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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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潜水艦「しょうりゅう」引き渡し式 @ 川崎重工業株式会社

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幹部候補生学校卒業式を終え、自宅に帰って中一日を挟んで、
わたしは朝6時半の羽田発で神戸空港に向かいました。
その日の午前中から川崎重工で潜水艦「しょうりゅう」の引き渡し式、
その前になんと偶然にも、練習艦隊の神戸港寄港があったからです。

故郷である神戸に練習艦隊が3隻堂々の入港をしてくる様子は
元地元民の思い入れもあって胸が熱くなるものがありましたが、
お迎えが終わった後、艦内見学のためにお迎えに来た人が次々と
ラッタルを上っていくのを尻目に、わたしたちはポートターミナル前に
たった一台だけ停まっていた(しかも運転手が長時間トイレ休憩をしていた)
タクシーを捕まえて、川重に向かいました。

川重での自衛隊関係式典では、いつも建物前に呉地方総監部から
総務の自衛官が受付をするためにテーブルを出して待っています。

いつも招待状を忘れてテーブルの前で立ち往生するので、今回は
ちゃんと招待状の類を持ってきたのですが、如何せん行事が多すぎて
封筒やら地図やら招待状やらの紙束の中からそれを探し出すのに一苦労。

受付にさっと出すために離れたところでごそごそやっていると、
すっかり顔見知りになった総務の方が飛んできて

「なくても大丈夫ですよ」

招待状の封筒を受付で渡そうとすると、こちらも顔見知りの女性自衛官が

「どうぞ記念に?お持ちください」

いやー、いつも招待状なしで受付を突破しているとはいえすみませんね。
ちなみにこの総務の自衛官は、いつもいつも本当に激務をこなされていて、
例えば引き渡し式の自衛艦旗がなかった時など、衆目の中ダッシュして
艦内に旗を取りに走っていくなどという活躍をされたのを見てきましたが、
この日、

「こんなところでいうのもなんですが」

と前置きして、この度の人事異動で横須賀の自衛艦の航海長に移ることを
教えてくれました。
やはり艦乗りが陸上勤務から海の上に戻るとき、嬉しいものなのだろうと察して、
そんなお知らせを受けるとわたしは必ず、

「おめでとうございます!」

と最大限の祝意をこめて言うことにしています。

受付をすませると、これも最近ではすっかり慣れてしまった控え室にいき、
そこでバスの出発する時間までを待ちます。

顔見知りや同じ防衛団体の方にお会いすることもありますし、
各種式典などで顔だけはよく知っている人と一緒になることもあります。

この日わたしは、これまで顔だけ知っていた自衛隊イベント皆勤賞の
アマチュアカメラマン(会社経営)の方と近くに座ったのをきっかけに、
思い切って話しかけてみました。

別の人からあまりいいように聞いていなかったのですが、実際に話してみると
全く普通の方で、やはり喰わず嫌いはダメだと反省しました(笑)

 

 さて、この後バスで「しょうりゅう」が繋留されている岸壁に到着すると、
招待者区分ごとに席が決まっているので、そこに着いた順に座ります。

潜水艦の前の岸壁には、「しょうりゅう」乗員がすでに整列しています。

そのまま待つこと20分、時間きっかりに防衛省の代表として
原田憲治防衛副大臣、海幕長、そして本日の式執行者である呉地方総監、
杉本海将が入場し、まずは栄誉礼と巡閲が行われました。

川崎重工業株式会社社長から、原田副大臣に「しょうりゅう」の所有を表す
書類が引き渡され、続いては自衛艦旗が防衛副大臣から艦長に、艦長が副長に
受け渡され、全員の乗艦、続いて艦長乗艦という流れで儀式は進みます。

潜水艦「しょうりゅう」の引渡式、自衛艦旗授与式

やはり産經新聞はよく分かってらっしゃる。
引き渡しから自衛艦旗の掲揚までをきっちり映像にしてくれています。

自衛艦旗引き渡しの時に「海のさきもり」を一番だけ歌ったのは、
声から判断しておそらくですが横須賀音楽隊の中川真梨子三曹だと思われます。

 

ちなみに、現場に毎日新聞社の記者は取材に来ており、新聞にも
写真付きで記事になっていましたが、

川崎重工、潜水艦「しょうりゅう」引き渡し 海自稼働19隻に

朝日新聞の姿はなく、一行も報じなかったようです。

ちなみにこの後、原田大臣が海幕長と呉地方総監を伴って、艦内に
視察のために消えてしまった後、会場ではそこにいる人たちのために
潜水艦の命名基準(吉祥動物)について、説明があり、しょうりゅう、
「翔龍」とは

「物事を高所から判断し、素早く行動する龍」

という解説が行われ、その後、音楽演奏がありました。

そこで最初に演奏されたのが、「てつのくじら」です。

わたしは呉で行われた同音楽隊コンサートでこの曲の初演を聞いているのですが、
関西で行われる潜水艦関連の行事で必ず最初に演奏されるのをなんども聞くうちに
こういう場にこれほどぴったりな曲があるだろうかといつも感動しています。

てつのくじら 天野正道作曲

前回参加した三菱重工での注水式の時にもこれが演奏され、隣の女性が
イントロで

「宇宙戦艦ヤマトだ!」

とつい叫んでしまっていましたが、雰囲気は似ているものの、こちらは
こういう晴れやかな出港式にこそ相応しい明るさが横溢しています。
特に中間部のメロディ、この変則的な展開がわたしは特に好きですね。

