察官の制服を知っているのかは謎ですが、
わたしも、わざわざ空自と見分けがつきにくい色にする意味がわかりません。

それに、これはわたしが感じたもっとも大きな問題点ですが、これは
若くて何を着てもそれなりにいける自衛官が着ることを想定して作られていて、
「いわゆる陸自タイプ」の将官、空挺団出身にありがちな、首が太くて、
「猛者」とかいわれていそうな猪首体型の指揮官世代については、
デザインの段階で全く考慮がされていないように思われました。

この懇親会の時も、まさに「そういうタイプ」の恰幅のいい自衛官が、
薄いクリーム色のシャツに金線入りの紺色のパンツを履いているという姿を見て、

「全く似合わねー」

と思ったのが正直なところです。

制服そのもののデザインは決して悪くないと思うのだけれど、
着る人に貫禄が出るほど、それじゃない感、残念な感じが漂うといいますか。

空自の制服に全く問題がないとすれば、あそこはお年を召した将官でも
職種のせいか、すらりとスマートで背が高い方が多いからだと思います。

この懇親会でわたしは空自の元パイロットと名刺交換をし、
航空祭は入間より岐阜がいいなどという情報を教えていただいたのですが、
この方現役時代はF-86に乗っていたというお年ながら、今でも絵に描いたような
すらり、しゅっとした「空自タイプ」で、あらためて

Manar maketh a man ならぬ Careers maketh the man 

だと感じ入った次第です。


今回の陸自の制服変更については色々言われていますが、陸自には
若い人たちに制服を気に入ってもらうことで、これをリクルートにつなげたい、
という下心があるらしいとどこかで読みました。

そして、どうも陸自の偉い人たちは、陸自らしくみえるということより、
若者に受け入れられるというコンセプトを優先したようなのです。

しかし、もしそうだとしたら、これはわたしに言わせると全くの読み違いです。
以下それが間違っていると思う理由です。


世間一般、特に若い人の認識によると、三自衛隊の制服の中で
一番カッコよく、着ていれば誰でもモテるのは海自のそれです。

これはわたしが勝手に言っているわけではなく、様々な媒体で、
例えば三自衛隊ファッションショーなどのコメントにも見られるものです。

自衛官、ボーイズコレクションで決めポーズ 一番モテ服は?


何と言っても冬は黒のダブル、夏は白の詰襟、それに士クラスには最強のセーラー服。
三自衛隊が揃い踏みすると、その見栄えにおいて圧倒的ではないか我が軍は、となります。
(個人の感想です)

しかし、しかしです。

わたしはこの日、防衛団体総会でとっても悲しいお知らせを聞いてしまいました。
今年、自衛官の入隊者数が募集目標の8割にしかならず、その中でも
海自入隊者は目標数のなんと5割に留まった、というものです。

どうですか。

自衛隊一かっこいいモテ制服のはずの海自なのに、他より入隊者が少ないのです。
つまり、陸自が思っているほど、制服のかっこよさは少なくとも入隊志望に
あまり、というか全く影響を与えていないことになります。

それなら、わざわざ制服を若者に人気のない(と彼らが信じる)緑をやめて
紫紺にしたところで、全くそれは効力がないばかりでなく、
陸自らしいアイデンティティが薄れることになりはしませんかね。

わたしはそういうわけで制服を変える必要は全くなかったと思っていますが、
どうしても変えなくてはいけないのなら、わたしは個人的に旧軍の
「カーキと赤」の採用をお勧めします。

陸自は海と違い、陸軍を全否定することから戦後を始めたそうですが、
旧陸軍の制服、あれはデザイン的には大変優れていますし、
こちらの方が若い人には人気が出るように思うのですがどうでしょうか。

 

さて、気を取り直してレセプションについてのお話に戻ります。

この日の「かしま」給養が放つスイカカーヴィング。
しかし今まで一度として同じデザインのを見たことがないな。
今日のこれは・・・・ラフレシアかなんか?

先日訪問した自衛隊基地で基地幹部の皆さんとそれはそれは美味しい
昼食をいただいた時、海自の給養には大使館のキッチンでも通用するような
凄腕のシェフがいるほどだという話を聞いたものです。
おそらくその最高峰が「はしだて」とか「かしま」配属されるんだろうな。

そのときに幹部が誇らしげに、

「陸空にこういう食に対する熱意はありません。海だけです」

とおっしゃるので、

「陸自は専門の調理師がいないって本当ですか」

と聞くと、やはり

「普通の隊員が調理をするようです」

ということでした。
今まで噂だと思っていたのが本当らしいとわかりました。

ちなみに舞鶴には調理員を養成するための第4術科学校がありますが、
専門の調理師訓練施設を持つのは海と空のみ。

旧海軍の「間宮」などの給糧艦が命をかけて美味しい食料を届けたように、
食事に大きな生きがいを感じている艦艇乗員のために、海自の給養員は朝昼晩、
さらに夜食やおやつ、すべて全力を注いで作ることを求められるのです。

