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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「北緯49度」(潜水艦轟沈す)2日目

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第二次世界大戦時のイギリス政策による国策啓蒙映画、
「北緯49度線」(邦題『潜水艦轟沈す』)2日目です。

カナダ北部で商船を攻撃していたU37がカナダ国防軍に轟沈させられ、
たまたま上陸していたため生き残ったナチスの残党6名。

ハドソン湾の交易所を襲い、やってきた水上機を強奪して
逃亡のため全員が乗り込んだ、というところまできました。

 

2日目のタイトルにはこのナチス残党メンバーを描いてみたのですが、
「Uボート」や「メンフィス・ベル」のような戦争ものあるあるというか、
メンバーがたくさん過ぎて一度見ただけではキャラクターの見分けがつきません。

たとえば昨日、ヒルト大尉とクネッケ大尉が言い争う様子を冒頭絵にしたのですが、
わたしは2回目以降細部を見直すまで、ヒルトの相手が私服であることから、
てっきり交易所のカナダ人だと思い込んでいました。

え?ちゃんと観てなかったんじゃないかって?

さて、続きです。

ナチス一行は唯一操縦ができエンジニアなので全てを熟知している、
と豪語するクネッケ大尉に水上機の操縦をさせ、
ハドソン湾を飛び立とうとするのですが、いかんせん人多杉。

山ほど人と食料を乗せているので湖をぐるぐるするだけで
なかなか飛び立つことができません。

「重量超過だ!何か捨てろ!」

 

しかしそれくらいではまだ飛べません。
クネッケは全て、つまり銃を捨てることを要求しました。

そのとき、やられた仲間の復讐をせんと、
このイカしたヘアスタイルをしたエスキモーの兄ちゃんが・・・

銃を廃棄するためにフロートに立っていた水兵を狙撃しました。

ここで一人脱落。
ジョニーを殺害したヤーナーです。

因果はめぐる。

一人が水中に没し、重量を減らした水上機は、やっとのことで
離水しハドソン湾を出発することができたのでした。

ようやく水面から飛び立った飛行機は、順調に飛行を続けていました。
しかし何人かが後ろで爆睡を始めたころ、突如機体が異常に見舞われます。

一度給油を行った(どこで?)にもかかわらず、ガス欠になってしまったのです。

ヒルト大尉はさっそく、給油の時に非常用タンクを確認したのか?
とクネッケ大尉にしつこく畳み掛けます。

『何でもできる俺』でクネッケにさんざんマウントを取られていたせいもあって、
ヒルトのこのときの逆上ぶりは常軌を逸しています。

クネッケ大尉はウゼー!とばかり、

「それを確認したかしなかったかが何だ?」

と開き直ってキレまくり。
ヒルト大尉、さらに激昂して、

「確認したのかしなかったのかどっちだ!?」

「ああ、してねーよ!(それがどうした)」

ちょうどそのとき燃料計がゼロに(笑)

緊急着陸を余儀なくされてしまいました。

「どうするんだ?」

「俺だってミスはする!司令官のお前があとは何とかしろ」

「お前のせいだああ!」⇦ヒルト大尉

佐清状態

なんとか機体を湖まで運ぶことまではできましたが、
頭から墜落してしまいました。

一瞬にして修羅場となった機内。
比較的冷静なフォーゲルが外から機体を破いて脱出成功です。

この中の一人の俳優は泳げなかったのでマジで溺れかけているそうです。

そして結局、操縦していたクネッケ大尉だけが亡くなりました。

このとき、溺れ死んだ彼の肩を持って二人の水兵が岸まで運びますが、
よく見ると死んだはずのクネッケ大尉の脚がちゃんと動いています。

遺体を前に、ヒルトは一言呟きます。

「これがクネッケという男だ」(So, that's Kuhnecke.)

