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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「シュタイナー・鉄十字章」(戦争のはらわた)〜鉄十字章の取り方

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「戦争のはらわた」二日目です。

しばしの療養生活から望んで帰隊したシュタイナー曹長、
さっそく小隊の皆から歓迎を受けます。

なぜかロシア軍の帽子をかぶっている粗暴なクリューガー伍長も。
演じているクラウス・レーヴィッチはドイツの俳優です。

部隊にはナチス党員だという怪しげな男が転勤してきていました。
このツォルとかいうの、トラブルメーカーになりそうな予感・・・。

帰隊したシュタイナーを早速シュトランスキー大尉が呼びつけました。

曰く、今回のロシア軍への反撃を成功させたのは自分であるから、
鉄十字章を申請する手続きに必要な2名の証言人のひとりになれと。

地下壕から一歩も出ないでずっと電話にしがみついていたのは誰でしたっけ。

ちなみにもう一人の証言者、トリービヒ少尉はすでにサイン済み。
同性愛であるという弱みを握られているので嫌も応もありません。

呆れた様子で返事をしないシュタイナーに、シュトランスキーは早速階級論をぶち、
早い話、君らが逆らっても所詮上級には勝てないよ、というようなことを言うのですが、
シュタイナーはそれに対し、

「カントは馬具職人の子だし、シューベルトは貧しい教師の子だ」

と皮肉に答えて暗に相手の無能を皮肉ります。

そして自らの鉄十字章をぞんざいに放り投げ、所詮鉄屑だと言い放ち、
さらにこんなものになぜこだわるのかを問いただすシュタイナーに、
シュトランスキー、突然しおらしくなって、

「鉄十字章なしでは故郷に帰った時に家族に合わせる顔がない」(´・ω・`)

なるほど、なまじ上級国民ゆえのプレッシャーというやつですか。
そこにもまた勝たねばならないヒエラルヒー闘争が存在するというわけなのね。

そんなことを言っている間にも空爆が前線を襲います。
そこでただ一人生き残ったクリューガーをシュタイナーは抱きしめるのでした。

ブラント大佐もまたシュトランスキーには大いに不満を抱いていました。

戦闘中やっていたのは電話にしがみついて大佐に電話していただけなのに、
反撃の指揮をしただと?鉄十字章だと?というわけです。

そこで大佐はシュタイナーを呼び寄せ、シュトランスキーの現場の様子を聞き、
鉄十字章を受けるにふさわしいのかを確認しようとします。

 

シュタイナーは、反撃の指揮は戦死したマイヤー少尉が行なったのであって、
シュトランスキーの姿は見ていない、と断言します。

ブラント大佐は今度はトリービヒ少尉を呼びつけ、
本当にシュトランスキーが指揮するのを見たのか、見ていないなら
なぜ証言のサインしたのかと問い詰めます。

トリービヒは苦しい抗弁を試みますが、キーゼル大尉の聴取した
隊員の証言をもとに追い込まれてしまいました。

「このままでは大尉を起訴せねばならん。君もな」

しかし、肝心のシュタイナーが告発に全く乗ってこようとしません。
するともしないとも言わない彼にブラント大佐は怒りをあらわにしますが、

「将校は嫌いだ。この制服とこれにまつわるもの全てが」

という憎しみすら帯びた彼の返事に言葉を失うのでした。

戦況は完全にドイツ側の不利になり、全中隊が交代を余儀なくされます。

迫りくるロシア軍の戦車。

ところがどっこい、その筋の情報によると、この戦車は
映画の時点では生産されていなかった85mm砲を搭載したT34だそうです。

史実に正確であろうとすれば、76 mm砲を搭載したT34が正しい選択ですが、
映画が作成されたときには後者はもう残っていなかったため、こういうことになりました。

間違いといえば、ロシア軍の空爆シーンで飛んでるこの飛行機ですが、
・・・・どう見てもF4Uコルセアではないでしょうか。
写真ではわかりませんが、画面では瞬間アメリカ軍のマークらしきものも見えます。

映画の最後の方にはテキサンらしき機影も確認できます。

そんな中、なぜか取り残されて逃げ惑うシュタイナー小隊。

全隊を後退させよという司令部の命令が出ていたのに、
例によってシュトランスキーのおっさんが情報を握り潰し、
退却命令を伝えられないまま、この状態に取り残されてしまったのです。

逃げ込んだ廃工場にも遠慮なく突き進んでくる戦車。
これは怖いわ。

どうもこの一連の戦車シーンは、せっかく借りてきたので
できるだけたくさん登場させましょうということのようです。

中央から通知を受け取ったブラント大佐は苦々しげです。

憎まれっ子世に憚る。

戦闘のとき何もしていなかったにもかかわらず、
今や鉄十字章候補となったシュトランスキーをパリに転勤させよというのです。

彼の嘘を暴きたいのは山々ですが、シュタイナーが反証しないので、決め手がなく、
そもそも彼は小隊とともにどこへ消えたか行方不明になっていたのでした。

その時シュタイナー小隊は樹上に身を隠し、草の中をミミズのように這い、
脱出地を求めて当てどもなく彷徨っていました。

新兵君はまだ生きているようですが、ここで

「日向を踏んだら負け、命がなくなる」

という呑気なひとり占いゲームをやっていて呆れられます。

敵を静かに始末しながら川を(というか橋の下を)超えると・・・、

いきなりそこにはR18指定シーンが!

