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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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ある良心的兵役拒否者と「星条旗よ永遠なれ」(ジミヘン)〜ハインツ歴史センター ベトナム戦争

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ハインツ歴史センターのベトナム戦争展、このあたりから
パネルではなく物品による展示が増えてきます。

■ ベトナムの漁船〜ダグ・ホステッター

漁船というよりボートですね。

ベトナムクアンナム省のKy Phu(キー・フー?)村の漁師が、
ダグ・ホステッター氏にプレゼントしたボートの模型だそうです。

ダグ・ホステッターはいわゆる良心的兵役拒否者でした。

宗教上の戒律などで戦闘行為に加わることができない兵役拒否者は、
その代替となる任務を行うことが定められているのですが、
ホステッターは自ら南ベトナムに行くことを志願し、そこで
避難してきた難民を収容するメノナイト委員会の活動を支援しました。

難民の親たちから、子供たちの学校教育の機会が必要であると聞き、
彼はタムキ近くの村の難民キャンプで識字教室を組織しました。

Courtesy of Doug Hostetter

Doug Hostetterとベトナムの子供たち

Hostetter

ホステッター氏近影。イケメンぶりは変わらず

 

彼はメノナイト教徒です。
メノナイト( Mennonite、メノー派)は、メノ・シモンズの名前に因んだ
キリスト教アナパブテスとの教派で、ブレザレン、クェーカーとともに
歴史的平和教会の一つで、

非暴力、暴力を使わない抵抗と融和、そして平和主義

を教条としています。

メノナイトはベトナムに中央委員会を組織しており、
教徒は誰も敵と認識せず、平和のため愛と真実を武器とする「戦い」をしていました。

もちろん、この教派の主義は政府のそれと相容れないものです。

米国政府は、北ベトナム政府ならび南ベトナムで活動しているゲリラ、
ベトコンを敵として戦争を行っていたわけですから。

ホステッターはタムキという村に送られました。
そこには難民で溢れていました。

彼の仕事はタムキの難民が何を必要としているかを知り、それを手伝うことです。
驚いたことに、難民の家族は子供たちが読み書きできることを最も望んでいました。

彼はタムキのいくつかの高校で英語を教えていましたが、彼自身がベトナム語を勉強し、
識字教室のためのボランティア教師を組織するなどの活動を行いました。

プログラムは大成功でした。
タムキでの3年間の終わりまでに、90人の高校生が
3,000人以上の難民の子供たちに読み書きの方法を教えることができたのです。

彼がタムキに着任した日、家の家主はこう言いました。

「.50口径の機関銃があれば、海兵隊員が来るまで
NLFを食い止めることができます」

彼は、それに対し、

「メノナイトは武器を使いません。
防御のためにすらそれを必要としないのです。
なぜなら我々は神を信頼し、すべての人々と平和に暮らすように努めています」

と答えました。

タムキでは地元のベトナム共和国陸軍(ARVN)とNLFの間で戦闘が行われ、
通りで行われた銃撃戦ではARVN兵士が米国製のM-16ライフルを発射し、
NLFゲリラがロシア製のAK-47ライフルを発射するのがはっきりと聞こえました。   メノナイトのスタッフは、軍事施設に住まないことを選択した唯一のアメリカ人であり、
おそらく敵にとってもその気になれば簡単に侵入できたはずなのに、 彼らの住居はベトナム人から決して攻撃されませんでした。
しかし、彼らが無傷だったわけではありません。
非暴力主義を貫いた良心的兵役拒否者も、非暴力に訴えれば
それが安全を保証するなどということは誰も考えていませんでした。

ベトナム戦争中に3人の兵役拒否者が命を落としています。

メノナイトのダニエル・ガーバー、ブレザレン教会のテッド・スタッドベイカーは
ベトコンに殺害され、クエーカー教徒のリック・トンプソンは飛行機墜落事故で亡くなりました。

彼らの立場は大変難しいものだった、とホステッターは言います。

「わたしはほとんどのベトナム人にとっては普通にアメリカ人であり、
しかもアメリカがベトナムとの間に始めた戦争の、
戦闘地帯の真っ只中にいるアメリカ人の一人であることに気づきました」


