空母「ミッドウェイ」のハンガーデッキに展示されている航空機を
一つづつ懇切丁寧に紹介しています。
うおおっ、これはまたいかにも時代を感じさせるシェイプの飛行機。
艦載機として生まれた飛行機そのものといった翼の形をしているではありませんか。
Grumman F9F 「パンサー」Panther
グラマンの「猫一族」、パンサーです。
どこかで見たような気がするけど「イントレピッド」艦上だったかな?
と思って調べたら、その時に見たのは「クーガー」の方でした。
両者は似ていますがF9Fの「パンサー」に対し、主翼を後退翼にしたのが「クーガー」です。
にゃんと!
パンサー(下)とクーガーが一緒に飛んでいる写真をwikiで見つけました。
翼の形状だけが違うのがよくわかります。
ちなみにクーガーは、翼にエルロンが付いていない数少ない飛行機の一つです。
朝鮮戦争が起こった頃、空母艦載機として最初に採用されたジェット戦闘機で、
1947年に制式採用になってまだ3年の新型でしたが、空力設計においては
翼が直線的であるなど、明らかにライバル戦闘機には劣っているといわれていました。
ただ、その割には敵地深くもぐりこむように攻撃したり、敵地やあるいは
追い詰められた前線の部隊に即座に一発爆弾をお見舞いする、などといった
任務には大変優れていたため、戦闘機としてよりこちらで重宝されたといいます。
性能的にはあまり優れていない飛行機でも、
パイロットの腕で2世代分はカバーできる、ということを
我が空自のファントムパイロットがF-15相手に証明した
という話を最近どこかで読んだ覚えがあるわけですが、
参考:【下剋上】「ファントムII」は死なず
退役間近、空自「F-4EJ改」が「F-15J」をバンバン堕としているワケ
「パンサー」にも同じ話があります。
朝鮮戦争時代、アメリカ海軍で初めてジェット機(MiG15)を撃墜したのは
実は「パンサー」初期型のF9F-2でした。
そういえば、わたしも、「イントレピッド」のクーガーを語るログで、
初期のパンサーに乗ってMiG15を撃墜したエイメン少佐とやらの写真を上げたんだったわ。
MiGを撃墜して帰ってきたエイメン少佐が、機嫌よく機体から降りてきてるシーンですが、
機体がまさにこのパンサーであることが星の位置からわかりますね。
上の写真は、英語サイトの「航空機今日は何の日」で見つけました。
これによると、撃墜されたMiGパイロットはミハイル・フョードロビッチ・グラチェフ大尉。
別名「日本やっつけ隊」であるサンダウナーズのドライバーであったエイメン少佐は、
「フィリピン・シー」より発進したF9F「パンサー」で、グラチェフ機に
20ミリ砲を四発撃ち込み、撃墜したとされています。
MiGが墜落するところは確認されていませんが、グラチェフ機は未帰還となったので、
被撃墜認定されたというものです。
F9F-8P 「クーガー」COUGAR
何ということでしょう、「ミッドウェイ」では「パンサー」の隣に、
後継型の「クーガー」も展示してあるじゃないですか。
サービス満点です。
しかし後継型と言いながら、こうしてみると翼だけでなく機体の形も全く別物ですね。
F9F-8P は写真偵察機バージョンで、おそらく撮影機材の関係でノーズを延長しているため、
少しシェイプが変わって見えるのかもしれません。知りませんが。
これによって同機は上空からの撮影が水平、垂直どちらからも可能になりました。
そしてつい先ほども書いたように、初期の「パンサー」を後退翼にしたのが「クーガー」です。
後退翼を採用した理由は、艦載機として翼がよりコンパクトにたためるからかな?