ニコリともせず真剣にカレーをよそっていた人。
専門のはっぴのようなものに頭巾をつけ、まるで炉端焼きの店員のようですが、
実は「かしま」の乗員だったりします。

「かしま」にはレセプション用の各種コスチュームも充実していて、
お酒を持ってくる人は蝶ネクタイをしていたりします。
皆乗組員です。

「かしま」のカレーが美味しいことは随分前から承知していたので、
美味しそうだな、食べようかなと考えながら見ていたら、
知り合いと会ってしまい、そのあとはその人が知り合いに紹介してくれたりして、
とにかく抉りこむように社交を行うことになり、結局食べ損ないました。

とにかくこの日は最初に刺身を数切れつまんだだけで終わってしまい、
わたしが今まで出席した中でもっとも食べた量が少ないパーティとなりました。


せめてフルーツだけでも(スイカじゃないよ)口にしておこうかなと考えつつ
前のテーブルに行ってみたら、またしてもそこにいた知人がいて、
彼が話をしていた実習幹部と会話をすることになりました。


⬛️実習幹部 チャーリー三尉

上の写真の右上にいるのがチャーリー三尉です。
自衛官には時々自分のことを「わし」という人がいるのですが、チャーリー三尉も
自分のことを「わし」と発音します。

最初にこの「わし」を聴いたのは呉でのことだったので、わたしはてっきり
広島弁なのだと思っていたのですが、そのうち出身地には関係なく、
自衛官には「わたし」派と別に「わし」派が生息していることに気がつきました。

自衛官になると自分のことを「私」と呼ぶように教育されますが、
毎日毎日言っているうちにいつの間にか「た」が抜けて、本人は言ってるつもりでも
結果「たぬきのわし」になってしまうのではないかというのがわたしの洞察です。

海軍の「おはようございます」を「おおす」「お願いします」が「願います」、
など、なんでも短くしてしまう慣習が引き継がれていて、燃料在庫量がネザとか、
水在庫がミザとか、謎の呪文が堂々と正式に使われているのが海上自衛隊ですので、
もしかしたら「たぬき」も口癖ではなく「わし」が「省略形」として認知されている、
という可能性もありますが、この件についてはさらなる調査をしていきます。

 

さて、チャーリー三尉は防大卒です。
出身地を聞くと関西、その後わたしを含めその時話をしていた三人が
全員関西出身であることで一瞬盛り上がりましたが、だからと言って
いきなり三人が関西弁で話を始めるということにはなりませんでした。

たとえコテコテの大阪人でも、自衛官、特に防大卒となると敬語で話す場合には
関西弁は全く影を潜めてしまうのが普通です。

ところでチャーリー三尉、希望職種は?

「掃海隊です」

おお!と必要以上に盛り上がるわたし。
「船乗り」と言われる以上に、この一見地味な職種に
最初から興味を持っている新任幹部がいると聞くのは嬉しいものです。

特にわたくし、ある掃海部隊の後援団体に形だけとはいえ名前を連ねていますのでね。

「掃海隊はいいですよね。いかにも船乗りの原点って感じで」

でも揺れるんですよね(遠い目)
わたしが日向灘の訓練で「えのしま」に乗った時ライトに船酔いした話をすると、

「大きな船は外洋に出るまでほとんど大丈夫ですが、小さな船は・・。
船酔いは何度も経験して慣れるしかないんですよ。
それまでは便器と友達、いや一体化して耐えるんです」

「自分で吐いた物を飲み込むといいとも言いますな」

「いやあああ」((((;゚Д゚)))))))

海自を選んだからには皆が受ける洗礼というか通過儀礼?みたいなもの?
そこでもう一人の方が、チャーリー三尉に

「全然酔わない人もいるって本当?」

「稀にいますねー」

まじか。
でもそんな人に限って艦艇志望じゃなかったりするのよね。


チャーリー三尉は明るくて人懐こく、クラスに一人はいる”いちびり”の人気者、
というタイプです。

「わし、棒倒しで”サル”だったんですよ」

棒倒しのサルとは、防大名物棒倒し競技で、棒のてっぺんに乗っている
文字通り猿のような役割のことです。
言われてみれば、小柄でいかにも敏捷そうな体躯はあの役割にうってつけ。

「あれ、怖くないですか?皆が自分を引きずり下ろすためにやってくるって」

それに対する答えは怖いとか怖くないとかではなく、

「自分の第二大隊はその時優勝しましたから」

「第二大隊って、何色でしたっけ」

「青です。去年の棒倒し、また第二大隊が優勝したんですよ」

チャーリー三尉が猿を務めた時の優勝戦は見損ないましたが、
去年の青チームの優勝は目の前で確かに見届けています。

「やっぱり自分のいた大隊が優勝すると、卒業後でも嬉しいものですか」

「嬉しいですねー」(ニコニコ)


彼と話していると楽しく、こういう幹部はどこに行っても、
そして上からも下からも好かれるのではないかという気がします。


そういえば今日、防衛団体総会で話したある理事の方は海自のOBで、
村川現海幕長が新任幹部として練習艦「かしま」に乗った時、
「かしま」乗組だったそうですが、この方が若き日に見た村川三尉は
率先して体を動かし、下からも敬愛される新任幹部だったそうです。

この話を聞いて「栴檀は若葉より芳し」という言葉を思い出しました。


続く。

 

 


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