八戸航空基地見学シリーズの途中ですが、ご報告しておきます。
当ブログで折に触れご紹介してきた呉地方総監の「愚直たれ」が
ついに全国ネット、しかもメジャーな番組で紹介されたそうです。
わたしでも知っている「王様のブランチ」。
ここでも食レポをさせていただいた「愚直たれ使用によるホットドッグ」を、
海自呉資料館(別名『てつのくじら館』)で出演者が食べるという企画です。
TOの職場の方がこの番組を見ていたところ、見覚えのある
池総監のお名前が出てきたので、写真に撮ってくださいました。
そういえば、何日か前に「愚直たれ」について書いたログが
閲覧数上位に上がっていて、はて?と思っていたところでした。
ちょうどこの時期に、P-3Cパイロットである池海将のことが話題になるなんて、
ちょっとした縁を感じます。
「ユーモア発動」というのは、海軍伝統の、
「ユーモアは一服の清涼剤である」
という言葉を引用して「愚直たれ」の由来を説明しているわけですが、
この池総監の表情と「ユーモア発動」のギャップがシュール・・。
レポーターのお嬢さん方、そのホットドッグを食べる時には、
手で持たず、ドック型のケースに乗せたまま食すんですよ〜!
池海将、注意して差し上げて!
こちらの海曹は広報のようですが、もしかしたら考案者?
もしどなたかこの番組をご覧になった方がおられたら教えてください。
さて、その池呉地方総監がウィングマークを取った八戸航空基地
訪問レポ、続きです。
航空機の火災発生時に備えて航空基地に常設されている
航空警備隊の消防設備を見学し終わった後、わたしたちは
カメラと携帯を預け、管制塔に上っていきました。
下総航空基地のもそうでしたが、管制塔のエレベーターは、なぜか
途中までしか行くことができません。
わたしの心象によると、エレベーターを降りてから、約3〜4階分は
(繰り返しますが心象ですので本当はどのくらいかわかりません)
階段を登っていかないと上に到達できないのです。
悟られないように息を整えながら(笑)管制室の説明を聞きました。
内部の光景は下総とほとんど同じで、いざという時のために
テレビも備えてありましたが、もちろん消してあります。
違うところがあるとすれば、下総には神棚があったことくらいでしょうか。
続いて「ベースオペレーション」という建物で、
哨戒に出ているP-3Cをモニターしているコーナーなどを見学しました。
この中は特にカメラを没収されることはありませんでしたが、
かといって写真を撮るのが憚られたので画像はありません。
前後は忘れましたが、車で基地の外周を回るというツァーもあり、
こちらはもちろんのこと写真禁止。
なぜかというと、八戸基地には旧軍施設時代からの壕があり、
そこは秘密の武器燃料庫となっているからです。
例えばこの写真に見られる妙に直線的な台地状の小山、
こんな感じで至る所に壕があります。
ご興味のある方は、グーグルマップで見てみてください。
(今のマップにはどうしたことか、F-2戦闘機が6機に写っています)
いかにも人工的な造形に盛られた部分が基地内に点在しているのがわかります。
これらの壕はおそらく防爆のため堅牢なシェルターでできており、
その周りに土嚢を積んで草を植え、もれなく緑で覆われています。
壕の周りは鉄柵で囲まれ、シェルターの入り口はて鉄扉で硬く閉ざされて、
何人たりとも突破することはできまいと思うくらい警備は厳重でした。
この見学で一番興味深かったのは、航空基地には実は
自衛艦のCICに相当するような地下指令室があったことです。
もちろん写真禁止で、わたしたちは靴のまま入れましたが、
出入りする隊員は必ず入り口でIDチェックの後靴を脱ぎ、
外部の埃を持ち込まないよう靴を履き替えて入室します。
その部屋は、わたしが今まで見てきた自衛隊のどこにも見たことがない、
あえていえば地球防衛軍の指揮発令所のような物々しさで、
そこでは、哨戒機の観測データの解析等が行われていました。
実は、わたしたちがここを訪れてしばらくしてから、統合幕僚本部から
6月5日(火)午後1時半頃、
海上自衛隊第1ミサイル艇隊所属「くまたか」(余市)及び
第2航空群所属「P-3C」(八戸)が、
宗谷岬の北約35kmの海域を西進するロシア海軍グリシャⅤ級小型フリゲート2隻
及びナヌチカⅢ級ミサイル護衛哨戒艇2隻の合計4隻を確認した。
その後、当該艦艇が宗谷海峡を西進し、日本海に向けて航行したことを確認した。
という発表があったわけですが、これをみた時、
その解析があの地下の部屋で行われたのか、と非常に感慨深かったです。
ところで、ここで説明を受けていてふと気になったのが、
「ズールー時間」
という言葉でした。
疑問に思ったらなんでも聞いてみずにはいられないわたし、
「どうして”Z"なんですか」
すると、説明の方、
「え・・・・と・・。調べておきます」
群司令、
「(説明できるのは)大事なことだよね」
後にお礼方々そのことについて改めて伺ってみると、
世界標準時が「Z」の理由ですが、Zは「0(ゼロ)」を意味しており、
Zから東に、Aから順番に指定され、日本は9番目の「i」となります。
JとO(オー)はi及び0(ゼロ)との錯誤を防ぐため指定されていません。
という返事が来ました.
