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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「Uボート」〜”La Paloma"(押し寄せる波のように)

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  映画「Uボート」四日目になってしまいました。
艦長、トムゼン大尉、次席士官ときて今日のタイトル画は機関長です。
登場人物を全員描ききるまで終わらないんではないかという不安が(笑)

さて、散々駆逐艦に翻弄されてそれでも持ち堪えてきたUボートですが、
攻撃の治ったとき、機関室の奥から幽鬼のように彷徨い出てきた影あり。

文字通り「幽霊」という渾名の機関兵曹長ヨハンでした。
機関と暮らし、機関を愛して機関室から外に出てこず現場の主と化し、
スペシャリストとして信頼されていたはずなのに。

 

流石に動揺して「戻れ!」と叱りつける艦長。

ヨハンは9回目の出撃ですが、今回はリミットを超えてキレてしまったようです。

「持ち場に戻れ!」

と艦長が叱りつけてもヨハン、震えながらハッチを上ろうと手をかけます。

しかしヨハンの錯乱よりも乗員がぎょっとしたのは、艦長が
士官室に走って行き、ピストルを手にして戻ってきたことだったかもしれません。

思わず目を伏せる機関長たち。
万が一にでも艦長がヨハンを撃つようなことがあったら、
そのときはどうなっていたのでしょうか。

歴戦の指揮官とて無謬ではないわけですが、このときの艦長は
銃を取りに行くより、説得を続けるべきだったとわたしは思います。

手前にピストル

ショックを受けて静まり返る乗員の視線の中、艦長が呟きます。

「信頼してたのに・・腰抜けめ・・恥を知れ」

そして、聴音員のヒンリッヒが悲痛な顔で
次の攻撃が迫ったことを告げようとすると、静かな声で、

「聴音はいい。聴こえてるよ」

周りの士官たちはその声から艦長の諦めを悟り目を伏せるのでした。

ベテランの潜水艦乗りだからこそ、艦長は今の状況の先に
絶望的な最後しかないことを知っていたということもありますが、
考えようによっては乗員の錯乱に対し思わず銃を持ち出したことで、
潜水艦指揮官として皆を率いる闘志をこの瞬間失ったともいえます。

駆逐艦の不気味なスクリュー音に続き、爆雷が降ってきました。
今までのどの攻撃より激しくUボートを翻弄し、誰もが立っていられないくらいに・・。
このとき激しい振動の中、ヒンリッヒがウルマンと抱き合っているのが見えます。

ヴェルナー少尉は床を這いながら進み、散乱している物の山から写真を
一枚手にしてバンクにもぐりこみました。

機関長が見ていた雪山の写真です。
どうせなら祖国の写真を見ながら永遠の眠りにつきたい・・。

と思ったら・・・・あれ?(BGMペールギュント組曲より『朝』)
俺生きてんじゃん。

周りを見るとちゃんと片付いていて(さすがドイツ人?)
士官たちは食事をした後寝てしまったようです。

あの爆撃の衝撃でも割れなかったらしいワインの瓶は空。
次席士官のかたわらにはなぜか犬のおもちゃが(笑)

茫然と寝床を這い出て音のする方を見てみると・・。

何事もなかったかのように仕事をしている操舵長その他。
ここも昨日は物が散乱していたはずなのに床には何も落ちてません。

艦長の声が操舵長に記録を命じています。

「潜航6時間後に敵駆逐艦は追撃を断念した」

それを聞いて、ヴェルナー少尉は生きて朝を迎えられたわけがわかりました。

「右210度に火災を確認」

「当艦が攻撃を加えたタンカーと推測」

「もう一隻の船」は駆逐艦ではなかったのです。

浮上のため赤色灯を命じた艦長は少尉が起きているのを見て

「よかったな・・・生き延びて」

潜水艦を浮上させ、乗員が目の当たりにしたのは先ほど魚雷を撃ち込んだ船です。
激しく火災を起こしながらいまだに沈んでいません。

ここで艦長はすぐさま止めを刺すための魚雷発射を命じます。

しかしそのうち沈むことがはっきりしている民間船に
とどめを刺すという艦長の判断はあまり実際的だといえません。

そもそも敵国船と一緒にこんな明るいところに浮上していたら
すぐに敵の対潜護衛艦に見つかってしまいます。
本物のごかくにボート艦長なら余計な危険に自艦をさらす愚は決して犯さなかったはずです。

 

「距離650m、深度4、魚雷速度30 照準後部マストの前」

その時です。

「人がいる!」

なんと、甲板から人が次々飛び降りています。

「救助しなかったのか!」

というか、最初に攻撃されてからずいぶん時間が経ってるわけですが、
どうしてこんなに燃えているのに誰も脱出しなかったのか。

「時間は十分あったのに!」

ねえ?