先ほどジョニーに十字架を渡したフォーゲルは、遺体に十字を切りますが、
ヒルトの視線に気がつくと慌てて元に戻ります。

ナチス原理主義のヒルトに対して、キリスト教徒であるフォーゲル、
この二人はイギリス的価値観により「悪と善」と位置付けられます。

着の身着のまま無一物で彷徨していると、広がる小麦畑が現れました。

一同はそこにいた娘、アナに職探しの季節労働者と思われたのを幸い、
フッター教徒のコミュニティに入り込むことに成功しました。

彼らが荷物を何も持っていないのに疑問も持たないのは、
彼女がまだ15歳(2日後に16歳)だからでしょう。

フッター派というのは、火焙りの刑に処されたヤーコプ・フッター(1500-1536)
を開祖としたキリスト教宗派で、カナダを中心とする北米に分布し、
主として農業を共同で営んでいます。

●高度な農業技術を有し、自給自足はもちろん農産物を外部に販売している

●隔絶的な生活、信仰と固有の文化に固執する

フッター派ドイツ語独Hutterisch, 英Hutterite German)を固持する

ヒルトが案山子の頭に使われた新聞紙を見てドイツ語だ、と狂喜しましたが、
それはフッター派ドイツ語だったというわけです。

問題は彼らが

●文化の同化をしないという関係で、政治には一切かかわらない

ということなのですが、そんなところヒトラーの落とし子たちが
混入して、一体どうなるのでしょうか?(予告編風に)

客としてとりあえず彼らは食堂に案内され、貪り食います。
パンは高坏のような台に乗せられたのを各自取る仕組み。

しかしフォーゲルはパンを一口かじって微妙な顔を・・。
実は彼、シャバではパン職人だったのです。

「不味くてすまんな」

話しかけてきた隣のおやじは、この共同コミュニティが
各自の得意分野を無償提供し合うというルールを説明します。

「靴屋は靴を、鍛冶屋は鍛冶をという具合にな」

「あんたの専門は何だ」

「俺か・・パン屋だ」

気まずい。
二人は無言で互いから目を逸らしそそくさと食事に集中するのでした。

彼らはグループのリーダー、ピーターに挨拶しますが、
彼にドイツ人かと聞かれなぜか口ごもります。

アナが彼らのベッドを用意しに与えられた家にやってきました。
ところが4人の男ども、手伝うわけでなく、
ポケットに手を突っ込んで彼女を取り囲みます。

このアナ役には最初エリザベス・バークナーという女優がキャストされていました。
しかし本物のフッター派コミュニティの村でロケが行われたとき、
彼女がネイルをして煙草を吸っていたのに怒ったフッターの女性に平手打ちされ、
怒って役を降りたので、代役として出演したのがこのグリニス・ジョンズでした。

さて、アナは彼らに、ドイツ人の母親がカナダに移住する際、乗っていた船が
ナチスの魚雷によって沈没し、亡くなったということを打ち明けました。

無神経に『船は粉々になったのか』と聞くローマンとクランツを、
彼女に同情的なフォーゲルはたしなめます。

とりあえず落ち着き場所を得たので、ナチス一行は
シャツにパンツの寝巻き姿で作戦会議を行いました。

なぜか、リーダーのピーターはドイツのスパイに違いない!
という自分たちに都合の良い意見に達して会議終了。
おやすみなさいのハイルヒットラーを行います。

シャツにパンツ姿のハイルヒットラーシーンは、
戦争映画数多しといえどもこれだけに違いありません。

ベッドに入ったヒルトが、

「我々の今回のことはのちにヒトラーユーゲントの教科書に載る」

などと言い出しますが、フォーゲルは

「我々が沈めた船には女や子供が乗っていたんですね。
交易所では無抵抗の男を殺してしまいましたし」


「これは戦争だ。女子供も敵だ。
ビスマルクを読んだことないのか?
『涙を流すのは目だけにせよ』とな」
(Leave them only their eyes to weep with.)

