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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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「勇敢な搭乗員が15名・・・」〜映画「ミッドウェイ」

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1976年版「ミッドウェイ」、三日目にしてやっとのこと、
日本海軍の航空隊が出撃するところまでやってきました。

出撃準備シーンは「太平洋の嵐」から流用されているといえ、
あのジョン・ウィリアムスが担当した音楽はシーンに重厚さを与え、
日本映画における日本軍の描き方と遜色ない演出がされています。

この点はこの映画の及第点といえましょう。

 

さて、出撃準備に備え、「赤城」「加賀」の搭載機は雷装で、
そして「蒼龍」「飛龍」のはミッドウェイの再攻撃に備え爆装する、
ということを源田実中佐から南雲長官に報告させています。

南雲機動部隊が発進させたミッドウェイ空襲隊は、友永丈市大尉指揮、
合計108機の編隊でした。

源田はのちに、爆装は命中率がよく滑走路を使用不能にするために
800キロ爆弾を装備したと言っています。

米軍偵察機PBYの「ストロベリー5」は、南雲艦隊を発見した、
と打電しました。

さらに別のPBYは、ミッドウェイに向かう
多数の日本機を発見しました。

「フレッチャーよりスプルアンスへ、
敵空母二隻戦艦1隻発見」」

「ニミッツの推測と全く同じ方向だ!」

「”Ahoy, Captain Browning, Let's get to battle stations."
と打電しろ」

こちらミッドウェイ。
連絡を受けて基地隊長はパークス少佐率いる戦闘機隊を出撃させました。

 

ここでDVDの翻訳は、

"I see'em, Kark. Alright, everybody"
(彼らが見えたぞ、カーク、いいか、みんな)

を、

「カークだと思います・・・まあいい」

とわけのわからない誤訳をしています。
「カーク」が日本機のコードネームだと勘違いしたんですかね。
カークは通信している相手だっての。

「ワンパス(一航過)で何機落とせるかな」

と嘯き奇襲をかけた結果、先頭集団に損害を与えることはできましたが、
零戦隊が逆襲に転じ、あっという間に隊長機が撃ち落とされてしまいました。

ミッドウェイ守備隊の編隊をほとんど壊滅させ邪魔者の居なくなった
日本側航空隊は、ミッドウェイ攻略に取り掛かりました。

攻撃隊長は友永丈一大尉。
本物とはあまり似ていませんが、まあそれはよろしい。

友永丈市 - Wikipedia本物

ミッドウェイへの日本軍の攻撃が始まりました。
ちなみにこのとき、映像撮影のために派遣されていた映画監督の
ジョン・フォードは重油タンクや戦闘指揮所などが爆撃されるのを
目の当たりにしていました。

このとき友永大尉の97式艦攻は左翼主タンクを対空砲に射抜かれています。

この映画の細やかなところは、ミッドウェイの滑走路を爆撃し
使えなくすることを目標としていたのに、それにも関わらず
生き残った米軍機が滑走路に降りるのをみて友永大尉が
嘆息する様子までが描かれていると言うことで、事実大尉は

