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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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岩国海兵隊基地〜F/A-18レガシーホーネット

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岩国の海兵隊基地にご招待いただいたのは、
F/A−18ドライバーのブラッド(仮名)を夫にもつ、TOと同じ大学を卒業した妻、
アンジー(仮名)のお誘いによるものです。

見学者を案内して戦闘機を見せる、というのは、 自衛隊ではおそらく禁止でしょう。
しかし、それは自衛官から一般人に対する「個人的な利益供与」
を禁じるという観点からの規則になっていると思われます。

しかし全ての機体は国民の税金により賄われているわけですから、
日本国民である限り、わたしたちにはその実物を見る「権利」があるわけで、
自衛隊は大変な警備体制を敷き、全基地隊員を動員してでも、
定期的に航空祭などを開催し、広報活動として装備を公開します。

しかし、日本に展開しているアメリカ軍の軍人が、
日本人にこのような個人的便宜をはかることは果たして許されているのか?


今回の写真をアップするにあたって、まず考えたのがそれです。

インターネットを当たると、このホーネットの写真、山ほど出てきますし、
過去行われた岩国基地のフレンドシップデーなどのものもあり、
取りあえず機体の写真をアップすること自体はまずいことではなさそうです。

何事にも慎重なTOは
「ブラッドがもしこっそり見せてくれていたのだったら、立場が悪くなる」
と言うのですが、建前のないアメリカで、もし本当にダメなら、
最初から一般の日本人に基地を案内することからして禁止になるはずです。

そして今回、ブラッドは最初にわたしにこう言いました。

「撮ってはダメなところはそういうから、撮らないでね」

因みに彼が「ここはダメ」と言ったところは、

●整備のために機体から外されたエンジン。
周りをメカニックが囲んでいた

●ハンガーに入る経路

●シュミレータ棟の出入り口、その外観

●シュミレータ棟内部全部、勿論シュミレータは厳禁

●滑走路に駐機したオスプレイ(これはアンジーが言った)

以上。
「撮っていいよ」と言ったところは、つまり「機密ではない」と。
このように解釈しました。



そもそも、「絶対に秘密」という部分は、
このように立ち入り禁止になっているわけで。

これ、今更ながらに見れば見るほど怖いですね。
ここには一体何があるのか。
そして、もし入っていったら、どうなるのか。
スパイ疑惑で尋問はまず間違いないでしょう。



という殺伐とした?話題は置いておいて、
前回一項を割いてお送りした「部隊記念ボード」シリーズで、
ご紹介しそびれたハートウォーミングなこのボードをご覧下さい。

「俺たちイケてるぜ」感を出そうとするあまり、ついつい
中二っぽい方向へと突き進んでいる感のある最近の部隊章ですが、
そういう傾向に背を向けて、この部隊は・・・。

まるで黒板のような・・・って、これまさに黒板なんですね。
なんてシャレが効いてるのこのスコードロンは。

しかしずらりと並ぶ「生徒たち」の名前には・・・・
ん?

TACネームがない。

さらによくチェックすると、書かれた名前が、まず教頭先生が
「シャノン」。
女性ですね。

生徒たちは

ワンダ、クレア、ナンシー、キム、ローリ、ゲイル、ダイアン・・・。
お、「ヒデコ ナガイ」。

男性もいますが、ほとんどが女性です。
そこで真ん中の「部隊章」を見ると、

DODEA

Department Of Diffence つまり、国防総省がやっている
Education Activity、教育プログラム。すなわち
在外米軍の家族の教育のために基地にある学校。

シャレじゃなくて本当に学校の先生だったんですね。
失礼しました。



バーの片隅にあった不思議なゲームボード。
「これはなに?」と聞くと、実際にやってみせてくれました。
これはすなわち「ミニカーリングボード」。

向こうからカーリングを投げ、白い砂を敷いたボードの上を滑らせ、
横にあるブラシで滑走面を擦ってその行き先を調整します。
日本なら卓球テーブルを置くところですか。

そしてゲーム機と壁に挟まれて、やはり何枚もの部隊章が・・・。 



建物を出るときに通り抜けたボールルームには、
ハロウィーンパーティの準備らしき飾りつけが。



わたしたちはずっと全員がアンジーの車にのり、
ブラッドは自分の車で、二台連なってこのあと移動しました。

どちらも国産車で、アンジーの説明によると、こういう車は、
赴任が終わりどこかに移動が決まると、新任の誰か、知り合いなどに売っていくので、
いずれも何万円単位で手に入れたのだと言うことです。

