冒頭画像にタイトルを「戦場に流れる歌」と書いてきましたが、
ここに至って本当は「戦場にながれる歌」だったことが判明しました。
漢字にするか平仮名にするかの選択は創作者の強い意図だと尊重し、
タイトルだけはなんとか訂正しましたが、画像はそういうわけにもいかず、
「流れる」のままになっていることをご了承ください。
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捕虜としての労働は過酷なものでした。
「ニッポンジン、レイジーバスタード!」(怠け者野郎)
と罵られながら行う野外での重労働。
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片目をやられた小沼中尉も捕虜としての身を託っております。
こんな姿に身をやつしていてもイケメンですが。
一旦移動させたドラム缶を元に戻させる、というような
「シーシュポスの神話」みたいな命令をされても、
「イエス!」
と絞り出すように返事をする小沼中尉でした。
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捕虜たちはとにかく飢えていました。
アメリカ軍はそれなりに糧食を与えたと思うのですが、そこはそれ、
残飯から拾ってきた魚の頭を焼いて食べるなどということになると、
皆目の色が変わるわけです。
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タバコと交換してもらえないので、この兵隊は目の前の魚の頭をひったくり、
怒った持ち主にシャベルで殴り殺されてしまいます。
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(-人-)ナムー
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ゴミの山の中にはさりげなく人間の脚が混じっていたり。
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それを見て息を飲むテナーサックスの芦原。
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同じくトロンボーンの千田伍長。
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こちら、チューバの青田とトロンボーンの多胡。(東銀長太郎)
米兵のパイ缶を盗みだすことに成功。
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むさぼり喰っていると、
「Hey, you! Is it good?」
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罰として「私は缶詰泥棒です」と書いたダンボールを背負わされ、
空き缶ぶら下げて基地内を練り歩かされることに。
船長の昼ごはんのうどんをこぼした猫を思い出した。
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猫と違うのは、こちらは各部署でサインをもらってこなくてはいけないこと。
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アメリカさん結構楽しんでるだろ〜。
このシーンでは、後ろに米軍の放送として、英語で東條英機はじめ
A級戦犯への連合国の裁判の訴追内容を報じるラジオの音声が聴こえます。
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その時、田胡が米兵の荷物にトランペットを発見しました。
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一瞬にして目で合図し、合意成立。
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変な踊り(どじょうすくい)で一人が目を引いている間に、
トランペットをパクっちまおうという作戦です。
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「おーい!トランペットだぞ!日本の歌を吹いてくれ!」
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彼らがトランペットを鈴木に渡すと、彼は一瞬息を飲むようにして受け取り、
日本のメロディを吹き始めます。
♬ 出船
「今宵 出船か お名残惜しや 暗い波間に 雪が降る」
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メロディの流れる中、涙を流す兵隊も。
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皆が息を飲んで日本の歌に聴きいりますが・・。
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音楽に苛立つ人も。
「てめえみたいなチンドン屋が日本を滅ぼしたんだ!てめえらが何をしたんだ」
「人を殺すだけが戦争じゃない」
しかし、彼はトランペットを踏み潰してしまいます。
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ゴミ処理場で働かされていた軍楽隊、一人がビンを拾って音を出すと、
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たちまちそこにいた何人かが音程の様々なビンを手にして合奏するという
ミュージカル展開に(笑)
♩ 夕焼け小焼け
米兵の監視はなかったんでしょうかね。
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こちら小沼中尉、砂浜に空き缶を埋めて演奏するのは
♪ ふるさと
おっと、聴こえてくる音はどう聞いてもバイブラフォーンです。
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「どうしてこの前まで一緒に戦っていた日本人同時が憎しみ合うんだ。
今こそ音楽が必要なんだ」
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日本人捕虜同士で殴り合いの喧嘩は当たり前。
ついに崖の上からそのうち一人が転がり落ちて死ぬという事故が起こりました。
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皆が駆けつけてくる中、絶望的な目をしてそれを見守る捕虜たち。
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その時です。
機械の立てる騒音に紛れて音楽が聴こえてくるではありませんか。
「おい!」
「どうした」
「聴こえないか?」
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「何が?」
「トランペットの音!」
「聴こえる!聴こえる!」
「トロンボーンの音!」
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「軍楽隊だ!」
「行こう!」
皆、シャベルを放り出して駆けていきます。
あのー、捕虜の監視は一体・・・。
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音が聴こえてくる方向に彼らが浜辺を駆けていくと、海辺から見上げる
崖の上で、米軍軍楽隊が演奏していました。
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ロケ地は横須賀とか・・・・?