「カワ・カワ・カワ(ミッドウェイに対し第二次攻撃の要あり」

と打電し、攻撃が不十分であると伝えています。

これを受けた草鹿龍之介(パット・モリタ)は、南雲長官に対し、

「いまだに脅威であるミッドウェイを叩くために直ちに
第二次攻撃隊として全機出撃させるべきではないか」

と具申するのですが・・・、

魚雷を装備しているので攻撃しても効果がない、という南雲中将。
中将は米軍の空母に向かわせるべき、といいます。

源田は、友永隊が戻れば、敵艦隊の出現に備えて
雷装して出撃させる、と断言しました。

すると南雲は現在待機している第二次攻撃隊から

「魚雷を降ろして陸用爆弾に換装させる」

ことを決断しました。
友永隊に敵艦隊を任せて、もう一度ミッドウェイを
爆撃することにしたのです。

というわけで換装作業中。

ミッドウェイ基地隊の活躍によって、フレッチャー少将は
南雲機動部隊の位置を特定し、攻撃のタイミングをうかがっていました。

そしてこの人、スプルーアンス少将も、「エンタープライズ」そして
「ホーネット」から総勢117機からなる攻撃隊を発進させる決心をしました。

しかし、日本側の偵察機(利根4号機)が1機帰還の途についていません。
その4番機は、敵艦隊10隻を視認したと報告してきました。

それを聞いた南雲は、

「山口(多聞)少将が直ちに攻撃隊を発進させよと言っておる」

として途中で換装を中止させます。

「しかし・・・・」

「いいからやめさせるんだ」

この後、南雲は戻ってきた友永隊全機を雷装しているしていないにかかわらず
直ちに発進させよといって源田中佐をドン引きさせるのでした。

「発艦中に友永隊は海に落ちてしまいますよ!」

「うーむ・・・それでは収容させて雷装を」

搭乗員の総員配置が始まりました。
エレベーターに乗ってハンガーデッキから甲板に上げられる艦載機。

総員配置が告げられました。
搭乗員控室から雄叫びをあげながら駆け出し、愛機に飛び乗る搭乗員たち。

マット・ガース大佐は、搭乗員たちが乗機するのを見送っています。
この中に息子のトム・ガース大尉がいるのです。

フェリックスが爆弾を抱えている部隊マークは、
「エンタープライズ」の乗組のVF-6航空隊のものですが、
ガース親子が乗り込んでいるのはたしか「ヨークタウン」だったような記憶が。

まあこの際細けえことはいいっこなしだ!

スプルーアンスとともに発進を見送るガース大佐。
ますますこの人の立場がわかりません。
空母乗組の航空のトップということなら艦橋下階の航空指揮所にいるべきなのでは・・・。

映画「1941」のドイツ将校みたいに見学者として乗っているのかしら。

マット・ガース大尉は微笑みさえ浮かべて空母を発進していきます。

こちらは実写映像。
映画に採用された映像はすべてカラーで撮影されたものです。
(そのせいでいろんな不整合が起こっているのですが今はさておき)

こちら「大和」艦上の聯合艦隊。
南雲中将からの打電が山本長官に伝えられます。

「敵艦隊発見、ミッドウェイの250哩、これに向かう」

「ミッドウェイの近くだと?真珠湾じゃなくて、か?」

「南雲中将は計画よりも二、三日早く撃破するつもりなのでしょう」

と細萱戊子郎(ほそがやぼしろう)中将、あだ名はボッシー(嘘)

英語でありながら日本軍の将官たちの会話は非常にスクエアですが、
こちらはさすがにアメリカ人だけあって、ガース大佐が
スプルーアンス中将に何も言わずコーヒーを手渡しすると、

「おー、サンクス、マット」

と受け取ったりして和気藹々かつラフな感じです。

繰り返しますが、この映画の問題点は、細部が結構いいかげんなことで、
ミッドウェイ海戦には参加していない機が突如現れたり、
さっきの画面と違う飛行機が現れて、多少なりとも知っている人にとっては
話を理解することすら難しい状態になることです。

たとえば、これはSBDドーントレスだと思うのですが、(ですよね)
この直前に出撃していたのはTBDデバステーターという設定だったはずです。

 

それはともかく、このデバステーター雷撃隊は
戦闘機の護衛なしで「赤城」を攻撃しようとしています。

山口少将はこれに対し、淡々と、

「無茶だが大変効果的だ。
彼らにかまっている間我々は攻撃することができない」

状況的に左にいるのは加来止男艦長ではと思われます。

しかしこの俳優(ジョン・フジオカ)ってば、山口多聞の要素ゼロ。

掩護なしの攻撃なので、後席の銃手はもう必死ですが・・・。

実際のホーネット雷撃隊は、15機全部が零戦隊によって
あえなく全滅させられる運命にありました。

もちろんこれは戦闘機の支援がなかったことが原因で、
彼らの技量の問題ではなかったことは明らかです。

まあ、強いていえばTBDが旧式になっていたことと、
この頃の日本側戦闘機隊がまだベテラン揃いだったせいもあります。

 

この攻撃でTBD一機は「赤城」艦橋に接近したのち墜落し、
この瞬間草鹿参謀長は「死を覚悟した」とのちに語っています。

空母に乗っている司令官以下皆さんも、

” I'm hit! I'm hit! Oh, Jesus!"(やられた!やられた!神様)

