さて、ザルツブルグに到着し、ホテルザッハに投宿したわたしたち、
夕暮れのザルツブルグを散歩してみることにしました。
今いるアメリカもそうですが、オーストリアも夏の日没は遅く、
だいたい9時前にようやく夕暮れになるという感じです。
昼間の観光客のざわめきも消えて、広間の人影はまばら。
わたしたちもMKがこのくらいの時、ヨーロッパを連れ回しましたが、
残念ながら現在の彼にはほとんど記憶がないそうです。
ただ、パリで地下鉄の移動が辛かった(階段しかなかったりする)ことや、
興味のない美術館で退屈したというネガティブな思い出はあるようで。
記憶になくとも、小さいうちに子供にいろんなものを見せて
それを原体験にしてあげたい、という思いで、世界の親は
こうやって子供連れでいろんなところに旅行にいくわけです。
荒ぶる馬の石像と恋人たち。
ホテルのテラスから見るザルツァハ川は、橋や川岸の遊歩道の
ライトアップに浮かび上がり幻想的です。
崖の上の変な建物は、今ザルツっ子に大人気の絶景レストラン。
それはともかく、この橋桁が一本しかなく、しかもそれがどうみても
歪んでいる
のにわたしたちは不安を覚えました。
大丈夫なのかこれ。
あけて翌朝、楽しみにしていたホテルザッハの朝ごはん。
保温された銅のフライパンに麦が敷き詰められ、
「10分卵」と称するゆで卵が並んでいます。
一つとってみたところ、10分卵の正体は固茹で半熟半々くらいでした。
小さなお客さま用のワゴンもございます。
色とりどりの食器、動物をかたどったパン、ハムや卵は
子供にも手が届く高さにセットしてある心配り。
驚いたのは、朝ごはんなのにケーキが出されていたこと。
フルーツケーキ、クグロフ、そして・・・・、
ザッハトルテがっ・・・・・!
「朝からザッハトルテ食べるとは・・・」
「今朝も食べた人がすでに何人もいる・・・」((((;゚Д゚)))))))
建物の壁に打たれた杭の下には、
調査マーク
破壊、損傷、または除去することは禁じられています!
通達:
ザルツブルク治安判事
Vermessugsamt
とプレートがありました。
最後のは判事のお名前かしら。
さて、この日はガイドをお願いしてザルツブルグツァーをしました。
ロビーで待ち合わせたガイドさんは、ウィーンの民族衣装を着た女性。
午前中歩き回る予定なのにヒールのサンダルを履いていたのでびっくりです。
わたしはもちろん、履き慣れたスニーカーという万全の体制で臨んでおります。
ホテルから出てすぐのところに、ピンクのモーツァルトハウスがありました。
モーツァルトの生家は市街地の中心にあって、「モーツァルトハウス」として
中に資料が展示されているのですが、こちらは外から見ただけ。
生家が手狭になったのでモーツァルトが17歳の時にこちらに引っ越し、
家族四人で住んでいたのですが、母親が5年後亡くなり、
姉は結婚し、モーツァルトはウィーンに引っ越してしまったので、
父親のレオポルドが一人で住んでいたそうです。
そういえば映画「アマデウス」では、ウィーンの喧騒の中、
夜遊びして放蕩の生活をしているモーツァルトの元に、ザルツから
父ちゃんが現れると、音楽が急に暗く、険しくなり、息子は父に怯える、
という演出があったのを思い出します。
モーツァルトの家のすぐ近くに、これも有名人の住居がありました。
なんと、クリスチャン・アンドレアス・ドップラーの生家です。
1803−1853とありますが、ドップラーがそんな昔の人だったとは。
ドップラー効果というものは誰でも知っていますが、ドップラーが
どこの人でいつそれを発見したか、案外知らないんじゃないでしょうか。
もしかしたらわたしだけ?
ちなみに彼がドップラー効果を数式にしたのは1842年のことです。
蛇足ですが、ドップラー効果は、オランダ人の学者バロットが証明しました。
1845年、列車に乗ったトランペット奏者がGの音を吹き続け、
それを絶対音感を持った音楽家が聞いて音程が変化したことを確認したのです。
その音楽家の名前は歴史に残らなかったんでしょうか。
「ドップラーの両親は隣がモーツァルトの生家だと知ってたんでしょうか」
「もちろん知って借りたと思いますよ」
ザルツブルグというところは本当に偉人を多出しています。
ザッハホテルの隣、橋のたもとにあるこの家ですが、誰の家だと思います?