♪星条旗よ永遠なれ
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貪るように音を聴きながら、ただ上を眺めている彼ら。
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軍楽隊である彼らが今もっとも飢(かつ)えていたものは、軍楽の調べだったのです。
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このシーン、在日米陸軍音楽隊が特別出演しております。
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彼らの顔は輝き、ある者は涙ぐみながらかつての敵国の「第二の国歌」を聴いています。
恥ずかしながら、このわたしも、このシーンで聴く「スターズアンドストライプス」の
破壊力にはあらがうこともできず、落涙してしまったことを告白します。
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チューバのもっとも目立つフレーズでは、下で聴いていた青田、思わず
息を吹き込むような表情をしてしまいます(冒頭挿絵)
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ここで写真を点検していてわたしは発見してしまいました。
彼らの左肩についている鳥居のエンブレムに(笑)
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多分キャンプ座間からエキストラに呼んだのだと思います。
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チンドン屋出身鷲尾は、合わせてクラリネットを吹くポーズをとりますが、
しっかり腰が揺れております。
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音楽を聴きながら彼らの瞳に戻ってくる生気。
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今ではもうこの人たちも現役ではありません。
このとき演奏した米陸軍軍楽隊のメンバーは、故郷に帰り
余生を送っているか、あるいはもうこの世を去ったかもしれません。
この演奏スタイルがやたらカッコイイ大太鼓奏者も。
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彼らは矢も盾もたまらず、投降前に楽器を隠しておいた場所に走っていきました。
どうやって捕虜がそこに行けるのか?とかツッコんではいけません。
そして、土の中から楽器を掘り出して手に取ります。
こんな状態なのに、米軍が一曲終わるまでには楽器は全て使用可能になっていますが、
これも深くツッコんではいけません。
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「星条旗よ永遠なれ」は、いつの間にか彼らの頭の中で
「陸軍分列行進曲」に変わっていました。
全員がスタンバイOKとなり(主人公の太鼓は流石に無理だったようですが)
加山雄三の隊長が、トランペットで
♪ 蛍の光 (オウルド・ロング・サイン)
のメロディを吹き始めます。
小沼中尉は確か打楽器奏者と言っていた気がしますが、まあイイや。
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半分欠けた状態なのに朗々とエコー付きで響き渡るトランペットの音。
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次のフレーズから、サックスが低音パートをつけ始めるという有能さ。
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全員がこれに加わろうとしたその時。
崖の上からそれに和する吹奏楽の響きが降ってきました。
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丘の上で演奏していた在日米陸軍軍楽隊のみなさんが、一緒に演奏していたのです!
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日米双方の軍楽隊が共に奏でる一つのメロディ。
捕虜収容所の皆はいつの間にかそれに耳を傾けていました。
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日本軍の捕虜も、米軍の監視たちも・・・。
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その瞬間すべての人々が手を止めて聞き入っていました。
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そんな捕虜の一人にあっと驚く大物がいました。
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役名は「伍長」で名前もありませんが、あの小林桂樹です。
小林はその音楽を聴き、何事かを思うように目を潤ませます。
捕虜同士の喧嘩になった時、楽器を踏み潰した兵隊が言った、
「日本なんかもうどうなっても構うもんか。
俺たちはどうせもう生きてなんか帰れないんだ」
という投げやりな言葉を、音楽が否定したのかもしれません。
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ラッキーストライクの殻が落ちている海辺を歩いていく
一人の男(これが誰かはわからない)の姿で映画は終了します。
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太平洋の彼方を見据える男の後ろ姿。
音楽によって彼の裡には故国への想いと、帰郷への希望が生まれたに違いありません。
捕虜がどうして監視に咎められることもなく海に入っているのかは謎ですが。
最後に、団伊玖磨氏の証言によると、戦後、多くの元軍楽隊員は
米軍基地や米兵用キャバレーでジャズを演奏するようになりました。
その豹変ぶりは団氏を驚かせるに十分であった、ということです。
ただし、皆がアメリカ人の厳しい演奏要求に答えられたわけではなく、
その中で生き残った実力派は、戦後日本のジャズの「祖」となりました。
海軍音楽隊出身の原信夫氏(シャープスアンドフラッツ指揮者)などもその一人です。
ちなみに原氏は1926年生まれ。2020年1月現在93歳でご健在です。
終わり。