交戦中の悲鳴のような雷撃隊の通信をただ聞いているだけ。

そしてウォルドロン少佐が戦死。

「赤城」に渾身の雷撃を放ったゲイ少尉機も撃墜されて海に墜落・・。

しかしここでも大変残念なことに、この実写映像は雷撃機ではありません。
この頃にはまだ飛んでいなかったヘルキャットです。

このヘルキャット搭乗員は、浮かんでいる機体から脱出していますが
実際ゲイ少尉も、撃墜された後機体から海に脱出して生き残りました。

ホーネット雷撃隊のたった一人の生存者、ゲイ少尉は、
撃墜される直前に雷撃を行いましたが、「赤城」に当たっていません。
しかしながら、戦闘後、全滅した雷撃隊に与えられた名誉勲章推薦状には、

「ホーネット雷撃隊は日本空母に魚雷を命中させ、
日本の空母に最初に大打撃を与えた」

とあり、ホーネット隊は他の部隊から恨みを買うことになったそうです。

Improbable: Ensign George Gay at Midway

ちなみに全滅した雷撃隊と、たった一人生き残ったゲイ少尉(赤丸)。
前列ど真ん中で写った一人だけが生きながらえたとは・・・。

「損傷報告、戦闘機一機軽傷、艦艇損傷なし、死傷者なし」

源田少佐の報告に対し、この映画の南雲中将は、

「A whole squadron. 15 brave crews.」
(飛行中隊全員だ・・・勇敢な搭乗員が15名・・)

と呟きながらうっすらと涙をうかべるのでした。

もちろんこの後の展開を知っている我々には、この段階で
敵に同情している場合かというツッコミどころはあるものの、
善意に解釈すれば、武士の情け、もののあはれの気持ちを持つ日本人、
を表現してくれているのかもしれません。

わたしも最初このシーンで思わずグッときてしまったのですが、
大変残念なことに、雷撃機は二人乗りなので、
「15名」ではなく×2で30名と言わなくてはいけないところです。

それまでの戦闘で散々二人乗りの雷撃機が出てきた後だというのに、
折角のいい台詞がこれって、ちょっと脚本雑すぎね?と思いました。

こちらレスリー少佐率いる「ヨークタウン」のSBD爆撃機隊。
爆撃準備を呼びかけ、ボムベイのスターターをオープンにしただけで、
なぜか爆雷が投下されてしまいました。

あわててマニュアルで作動させるように呼びかけますが、

「もう遅い!落としてしまいました」「俺もだ」

「こんな電気式スイッチを発明したのはどいつだ?」

「ヤマモト以外にいるか!」

ちょっとちょっと、そこで八つ当たりはしないで欲しい。

さて、こちらは第3雷撃隊です。
日本の空母4隻を発見しました。

「大当たり(ジャックポット)だ!」

指揮官ランス・マッセイ少佐。

「右舷から12機、左舷から14機が来ます!」

雷撃隊の上空では、ジョン・サッチ少佐率いる戦闘機隊が
対ゼロ戦術「サッチ・ウィーブ」を試そうとしていました。

6機の戦闘機隊で零戦を5機撃墜、被撃墜1機だったので、
この戦法はアメリカ人搭乗員に自信を持たせましたが、
この戦闘においては、援護するはずの雷撃隊を守れませんでした。

TBDデバステーター10機が撃墜され、帰還中の2機も燃料切れで
結局全機損失という結果で、隊長を含む24名中21名が戦死しています。

そして、この映画の主人公であるトム・ガース大尉は、
サッチ少佐の戦闘機隊に参加していたという設定です。

そして果敢に戦うも敵の銃撃を受け、コクピットに火災が発生。
叫ぶトムの顔はすでに真っ黒です。

手袋をしたままでこの時代にはなかった形の消化器を取り上げ、
叫びながら火を消した途端、手袋が両手から失くなって、
ひどく火傷をした両手が現れるという不思議な場面です。

 

ニミッツ提督はこの時点で

「ミッドウェイ基地隊は日本軍艦艇10隻に損傷を与え、
1-2隻を沈めたかもれないが阻止に失敗し、基地隊主戦力は失われた」

とキング大将に報告しています。
この時点で日米海軍の戦いは、日本側が勝利をおさめましたが、
これは長い戦いのほんの序盤にすぎなかったのです。

第3雷撃隊は魚雷攻撃も行いましたが、全て不発に終わりました。
南雲機動部隊には一難去ったというところですが、ここで南雲中将、

「アメリカ人たちもまるで侍のように我が身を犠牲にするものだ」

などと悠長なことを呟くのでした。

・・・(´・ω・`)

 

続く。


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