「てつのくじら」に続いて本物の「宇宙戦艦ヤマト」、続いては
いつ聴いても題名と曲が一致しないアメリカのマーチが演奏されました。

視察が終わり、バスで神戸駅前の川崎重工ビルに案内されました。
ここの3階にある宴会場?で祝賀会が行われるのもいつも通りです。

会場にはプロのコンパニオンがいて、色々と面倒を見てくれるのは、
会社主催のパーティのお約束。
会場の前方席は主に自衛官で、これは川重にとっては自衛隊が
「お客様」であることを表しています。

原田副大臣の挨拶の後は川崎重工社長の「しょうりゅう」の性能紹介を含めた挨拶。

毎日新聞は調べもしなかったのか、性能について全く触れていませんでしたが、
時事ドットコムなどは当艦が最後のAIP搭載艦となることについても
かなり詳しく述べています。

「しょうりゅう」は長時間潜航可能な非大気依存推進システム(AIP)を搭載する。
建造費は約560億円。
船体に書かれた艦名と艦番号は位置情報が漏れないよう就役後、消される。

AIPは外気に依存することなく潜航した状態で潜水艦の推進に必要な
電気エネルギーを発生させ、発電機を回して鉛蓄電池を充電する。
蓄電のために、知されやすい海面近くまで上昇し、吸気筒(シュノーケル)から
空気を取り入れ、ディーゼル発電機を回すことを極力避けるのが目的だ。
ただ、AIPの搭載はシステムや整備が複雑化するとの現場の声もあり、
今回で搭載艦は最後になる見通しだ。

時事ドットコムはさらに踏み込んで、リチウムイオン搭載についてもこのように。


現在、三菱重工業がそうりゅう型の「おうりゅう」を建造中で
昨年10月に神戸造船所(神戸市)で進水。
おうりゅうはAIPを搭載しないが大容量で、
効率良く急速充電もできるリチウムイオン電池を備える。
潜水艦への搭載は世界初の試みで、次世代型の潜水艦として注目されている。

密閉空間でリチウムイオンを取り扱うだけに、
異常発熱の防止など徹底した安全対策が必要になる。

今更写真に撮るまでもない気がしますが、川重祝賀会の料理テーブル。
神戸ということでいつもここはくるんで蒸したもち米の料理(中華風?)
が出てきて、はっきり言ってこれが一番美味しい。

珍しく原田先生、お食事をしていく時間があったようで、
海幕長、呉地方総監共に、ずっと横についてお相手をしておられます。

もし大臣がおられなければ、海幕長も呉地方総監も、出席者の名刺交換攻めで
ほとんど食事をすることもできませんから、お二人には(気は遣うものの)
案外ホッとする時間だったのではないかと拝察します。

大臣と海将の周りにはコンパニオンもベテランが配置されている模様。

というわけで、海幕長には遠慮して誰も声をかけないまま終わった祝賀会ですが、
たった一人だけ、テーブル越しにいつもの調子で話しかけていた人もいました。

阪神基地隊司令とツークローズな写真を撮っているこの方です。
偉い人にしてみれば、一般人はあまり畏まりすぎず、これくらい
ラフな態度で接してくれる方が気が楽というのが案外本音かもしれません。

 

祝賀会終了後、再びバスで岸壁に行くと、すでに乗員は艦内の配置につき、
花束を贈呈する川重の女子社員と、艦長、海曹、海士三人が、
ずっとお見合い状態で向かい合って立って待っている状態でした。

いつも思うのですが、何十分もこの態勢で待つのは、気恥ずかしいというか、
目のやりどころがない状態で大変気まずいのではないかしら。

ようやく式典が再開され、無事花束贈呈が行われた後、
艦長が挨拶をしてから最後に乗り込んでいった「しょうりゅう」は、
岸壁にいる人たちが打ち振る日の丸と、「軍艦」に送られて出航していきました。

岡山の三井造船玉野では国旗と自衛艦旗が渡されましたが、どうしてここでは
国旗だけなのか、かすかに不満を感じたわたしです。

 

最近特に潜水艦関連の行事では写真撮影にうるさくなって、許可された
報道などの人以外は構内での写真は一切禁止されるようになりました。
写真を撮ると、工場内の色々が写り込んでしまうからということもあるでしょう。

引き渡し式会場には「写真撮影禁止」と張り紙があり、午後の見送りの時も
ご遠慮願いたいという風に聞いていたので、一切カメラに触りませんでしたが、
「しょうりゅう」が出航し、タグボートによって向きを変えた時、
川重の施設が全く写らないであろうと判断して一回だけシャッターを切りました。

それが冒頭の写真です。

見ていただくとわかりますが、「しょうりゅう」甲板では乗員が

「ありがとう神戸」

というバナーをこちらに見えるように掲げて出航していきました。
「しょうりゅう」はこの後慣熟訓練を経て、呉に配備されます。

防衛副大臣の挨拶にもはっきり「瀬取り」という言葉が使われていたように、
近年ますます緊張が高まる日本の海の守りにつく新鋭潜水艦が、また一隻、
誕生した瞬間をこの目で確かめることができました。






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