なんとソ連軍女性兵の小隊でした。

ソ連軍は女性兵士をパイロットやスナイパーにしたりして、前線で徴用していましたが、
このような女性だけの戦闘部隊があったのかどうかは謎です。

この綺麗どころは、おそらくセンタ・バーガーというオーストリアの女優です。

ろくに内部を確かめず急襲して一人二人撃ち殺してしまってから、
女性ばかりの部隊であることに驚くシュタイナー小隊の皆さん。

「へっへっへ、戦利品だ」

戦場あるある。
いきなり興奮して襲いかかる奴あれば、女性兵士の風呂桶に一緒に肩まで浸かってしまう奴あり。
まあ、これもまた悲しいかな理(ことわり)というものでしょうか。

ところがたちまちシュタイナーやシュヌルバルト伍長に叱責されてます。

久しぶりに女性を見て心をときめかせたり不埒なことを考えたり。
叱られても止められても男どもは浮き足立たずにはいられません。

しかし彼らは忘れています。
これらの女性は女性の姿形をした軍人であることを。

新兵君は見張り中、たちまち美しい一人の兵士に一目惚れしてしまい、
彼女が笑みを浮かべて近づいてくるのにうっとり。

そしてあっさり刺されてしまいました(-人-)ナムー

新兵フラグがこんな形で回収されるとは。
しかし新兵君、虫の息で涙を流しながら、健気にも

「彼女を・・・虐めないで」

(´;ω;`)

そして本作の衝撃度ナンバーワン。
男性なら心胆寒からしめざるを得ずかつ戦慄せずにいられない(知らんけど)R18シーンです。

この映画が「はらわた」で通ってしまった原因は、もしかしたら
このイメージを敷衍させようという配給会社の深謀遠慮かと勘ぐりたくなります。


ところで、相手がただの女性ではなく兵士であることを少しでも考慮すれば、
いくらおめでたい男でも、ちょっとは危険を察知してこの挙に及ぶことは厳に控えそうですが、
こいつ(ツォルというナチス党員)、もしかしたら馬鹿なのか?

叫び声を聞きつけて馬小屋に駆けつけたシュタイナーも、その点当ブログと同意見で、

「馬鹿か(”stupid”)」

と嘆息を漏らします。

そしてすぐさまロシア女性兵を集め、連行しますが、
処刑される覚悟を決めた女性兵たちが連れて行かれたのは、なんと
ツォルが股間を押さえて悶え苦しんでいる「事故現場」でした。

すわ!と緊張する女性隊長に、シュタイナーは、

「好きなようにしろ」

と言い捨て、そのまま小隊を率いて去ってしまいました。

まるで解放後の強制収容所で囚人たちの前に護衛なしでナチス幹部を立たせたアメリカ兵、
あるいはキリストに石を投げる群衆を放置したポンショ・ピラトみたいです。

周りから憎悪を滾らせた女性兵士たちに詰め寄られ、

「ひいいいい〜〜〜!」

と断末魔の叫びを上げるツォル。
きっと恐怖のあまり痛みだけはすっかり忘れて人生の最後を迎えることができたでしょう。
知らんけど。

司令部への攻撃も激化していました。

ブラント大佐がGQ、総司令部と通話しています。

「今すぐ早急にここから出したい者がいます。
司令部要員と共に連れ出してもらえませんか」

大佐、キーゼル大尉を戦地から帰らせようとしているのでした。

しかし、字幕でこの”get out"を「追い出す」としているために、
まるで大佐がこの前のシーンで大尉が自分の言うことを聞いていなかったので、
腹を立て、追い払おうとしているように勘違いする人もいそうです。

そうではないことは撤退命令に従えないとごねるキーゼル大尉を
大佐が説得する言葉にも明らかです。

この部分は、映倫的に問題があったのか、一部訳が違うので、
英語のセリフをそのまま翻訳しておきます。

「君はシュタイナーのそばに長くいすぎたな。まあ聞いてくれ。
我々ドイツ人の多くにとって『駆除』は長らく待っていたことだったが、
私は君を救う価値があると判断した」

キーゼル大尉「しかし私もこの一部です。
私より優れた人間がいるのに、彼らの多くは外で殺されている」

「君は何も悪くないさ。 タバコの吸い過ぎ以外はね。
君は勇敢な男だ。自分が思っているよりも勇敢だ。
近い将来、勇敢な民間人が必要になるだろう、そう考えたことはないか?