なーるほどー!
「ズールータイム」というのは「軍事時間」です。
一般には「UTC」として「協定世界時と」言われています。
海自では時間を表す場合、このズールー時間に則り時刻の後に日本の時刻帯を付します。
例えば
14:46 i
のように。
グリニッジ天文台のある地域の世界標準時を「Z」とした場合、
それより9時間早いのが日本の時刻帯「i」です。
この際「z」の「ズールー」と同じく、「i」もフォネティックコードにより
「インディア」と呼称します。
自衛隊の人が上の時間をいう場合には、
「ヒトヨンヨンロク、インディア」
となるわけで、これは海自であれば艦船であろうが航空であろうが共通です。
前回「航空隊は海上部隊と文化が違う」ということについて少し書きましたが、
やはり突き詰めていくと航空隊も海自である限りその考え方、物の見方において
「海の上を活動の基軸としている」
のに間違いないのだと知った瞬間でした。
さて、みなさま、お待たせいたしました。
何を食べても美味しい食のパラダイス?八戸にある、海上自衛隊での喫食。
ゲストとしてお招きされ、昼食が予定されていると知ったときから
何を食べさせていただけるのか、ワクワクしていたのです。
用意された部屋は、司令官クラスが食事をする部屋で、
座る席にはちゃんと名札が置かれています。
前とわたしたちの横に居並ぶ基地の司令官の前には、
わたしたちに読めるように肩書きと名前が書かれた名札あり。
テーブルクロスは鮮やかな黄緑の布、迎賓室のような立派な椅子に座っての食事です。
これがこの日八戸基地で出されたお昼の御膳だ!
どうですか?みなさん、すごいでしょ。
メインはサケとマグロに三つ葉をふんだんにあしらった海鮮丼、
山菜の天ぷらはちゃんと天つゆが別に添えられています。
そして、お吸い物をご覧ください。
こ、これは・・・せんべい汁ではないか!
前日せんべいを入れて食する「せんべい鍋」初体験をし、
この日も八戸に200年以上伝わる(とはこの時には知りませんでしたが)
せんべい汁を、お澄ましバージョンで再び味わえるとは。
「せんべい汁」の定義は、味噌汁だろうがお澄ましだろうが、
鍋だろうが、とにかくせんべいを入れたものであることを知りました。
そして、写真からもおわかりいただけると思いますが、とにかく美味しかったです。
「海自は何を食べても美味しいですよね」
という話から、舞鶴の術科学校で料理の技術を習得した旧要員のレベルは高く、
退官後に大使館付きのコックになった人もいるという話を伺いました。
(陸自は隊員が交互で料理すると聞いたのもこの時です)
ところでこんな豪華なお昼ご飯は、わたしたちが客で、海将補はじめ
幹部の皆さんだけがいただけるのだろうか?とふと思ったのですが、
聞いてみたところ、この日の隊員のメニューも全く同じものなんだそうです。
テーブルの真ん中には、好みに合わせていろんな味付けができるように、
調味料がぎっしりと並んでいます。
とんかつソースと中濃ソースの使い分けができるってあたりが普通じゃない。
本当に海自というところは食へのこだわりがすごいと感じさせられます。
この会食では、幹部の皆さんからいろんな話を聞いたり、
参加したばかりの練習艦隊体験航海の話をこちらからしたりして、
あっという間に時間が過ぎていきました。
飛行基地とはいえ、練習艦隊の話なども普通に伝わってくるらしく、
晴海埠頭は今工事中らしい、という話題にもなったので、
「横須賀からタグが防眩物を運んできて回収していましたよ」
とその二日前に見たばかりのことをご報告すると、
「防眩物、という単語が普通の人の口から出るとは・・・」
と軽く呆れられたりしました。
また、こちらからは出身地や、防大かどうかなども伺ったりしましたが、
割合として一般大卒の幹部が多いと感じました。
ただ一人だけ、航空基地隊司令の二佐が「海上自衛隊生徒」出身でした。
