9月になりましたが日差しは相変わらず強く、湿気が大気中にたまってくると
猛烈な勢いで雷を伴う雨が降ってまた爽やかさが戻ってくる、これを繰り返して
少しずつ涼しくなっていくのがピッツバーグの晩夏です。
日課のウォーキングですが、今回車で10分くらい行ったところに
トレイル(散歩道)コースがふんだんにある公園、フリックパークを見つけました。
ピッツバーグ最大の広さを誇る市立公園で、2.61 キロ平方メートルという
この公園は、元々一部にアンドリュー・カーネギーのビジネスパートナーだった
ヘンリー・フリックの所有地があったことから始まっています。
フリックはこの土地の購入についてしぶっていたのですが、娘のヘレンが
デビュタントでの「お願い」として公園の維持費用を供出することをねだり、
その結果公園が1927年にオープンしたということです。
父親とその令嬢。
絵に描いたような(って絵なんですが)アメリカの当時の上級です。
フリックはヨーロッパから帰国するためにタイタニック号を予約していましたが、
妻がイタリアで捻挫したため、乗船をキャンセルして難を逃れています。
娘のヘレンは慈善事業家で美術コレクターとして名前を残しました。
アメリカの「公園」とは、日本のと違って(日本のようなのはプレイヤードという)
人が歩く小道を自然の中に作っただけの広大な森林を指すことが多いのですが、
ここは特に最低限の整地をして歩きやすくしているだけで、柵などは基本ありません。
トレイルには全て名前がついていて、ところどころ立て札があります。
Tranquil trail というのはその名前の通り穏やかでアップダウンのない真っ直ぐな道。
何も知らなくてもお年寄りや家族連れ向きだとわかりますし、この
「ローラーコースタートレイル」は、マジでトレーニングしたり、
マウンテンバイクの威力を試したい人向け、というのが伝わってきます。
シェンリーパークの鹿は夕方出てきますが、ここは森が深いせいか
昼間でもよく彼らが歩いているのを見かけます。
この立派なツノを持った鹿とばったり出会いました。
よく見たら木の影から出てこられない小鹿がいます。
彼らは道を渡ろうとしたときわたしがやってきたので
慌てて隠れているつもりなのです。
それにしても父親と子供が連れ立っているのは初めて見ました。
それで思い出したんですけど、アメリカって普通に離婚が多いんですよね。
MKの前のルームメイトも母親は後妻で、弟だけが実母のところと実家を行き来しているとか。
子供を引き取るのも必ずしも母親とは限らないのです。
わたし自身もMKの幼稚園で子供をワッチする仕事をしたとき、
その頃ですら(つまり子供がまだ小さいのに)クラスに必ず一人か二人、
親が離婚してどちらもの家を行ったり来たりしている子がいました。
母子家庭の母親が意気投合して二家族で一緒に暮らしているという例もあって、
さすがアメリカ、と驚愕したものです。
2度目に訪れたとき、いきなり墓地に迷い込んでしまいました。
傾斜を利用した「霊廟」というレベルのお墓もありました。
星のマークがついているのはユダヤ教の人々の墓です。
すぐに引き返しましたが、境目になんの案内もないので知らない人は
入って行ってしまうと思います。
ある日火事騒ぎ?を目撃しました。
大型ショッピングセンター、「ターゲット」に行こうとしたら、
店の前に消防車が止まっていてお店の前が通れなくなっていたのです。
消防車は梯子を稼働させていますね。
店の反対側にいる赤シャツの軍団は、全員退避中の店員。
幸い大事にはならなかったようで次に通ったら普通に営業していました。
また別の日には、交通事故の生々しい跡を目撃しました。
この写真は現地のテレビ報道のものですが、バイクが車線変更したとき
後ろからきていた車の左側ドア部分に激突、そのままライダーは
側壁に叩きつけられて即死したという事故でした。
壁にもたれて携帯を触っているのが運転手で、わたしが渋滞を抜けて
現場を通りかかった時にはライダーの身体は地面にまだ横たわっていました。
お亡くなりになった方をもろに見てしまったこともあって、
その日のニュースでその人の名前や年齢を調べてしまったものです。
また結構雨が降った週末、教会の前を通りかかったら
ちょうどこれからライスシャワーがあるらしく皆外に出てきていましたが、
さすがアメリカ人、傘をさしている人は二人だけ。
アメリカにも傘を売っていないわけではないのですが、
アメリカ人というのは本当に傘をさしません。
Covid19以前のマスクのように、「それをしたら負け」と思っている節があります。
Covid19といえば、ピッツバーグ最大の医療機関であるピッツバーグ大学医学部病院では
このようなロゴを渡り廊下に示しています。
アレゲニー郡だけで9月10日現在、感染者は10,915人、
死亡者数358人ということですから、感染者規模は大阪府と同じ、
死亡者規模としては東京都と同じくらいです。
街は表面上穏やかそうでも医療関係者は「戦場」になっていることが予想されます。