ヘルベルト・フォン・カラヤン 1908−1989。
カラヤンの生家です。
前庭には指揮をするカラヤンの青銅像があります。
2001年にチェコの彫刻家、アンナ・クロミイが制作したものです。
遠目にもちょっとシワ多すぎね?って思うんですけど。
ツァーの途中、ビルの外壁を掃除している業者がいました。
石の壁が多いザルツブルグでは、外壁は高圧の水で汚れを落とすんですね。
ちょっと立ち止まって見てしまいましたが、スプレーを当てたところは
嘘のように綺麗になっていきます。
ツァーで最初に案内されたのは、ミラベル宮殿の庭園。
ここを有名にした映画が、これでした。
「サウンド・オブ・ミュージック」。
この画像は、ウィーンからアメリカに行く飛行機の機内で放映していた
同映画の画面を撮影したものです。
家庭教師のマリアが子供たちと「ドレミの歌」を歌うシーンですね。
この階段の上で、ガイドさんは、わたしに
「指を一本立ててポーズをとってください」
と言って、無理やり写真を撮らせました。
自分の写真をほとんど残していないわたしですが、
「ここでは恥ずかしくても、いい思い出になるんです!」
と強調されて、ついやってしまいました。(写真自粛)
庭園の隅に、入浴中という設定の半裸の女性像がありました。
これがこの庭園の主、ザロメ・アルト。
なんと当時の司教が愛人を囲うために建てたのがこの宮殿だったのです。
愛人の像なのでこんな艶かしい意匠にしたということでしょうか。
壁面をすべて蔦が覆い隠してしまっています。
肩や頭に乗せた鳥の口から水が噴き出しているという・・。
昔の水芸みたい。
「ニシカワフミコさんって知ってます?」
聞き覚えがないので知りませんと答えましたが、ニュース女子に出ている
西川史子さんのことだったかもしれません。
「あそこで結婚式をあげたんですよ」
「昔はこんな立て札、なくても誰も入らなかったんですが、
中国人が増えて(はっきりとそう言った)写真を撮るために
皆が芝生に入るようになったので、仕方なく最近立てられました」
その口調は、わずかながら苦々しげでした。
向こうに見えている白いドームはメッシュになっており、
昔は中で鳥が飼われていたということです。
ミラベル宮殿は現在市役所として普通に使用されていますが、
普通の市役所のように結婚式を挙げることができます。
西川さんはここで式を挙げ、あの宮殿のようなお城で披露宴をしたのかもしれません。
ここでまたしても、結婚した時には、この「天使の階段」に立ち、
二人で写真を撮るのだと強く説得され、仕方がないのでTOと撮ってもらいました。
庭園の藤棚?の前でガイドさんが立ち止まります。
「サウンド・オブ・ミュージック」に出てきた撮影場所です。
「ドレミの歌」のシーンですね。
フリードリッヒとかいう男の子が走ってきます。
さて、その後、ホテルの部屋から見えていた橋を渡って行きました。
ザルツァハ川の河原は京都河原町鴨川沿い状態です。
普通の鍵もありますが、わざわざそれ用に作られたハート型のもの、
二人の名前を刻んだものなどがぎっしりと。
今いるピッツバーグでも、気づけば街のあっちこっちに錠前がかけてあります。
わたしは全く知らなかったのですが、日本にもすでにこの「流行」は
伝播してきていた(しかもいつの間にか終わっていた)らしいのです。
英語ではラブロック、フランス語はカデナ・ダモール、
それなりにロマンチックですが、我が日本では
「愛の南京錠」
というそうです。
よりによって「南京錠」・・・・・・(´・ω・`)
流行り物にはすぐ飛びつく日本であまり爆発的人気にならなかったのは
このネーミングのせいだと思うがどうか。
「美しき青きドナウ」という曲の題名ではありませんが、とにかく驚いたのは
ザルツァハ川の水は翠。翡翠の翠です。
流れも速く、水を滔々と湛え、水上交通で流通の要となったというのがわかります。
皆さんは一度くらい、ウィーン土産に「モーツァルトチョコレート」なる
丸くて美味しくないチョコレートを見るか貰うかしたことがあるでしょう。
ガイドさんに言わせると、あのほとんどは「偽物」なのだとか。
何が本物で何が偽物なのか、その基準がわからないんですが、
モーツァルトチョコレートの元祖はここではないらしいです。
どうでもいいですが、まあ、確かなのは「名物に旨い物なし」ってことです。
それにしても、この美化されたモーツァルトと一緒の謎の美女、だれ?
戦後、ここにもアメリカ軍が進駐しましたが、その時にこの地産の人形を
米軍兵士が気に入って、競うように買い求めて子供の土産にしたため、
小さい時にこれが家にあった、という記憶のある年配のアメリカ人は結構いるのだとか。
冒頭写真はザルツブルグの目ぬき?通りであるゲトライデ通り。
この商店街の看板は、昔から装飾的な鉄細工のものを
通りに向かって見せるように出す習わしです。
これはマクドナルドの看板ですが、ゲトライデ通りに出店する際、
随分反対の声もあったというので、マクドナルドは恐縮し、
周りの雰囲気を壊さないように、ひときわ立派な、しかし象徴である
「ゴールデンアーク」はとっても控えめにした看板を作りました。
しかし、蔦が装飾されたガチョウの首がリボンで加えるゴールデンアークの月桂樹、
その根元には王冠をかぶったライオン、色々盛り込みすぎてわけわからんことに。
案の定、ザルツブルグっ子にはこの盛りだくさんな真鍮看板、
「やりすぎだ」とバカにされているんだとか。
・・・ドンマイ、マック。
続く。