そう言えば我々がアメリカにいたときも、その年に卒業して日本に帰る人から
安く譲り受けた車に乗っていました。
そのトヨタカムリには、どでかいへこみ傷があって、前の持ち主は、

「これはわたしたちがつけた傷ではない。前年度の誰それだ」

と言い訳していましたっけ。

このときも岩国は雨が降ったり止んだりで、わたしたちは傘をさしましたが、
ブラッドはご覧のように軍人ですから傘無しです。

「制服じゃないときくらいさせばいいのに、ささないの」

とアンジーは呆れていました。
でも、軍人に限らずアメリカ人は、
よっぽど土砂降りでないとささない人が多いんですよ。

雨傘でもそうなのですから、日本女性なら夏の必需品である日傘など、
きっとものすごく奇異な目で見られるでしょう。



決定的瞬間。

と言うほどのものでもありませんが、
ハンガーに続く回転ドアの向こうから出て来た女性下士官が、
士官である(大尉です)ブラッドに敬礼した瞬間。
アンジーの陰に隠れて見えませんが、ブラッドも敬礼しています。

このドアは、ご覧のようにIDカードを指したあと、
一回転しか動かないようになっています。
つまり、カードを持っている本人しか入れない仕組み。

こう言うときどうするかというと、ブラッドが一回カード挿入、
一人突入、またカード挿入、もう一人突入、という具合に
人数の分だけその作業を繰り返して全員を中に入れてくれました。



全員が中に入ったので、最後に自分のためにカードを入れるブラッド。

一旦入った人間がなんども繰り返しカードを使う、
ということに関しては、問題はないようです。

そして、このゲートをくぐり終わってから、まず最初にブラッドの

「しばらく写真禁止ね」

という注意がありました。
そして、ハンガーの中の確か4機のホーネットを見せてもらい、
説明を受け、むき出しのエンジンを撮らないようにもう一度言われてから、

「こっちから向こうのは撮ってもいいよ」

言われて撮ったのが冒頭の写真。
因みに、うちの(軍)モノを知らないTOは、わたしに

「スーパーホーネットなんだって」

と前もって言っていたのですが、これはスーパーホーネット、
つまりライノといわれるF/A-18E/Fはなく、F/A-18の、
いわゆる「レガシーホーネット」です。

余談ですが、この人は、一応米国の、ちっとは人に知られた大学を出ているくせに
ときおりとんでもない単語を間違えたり知らなかったりします。

ましてや軍事関係の、すなわちわたしの詳しい分野においては、日本語であっても
時々とんでもないことを言い出して驚かせてくれるのですが、 
アンジーがこの岩国行きについて彼とやりとりをしていて、

「彼のスコードロンは11月には別の基地に行ってしまうので」

という一文を書いて来たところ、それをわたしに伝えるときに

「アンジーの旦那さんの飛行機って、ホーネット以外にも別の愛称があるみたいよ」

(しかも覚えていないし)と言ったくらいです。

「あのー・・・スコードロンって、飛行中隊のことなんですけど」
「初めて見たもんこんな単語」

うーん、確かに 

squadron

という単語は、航空機の愛称と言われればそんな感じがしなくもないが・・・。
メガロドンの烏賊バージョンのことだと言われても信じるかもしれないなこの人は。


さて、そんな「一部」モノを知らないわたしの連れ合いの話は置いておいて、
スーパーホーネットと、レガシーホーネット、どこで見分けるのか。



「一緒に撮ろうよ」

と、見かけによらず愛想のいいブラッドが言ったので一緒に撮ってもらった写真。
携帯の待ち受け画面にしたい写真ですね。しませんけど。
急に言われたのでマフラーがほどけてだらんとしているままです。

ブラッド大尉とエリス中尉はともかく、そのうしろ、
ホーネットのエアインテークの形を見れば、これが「スーパー」ではなく
レガシーの方である証拠に、楕円をしているのがわかります。