ついでに、お前は任務を果たすには人情を優先させすぎる、
クランツを見習ってはどうだ、と説教します。

次の朝、目覚めるとフォーゲルのベッドは空になっていました。

驚いたヒルトがクランツに彼を探しに行かせると、フォーゲル、
何とパン焼き場で昔取った杵柄とばかり、パンを作ってます。

15年のキャリアを持つ彼の腕は全く衰えておらず、
その出来上がりは人々を驚かせ、喜ばせました。

今手が離せない、と呼びつけを無視したため、
ヒルト大尉が現場にむかつきながらやってきますが、
周りの皆がフォーゲルを褒めそやすものだから、つい、

「おめでとうフォーゲル、適職だな」

と言わざるを得ませんでした。

問題はその後です。
敬礼こそしなかったものの、つい習慣で、ナチスドイツの
カチッと踵を打ち合わせるポーズをしてしまうフォーゲル。

それを見ていたのは・・・リーダーのピーターでした。

そしてその日行われた会合で、波乱が起こります。
周りがドイツ系であるというだけで、何を勘違いしたのか
ヒルトが演説をぶち始めました。

曰く、他の民族は劣っている、我々はドイツに忠誠を尽くすべきだ。
東方から起こる嵐は全世界に新しい秩序をもたらすであろう。
その時力強く太陽は昇るのだ云々。

「太陽って何のことだね」

ドン引きした聴衆の一人が聞くと彼らは立ち上がり、

「ドイツ人たちよ!兄弟よ!
我々の栄えある総統閣下に敬意を!」

「ハイル・ヒトラー!」🙋‍♂️

「ハイル・ヒトラー!」🙋‍♂️ 🙋‍♂️👨←フォーゲル

あーやっちゃったよ。ハイルヒトラーやっちまいましたよ。

静まり返る一座、気まずい雰囲気。
そりゃそうだよね、彼らはドイツ系かもしれないけどドイツ人じゃないし、
ましてやナチスでもないわけだから。

リーダーは静かに、我々がここにいるのはヨーロッパでの迫害、
貧困から逃げてきた、あるいは宗教的な理由であるが、少なくとも
ここで安全と平和、寛容と理解を得てきた、それは
君らの総統によって踏みにじられたものだ、と語ります。

「しかし我々はドイツ語を喋りドイツ語を読みながら君たちとは別だ。
君たちの『兄弟』ではない。
世界に疫病のように広がり人々の自由を奪うヒトラー主義は受け入れられない」

ここで下っ端の二人が暴れだすという展開はなく、
静かに場面は転換します。

もし現実なら無事にこの場がおさまるはずがないと思いますが。

グレタさんの上位変換

その晩、アナは彼らの居室にやってきて、彼らに激しく迫りました。

「あなたたち、ナチスなのね?」

「たとえ教えに反するとしても、わたしはあなたたちを憎むわ!」

母だけでなく、彼女の父親もまた言論弾圧でナチスに殺害されていました。

警察に通報する、という彼女の言葉にいきりたつ下っ端二人。
しかし、フォーゲルは彼女をかばい、部屋から連れ出します。

キレちまったよ

「・・・許さんっ!」

一方アナを家に送り届けたフォーゲルに、リーダーのピーターは、
君のような善良な人間がなぜ彼らと一緒にいるんだ、と聞きます。
そして彼らと別れてここで暮らすことを勧めました。