彼は3年の任務の終わりに、神の守護に感謝するとともに、
死んでいった人々に対し罪悪感を感じずにはいられませんでした。

ちなみに彼の親友の父親は、米軍と同盟軍であったはずの
韓国軍に殺されたということです。

■ サウンド・オブ・ザ・タイムス

ベトナム戦争は、ロックンロール、ソウル、ブルース、フォーク、
ジャズ、ゴスペル、リズム&ブルースの各スタイルのミュージシャンに
多大な影響を与えました。

音楽の多くは戦争をテーマにし、その出来事を反映しており、
戦争継続に抗議するという意味を持たせてありました。

いくつかの曲はアメリカのG.I. たちのお気に入りとなりました。

ここにはそれらの代表的な曲と演奏者が描かれています。

スター・スパングルド・バナー(星条旗よ永遠なれ)/マシンガン・・ジミ・ヘンドリックス 

Masters of War(戦争の親玉)・・ボブ・ディラン

This Is My Country(これが我が祖国)・・・・インプレッションズ

Bring the Boys Home(若者たちを故郷に戻せ)・・・フレダ・ペイン

Eve of Desturction (破滅の夜)・・・バリー・マクガイア

Ball of Confusion(That's What the World is Today)
混乱の夜会(それが今日の世界だ)・・・・・テンプテーションズ

What's Happening Brother (ブラザーにおこったこと)・・・マーヴィン・ゲイ

Universal Soldier(普遍的な兵士)・・・・バフィー・セントマリー

7O'Clock News/ Silent Night(7時のニュース/きよしこの夜)・・・・サイモンとガーファンクル

Soldier Boy(ソルジャーボーイ)・・・・・・・・・ザ・シュレルズ

War(戦争)・・・・エドウィン・スター

GIve Peace a Chance(平和にチャンスを)・・・プラスティック・オノバンド

■ Fortunate Son(幸運な息子)

・・・クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル

この曲はアイゼンハワーに触発された曲だといわれています。

ドワイト・アイゼンハワー元大統領の孫のデイヴィッドが、1968年、
ニクソン大統領令嬢のジュリー・ニクソンと結婚したとき、
作者フォガティはこのようにインタビューで語りました。

「ジュリー・ニクソンがアイゼンハワーの周りをうろついていることだけで、
彼らが揃いも揃って戦争に係わるつもりが無かったのは明らかだった。

1968年、アメリカの大半は軍人達が士気高く戦っていると信じていて、
80%の人々が戦争を支持していた。

しかし注意深く事態を見守っていた人々は、アメリカが
どうしようもないトラブルに向かっているのを知っていた」

タイトルの「幸運な息子」(Fortunate Son)とは、
デビット・アイゼンハワーのような、そう、
徴兵を親の力で難なくのがれることのできる議員や富豪の息子のことです。


ある者は旗を振るために生まれた
赤と青と白の旗を

そして楽隊が大統領を称えるために演奏するとき
ああ、彼らは大砲を主のいるところ目掛けて撃つ

それは俺じゃない それは俺じゃない
それは上院議員の息子のため
俺は幸運な息子じゃない

ある者は銀の匙を手にして生まれてくる
彼らは働かなくてもいい
でもタックスマンがやってきたら
彼らの家は慈善バザーに早変わり

俺は軍人の息子じゃない
億万長者の息子でもない

彼らはお前たちを戦場に送り出す

「どれくらいそれが必要なんだ」

と聞いても彼らの答えは

「もっと、もっと、もっと」

それは俺じゃない
俺は軍人の息子じゃない
俺は幸運な息子じゃない

Say It LoudーI'm Black and I'm Proud(声を上げろー私は黒人そして誇り高い者)
・・・・ジェームズ・ブラウン

What's Going On (ワッツ・ゴーイング・オン)・・・マーヴィン・ゲイ

Stoned Love(石の愛)・・・・・シュープリームス

Where Have All Flower Gone?(花はどこへいった)・・ピーター・ポールアンドマリー

The ”Fish" Cheer/ I-Feel- Like- I'm-Fixin'-to- Die-Rag
(『魚』遊び/死ぬことを決心しているような気がするラグ)・・コートニー・ジョーとザ・フィッシュ

We Gotta Get Out of This Place(俺はここから出ていくぜ)・・アニマルズ

The Unknown Soldier(知られざる兵士)・・・ザ・ドアーズ

Gimme Shelter(シェルターをくれ)・・・・ローリング・ストーンズ

 

ちなみにわたしが知っていた歌は「花はどこにいった」と「ワッツ・ゴーイング・オン」だけでした。

しかし、ベトナム世代の若いアメリカ人には、彼らの心情を代弁するこれらの曲は、
そのどれもが良くも悪くも彼らのあの時代の青春を彩るものだったのでしょう。

タイトルを見ているだけで、彼らのシュプレヒコールが聴こえてくるようです。

 

続く。

 


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