空母「ミッドウェイ」の見学、メインデッキにあるギャレーやメス、
医療施設であるシックベイなどの乗員の生活空間などの見学を終わりました。
順路を進んでいくと、外側の階段に続いていました。
階段を登っていくとそこがハンガーデッキ階に当たるところです。
ハンガーデッキ階の高さに当たる踊り場に、ライフラフトが展示してありました。
Life Laft とは日本語で救命いかだです。
型番はMark 6 、25名用で、万が一「総員退艦」の号令がかかった時、
乗員の脱出のためにはこの筏が167隻用意されていました。
それはフライトデッキ(飛行甲板)の下に特別にマウントされていて、
人力で、あるいは自動的、海面に落下すると、もしくは
20フィート以上沈む前に放たれるしくみになっていました。
つまり、人力で海面に落とせなかったラフトは、たとえ船と一緒に沈んでも
6m沈むとそれだけが切り離され浮上することになっていたのです。
それはご覧のようなカプセルになっていて、自動的に展開する救命いかだ、
非常食、サバイバルキットが一式含まれており、要救助者が
救助されるまでの間、命をつなぐことができるようになっています。
子供が見ている写真の上にある茶色いのが救命いかだです。
これが広がって二十五人の男が乗ることができるのか?
と不思議になるくらい小さく収納されていますね。
それが一旦展開すると、この上の図のようになるのです。
膨らませるためのホースはもちろん、上部に覆いをすることもでき、
内部には電気を点灯することもできました。
レーダー探査にかかりやすいようなスクリーンが備えてあり、
どういう仕組みかはわかりませんが、錨まで下ろすことができます。
構造的には海から上がってきやすいように、下図右側に
「ボーディング・ハンドル」がついていて、これを掴めるようになっています。
8番と14番は食べ物と水。
喧嘩にならないように(多分)一人1パックずつになっています。
水をかい出すバケツ(一番左)、4番は鏡ですが、これは信号に使うためのもの。
6番はホイッスル。
映画「タイタニック」でロウ機関士のボートが救いに来た時、朦朧としながらも
ローズはボート漕ぎ手死体からホイッスルを取って吹き、助けを呼んでいましたね。
7番はサバイバル用の毛布ですが、とても薄いもののようです。
そして面白い!(本人たちには面白くもないですが)と思ったのが10番。
何とこれ、外からはわかりませんが
サバイバル・フィッシング・キット
つまり非常食を食い尽くしてもまだ助けが来なかった場合、
これで釣りをして飢えをしのいでくださいというわけです。
ファーストエイドのキットももちろんありますが、特に
12番は酔い止めの薬です。
空母の乗組員がいきなり筏で波に揺られたら酔うかもしれない、ってか?
そして13番は「シーダイマーカー」。
海に放り込むと一帯が蛍光緑に染められて上空からの認識を容易にします。
というわけで、もう至れり尽くせりなので、一度くらいはこの救命いかだでの
サバイバルを経験してみるのもいいかな?という気にさせてくれますね!
というのはもちろん冗談ですが、これらの同梱品や工夫などは、船の沈没と
海上での漂流を経験した人から意見を聞いて作られていると思われます。
ところで皆さん、昨年公開された映画「パシフィック・ウォー」ご覧になりました?
どうして日本の配給会社はわざわざ「インディアナポリス」という原題を
こんなつまらん題に変えてしまったのかとわたしは大変不満ですが、
それはともかく、この映画、邦題の「パシフィック・ウォー」がいかに
内容からみてピントが外れているか、ってくらい、ストーリーが
「艦が撃沈されて海に漂流し、鮫の恐怖に怯えながら救出を待つ」
シーンに重きが置かれており、戦争映画というよりウェイトでいうと
パニック映画、サバイバル映画と呼ぶべきかもしれません。
(もちろん、わたしはそれは皮相的な見方であり、本質はやはり
戦争映画であると思っており、近々これについても書く予定です)
映画で沈没から逃れた「インディアナポリス」の乗員がつかまって
漂流する「ラフト」、これは周囲が浮きになっていて、
チェーンの張られたところに乗るという仕組みです。
確かにこれだと海水が入ってきて転覆する心配はないですが、
ずっと下半身が海に浸かりっぱなしというのは、大変な苦痛だと思われます。
Survivors of USS Indianapolis floating in rubber rafts at sea and being rescued
この実際の映像には、1:12あたりに救出した後のラフトが固まって
浮いているのが映っています。
「インディアナポリス」はご存知のように帝国海軍の潜水艦伊58に魚雷を受け、
命中から沈没までわずか12分しかなかったということですので、
事後のマクヴェイ艦長に対する裁判でも問題になったように、
総員退艦の命令を聞かないまま現場で亡くなった乗員も多く、
海に放出されたラフトが取り合いになったという話はなかったようです。
しかし、このラフトのようにサバイバルキットが同梱されている、
などということも映画を見た限りではなかったようです。
ちなみに「インディアナポリス」の乗員は1,199名のうち約300名が攻撃で死亡し、
残り約900名のうち生還したのはわずか316名。