と素人のわたしなどは考えてしまいますが、もちろん目的は機能向上。
後退翼にすることで高亜音速〜遷音速領域での抵抗減少や臨界マッハ数を上げることができる、
つまりぶっちゃけ速くなるのです。
wiki
サイドワインダー・ミサイルを翼の下に装着した偵察型「クーガー」。
ノーズの下にカメラのためのカヌー型レドームがあり穴が開いているのが見えます。
写真偵察型の「クーガー」は全部で110機製作されました。
また「パンサー」と比べていただければ一目瞭然ですが、「クーガー」は
空中給油のためのブームを鼻面というかフロントから生やしているのが特徴です。
冷戦時代になって、空中給油の必要性を感じたアメリカ軍は、空中給油の方法を模索しましたが、
その段階で実験的にこのスタイルのブームをつけられたのが「クーガー」でした。
これは1950年台半ば、空中給油の実験を行なっているところで、
A3D-2「スカイウォリアー」が F9F-7「クーガー」に給油しています。
空中給油の方法には二種類あって、こちらはドローグと言う小さな漏斗のついた
給油パイプをタンカーが伸ばし、給油を受ける側はその漏斗にプローブを差し込む
ドローグ&プローブ方式
です。
この方法は小型機に限られます。
大型の飛行機への給油はもう一つの方法、直接相手の給油口にパイプを挿入する、
フライングブーム方式
で行われます。
フライングブーム方式でC-141に給油中のKC-10。
なるほど、どちらも大きいですね。
KC-10は空中給油と輸送の専門機で、愛称は「エクステンダー」。
その意味は「拡張するもの」。
何をエクステンドするかというと、そこはやっぱり
「給油する機体の滞空時間」
でしょう。
そう豪語するだけあって?KC-10は副給油装置として、小型機に給油できる
プローブ・アンド・ドローグ方式の給油装置1基も装備されています。
つまり、給油相手によってアタッチメントをつけ替えたりする必要がなく、
アメリカ軍の規格に準じた、いずれかの空中給油装置を持つ航空機であれば、
ほぼ全ての航空機に対して給油が可能となっているエクステンダーなのです。
ただし、ドローグとブームの両方式を同時に用いることは不可能だそうです。
大きな飛行機だと給油機から出されたプローブを受け取るのは難しいのかもしれません。
プローブ式で受ける方が小さいと、こんなに一度に給油ができます。
あー可愛い・・・・(萌)
クーガー正面から。
思わずかっこ悪っ!という言葉が出てしまうわけですが、
やっぱり後からつけたのでノーズが全体のシェイプをまずくしてるという感じ。
真正面からこうしてつくづく眺めると、やはりこういう改装を重ねた機体は
造形的にどこか無理があるという気がしてしまうんですね。
個人的意見ですが。
そして、空中給油が導入されようとしていた頃に、実験として
このような長〜い給油プローブをつけてみたものの、無駄に長すぎて、
タンカーから伸ばされる小さな傘をキャッチするのは結構チャレンジングだね、
という話になり(たぶんね)、いつの間にかそれ以降の給油プローブは
クランク型の短いものになっていったのではないかとわたしは想像します。
だいたいタンカーから出てくるあの傘を受け止めるのに、こんなに長い必要あります?
向こうに見えるのはおなじみ、
Grumman A-6「イントルーダー」 Intruder 艦上攻撃機
戦闘機でも爆撃機でもなく、艦上攻撃機は地上、あるいは洋上の目標物を
爆撃するのが主任務です。
攻撃型のイントルーダーは「侵入者」という意味ですが、
この電子戦機型は、
プラウラ=「うろうろする人」
その後継型は、
グラウラー=「唸る人」
であるのはもうこのブログ的におなじみですね?
ところで、イントルーダー・プラウラー&グラウラーには、
他と見間違えようのない特徴的なツノがおでこに付いています。
これって、実は空中給油のための給油ノズルなんですよ。
ツノを使用しての給油例。
スーパーホーネットから燃料を補給される「プラウラー」です。
それにしてもこれ、どうして小さい方が大きな方に給油をしてるんでしょうか。
そもそもホーネットが他の飛行機に給油することがあるとは知りませんでした。
しかしこうしてプラウラーの給油シーンを見ると、「クーガー」の
給油プローブの長さって、いかに意味がなかったかわかるような気がしますね。
給油のことだけ考えるならこの形が一番リーズナブルなんじゃないかしら。
ただしこのツノをデザイン的に了とするかどうかは全く別問題です。
この時ちょうど塗装をし直すか展示をやり直しているらしく、
足場が組まれ周りに近づけないようにロープが張ってありました。
「イントルーダー」は全天候型の攻撃機としてデザインされており、
ナビゲーション・コンピュータを、攻撃のために搭載していました。
そのおかげでベトナム戦争の時、北ベトナムの奥地に入り込む危険で複雑な任務にも
最適な選択を行い的確な攻撃で相手に効果的な打撃を与えることができたのです。
A-6は1990年代になって F/A-18 「ホーネット」が登場するまで
中型爆撃機の主流として活躍し続けました。
その近くには同じツノ族の「プラウラー」もいました。
Grumman Aerospace EA-6B Prowler
プラウラーは先ほども言ったように電子戦機で、「スカイナイト」
「スカイウォリアー」の後継機として1971年に置き換えられたものです。
ベトナム戦争からイラク、アフガニスタンまで、「プラウラー」も
後継のF/A-18ホーネットが登場するまで電子戦機の主流として広く配置されました。
F/A-18ホーネット空中給油(KC-30A)・オーストラリア空軍 - F/A-18 Hornet Aerial Refueling, Australian Air Force
今はプローブを内蔵して必要な時だけ出してくるんですね。
やっぱりブームが外に出てる必要ってなくね?長い必要はさらになくね?
ってことでこういう形に落ち着いたのかと。
続く。