フォーゲルは喜び、一旦自首して拘留を済ませたら帰ってくるといいます。

翌朝、フォーゲルはパン焼きの仕事をしていました。
粉をこねる合間に、彼がオーブンに入れたのは『Anna』の名前入りパン。

今日はアナの16歳の誕生日だからです。
ということは、彼らがここにきてまだ2日目ということになります。

そのとき彼の背後にナチス兵、ローマンとクランツが立ちました。

「機関室技術兵(Artificer)フォーゲル!逮捕する」

「貴様は第三帝国を裏切った。
正式な裁判所の決定はないが、私が上官の権限で死刑に処す」

何か言い遺すことは、と聞かれ、ただ宙を仰ぐフォーゲル。

「総統の名の下に直ちに処刑する」

続いて銃声が二発、朝の湖に響きました。
フォーゲルを連れてきた部下はその直前まで武器を持っていなかったのに・・。

まあ細かいことはこの際よろしい。よろしくないけど。

彼らは食料のたっぷりあった村から、なぜか何も持たずに手ぶらで出発し、
テクテク歩いて北緯49度線に近いウィニペグにたどり着きました。

実際に冬場、ナイアガラの滝に行ったことのあるわたしが断言しますが、
真冬、徒歩でカナダの湖沿いを野宿して移動するなど全く不可能です。

しかしこの際細かいことはよろしい。というかもうどうでもいいや。

繁華街のニュース掲示板では、彼らが乗り捨てた飛行機が見つかり、
逃亡しているナチスの残党のことが報じられています。
人混みに紛れてそのニュースを見るヒルトの姿がありました。

ヒルトが客船の切符売り場にに様子を見に行っている間、クランツとローマンは
ふらふらとと隣の食料品店のウィンドウに吸い寄せられていきます。

目を背けてもそこにはナッツ屋、フィッシュ&チップスの店、
チャプスイ(アメリカ風中華)屋、ステーキハウスのネオンが
これでもかと瞬いているのでした。

彼はヒルト大尉の双眼鏡(たぶんカール・ツァイス製)を売って
食料を買うことを勝手に判断しました。

しかしこの「独断」はことのほかヒルトを喜ばせました。

「よくやったローマン。
双眼鏡の使い道としてこれ以上の方法はない」

双眼鏡は結構な値段(当時の7ドル)になり、(ドイツ製ですから)
おかげで彼らは温かい食べ物にありつくことができたのです。

「は、我々はこれで未来をよりよく見ることができます」

誰が上手いこと言えと。

腹を満たしながらヒルトは彼の考えた計画を打ち明けました。

国境付近は警戒中なので、2000キロ移動してバンクーバーに向かい、
そこから来月出航する日本の船に乗ってロシアに逃れ、そこで味方を見つける。

それにしても2000キロ、どうやって移動するつもり?と思ったら、

歩いてるし。

荷物を持たないで、しかもこの軽装、手袋もコートもなしでカナダの荒原を。
真冬にエリー湖畔に行ったことのあるわたしに言わせると(略)

ずっと歩いていたら寒さを感じないのかしら。
それとも心頭滅却すれば火もまた涼しの反対?

そしてあっという間に彼らレジャイナ(Regina)に到着しました。

ちなみにウィニペグ空港からレジャイナ空港まで577キロ、
グーグルマップによると徒歩だと123時間34分かかるわけですが、
彼らがどこで眠り、何で食い繋いでこれだけ歩いたかは謎です。

というか、歩いている間に周りの雪は消え、季節はいきなり夏になっています。

そのとき彼らが休んでいるその近くで運悪くタイヤをパンクさせてしまった車が。

中には新品の洋服(しかもスーツ)がぎっしり。
もうこれは彼らにとってカモがネギ背負って飛んできたみたいなものです。

それにしても車の持ち主、よりによって、なんて運の悪い人なんでしょう。

ほくそ笑んだ彼らは、タイヤ交換を手伝うフリして、
後ろからスパナで後頭部を一撃!

不思議なことに、車にはスーツのみならず帽子やネクタイ、
シャツにベルトに靴まで、彼らのぴったりサイズが揃っていました。

何日間も風呂に入っていないはずの彼らが、どうしてこう
髭も剃ってこざっぱりしていられるのかも大いに謎ですが。

列車は風光明媚なカナダの山間部を走っていきます。
気のせいかまた季節が冬になっているような気がしますが、
この際細かいことはいちいち気にしないで話を進めましょう。

 

続く。

 


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