この変更は、ステルス性を高めるためなのだそうです。

あと、ライノとレガシーの違いは機体の大きさ。
全長が17.07mから18.38mへと1メートルも延長されたほか、
レドームや翼も一回り大きくなっています。

ここにある機体は2000年に海兵隊のものとなり、以降は生産されていず、
「最後のレガシー」ということになるのでしょうか。



複座なので、このタイプはF/A-18Dといいます。
この、全体のバランスの割に翼が横に張っていず、
この角度から見ると凄く翼が短く見えるのは艦載機だからだと思われます。

複座というのはパイロットと後席にもう一人が乗務します。
現代の戦闘機は仕事が多いので、二人1チームで役割を分担するのです。

映画「エネミーライン」で、スーパーホーネットが地対空ミサイルを避ける際、
後ろの航法士が操縦士に指示を与えるシーンがありましたね。


ここで相変わらずどうでもいいことが気になるエリス中尉、ブラッドに、

「ペアを組むのはいつも同じ人?」
「いや、いつも違うよ」
「こいつだけは合わない、とか嫌な奴、とかいる?」
「いないよ〜(笑)」



機体にはこのようにパイロットの名前とTACネームが書かれます。
ベイルアウトのための装置ですが、ブラッドによると、

「ベイルアウトするときには、同時に熱線でコクピットが爆破されるから、
脱出そのもので失敗することは絶対にないけど、
そもそもベイルアウトするということはもう終わり(That's it)のとき」

終わり、つまり脊椎損傷とか・・・どちらにしても、一生に一度あるくらい。
なぜならそのあとは死ぬか動けなくなるかってくらいのことだから、とのこと。


そう言えば昔、隣国空軍の少将だかなんだかが、自分で脱出レバーを引いて、
自分自身をラストチャンスのときに打ち上げた事件がありましたが、
今にして思えばよくこの人無事だったですねえ。

こんなことをしでかしておいてその後現役で元気に仕事をするなんて、
(しかも学校の校長だったらしいので、士官に訓示をしたりとか)
そんな恥をさらすくらいなら、軍人としてこのときに再起不能になっていた方が
ずっとましだったのではないか?

と人ごとだと思って簡単に言ってみる。



エアインテークの専用カバーには、
部隊の印コウモリ君と稲妻のワンポイント入り。

カバーをつけたまま飛んだりしたら、どうなるかはわかりませんが、
少なくともエアーがインテークしないわけだから(当たり前だ)、
たぶん飛行機は落ちると思います。

というわけで、飛ぶ前に、というかエンジン始動前に絶対これ外せよ、
という警告を、目立つ赤いリボンに書いてつけてあります。

こんなもの忘れる人はいないだろう、と思うでしょうけど、
案外人はとんでもないミスをしてしまうものですからね。

ピトー管のマスキングを外すのを忘れたまま離陸した民間機が
それが原因で自分の機位を見失い、墜落した、という事故もありましたし。
(アエロペルー機墜落事故)



で、またまたいらんことが気になるエリス中尉、
このペイントを見て

「どうしてこんなに薄い色なの?
やっぱり相手から識別し難いように?」

と聞いたところ、意外な返事が。

「灰色のペンキは安いんだよ」

「灰色のペンキは安いんだよ」

「灰色のペンキは安いんだよ」



・・・・本当か。

米軍よりもっとお金の使えない(はずの)自衛隊機が、
赤いペンキで日の丸を描いているのに?

この話を音楽まつりの日に同行していただいた元自衛官にお聞きすると

「それは、嘘ですね」(きっぱり)

そうなの?
全く真面目な顔で言っていたけどなあブラッド。
からかわれたの?わたし。

やっぱりこれはわたしの予想通り、ステルス性のためなんでしょうね。


あと、機体に乗り降りするはしご。
写真は撮れなかったのですが、
コクピットの外にはしごを出してぐいっと引っ張ってのばすだけ。

科学の粋を集めた戦闘機(レガシーだけど)でも、
どうでもいいところは思いっきり原始的でした。




エンジンの周りにいたメカニックの一番偉い人(士官)に、
ブラッドが頼んでシャッターを押してもらいました。

ホーネットの鼻先が写ってないけど、まあいいか。



続く。




 

 


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