映画「U-571」最終日です。
冒頭挿絵は、本編に登場する四人の士官を書いたのですが、
並べてみてから上から階級順になっているのに気がつきました。
ヒルシュ、タイラー、エメットはいずれも大尉ですが、
話の内容から考えてこれが名簿順であると思われます。
さて、ナチス軍の駆逐艦と対峙しているU-571。
乗っているのはUボートでも、中身はアメリカ人であることが
すっかりバレてしまったので、相手は遠慮なく攻撃してきます。
どうもドイツ語が話せるウェンツのようですね。 ボン・ジョビ、いつの間に死んでしまったの。 敵のZ49もU571が浅いところにいることを知っていて、
爆発深度を25mにし、きっちりと爆雷を撒いてきます。 ちなみにZ49という駆逐艦は計画はされましたが、実際に存在はしていません。 「壁から離れてろ、ハーシュ大尉。
爆発の衝撃で背骨が折れるぞ」(小声で) このとき、緊張を高めるようにソナーのピンガーが聞こえますが、
残念ながら当時Uボートには ASDIC(Anti-Submarine Detection Information Comittiee)
は搭載されていませんでした。 ここからがもう無茶苦茶。 キャプチャした写真が皆こうなってしまいます(笑) そこでタイラー、ピコーンと💡ひらめきました。 「魚雷発射孔から色々捨てて沈没したと見せかける作戦」 を。
あの、コメディ戦争映画「ペチコート作戦」は、艦体がピンクであることから
敵だと思って攻撃してくるアメリカ駆逐艦に、こちらが味方であると知らせるため、
発射孔から、乗り込んでいた女性軍人の下着を排出するというオチでしたが、
今回は、相手がそれを本物かどうか確認しているすきにに浮かび上がり、
一発しかない後部魚雷を海上の至近距離から撃ち込むという作戦です。 このときタイラーは浮上した艦がどこに浮かび上がるかの説明で、 「Principle of ascent velocity」(上昇速度の原理) という言葉を使って科学的アピールをしています。 その発射する「色々」には、先ほど亡くなったマッツォーラの遺体を含みます。 「彼をゴミみたいに捨てるんですか」 悲しい目をしてそう言ったラビットに、タイラーはその作業をすることを命じます。 「彼の身体は我々を助けてくれるだろう」
しかし、情報将校のハーシュは、もし魚雷を外した場合、
ドイツ軍の捕虜になる前に全員を殺せ、とタイラーに囁きます。 もちろんそれは、そのあと自決せよ、という意味でもあります。 「さよなら、マッツォーラ」 爆発深度を浅くして完全に仕留めにかかってくる駆逐艦。 激しい爆雷で電球は割れ、食器は全て床に、水漏れ、火災・・・・。 「たくさん来ます。数えられません!」(小声で) 「チーフ、200まで潜れ」 この200はおそらくフィートではなくメートルでしょう。
(フィートだとたった60mということになります)
でも、これって変ですよね。 「深く静かに潜行せよ」でも、日本の潜水艦の震度計がフィート表示でしたが、
ドイツの艦に乗った途端、フィートでしかモノを考えられないアメリカ人が
メートル法の震度計に即順応し、200mの指示を出すというのはあり得ません。 乗員も200と聞いてそれだけで一様に恐怖の入り混じった様子を見せます。
それはともかく、彼らはどうもUボートの最大深度は230 m、圧壊深度になると
計算上では250 - 295 mまで行けたということを知らなかったようです。 これまで乗っていたSボートがはっきり言って大したことなかったせいか、
Uボートの性能がここまでとは思っていなかったのでしょう。
深度200を目盛りが指したとき、先任伍長は思わず呟くのでした。
"Mary, mother of God. Those Kraut sure know how to built a boat."