つい先日もピッツバーグ大学の学生にプチ集団感染があり、MKの大学からも
一人だけとはいえ感染者を出したということを聞きました。
この状態では野球や観劇などのエンターテイメントが再開できないのも当然かもしれません。
こういう危機に陥ったとき、アメリカは第一線に立つ人々をわかりやすく称えます。
日本では武田邦彦氏が、医療関係者はそれをするのが仕事なんだから当たり前、
とおっしゃっていましたが、もしアメリカでこういう発信をしたら、
非難だけですめばいいねというレベルのバッシングをされるかもしれません。
「日本人の同調圧力ガー」
という枕詞をマスク着用や自粛関係に対する非難する言説に見かけますが、
少なくともBLMやトランプ支持者に対する態度を見る限り、
アメリカ社会の同調圧力の方が極端だと感じます。
MKの学校では授業開始前に全員の検査を行いました。
室内ではなく外で(建物の外廊下で)机を並べ、
学生は各自赴いて自分で綿棒を扱って検査を行っています。
COVID19では先日ニューヨーク市の飲食店が集団で市を訴えた、
というニュースがありました。
インダイニングでの営業を禁止し、開業しているところを摘発するなど
厳しい対策を取ったことに対する損害賠償を求める訴えと聞いていますが、
ここピッツバーグではどういう基準になっているのか、
休業している店、デリバリーだけで営業している店、そして
平常と全く変わりなくインダイニングを開けている店と三様です。
感染防止のための対策を厳しく講じた上で許可をとっているのか
その辺は詳しく知りませんが、今いるホテルの近くに
平常通り営業しているバーガーの有名店があると聞いて、行ってみることにしました。
まずチェックインすると、同時に何人目か、待ち時間はどのくらいか
ひとめでわかるアプリを登録させられます。
呼ばれるまでできればどこか他所に行って待ってくださいというかんじ。
この日は晴天の週末、しかも昼時とあて待ち時間は30分あったので、
わたしたち散歩コースでもあるオハイオ川の河原ぞいにちょっと歩いてみました。
下から見ただけでわかってしまったフレッド・ロジャースを確認。
後ろのブリッジの下に立つと、仕込まれたスピーカーから
ミスター・ロジャース・ネイバーフッドのテーマソング、
Watch Mister Rogers Age While He Sings “Won't You Be My Neighbor” (1967 Through 2000)
が聞こえてくる仕組みです。
「Ever Watchful」というのは一つの単語化している言葉で、
あえて日本語にするなら「常時監視」という感じでしょうか。
社会を統治する規則や規範に違反する人々を発見、抑止、更生、または
罰することによって法律を執行するために組織的に行動する一部の政府構成員の活動をさす、
「Low Enforcement」
という殉職警察官の碑にはこんな像がありました。
先日、ピッツバーグでは薬物接種の上路上で全裸になって座り込んでいた
アフリカ系の男性を確保するために後ろから顔に袋を被せた若い警官が
COVID19に感染し、死亡したということが発表されました。
しかし、メディアは相変わらず武器をとるために車に戻ったところを
警官に8発撃たれて死んだアフリカ系の父親の涙の訴えを大きく報じました。
「ラストコール」というのは、警官が殉職したとき、そのセレモニーで流す
殉職警官が生前最後に本署と取った通信のことを言います。
Dave Bray- Last Call (Tribute to Fallen Officers)
このビデオの最後には、配属2時間後に銃撃事件で殉職した
女性警官がその直前に行った「ラストコール」が収録されています。
実はここには「第二次世界大戦記念碑」なるものもあるのですが、
これについてはまたいつか日をあらためてご紹介するかもしれません。
ちなみにピッツバーグは「鉄鋼の街」として、戦争には大いに協力した、
というようなことを主張しているのだと思います(たぶん)
さて、というところで時間が来たのでテーブルに案内されました。
「マスクは食べ物が運ばれるまで外さないようにしてください」
このバーガートリーはちょっと(というかだいぶ)高めだけれど、
ちゃんとした牛肉を使った豪勢なバーガーを楽しみたいアメリカ人に人気の店です。
MKが、ここはシェイクも名物なんだというので、二人で一つ
死んだ気になって注文してみました。
MKにいわせると、ハンバーガーとシェイクという組み合わせは
「アメリカのカルチャーなんだ」
ということで、せっかくハンバーガーというアメリカ文化の真髄のような食べ物を
いただくからには、毒くわば皿まで(ちょっと例えが悪いかな)の精神で
そのカルチャーに敬意を表すべきだと考えたわけです。
ハンバーガーに先駆けてやってきたそれには、タピオカ用のような
ぶっといストローが二本付いていました。
「どれどれ・・・・んっ・・・ズズー(吸い込んでる音」
あの、耳下腺が痛くなるほど吸わないと飲めないんですけど。
っていうかこれ要するに溶けかけたアイスクリームだよね?
