ついに大学が始まり、息子が旅立っていきました。
この場を借りてアメリカの大学と、またこの季節の風物詩ともいえる、
「バック・トゥ・スクール」
についてお話しようと思います。
アメリカの私立大学はどこでも、入学に際して学生本人に対してだけでなく
親に対しても、大々的なオリエンテーションを行います。
しかも、1時間2時間というものではなく、丸々二日かけ、合間には
ランチ、ディナー、学長主催のパーティ、その他ソーシャルを含んで
あらゆる角度から学校の紹介と、新入生の親の不安を解消するための
アプローチでより一層学校に理解を深める一大イベントです。
新入学生のオリエンテーションは日本の大学でも普通に行いますが、
親を対象にここまでするとは、と日本人の我々には驚きです。
アメリカの大学、特に私学はそれ自体がビジネスなので、
大金を出してくれるスポンサーに説明するのは当たり前かもしれません。
この期間にわたしたちは広大なキャンパスをあちこち歩くことになり、
かなり学校内の地理に詳しくなりましたが、それでもまだ行ってないところもあります。
この日は学生センターを探検してみました。
卒業生の寄付らしいスタンウェイのピアノが学生ユニオンのラウンジにあったので、
誰もいないのをいいことにショパンのエチュードを一曲弾かせてもらいました。
調律などはされていないらしくひどい状態でしたが、周りにはソファもあり、
このコーナーは防音装置で囲まれています。
キャンパスに必ずピアノがあるのもアメリカの大学の特徴。
広大な部屋の半分にビリヤード台が置かれていました。
こういうのもおそらく卒業生の寄付によるものでしょう。
男女兼用床屋の広さは自衛隊基地のそれくらいの感じです。
5分でも遅れたら予約はキャンセル、とアメリカにしては厳しいです。
ユニオンにはスクールショップがあります。
アメリカの大学は、学校の名前のロゴを入れた洋服やカップ、
その他小物を中心に、学生生活に必要なものを売っている売店を備えていますが、
その店内、ロゴ入りトレーナーのラックに飾ってあった昔の当大学学生の写真。
1900年初頭のケミストリー専攻学生という感じですかね。
売店では各種パソコンも現物販売しています。
売店の本棚で見つけた「トランプ塗り絵本」。
皆が見るのに誰も買わないという「ネタ本」扱いです。
どれどれ、中身は・・・?
本当にあるのかどうか知りませんが、別売りで、
上「トランプ 侮辱の数々」
「ばか」「ロウレベル」「メンタル・バスケットケース」・・・
彼がやらかした数々の暴言事件に楽しく色をつけましょう。
下「ロック・ハー・アップ!(彼女をぶちこめ!)」
クリントンと彼女の夫にまつわる疑惑の数々が数十ページにわたり掲載。
トラベルゲート、ホワイトウォーター、モニカ・ルインスキー・・・。
今蘇る思い出深い事件をあなたの感性で彩ろう!
・・・みたいな?
アンクルサムの他にも、名画に描かれた人物や、プレスリー、
ワシントン(の彫像)に扮したトランプが続きます。
ミサイルをぶっ放しているUSS「トランプ」はわかるとして・・・。
なになに、下にキノコ雲、飛行機はエノラ・ゲ(略)
この日の売店は、お土産にロゴグッズを買う新入生と親で大混乱。
息子娘が行っている学校を世間様に自慢したい親のために、
「〇〇〇(学校名)Dad、〇〇〇Mom」
というグッズまで販売されていました。
わたしは買ってませんが。
学内はスターバックスは必須として、アイスクリームのメーカーも参入しています。
ダイニングも構内にいくつもあり、例えばその一つでは入り口で8ドル払うと、
中にあるものは何をどれだけ食べても構いません。
ケースの中にはアイスクリームまであってこれも食べ放題。
息子に言わせると、
「あれは罠だよ。
タダだからって好きなだけ食べるなんて最低」
大学からしてこうだから、アメリカ人って皆太るんですね。
スクールユニオンを出ると、にゃーと声がして猫が走り寄ってきました。
日本でもよくあるのですが、わたしのもつ「動物アンテナ」に感応したようです。
これが本当の猫まっしぐら。
しゃがんで写真を撮っているとずんずん近づいてきて、
たちまちピントが合わなくなりました。
猫氏の目的は、自分を可愛がってくれる人物にスリスリすること。
日本では見たことがないグレイのふさふさした尻尾を持つ猫でした。
首輪にお魚の形のタグをしているので、学校の誰かの猫でしょう。
トウブハイイロリスは普通にあちらこちらにいます。
(今住んでるホテルでは朝ゴミ箱に侵入してるのをよく目撃する)
何か見つけて食べだしました。