いくら民間船でも救命ボートくらい積んでいるでしょうに。

炎の海に浮かんだイギリス人たちは口々にヘルプミー!と叫びながら
Uボートに向かって手を振って近づいて来ようとして力尽きていきます。

思わず泣き伏してしまうウルマン候補生。

「半速後進」

というような光景を目の当たりにして会話が弾むわけもなく。

なのにこんなときに別の船団発見の知らせが入ると、
すでに戦闘モードを取り返した艦長は行く気満々。

「いやそれは・・・」

2隻撃沈し、死地を潜り抜けたのにすぐさま飛び込んでいこうとする艦長。
機関長と操舵長がどちらも及び腰なのに怒りを爆発させます。

「帰港はいつですか」

すると艦長は長い時間操舵長の顔を睨みつけ、

「俺がそう命令した時だ。ヘア・オーバーシュテウアマン」

ちなみに第三帝国の操舵長は下士官職だったので、これに
「Herr」をつけるのはあきらかに「嫌味」というやつです。

ここで乗員のささやかな期待を踏みにじってみせるのは
艦長が戦時の指揮官としてあえて冷酷に振る舞っていると考えられます。

艦長が行動報告書を書いていると、ヨハンがやってきました。
ちゃんと上着を着て帽子までつけているのが健気です。

「自分は軍法会議に?」

トムゼン大尉のモデル(かどうかわかりませんが)という軍人も
攻撃をせずそれが敵前逃亡とみなされて軍法会議で死刑判決を受けています。

「自分は・・キレちまったんです・・神経が」

「もういい」

「軍法会議は・・?」

つまりヨハンにとって1番の心配事は軍法会議であると。

「寝ろ」

ほっとして引き上げるヨハン。

聴音員ヒンリッヒのデスクには球根(ヒヤシンス?)の水栽培が飾ってあります。
よくあの振動でこわれなかったな。

彼は「極秘電報」を受け取りました。

電報はすぐさま次席士官に渡され、エニグマで解読されます。

「艦長宛です」

それを聞いた途端、艦長はデスクにあった蜜蝋で封印された封書を取り出します。
つまり、前もって指示のあった時に初めて開封する封書が渡されていたのです。

 

このときバックに流れている音楽はドイツのポピュラーソング「ラ・パロマ」。

航海に出て行った男に送る最後のメッセージを白い鳩(パロマ)に託す
残された女性の歌で、その歌詞の一節にこのような言葉があります。

押し寄せる海のように人生はやって来ては去ってしまうもの
けれども誰がそれを知り得ただろう

 

こちら、この後は帰港するものと信じて、帰ってからのプランを語り合い
あれこれと盛り上がるボーイズですが、艦長から悲しいお知らせが。

「イタリアのラ・スペチアに回航する。その前にスペインのビゴで補給」

あからさまに意気消沈するベテラン下士官に

「マカロニ娘も悪くないよ」

「そういう話と違うわー!」

フレンセンはいきなり「聖書屋」の頭を殴りつけ、

「ジブラルタル海峡だぞ!」

狭くておまけに敵がうじゃうじゃいる、というわけです。

静かな凪の夕暮れを航走するUボート。
舳先で語らっているのは艦長と機関長のようです。

操舵長は六分儀を使って天測していますが、知っている人によると
このときの俳優の六分儀の使い方は「たいへん正確である」そうです。

操舵長が天測ついでにジブラルタル海峡を通過することについて

「死にに行くのか」

などというもので、すっかりビビるヴェルナー少尉ですが、
そこに艦長がやってきて、ビゴで機関長と一緒に艦を降りろといいます。

ヴェルナー少尉はゲストなのでそれはわかりますが、重責の機関長をなぜ?

「機関長は限界だ。降ろしたい」

見たところ限界なのはヨハンだと思うんですが。
艦長には長い付き合いである機関長の限界が見えていたということでしょうか。

下艦することが決まったので、ヴェルナー少尉はふと思いついて
ウルマン候補生が彼女に書いていた手紙を預かってやることにしました。

その後ビゴに到着し、夜間静かに浮上した我らがUボート。
ドイツの商船に偽装した補給船と合流する手筈が整えられていました。

艦体を接舷させるシーンは模型の製作手間の関係で音声のみの表現です。

士官のみ要求されて補給船に乗船していくと、そこは先ほどまでとは別の、
真っ白な世界。

彼らの姿を見るなり全員で整列して右手を挙げ、

船長「ジーク!」乗員「ハイル!」
船長「ジーク!」乗員「ハイル!」
船長「ジーク!」乗員「ハイル!」

(ドンビキー)