ほとんどは5日後に救助が完了するまで、救命ボートなしで海に浮かんでおり、
水、食料の欠乏、海上での体温の低下、これらからおこった幻覚症状、
気力の消耗などで亡くなりました。
この映画やディスカバリーチャンネル(多分”シャーク・ウィーク”という季節シリーズ)
など「インディアナポリス」沈没を扱った媒体でサメが演出として過剰に語られたため、
大多数がサメの襲撃の犠牲者になったかのように思われているようですが、
おもな原因は救助の遅れと体力的限界が死亡の原因だと言われています。
つまり、例えばこのようなラフトがあれば、「インディアナポリス」の
生存者は二倍くらいに増えていたかもしれないのです。
それにしてもこの映像の冒頭で「インディアナポリス」の出航シーンがあり、
舷側の乗員たちがくまなく映し出されていますが、その人々の
三人のうち二人はこの後亡くなったのだと思うと、観ていて切ないです。
さて、そこから階段をもう一階上がると、いよいよフライトデッキです。
「ミッドウェイ」はいつ行っても見学者が多く、どの写真にも人が
バッチリ写り込んでしまうのですが、いなくなるまで待っている時間もなく、
常におかまい無しに撮ってしまいました。
都合のいいことに、アメリカ人の夏場での野外におけるサングラス着用率は100パーセント。
ネットにアップするにあたって目隠しをする必要もないのでありがたいです。
それはともかく、デッキに出るとそこは艦尾側でした。
ここから航空機を見学していくことにします。
まず最初に遭遇するのはご覧の「スカイウォリアー」。
EKA-3 Skywarrior スカイウォリアーまたは”ホエール”
ダグラス・エアクラフトカンパニー
電子戦機であり「タンカー」であると説明があります。
この場合のタンカーは空中給油機と考えていいでしょう。
設計者はエド・ハイネマン。あーすごくこの名前聞いたことがある。
いかにもな感じのするユダヤ系技術者。
ちなみにハイネマンがグラマンで設計した飛行機は以下の通り。
SBDドーントレス 急降下爆撃機 A-20 ハボック 攻撃機 A-26 インベーダー 攻撃機 A-1 スカイレイダー 艦上攻撃機 A-3 スカイウォーリアー 艦上爆撃機 A-4 スカイホーク 艦上攻撃機 F3D スカイナイト 夜間戦闘機 F4D スカイレイ 艦上戦闘機 D-558-1、D-558-2 実験機やっぱりこの中の最高傑作はドーントレスとスカイホークでしょうかね。
よく聞くからという以外なんの根拠もなく言ってますが。
スカイウォリアーは空母で運用する飛行機としてはもっとも大型の機体で、
その大きさゆえ一般的には「ホエール」という呼び名があったそうです。
どうしてこの大きな機体を空母で運用しなければならなかったかというと、
当時の技術では小型の核爆弾を製造することができなかったからです。
この時代、米ソの航空機が核爆弾を積んであっちこっちウロウロしていたという話を
以前別の機会にお話ししたことがありましたが、「ホエール」もまた
その戦略爆撃機の一つとしてデザインされたため大きかったというわけです。
広い範囲のセンサーとジャマーを搭載した電子戦機の一つでしたが、
結局のところもっとも従事した任務は「フライング・ガスステーション」としての、
つまり空飛ぶガソリンスタンド、空中給油任務でした。
飛行中の航空機に飛びながら給油するのが空中給油で、
スカイウォリアーのバスケットボールのゴールのような給油ノーズを
給油する飛行機に連結して行いました。
The US Navy's twin jet A3 'Sky warrior' provides mid air refueling to the bombe...HD Stock Footage
あまり画質は良くありませんが、ベトナム戦争時代の給油シーンが見つかりましたので
貼っておきます。
ちなみに体は大きい割に、スカイウォリアーの定員は3名です。
この機体は「ミッドウェイ」で運用されていたようですね。
脚を格納するスペースが横についていて面白いのでアップで撮りました。
Belly landing NAS ATSUGI A-3B 胴体着陸Slide photograph Bu.147666
厚木でまだこの航空機が現役だった頃、胴体着陸したことがあったようです。
飛んでいるところも写っていますが、この脚格納庫に
きっちりと脚が収まっている(でもハッチは開いている)様子を
2:10あたりで見ることができます。
艦尾には乗組員の等身大パネルが設置されていました。
いたるところにこのような人が立っていて、セルフィーに活用されている模様。
アメリカも今日びは「インスタバエ」だらけです。
ちなみにこの写真に撮られている人はモデルなんかではありません。
現在もアメリカ海軍に勤務している、空母艦載機の搭乗員です。
特にかっこいい人を選んで写真を撮ったのだと思いますが、
このパイロットもガタイはもちろん、ブルース・ウィリス系のイケメンです。
これからは、ハンガーデッキに展示されている艦載機をご紹介していきます。
実は本当に自信のない分野で、またとんでもないことを書いてしまうかもしれませんが、
そこはそれ、どうかご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
<(_ _)>
続く。