DVDでは全く訳されていませんが、この「クラウト」とはザウワークラウトのことで、
つまり「ドイツ野郎」を意味しますので、 「驚いた。ドイツ野郎ってのは潜水艦の作り方をよく知ってるんだな」 ということになろうかと思います。
ところが褒めた途端、故障した潜水艦は最大深度を超えて沈み出し、
ビスは飛び、バルブは割れてさらにタンクの水が減って大パニック。
浮上して敵に視認されるまでに、艦尾の魚雷を撃てるように
圧搾空気管の穴をなんとかしなければならないのですが・・・。 圧搾空気管のバルブのある船艙は今や水没してしまっていました。
修理作業には体の小さな者しか当たることはできないので、
タイラーはラビットとトリガーの二人から、トリガーを指名します。 ところでこのラビットとトリガーが双子ってくらいクリソツで、
わたしには最後まで二人を見分けることができませんでした。 トリガーは海水の満たされた船艙に入り、作業を始めますが、
酸素ボンベの届かないところでの長時間の作業ができず、
めげて一つ直したところで出てきてしまいました。 「ダメです。できません(;_;)」 しかし、浮上する前に直せないと、トリガーどころか全員が死ぬことになります。
心を鬼にして、戻って遣り遂げろと命令するタイラー。
部下を死なせることになってもためらわず命令することができるか、
と艦長に問われたタイラーですが、ちゃんとやってるじゃないですかー(棒) そのとき、艦内で不審な異音が発生。
ハーシュ大尉が顔色を変えて拘束した捕虜を見に行くと・・・、 この期に及んで敵に情けをかけ、生かしておいたことが仇になったのです。 残骸と死体を放出して、沈没したと思わせることに成功しそうなとき、
捕虜は手錠でパイプを叩いて駆逐艦に信号を送っていたのでした。 「我U-571 我を破壊せよ」
ちなみに、この後ハーシュ大尉は顔に血糊をべったり付けて 無言で皆の前に姿を現します。 そうこうしているうちにU-571は浮かび上がってしまい、駆逐艦に距離を計られて
魚雷を撃ち込まれ出します。 「艦を捨てる指示を!」 「まだだ!」 その瞬間、トリガーが瀕死でバルブのレバーに手を伸ばし、魚雷復活。 駆逐艦にまっすぐ向かっていく魚雷。
最後の、そして唯一の攻撃が失敗すれば、その後は相手の攻撃で死ぬか、
それとも味方の手にかかって死ぬか、何れにしても死一択です。 向かってくる魚雷を回避するため必死で転舵する駆逐艦の操舵手。 早くも退避行動に移る水兵たち。 魚雷はみごと駆逐艦の左舷に命中しました。 まるで雑コラのように仕事が甘い合成の爆発シーンです。 「ミスタータイラー、もしあなたがチーフを必要なら、
わたしはいつでも馳せ参じますよ」 アンディは大ベテランのクラウ先任伍長に、艦長として認められたのです。
きっとダーグレン艦長も草葉の陰じゃなくて海の下で喜んでいることでしょう。 しかし、トリガーは・・・・・。 彼は自らの命で全員を救ったのでした。 生き残ったメンバーは、たった7人。 ここでいつまでたっても救出されず、「インディアナポリス」生存者の悲劇再び!
ということになる可能性は大いにあったはずですが、
この辺りにはサメはいないので多分大丈夫。
ラッキーなことに、たった一晩海の上で過ごしただけで、彼らは哨戒機、
しかも味方の水上機に発見されてあっさり生還することができました。 というわけで、最後のクレジットですが、 この映画は、第二次世界大戦時、エニグマ暗号機をUボートから奪うため、
命を懸けて戦った勇敢な連合軍兵士たちに捧げる 1941年5月9日 英海軍大3駆逐艦隊HMS「オーブレティア」がU-110から
エニグマ暗号機と暗号表を奪取 1942年10月30日 HMS「ピータード」がU-559から暗号天気図を奪取 1944年6月4日 米海軍機動部隊22・3がU-505から暗号機と暗号表を奪取 これだけ? というか、最後のはDデイの2日前ですよね?
この頃はすでにドイツは暗号機を役立たせるような状態ではなく、
暗号も解読されていてなんの意味もなかった気がするんですが、
とにかくアメリカも映画みたいなことやったよ?といいたかったのね。 まあいいや。
ちなみに、この映画を、かつてUボートに乗っていたドイツの元軍人に見せ、
ヒストリーチャンネルが感想を聞いたところ、こう答えたそうな。 「この映画には本当だったことがたった一つだけある。
それはUボートが大西洋にいたということだ」 言い方を変えると、 「Uボートが大西洋にいたということ以外全部嘘」 終わり。