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波〜令和元年 自衛隊音楽まつり

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自衛隊音楽まつりの第三章が始まりました。
テーマは、

「ジェネレーションー世代を超えてー」

第一章の「インセプション」から「トラディション」「イクスパンション」
ときて、「最後にションの付くシリーズ」ということでこの選択です。

「開始」「伝統」「増大」ときての「世代」ですから、ここだけ状態を表すものではなく、
おそらくこの企画をした人は防大儀仗隊と自衛太鼓のステージに
どんな「ション」が当てはまるのか、少し苦労なさったのではないかと思われます。

自衛太鼓が「世代」というテーマを名付けられたわけはのちに判明しますが、
防大技状態の始まりに、世代を超えて受け継がれているあるものが登場しました。

先ほどのステージで演奏をしていたトランペット奏者が、

♫ドードソードミーミドーミ ソーソミードソーソソー

♫ドードソードミーミドーミ ソーソドーミソーソソー

と「起床ラッパ」のメロディを演奏しました。

「自衛隊の朝を知らせる起床ラッパ。
この起床ラッパは、自衛官と、まだ学生という組織の違いはあれど、
防衛大学校においても、同時刻、同内容にて構内になり渡ります。

そして、自衛官未満である彼ら、彼女らは、次の世代の国防を担うという
重要な使命のもと、幹部自衛官になるための育成期間を過ごしています。

世代を超えて受け継ぎ、発揮される若き力。
防衛大学校技状態によるファンシードリルです!」

なるほど、ジェネレーションと銘打ったので、ラッパを関連づけたのね。

さて、今回、公演と公演の間にも外で練習している様子、そして
最終日の早朝に会場でウォーミングアップしている様子を目撃し、
彼らが寸暇を惜しんで練習を行っていることを知りました。

本番で失敗なく見せる彼らのドリルが、不断の努力の上にあることに
いまさらながら感心させられたものです。

防衛大学校の生活は、防大漫画「あおざくら」に見るまでもなく、
大変ハードなものだということですが、彼らは主人公の近藤くんのように
課業と役職をこなしながら、課外活動でさらにこれほどの研鑽を積んでいるのです。

世の中に楽な道はいくらでもあるというのに、あえてこのような学生生活を選び、
自衛隊指揮官を目指している若い人たちがいるのだと知ることは、
国民のひとりとして感謝に絶えません。

さて、今回場所が従来の武道館より広くなったわけですが、
儀仗隊の人数は20名プラス打楽器隊と従来と同じです。

それではフォーメーションに変化があるのでしょうか。
そんなことも楽しみにしながら観覧しました。

 あまりに動きがシンクロしているせいで遠目にはわかりませんが、
今年もメンバーの中には女性隊員が混じっています。

最初の敬礼した状態から二列に分かれ、それがX字となる。
このフォーメーションは去年と同じではないかと思われます。
演技はいつも同じことをするのではなく、少しずつ変わるようですが、
基本的なやることはだいたい毎年定型にのっとっているようです。

袖に桜のマークが三つ付いているのは最上級生の4年です。
やはり3年4年とやっている者の練度が高いので、音楽まつりには
上級生がほとんどを占めるようですが、1年2年も出ないわけではないそうです。

二軍三軍ができるほどの隊員数もいないってことなんでしょうか。

X字がダイヤモンド型になり、さらにもう一度、と目まぐるしくチェンジします。

手袋をつけるのは素手だと擦れて痛いし手が傷つくから、ということですが、
素手より銃を滑らせて取り落とす確率が増えるとおもいます。
儀仗隊員は最初から手袋着用で、手袋が第二の皮膚のように思えるまで
練習を繰り返すのでしょう。

自衛隊音楽まつりのDVDを作成している会社のカメラマンでしょうか。
今回は会場が広いので、カメラも数台出撃させたかもしれません。

今年出演している学年は4年生が64期で、以下65、66、67期となります。
もっとも自衛官は防大の卒業年次ではなく、幹部候補生学校の卒業年次を公称するようですが。

横から見たら「<<」のようなフォーメーションは、去年はしなかった記憶があります。
これは、くの字の二列隊形が歩み寄ってすれ違う瞬間ですが、
ぶつかる直前に体を横にかわしてまた元の直線状の進路に戻るという、
簡単そうで実は結構難しいんじゃないかと思われる動きをしています。

この交差も新しい技だと思われます。

今年この陣形が加わったのは、会場が代々木になったからでしょう。
儀仗隊の演技は、客席の両側どちらから見ても正面が見えるように
その点を考慮してフォーメーションを組んでいました。

ウェーブのように動きを列の端から時差で行うことを、
儀仗隊ではどうやら「波」と呼んでいることがわかりました。

ちなみに、去年「HPがいつまでも鋭意工事中だった」と書いたのですが、
たった今見に行ったらリニューアルされていました。

防衛大学校儀仗隊HP

隊長の挨拶は音楽まつり以降にアップされたもののようです。

これによると、儀仗隊の創設は1955(昭和30)年。
その頃の儀仗隊員は、今の隊員たちのお爺さん世代にあたります。
親子二代で儀仗隊員、もしかしたら親子三代で、という例も
あったかもしれませんし、これからもあるかもしれません。

これぞ本当の「ジェネレーション」を超えて受け継がれる伝統です。

先日、自衛官の集まり(一佐以上海将補以下)に混じって話をしていたら、
その世代の少なくない自衛官のジュニアが防大やあるいはもう部隊にいて、

「あいつの息子はお父さんより出来がいい」

「わたしの息子もどうやらわたしより出世しそうです」

とかいう話で盛り上がりました。

先日練習艦隊帰国行事でお会いした新幹部の父上も自衛官でしたが、
家業でもないのに父親の働く背中を見て自分もやってみたいと思う例が
思っているより多いのにちょっと驚いたものです。