わたしがこの様子を激写していると、インド系の学生らしい男の子が
横に来て一緒にスマホで写真を取り出しました。
きっとリスのいない国から来た留学生なのね。
こちらのリスさんは頬袋に食べ物を貯蔵したままこちらを窺ってます。
やっぱり大きなカメラは怖いんでしょう。
今回カメラはニコンの一眼レフ一台、レンズもオールインワンで乗り切ります。
いよいよ息子が入寮のために荷物を運び込む日がきました。
ただし、何かの手違いで実際の入寮は次の日からということがわかり、
この日は荷物を運んで部屋の掃除をしてやることにしました。(TOが)
ドミトリーの個室は二人一部屋です。
三人一部屋のドミトリーもあるそうですが、二人でよかったかな。
「友達が嫌な奴だったらどうするの」
「ルームメイトは友達じゃないよ」
「だったら尚更、こいつウゼーとかなったらどうする?」
「どうもしない。ルームメイトだから」
息子は案外人間関係にクールなところがあるのですが、
この辺の感覚はすでにアメリカ人的になっているようです。
今回ルームメイトは前もってSNSで自分の好みと傾向を公表し、
募集して応募してきたアメリカ人(近郊出身)だそうです。
到着してからこの日まで、ベッドリネン類から始まって、
あらゆる学生生活に必要と思われる品々を揃えるために、
毎日のように大型店に日参することになりました。
どんなものが必要かは、SNSによる先輩のアドバイス、
例えばすぐに寒くなるから冬の装備はもう持ち込んでおけとか、
(その心は学校が始まると忙しいので買い物に行っている間がない)
暖房器具があると朝助かる、とかいうのを参考にします。
LLビーン、ベッド・バス&ビヨンド、ターゲット、ベストバイ・・。
アメリカの便利なところは、全米どこに行っても同じ名前の大型店があり、
ほとんどが同じ店の作りで何をおいているかも共通なので、
不慣れな地で欲しいものを探すのに店を探しだす必要がないことでしょう。
わたしたちも他のアメリカ人のように、リネンを買うために「バスビヨ」、
電化製品のためにベストバイ、シャワーに必要な小物のために
ターゲット、冬用衣類のためにLLビーン、と毎日走り回りました。
今の時期、お店ではどこに行っても
「バック・トゥ・スクール・セール」
と銘打って学生生活に必要なものを集めたコーナーがあります。
そして、どこの店でも、お父さんお母さんと新入生らしい子供、
くっついてきた下のきょうだいという組み合わせがうろうろしています。
到着すると早速拭き掃除をして、ルームメイトのところまで
ブラインドを掃除しておきました(TOが)
息子はダストアレルギーがあるので、これに加え、ベストバイで
ダイソンの温熱&空気清浄機付き扇風機を購入して万全の態勢です。
この日と次の日の荷物運び込みは、インターナショナルスチューデント、
海外からの学生と、遠隔地からの学生に限られていたため、
廊下で荷物を運ぶ人と鉢合わせするということもなく、
掃除もしっかりしてやれた(TOが)のはラッキーでした。
後から知ったところ、遠隔地組のオリエンテーションは宿泊の関係で
入学日に一番近いギリギリですが、東海岸の近郊の出身学生の回は
すでに7月から始まり、5回に分けて行われていたということです。
わたしたちが荷物を運び込んだのはオリエンテーションの始まる2日前。
アメリカの大学には入学式というものはなく、それらが終わり、
寮に(新入生は必ずドミトリーに入寮しなくてはならない)残る息子娘と、
彼らを残して家に帰る両親とが抱き合って別れを惜しむのが
入学式のセレモニーといえばセレモニーとなっているのです。
学校は入ってくるものに対してはこれからの生活の指針を与え、
つつがなく学生としてやっていけるようにスタートアップするだけ。
そして全米で、ほぼ同じ時期に新入生が大学生活を始めるにあたり、
家族と別れるための準備に始まって入寮に至るまで、
新入生の数だけ別れを惜しむ家族があり、泣いてしまう母親があり(笑)
これからの自分の生活に不安と期待でそれどころではない学生あり、と
同じ光景が繰り返されるのが、バック・トゥ・スクールの季節なのです。
ちなみにわたしは、流石に息子が寮に入った次の日には
いろんな思い出が走馬灯のように巡ってしんみりしたものですが、
この後二日にわたり行われたオリエンテーション行事を経て、
何か一つ、「正しい子離れ」をしたような気がしています。
アメリカの大学は、生徒に対する親離れより、親に対する子離れロスに対して
ここまで手厚くケアしてくれるのだと驚かされた、その、
オリエンテーションイベントについて、後半でお話ししましょう。