ところがここで元ヒトラーユーゲントの血がつい騒いだのか、
先任士官がマジモードで前にずいっと出てきたのものだから、

すっかり艦長だと思いこんだ補給船の船長、
ためらいなく握手を求めるので、次席士官は噴き出し、
艦長は憮然として腕組みを・・

「いや、艦長はこちらです」

「これは飛んだ失礼を・・・。
ヴェーザー号へようこそ!ヘア・カピテンロイテナント」

このおっさんがまた、艦長の神経を逆撫でするかのようにはしゃぐんだ。

「武勇伝を話してください。楽しみにしてたんです」

「何隻沈めたんですか?当ててみましょうか」

乾杯の時には、ついつい「我らが総統」とか言いかけると、
なぜか空気読んだ主席士官が咳払いし、それをやめさせると言った具合。

「艦長どの、話を聞かせてくださいよー」(くどい)

艦長は「初めてだ」といいながらイチジクを食べ、ただ一言、

「もてなしに感謝する」

すると船長、

「驚いた・・・諸君、これが英雄の言葉だ!」

「でもお話を聞かせていただきたい」

好き嫌いも聞かず食べ物を皿によそって艦長に渡し、

「どんな感じです?潜航中に上に敵がいるって」

そレでも答えない艦長に代わって機関長と次席士官が返事を混ぜっ返し、
先任士官がそれをうまく取り繕ってはぐらかします。

なかなかいいチームプレイです。

そのとき海軍部から代表がやってきました。
船長もこの海軍部(軍令部のことかな)の代表も、
普通に「ハイルヒトラー!」と挨拶を交わしています。

彼がもたらしたのは海峡を突破するための資料ですが、
ついでにビゴで人員を降ろす件については拒否してきました。

「悪いが二人とも残ることになった」

しかし、彼の後任の機関長に気心の知れない相手がくることを考えると、
ジブラルタルの難局を乗り越えるのにその方が心強いのも確かです。

そしてビゴを出航したUボート。

ジブラルタル海峡は狭く、しかもイギリス軍の港があります。
実際にもここではUボートが少なくとも二隻撃沈されて沈んでいるそうです。

水上艇だけでなく哨戒機も飛んでいる、と艦長は説明します。

「そこを突破する」

ギリギリまで闇に紛れて海上を航走し、それから沈んで
潮流に乗って静かに流れていこうというのです。

「これだと燃料が要らん。どうだ」

艦長はまたしても操舵長に意見を求めました。

「名案です」

先ほどいつ帰港するのかと聞いて叱責され、
意気消沈していた操舵長ですが、不敵にも微笑んでいます。

そしてジブラルタル海峡突入の時がやってきました。

海峡の様子をうかがいながら時は過ぎていきます。

ビゴで補給した食料のバナナをかじっている次席士官。
「ピルグリム」はこんなときなのに「臭いポマード」で髪を撫で付けています。

そのときです。

「アラ〜〜〜〜〜〜ム!」

艦長に指名されて艦橋に出て監視をしていた操舵長が
艦内に向かって叫びました。

「注水!」

なんと敵はマークしていた駆逐艦ではなく哨戒機でした。

哨戒機の銃弾に艦橋にいた操舵長負傷!

ほぼ初めて登場する烹炊担当。

ここで先任士官が「メディックはどこだ!」と叫びます。

負傷兵の手当て担当は通信員のヒンリッヒです。

Uボートは艦橋に艦長を乗せたまま全力で航走を続け、
再び艦長の「アラ〜〜〜ム!」を合図に潜航を開始。

「90mまで潜航」

しかしこんな時に舵輪が動かせず、操舵ができない状態に。

結果として自動的にどんどん沈んでいく潜水艦。
潜航開始の時に例によって前部に向かって駆けて行った「人間バラスト」は
機関長の指示によって今度は全員後ろに移動です。

右往左往する乗員の側では、痛みで暴れる操舵長を二人がかりで押さえ込む
ヒンリッヒと先任士官が・・・・。

「止まらない・・・沈み続けている」

「排水管破損!」

「止まれ!」

震度計の針はレッドゾーンへと・・・

痙攣するように震えながら深度計を見つめますが、
圧壊の恐れのある200米をすでに突破。

喘ぐように呼吸をする次席士官。
深度計の針は全く止まる気配を見せません。


計測できる最大震度の260mを超えてもまだ進み続ける針に
艦内を沈黙と絶望が支配していくのでした。

「マインガッド」(My God)

艦長が呟くと同時にどこかでビスが飛ぶ音が聞こえます。

発令所付きのメルケルが神への祈りの言葉を唱え始めたとき、
艦全体に異音が響き渡りました。

次の瞬間、衝撃がUボートを襲います。
圧壊か、それとも・・・?



続く。


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