平成30年度練習艦隊の帰国を横須賀にお迎えに行ってきましたので
その様子をご報告します。
約半年の遠洋航海を終えて、何事もなかったかのように
同じ岸壁に半年前と変わらぬその姿を見せる練習艦「かしま」。
いつものように横須賀港には昨日のうちに到着した模様です。
今まで何度か練習艦隊の帰国行事に参加しましたが、天候はいつも
快晴というべき好天に恵まれていたと記憶します。
やはりこの季節は晴れ日が多いということなのでしょうが、
5月の出航もわたしの知る限り激しく雨が降ったことがありません。
新任幹部たちの乗る練習艦隊の出入国に当たっては、まるで
天も祝福してくれているかのようです。
会場の配置は「かしま」に正対する形で来賓、向こう側に家族など。
来賓席の後ろ側には家族や水交会などの参加者が立ちます。
出航の時と同じく、テントはありません。
あまりの強風でテントが飛ばないように自衛官総出で柱を抑えた時以来、
横須賀地方隊ではこの手の行事にテントを使うことをすっぱりやめたようです。
わたしは前回の経験に照らし、今回も式典の間かぶるために
日よけの帽子を折りたたんで持参していき、ずいぶん助かりました。
自衛官は帽子着用なのであまり感じないかもしれませんが、
晴天下でただ座っているとこれは結構辛いものなのです。
前にも書きましたが、今後横須賀での出入港行事に参加される方、
特に女性はつばのある帽子の着用を推奨します。
新任幹部たちはもうすでに艦内で待機しています。
岸壁にいた「かしま」「まきなみ」各艦長が乗艦を行いました。
そして練習艦隊司令官も。後ろを歩くのは練習艦隊副官です。
岸壁に配置された横須賀音楽隊のドラム奏者が刻むスネアドラムに乗って、
遠洋航海を終えた幹部たちが「かしま」から下艦してきました。
先頭の一佐は練習艦隊幕僚でしょうか。
半年前、ここで見送った時よりも皆明らかに日焼けした顔をしています。
特に今回の練習艦隊はインドネシアやアラブ首長国連邦、
バーレーンやサウジアラビアなど日差しの強そうな国に寄港し、航海中も
訓練や実習が繰り返されたわけですから、それも当然というものでしょう。
昨日、半年ぶりに帰国し、横須賀の岸壁に降り立った時
彼らはどのような感慨を持ったことでしょうか。
女性の幹部は見たところいつもと同じような割合のようでした。
つまりあまり多くない、ということです。
今年も練習艦隊にはタイ王国からの留学生が一人参加しています。
右から二人目の女性二尉は、全体に『頭中』『休め』などの号令をかける係。
お腹の底から響くような、それはそれは迫力のある号令でした。
実習幹部の右側の一団は「かしま」の海曹・海士です。
全員が岸壁に整列を終え、「かしま」からサイドパイプの音とともに
「まきなみ」艦長、大日方二佐がまず下艦してきました。
続いて「かしま」艦長、金子一佐。
最後に練習艦隊司令官泉海将補がラッタルを降りてきます。
来賓席に向かって軽く挨拶をするように通り過ぎました。
整列が終わった後、実は結構長い時間我々は待たされました。
防衛政務官の到着がもしかしたら国会開催中の関係で遅れたのかもしれません。
待つことしばし、SH-60Kが「かしま」の向こうから姿を表しました。
隣に座っていた方(海保観閲式のチケットを下さった人)によると、
この地域のヘリは全て館山基地所属なんだそうです。
現在、到着した防衛政務官が巡閲を行なっています。
整列した儀仗隊の間を、「閲兵」する自衛隊の大事な儀式です。
「巡閲の譜」が演奏されている間、敬礼を続けます。
みんな見事に「海自式敬礼」になっています。
特に一般大学を出て幹部になった人にとっては、この半年で
この海自式敬礼がすっかり板についたことと思われます。
まあよく見ると微妙に敬礼の角度とかに個人差があるようですが・・。
やはり指揮官の敬礼には年季が入っています。
角度に迷いがないというかピタリとキマってます。
巡閲を終えて防衛大臣政務官がご来臨。
観閲式の時も式台にそのお姿を見せていた、鈴木宗男氏の娘、
鈴木貴子議員。
32歳の若さで防衛大臣政務官というのは一体どういう抜擢か、
この姿を見るとつい考えてしまいますよね。
しかもこの人、2014年には民主党から立候補していて、
その後除名されたという経歴だそうじゃないですか。
その後の挨拶ではキビキビとしたハリのある声で、
「いつも同じではない航海は諸官に時には試練を与えたでしょう。
そんな時諸官を支えたのは傑出した技術であることはもとより、
支え合い、切磋琢磨してきた仲間の存在だったのではないでしょうか」
「我が国の防衛という崇高な任務に全身全霊で挑んで頂きたい」
「かしま、まきなみの乗員の諸官、諸官らの卓越した能力と高い技術を
発揮したからこそ、実習幹部は今回の航海において
数多くの困難を乗り越え、幹部自衛官として必要な資質を身につけ無事に
帰国することができたのだと思います」
「乗員諸官により、海上自衛隊の文化、伝統、誇りたるシーマンシップが
継承されていると改めて感じるものです」
「ご家族の皆様の安心のため、幹部たちが任務を安全に遂行できるよう
体制を整えてまいりますので、何卒ご理解ご協力を賜りたいと存じます」
といった真っ当な内容の文章を読み上げ、わたしの中の好感度が
少し上がりました。(誰かが書いた内容だとはいえ)
鈴木防衛大臣政務官に対し敬礼。
佐藤正久外務副大臣もその後挨拶を行いました。
最初に
「自衛官出身の佐藤正久です」
と改めて自己紹介し、海外派遣などについての実情を述べた後、最後に
「休みの時にはしっかりと休養を取って家族と過ごしてください」
と声をかけました。
判断を過たないためにも、自衛官はしっかり休養してほしい、ということです。
水交会や横須賀市の偉い人たちから花束贈呈。
右から二人目は元海幕長です。
花束を贈る人が四人いたので、四人が受け取りましたが、
はて、一番右側の幹部が受け取っているのはなぜだっけ?
