さて、朝10時に晴海を出港してここまで着た時、時計は1240を指していました。
「まきなみ」、いよいよ横須賀に入港です。
米軍基地のこんな様子も船の上からしか見ることはできません。
ちなみにレンガの建物の
「DRY DOCKS 5↔︎4」
は、ドックに入渠する海上の船に向けてわかるように書かれました。
ちなみに4号ドックが完成したのは日露戦争直後の1905(明治38)年、
5号ドックはイギリス海軍の「ドレッドノート」ショック以降世界の趨勢となった
建艦競争に呼応する形で建造が始まり、1916年に完成したものです。
「かしま」はもう最終の接岸態勢に入っています。
岸壁には音楽隊が待機しており、横須賀地方総監が挨拶をする
台も用意されているようですが、一般客の姿はありません。
あくまでも横須賀入港を歓迎する行事ということなのでしょう。
わたしたちのいた左舷ウィングに、黄色い立ち入り禁止ラインが張られ、
ブリッジから「まきなみ」艦長大日方二佐が出てきて配置に就きました。
わたしは邪魔にならないようにラインの外からかぶりつきで見学です。
ブリッジ横の速力標が、ちょうど目の前の位置にやってきました。
艦の両側のこの赤い籠の位置で、速力を表すシステムで、
両側の籠がこの高さにあると、それは「微速」という意味です。
速力標の横で信号旗を合図があれば揚げ降ろししようとする二人の海曹。
左はこれから旗を揚げる係、右側は降ろした旗を受け取る係。
何を待っているかというと、左舷にいる艦長の号令によって接岸した瞬間です。
接岸した瞬間というより、速度が0になる瞬間かもしれませんがわかりません。
微動だにせず、発動の瞬間に備えています。
この女性海曹は先ほど「まきなみへようこそ」と手旗信号した人では・・。
その(接岸か速度0かどちらかの)瞬間「U」らしき旗が揚がりました。
そして上から「回答旗」など三旒の旗が降ってきます。
翻っている時に思うよりずっと旗って大きいんですね。
これを雨の日に行うと、結構大変なのでは・・・・・。
「まきなみ」接岸前から、風に乗って横須賀音楽隊の演奏が聴こえてきていました。
音楽隊の演奏は、「かしま」を横須賀に歓迎するためのものです。
そのせいか「錨を上げて」はなかったような気がします(笑)
ヴェルニー公園からはたくさんの人が見ていますが、この中には
わたしの知り合いもいたはず。
こちら、最後の瞬間までずっと入港作業を見守り続ける大日方艦長。
艦長の操艦は、言葉を発するとそれを同じウィングにいる人が復唱し、
舵手まで伝言で届けるという、当たり前ですが原始的な方法で行われます。
こればかりは昔の帆船だろうが最新のイージス艦だろうが変わりありません。
自分の号令一つで、大きな艦体を自在に動かす仕事。
やっぱり艦長配置というのは艦乗りの本懐なのだろうと、
横で大日方艦長の操艦ぶりを見ていて思いました。
さて、下艦の時間が近づきました。
わたしたち一行は再び招集をかけられ、格納庫に集合です。
いつの間にかヘリの後部にかけられていた立入禁止索が外され、
ヘリ甲板そのものへの立ち入りができなくなっていました。
格納庫で永遠と思われるほど長い時間待ってから、ようやく列が動き出しました。
この黄色いものはなあに?
ヘリのトウイングをするトーバーでしょうか。
やっと格納庫から舷側に出ることができました。
「護衛艦まきなみ」のバナーのある舷梯の下には、
万が一人が落ちた時のためにネットが張られています。
このことも、わたしは写真を見て初めて気が付きました。
一般人を乗せて航海する時、自衛隊とはここまで細心を払うのです。
この舷梯のどこから下に人が落ちる可能性があるのか、と思いません?
もしかしたらカメラや携帯を落とすことを考えてるのかもしれませんが。
乗艦者が全員降りきるまで、彼らは敬礼で見送ります。
左の運用員の女性海曹、今日は特に目立ってましたね。
岸壁に降り立ち、まずは「まきなみ」を見上げてみる。
右二人の女性海曹以外は、「まきなみ」乗組の実習幹部たちのようです。
十数人だけのようですが、彼らは航空志望でもあるのでしょうか。
少なくとも、わたしが晴海で話をしたブラボー三尉はそうでしたが・・。
「まきなみ」の実習幹部をバックに自撮りするカップル。
「かしま」の前を通った時写真を撮ろうと考えていたのですが、
「まきなみ」から降りた後は、グループごとにまとめられ、
きっちりそのまま裏を通って外にリリースされました。
門で警衛の人に乗艦の際に渡された番号札を返して、退出です。
あれ、この看板前に見たときは違うものだったような気が・・。
リニューアルしたんでしょうか。
メルキュールホテルにランチの予約を取っていたのですが、
全員が「できれば歩きたくない」モードだったので、
横須賀駅前からタクシーに乗ろうとしたら、一台も来ず、
諦めてスカレーくんの写真を撮ってから歩き出しました。
昨晩遅くまで仕事をしていて、今朝はギリギリまで寝ていたため、
何も食べずに乗艦してしまったという若い男性は、
しかも初めての自衛艦クルーズだったため、半死半生状態でした。
ヴェルニー公園ではバラが綺麗に咲いています。
お待ちかね、メルキュールホテル上階のレストランのランチビュッフェ!
ここの売りはその都度湯煎で温めて自分でトッピングするパスタです。
右側にピンクのボウルがありますが、これは「イチゴクリーム」。
「パスタにイチゴクリームかけるの?」
と皆は騒然としていましたが、一人チャレンジャーが試してみました。
「・・・・どう?」
「思ったよりいけるけど・・・・今、じゃない」
そんなの食べなくてもわかる。
ここの窓から見る軍港の眺めは最高です。
手前に「はたかぜ」がいますでしょ?
この時のわたしには知るべくもなかったのですが、この時からきっちり
一週間後、わたしは海保の観閲式で海上自衛隊代表として展示を行う
「はたかぜ」の雄姿に心躍らせることになります。
米軍基地側のミサイル駆逐艦娘たち。
艦体が汚いとか手入れがなっとらんとか、軍人精神がたるんどるとか、
だからアメリカ人は大雑把って言われるんだよ、とか言ってごめんねー。
「かしま」さん、そして「まきなみ」さん、ありがとうございました。
彼らはこの9日後、同じ岸壁から遠洋航海に向かって出航していきました。
ところでメルキュールホテルの一階の売店で、「しらせ」「ひゅうが」
「きりしま」などの缶入り艦艇カレーの中に、新作発見!
なんと、
ですよみなさん!
艦番号1.74、横須賀地方隊のどこかの倉庫に定係されている
あの「ちびしま」、ついに!カレーが発売されました。
電車で帰らなければならないにも関わらず、その場でセットを買い求めました。
「ちびしま」というだけあって、お味は
甘口、子供用
というのが泣かせるじゃーありませんか。
辛すぎるカレーが実は苦手なわたし、大変美味しくいただきました。
皆様もぜひお試しください。
その日家に帰ったら、通いの外猫が「お疲れ」って出迎えてくれました。
練習艦隊体験航海シリーズ 終わり