「そういえば体験航海で乗った時の『あきづき』の艦長が生徒出身でした」
「同期かな・・・その艦長の名前覚えてますか」
「えー・・・・・(; ̄ー ̄A 」
鉄火お嬢さんとのメールにしょっちゅう出てきて覚えていたはずなのに、
最近記憶力の低下が激しく、とっさに出てきません。
同じ2佐なので司令の同級生であった可能性は高かったと思うのですが。
「私、海上自衛隊生徒のパンフの表紙になったことがあるんですよ」
そうおっしゃる基地隊司令の面影からは、未だにその写真における
紅顔の美少年ぶりがありありと眼に浮かぶようでした。
皆さんに出身地も聞いてみたのですが、やはり幹部に地元出身は少なく、
三重県、島根県、千葉県などなど。
ちなみに群司令の出身は北海道で、趣味はアイスホッケーだそうです。
スティックを持ちスケート靴姿の写真を見せていただきました。
ところで、八戸基地は、隊員の不祥事など、問題がほぼないのだそうです。
隊員のほとんどが地元出身であることに関係あるでしょうか。
「東北出身の兵隊は粘り強く黙々と任務を果たすので強い」
という俗説がありますが、東北人の真面目な気質も影響しているかもしれません。
その後、色々あって(詳しいことは割愛)基地を辞去する時間になりました。
左側に第二航空軍と八戸航空基地の、右側の門柱には
警務分遣隊、システム通信分遣隊、機動施設隊、そして、
第二航空修理隊の所在を示す表札がかかっています。
システム通信隊群は2002年に再編成されてこの名前になったばかりで、
(それまでは中央通信隊群)本部は市ヶ谷ですが、組織としては
大湊地方総監部からの分遣隊という形です。
なお、八戸基地ではつい最近(3月28日)、部隊が改変され、
第2整備補給隊に「機側整備隊」
八戸航空基地隊に「航空警備隊」
が新たに編成され発足したばかりだそうです。
「君にしかできないことが、ここにある」
八戸の若者諸君、八戸航空基地は職場としてもホワイトだし、ご飯は美味しいし、
君にしかできないことが必ずここにあるはずなので、ぜひ入隊をご検討ください。
青森地本に代わって当ブログ運営からもお願いしておきます。
さて、八戸駅まで送っていただき、予約した新幹線を待ちました。
東京行き「はやぶさ」が到着。
「はやぶさ」は東北新幹線最速の全席指定です。
実は今回、帰りだけですが、「はやぶさ」のグランクラスに乗ってみました。
グランクラスは飛行機で言うところのファーストクラスみたいなものですが、
せっかく滅多に来ることのない八戸に新幹線で行くことになったので、
一度は体験してみようと、TOが予約しておいてくれたのです。
座席はコクーンのようになっているので、思いっきり席を倒しても後ろの迷惑になりません。
流石にフルフラットにはならないようでしたが。
席に着くなり、専任のアテンダントがおしぼりと飲み物の注文を取りに来て、
車内で出る食事をいつ持ってくるか聞いてくれます。
食事は和食か洋食が選べ、飲み物はおかわり自由。(お酒もあり)
スリッパや毛布などのアメニティもあります。
サンドイッチを頼んだら、こんな感じでした。
わたしは食べませんでしたが、パウンドケーキなどのお菓子も出ます。
座席も広く楽ちんでしたが、問題は東京で新幹線を降りてから。
改札を出たらいきなり折悪く通勤ラッシュの在来線に乗ることになり、
気分はまるで魔法が解けたシンデレラのようでした(笑)
さて、と言うわけで、八戸訪問も終わりました。
大湊基地、そして空自の三沢基地、同じ八戸の陸自駐屯地とともに、
八戸基地は東北という防衛上の要所において海上を今日も淡々と守っています。
基地で働く人々がどのように航空基地の任務と向き合っているのか、
そして哨戒機を持つこの航空基地がどのように運営されているのか、
片鱗だけとはいえ垣間見ることができました。
この貴重な体験をする機会を与えてくださった第二航空群司令、
そして八戸基地の皆様に心からお礼を申し上げる次第です。