一番最後に来て一番最初に現場を去る、防衛大臣政務官。
ヘリが去るまで現場は一時フリーズです。
続いて国会議員の退出が行われました。
この日一番その出席に驚いた阿部知子議員。
社民党を最初に、それこそコウモリのように党を変えてきて、
現在のところ立憲民主党の議員ですよね?
先般JGBTへの非生産発言に揚げ足を取られ
一時渦中の人となった杉田水脈議員。
佐藤議員は来賓席に挨拶をしながらの退場です。
ここで帰国行事は終了し、解散のアナウンスが流れました。
花束を持ったまま、在日米軍のフェントン少将と
挨拶を交わす泉海将補。
ちょっと調べてみたところ、フェントン少将は
がフルネームで(フェンスというのはAKAというか通称ね)
アナポリスでは航空宇宙工学の理学士、
米国海軍大学院の航空宇宙科学修士号を取得しています。
テストパイロットの学校にも学び、海軍で原子力についても
技術を学んだフェントン少将は、かつてテストパイロットとして
X-35に乗ったことがあるとか・・。
って、海軍軍人なのになぜテストパイロット?
わたしは自席から少将の名前を確認して、もしかしたら
「君が代」のフェントンの子孫か?と考えたのですがどうでしょう。
ちなみにフェントン少将の後ろの女性は通訳で、
挨拶などの内容を全て同時通訳して少将に伝えていました。
こんな真面目で熱心な米軍人は初めて見ます。
式典が終了したあと、来賓席は全てガラガラに。
来賓席の後ろに立っていた幹部家族たちが空いた席に移動して座り始めます。
練習艦隊司令官と艦長はまた「かしま」に戻りました。
そして実習幹部たちが「本当のかしま下艦」を行います。
横須賀音楽隊は帰ってしまったので、「軍艦」は放送で流されました。
幹部たちが「かしま」乗員に『お世話になりました』
と挨拶しながら舷側を歩き、ラッタルを降りていくのです。
自衛艦旗が見えるところでこうやって敬礼を行うのですが、
やっぱりまだ新任なので自衛艦旗への敬礼が身に染み込んでいないのか、
前の人を見ていないと敬礼せずに降りてしまう人もいて、
一人がたまたま敬礼しないとしばらく皆敬礼しない(つまり前の人に倣う)
という一瞬も見られました。
最後に女性幹部たちが降りてきます。
タイ王国の唯一の留学生も下艦を行いました。
彼が本国でいつの日か海軍将官になり、軍事交流を日本国自衛隊と行う時、
遠洋航海で同じ釜の飯を食った仲間がカウンターである可能性は
大変高いものと思われます。
そして「かしま」を降りた幹部たちと乗員の間で帽振れが行われました。
舷門には練習艦隊司令らが立って帽振れしています。
下艦していく幹部たちを見送る泉海将補と艦長たち。
その微笑みと眼差しには、半年彼らを見守り続けた指揮官ならではの
父親のような慈愛の色が見て取れます。
新任幹部たちを半年指導してきた「かしま」乗員たちも帽振れ。
そのとき、艦橋のデッキで大きな旭日旗が翻りました。
帽振れを終えた実習幹部は、今度は「まきなみ」に挨拶に向かいます。
「まきなみ」飛行甲板では幹部が二人手を叩いているぞ。
「まきなみ」の乗員に帽振れ。
艦橋デッキには「ご安航を祈る」旗を手に持っている人が見えます。
また「かしま」から乗員が降りてきました。
ここで「かしま」の任務を終了して艦を降りる乗員たちだと思われます。
見送る「かしま」乗員たちの様子もリラックスした感じ。
もう一度艦上と岸壁で帽振れが交わされます。
海軍伝統の美しい慣習、何回見てもいいものです。
デッキの旭日旗も一層大きく翻って。
その後、わたしが車を停めた場所まで歩いていると、
「まきなみ」から戻ってきた幹部たちがこちらに向かって行進して来ました。
掛け声も音楽もありませんが、歩いていると自然に足並みが揃ってしまう。
もうすっかり彼らも一人前の自衛官ですね。
先頭が止まったので列が止まると、家族が駆け寄って来て
声をかけたり写真を撮ったり。
彼らはこれから新しい配置で自衛官としての新しい一歩を踏み出します。
帰国直前発表された自分の配置が、志望通りだった人も、そうでなかった人も。
「まきなみ」の艦上の乗員たち。
彼らはこれから大湊まで帰還するという任務が待っています。
新任幹部たちを降ろした「かしま」も呉に向かうでしょう。
練習艦隊司令官はまた報告会を行う予定ですので、
ぜひお話を伺ってまたここでお話できればと思っております。
練習艦隊の皆さん、お帰りなさい。
終わり。