今回、比較的近かった二日目の貴賓席からの写真です。
本体はブレず、銃だけが動きのある画像が撮れてなかなか嬉しいです。

今回レンズは1日目は28−300mmでしたが、思ったより被写体が遠かったので、
二日目は70−300mm一本で(ニコン1の広角と両持ち)がんばりました。

ハイアマチュアの知人が盛んにレンズ沼に足をひっぱろうと、

「そろそろ400買いませんか」

と囁いてくるのですが、いくらなんでも、ねえ。
(でもそういえば総火演も400があればいいよね、とか考えて
中古の値段を調べてしまったわたしである)

銃を回すとき、完璧に手から銃が離れている瞬間があるんですよね。

防大儀仗隊ホームページによると、音楽まつり後、新体制での休日練習始めは雨だったそうです。
雨が降ったら銃を用いずに歩く練習を重点的に行う模様。

全員が横一列に並びました。

今年のパーカッションにも女性が4名いると思われます。
去年も女性が多かった記憶がありますが、ここまでではなかったかと。

そうそう、女性で思い出しましたが、ついにイージス艦の艦長に
女性が就任しましたね。

女性初のイージス艦長が就任

unknownさんが早々に教えてくれましたし、
先日、ある旧軍軍人の慰霊祭に行ったところ、そこにいた海自OBが、
このことを話題にしていてわたしもそれを聞きました。

「みょうこう」もこんなのにしなくては・・・!

今回、防大儀仗隊の公式ツィッターで、このように横一列で
左から右に、右から左に技を時差で繰り出していくウェーブ状態を
そのものずばりで「波」という技名がつけられていることを知りました。

銃を回す技が左から送られてくると、最右に立っている隊員は、敬礼しながら
左手で銃を回し続け、ぐるりと会場を見回します。

これにはいつも会場はどっと受けるのですが、今回、最終日に
わたしの横の招待席に座っていたアメリカ軍人らしい人が、
これを見ながら目を輝かせて喜んでいるのを目撃しました。

アナポリスやウェストポイントでこんな儀仗隊があるというのは
聞いたことがないので、純粋に珍しいのかもしれません。

ちなみに、防大で「校友活動」(でしたっけ)と呼ばれるところの
課外部活動を、アメリカのウェストポイントでは

「マッカーサータイム」

と呼ぶそうです。
ウェストポイントの見学しかしたことがないので海軍は知りません。

「波」で彼らが順番に銃床を床につけていくとき、その音が
だらららららっ!
と規則正しく聴こえてきてそれがまるでドラムのようです。

「波」のフィニッシュは銃の投げ上げ。
正面から見て左端の隊員が、銃を思いっきり高く投げ上げます。
投げ上げながらその場垂直飛び。

銃が落ちてくるのを待つ間の彼の姿勢をご覧ください。
ちゃんと手をグーに握っています。
さすがは自衛官。

しかもギリギリまで手を出さないという。

ちなみに去年はこの「波」の陣形は馬蹄形となっていました。
今年は広い会場なのでまっすぐ横一列です。

最後は二列に向かい合った隊員が互いに銃を投げ渡す中、
隊長がその中を歩いていく「蹴り渡せ」です。

多少のプログラムの変化はあっても、必ずこれは最後に行われます。

去年までわたしはこれを「銃くぐり」と勝手に名前をつけていましたが、
去年正式な(これが正式なのだとしたら)名称を教えてもらいました。

去年は「蹴り渡せ」の「蹴り」がいまいち理解できなかったのですが、
今年ははっきりとわかりました。
この写真を見ていただければお分かりのように、銃を投げる前に
必ず足を蹴るように前に出しているのです。

つまり「蹴り」、そしてその後「渡せ」です。

列員のなかで便宜的に使われてきた名称で、こんなふうに大々的に
外の人に言われることを想定していなかったのだと思われます。

上手い「渡せ」をする二人の時には、銃がこんなきれいに並びます。

隊長が通る寸前に一回、そして通り過ぎてからもう一回。
これで元の自分の銃になります。

去年コメントにいただいた話によると、この技はやはり決して簡単ではなく、
隊長は一回踏み出すと、戻ることができませんし、(そらそうだ)
たとえば手元が狂ったり隊長が何かでつまづいただけでも3キロ近い銃が
顔を直撃することになり、かなり緊張する技なのだそうです。

最後に行われるだけに一番の見せ場でもあります。

それから、防大HPで知ったことですが、4年生の「退団」は12月1日。
つまり音楽まつり最終日なのです。

隊長はもちろん、出演している最上級生はこの日の演技をもって
防衛大学校で最後の儀仗を終えることになります。

毎年のようにこの瞬間を撮っていますが、彼らの裡は
最後に迫った儀仗隊列員生活に対する感慨とともに、
悔いなく最後までやり遂げようという強い意志で満たされているのでしょう。

今回も完璧に全ての演技をミスなしで終えました。
最後は全員が銃を回しながらの敬礼。
隊長は抜刀して剣の敬礼です。

大太鼓は右手で敬礼。シンバルは右手が空かないので頭中。

隊長とドラムメジャーの二人だけが、鍔飾りのある帽子を着用できます。

指揮は田中優基学生、ドラムメジャーは東瀬滉一学生でした。
四年間お疲れ様でした。

防大儀仗隊のファンシードリル、今年も三回とも素晴らしい出来でした。

さて、「ジェネレーション」の2番目は自衛太鼓です。

 

 

続く。


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