新生ドイツでは・・もしそんなものがあればだが、建築家や思想家、詩人が必要になるだろう。
君の仕事が何であるか、私には見えてきたよ。

これが私からの最後の命令だ。
そういった・・・うん、君の言うところの『より良い』人々を探し出して連絡を取れ。
そして彼らと共に、生きることに伴う責任を負うんだ。
君がここを離れるときだ。

・・・頼むから出て行ってくれ」

赤字の部分は言うまでもなくユダヤ人抹殺のことですが、訳されていません。
日本語訳なのに誰に配慮しているんだろうと言う気がしますが。

そして着の身着のままで駅に送られるキーゼル大尉でした。

さて、こちらシュタイナー小隊。

「敵は我々を許すかな」

シュタイナーからロシア少年兵の遺品となったハーモニカを受け取り、
戦地の野営でで恋人を想う歌の旋律を吹き始めると、皆が唱和します。

Deutsches Soldatenlied "Im Feldquartier auf hartem Stein"

「疲れた手足を伸ばし 夜の暗がりの中 歌を贈る
大好きなあの娘のもとに・・・」

シュタイナーはある作戦を立てました。

彼らはすでに女性兵士から奪ったソ連軍の軍服を着ています。
二人をドイツ軍の捕虜ということにして(この”捕虜役”はシュタイナー自身とアンゼルム)
ソ連軍前線に潜入しようというのですが・・・

ブーツでソ連兵ではないことがバレてしまいました。

バレたからにはとりあえず殲滅し、武器と通信機を奪います。
奪った無線で味方に、こちらは事情があってソ連軍の制服を着ているが
中身はシュタイナー小隊なので誤射しないようにと連絡をするのですが、



シュタイナーの名前による無線を受け取ったのはなんとシュトランスキーでした。

シュトランスキー、にっくきシュタイナーを消すチャンスです。
トリービヒ少尉の弱みをまたしても有効活用すべく、こんなことを囁くのでした。

「暗闇にソ連兵の制服を着た一団がやってきたら、発砲してもやむをえん・・だろ?」

「は・・・はい」

うまくやれば戦線から南仏にご招待してやる、という餌までぶら下げられたトリービヒ、
すっかりやる気です。

誤射しないようにという伝達が味方に伝わっていない場合を考え、
彼らは一応捕虜とそれを引率するドイツ軍という設定で歩き出しました。

捕虜役を前に立て、合言葉である「境界線」と「シュタイナー小隊」を叫びながら進みますが・・・、

無情にもトリービヒは部下にシュタイナー隊への発砲を命じました。

「シュタイナーだ!」

銃撃を命じられたドイツ兵の何人かは味方であることに気づくのですが、
トリービヒは「撃て!」を繰り返し、ついには銃手を押しのけてまで殺そうとします。

ちなみにこの時のBGMは壮大かつ悲劇的エモーショナルです。

生き残ったのは3人でした。
シュタイナーは自分たちを撃たせたトリービヒに詰め寄ります。

「シュトランスキー大尉の命令だ!」

この期に及んで言い訳をするトリービヒですが、仲間を同胞に殺された怒りが
こんなことで治まるはずがありましょうか。

この瞬間シュタイナーの脳裏には、死んでいった仲間の顔が・・・
あまつさえあのソ連の少年兵の面影までもが次々に浮かんでいました。

天誅!

とばかり卑怯者に何発も銃弾をぶち込むシュタイナー。
まるでその数が死んでいった仲間の分と言わんばかりです。
倒れた彼の身体に、生き残ったクリューガーがナイフを突き立てました。

シュタイナー小隊の生存者はこれにアンゼルムを加えた3人です。
連れて行ってくれと頼む二人ですが、シュタイナーはクリューガーに、

「おまえが小隊長でアンゼルムが小隊だ」

と言い残し、

「借りを返しに行く」

と二人を置いて去っていきます。

ソ連軍の攻撃が激化する前線で、シュタイナーはついにシュトランスキーを発見しました。

「腐れ切ったプロシア貴族の・・・豚めが!」

とりあえず銃をぶっ放しますが、不思議なことに彼はこの男を殺しません。
それどころか銃を持たせて、

「俺が小隊長でこれからあんたがおれの小隊だ。
ついてこい。あんたに鉄十字章の取り方を教えてやる」

ブラント大佐は果敢にも自ら銃をとって前線を守り攻勢に転じようとします。

しかし、彼がその後どうなったのかは描かれません。
静止したブラント大佐の画像に冒頭の「小さなハンスちゃん」が重なります。

シュタイナーはシュトランスキーを「引き連れて」前線を闊歩しはじめました。
シュトランスキーは線路につまづいて転びますが、脚本にはなく、アクシデントだそうです。
当作品はお金がなかったので、撮り直しはできませんでした。

「装填は・・・装填はどうやるんだ曹長!」

MP40の装填方法がわからず無様に助けを求めるシュトランスキーを
容赦無くソ連兵の銃弾が襲いますが、不思議なことにそれは
あの少年兵が撃ったものだったりするのです。

シュトランスキーの醜態を見たシュタイナーは愉快そうに大声で笑い出します。

  

その笑い声は、「Hänschen klein」と重なり、戦争の犠牲になった
民間人のモノクロ映像に切り替わるクレジットまで続くのでした。

 

最後に一言:この映画に「戦争のはらわた」のタイトルは絶対におかしい。

終わり


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