「いやー、ウェルカムトゥアメリカって感じですな。
ところでウェイトレスが一緒に持ってきたこのアルミのカップは何?」
「作った時余ったシェイクだよ」
というか、これで作って(クッキーとかピーナツバターと混ぜるわけだな)
グラスに入れるとどうしても残るのでそれも持ってきていると。
「どうも見た目がよくないね・・・ってか余らんように作らんかいって思うんですけど」
「これもカルチャーなんだよ」
お店の壁には本店におけるフローチャートがあって、これが結構面白かったので紹介します。
あなたはバーガトリーにいますか?
→はい
→いいえ→いや、あなたここにいますよね(これ読んでるんだから)
あなたがここにいるわけは?
A あなたがたはバーガーに飢えている
「あなたがた」が『Yinnz』というピッツバーグ弁になっている
B フットボールの代わりにシェイクを「スパイク」したい
spikeというのはフットボール用語 でタッチダウン後ボールを地面にたたきつけること。
つまり「キメたい」というようなニュアンスだと思われ。
ご存知のようにここはスティーラーズの本拠地ハインツフィールドのすぐ横です。
C カジノがカードを数えるために追い出されたから
ここから歩いてすぐのところに実はカジノもあります。
もちろん今はやっておりません。
D ファウルボールが飛んでくるのを待っていたらお腹が空いたから
何度もお伝えしているようにここにはパイレーツの本拠地である(略)
E あなたはブラウンズのファンで、心の穴を埋める必要があった
クリーブランドブラウンズはオハイオのフットボールチームで、
おそらく両者は地域的にライバル関係にあるのだと思われます。
負けたと決めてかかってますね(笑)
その下のバーガー、ビール、シェイクについては
バーガーとビール=Righteous(正義)
バーガーとシェイク=Lust(欲望)
ビールとシェイク=Divine(神々しい)
バーガーとビールとシェイク=バーガトリー
決定的な感じですか?→ワインが水に変わりましたか?→
矢印の下がトイレです(笑)
あなたは
ツリーハガー→あなたにはべジーバーガーがいいでしょう
→気が変わった→ミートハガーへ
肉を使わないベジバーガーが美味しいのでも有名だそうです。
ミートハガー→チキンを所望、あるいは地上の牛の喜び、あるいは蟹を愛好
→シェイクについて話しましょう!→キメろ!あるいは古典的にいきましょう
→食事を楽しんで
→お支払いすみました?→いいえ→汝盗むなかれ(聖書の言葉)
→はい→またどうぞお越しください
待っている間、隣の(と言っても離れてますが)テーブルの
若い男性と年配の女性と5人の子供に気がつきました。
男女は夫婦ではなく、子供は全員親が違う感じです。
兵士と水兵の記念館の展示から南北戦争について書いた時、
当時は一家の主人を戦争で亡くしたら、自動的に子供は孤児院行き、
未亡人は持ち家を公売にかけて自治体の「未亡人の家」で一生を送った、
ということを知り、かなり驚いたのですが、そのときにできた孤児院が
今でも市内にあって、何度か前を通ったことを思い出しました。
男女二人は孤児院の職員で、休みの日なので子供たちを連れて
河原にあそびに来てここで昼食を食べさせているのだろうと思いました。
というわけで、やっとのことでやってきた注文のバーガーは、
フローチャートにはありませんが、
→あなたは日本人ですか→はい→
ドライエイジドの和牛を使ったバーガーはいかがでしょう
という選択で、ミートユアメイカーという15ドルのバーガーにしました。
肉そのものはバーガーにするにはちょっと上品すぎるかなと思いましたが、
なんとトリュフを加えて(もちろん本物)香り付けをするという力技により
それはそれはリッチなお味に仕上がっており、堪能したことをご報告しておきます。
結論は、
→やっぱりバーガーはアメリカのカルチャーです!