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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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令和四年年初め 旧年度お絵かき作品ギャラリー

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平成三年度に制作したイラストを一挙に紹介する恒例のお絵かきギャラリー、
改めて紹介した映画の内容を振り返りながらアップしてきましたが、
ようやく最後になります。

東支那海の女傑戦争映画に名を借りた戦後スパイアクション
前編 中編 後編
当作品はディアゴスティーニの「戦争映画コレクション」の一つでしたが、日本軍が登場し、戦闘シーンも一応あるのに、なぜか戦争映画に思えない、
という、あの昭和の時代の東宝作品特有の世界感に支配されています。

また、主人公である天知茂が、軍人にしては必要以上の
男の色気みたいなのを振りまいているせいもあって、決してそうではないのに、
わたしなど一連の天知茂戦争ものに「エログロナンセンス」という言葉を
失礼にも思い浮かべてしまうのでした。
天地の相手役は、東宝の社長大蔵貢の愛人として有名だった高倉みゆきで、
つまりこの映画は社長が自分の愛人をヒロインとして企画した、
完全に公私混同作品ということになります。
戦争映画のヒロインというと、一般的には、主人公の軍人の帰りを待つ女性とか、
従軍看護師あたりが相場ですが、この映画に限り、
女主人公は男顔負けの立ち回りをする派手な役である必要があったので、
「支那海を根城にする海賊の女頭領」なんてキャラをぶち上げたというわけです。
確かにこの設定は、オリジナリティという点では際立っています。
日中戦争時代の大陸なら日本人が登場しても不思議ではありませんし、かつ
波乱万丈でロマンを感じさせる冒険映画としての舞台装置としてはバッチリです。
しかしながら、これに無理やり帝国海軍と絡ませたため、
海軍的にはあり得ないことの連続になってしまいました。

まず、天知茂演じる一階の海軍大尉が特務機関から受けた密命というのが、
国家予算に相当する時価総額のダイヤを日本に運ぶこと。
一応そのダイヤは日本国民の資産ということになっていますが、
なぜそれが中国にあって海軍が持って帰るのかって話ですよ。

そのダイヤを日本に運ぶのに軍艦が使用されるだけなら問題はなかったのですが、
なぜか天知茂は東支那海に跋扈する海賊からダイヤを守るため、
驚くことに一大尉の分際で独断で海賊軍に軍艦を売ってしまいます。
そのときも散々ツッコんだのですが、警備艦とはいえ軍艦なのだから、
そのまま普通に東支那海をぶっちぎればいいのに、所有権を海賊に譲渡し、
剰えそれを操艦させ、女頭領に指揮を取らせるという展開がどうも納得いきません。
一番これはあかんと思ったのは、いつの間にか高倉みゆきが
軍艦「呉竹」の名前を「泰明」号なんていうラーメン屋の屋号みたいなのに変え、
艦橋で攻撃の指揮まで執り出した時でしたね。
何しろ彼女は、女性、中国人(おまけに海賊)という、この頃の日本男児にとって
最も命令されたくなさそうな条件を三つ兼ね備えているんですから。


東宝スパイ映画(的なもの)のお約束、それは軍人を演じる我らが天知茂と、
スパイとか海賊という怪しい立場の女性が恋に落ちるという展開です。

その際、天知茂はわたしの知るかぎり、必ずと言っていいほど
その女性に対し、ツッコミどころ満載の名言を残してくれます。

あの世紀の新東宝名作「謎の戦艦陸奥」での天地の相手役は
女スパイであるバーのマダムですが、彼女の「陸奥」の造船技師だった父は
スパイの疑いをかけられて銃殺され、なぜか「陸奥」を憎んでいます。

繰り返します。
海軍ではなく、彼女が憎んでいるというのは戦艦「陸奥」なのです。
それに対し、部下にも「陸奥」大好きっ子を公言して憚らない副長の彼が
マダムに向かって投げかける謎のセリフがこれ。
「私は陸奥を愛している。
だから君も嫌いにならないでほしい」

そしてこの映画では、海賊の女頭領に向かってこんな問題発言を・・・。

「僕はあなたをそんな人だとは思いませんでした。
もっと・・・女らしいひとだと思いたかった」
「なぜもっと女らしい道を選ばないんです!」
好きになった途端、流し目しながら自分の好み視点で説教から入る天地。
もう最高です。

さて、映画では陛下の御船たる帝国海軍の軍艦を、
よりによって中国海軍に売り渡してしまい、名義が譲渡されると、
帝国海軍軍人が海賊どもに操艦ができるように訓練が行われるという、
とんでもない展開となって驚かせてくれます。

昨年末ご紹介した呉越同潜水艦映画、「Uボート最後の決断」では、
成り行き上、手を取り合ってUボートの操艦を余儀なくされた米独の潜水艦乗員が
同じ作業を通じて互いの間にいつしか同志的な連帯が生まれるという
実に映画的なストーリーとなっていましたが、この時には、
中国人海賊は所詮海賊、帝国海軍の軍艦を操艦する作業はあまりに過酷で、
最後まで「呉竹」乗員はダメ出しを続けていました。

しかもその後、海賊たちは張啓烈の反乱に付き合って全員が決起し、
あっという間に掃討されてしまうのです。
この反乱のどさくさに、軍艦はいつの間にか海軍の手に戻っているのですが、
売ったのなら所有権はまだ海賊(高倉みゆき)にあるはずなんだがな。
しかも、その軍艦を、中国海軍の艦隊に囲まれた途端、
艦長が一人残って自沈させてしまうという展開に・・。
その後海賊の女頭領は、なぜか一族郎党を見捨てて、
日本に天知茂と一緒に渡り、幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。
と言いたいところですが、初期設定の「ダイヤを持ち運ぶ」という密命は
いつの間にか彼らの中でどうでも良くなっていたとみえ、
天知茂は、ダイヤを「呉竹」から持ち出さないまま内火艇に乗り込み、
そのまま日本にさっさと向かっております。


マーフィーの戦争 Murphy's War”何もかもがうまくいかなかった” 超大作映画
”夫婦共演の映画はヒットしない”マーフィーの法則

明らかに「マーフィーの法則」を想起させるタイトルなので、
こちらもマーフィーの法則と絡めて解説してみました。
自分が乗っていた船を沈めたUボートに、周りがドン引きするほど執拗に、
しかもたった一人で戦争を挑む、マーフィーという男の話です。
この映画が専門家からも一般大衆からも全く評価されず、
予算をかけた割に全くヒットしなかったのはなぜだろうか、
ということを、「映画ヒットのセオリー」を紐解いてまで
解明しようと試みたという意味で、当ブログにとっても画期的な作品です。
実際のバラオ級潜水艦にダズル迷彩を施して、
ベネズエラ海軍に操艦などの協力を得て、さらには水上艇の飛行シーン、
クレーンをUボートに落とすシーンなど、何かとお金をかけたのに、
如何せんキャラクターに魅力がなく、人物描写が杜撰なため、
全く主人公のマーフィーの必然性のない行動に誰もが共感が持てなかったから、
というのがわたしの分析した映画失敗(って言っちゃう)の原因です。
この映画は主人公を演じたピーター・オトゥールの実際の妻である
シアン・フィリップスが女医の役で共演しています。
二人が実際の夫婦だからか、二人の間にはラブシーンはなく、
役の上で恋愛関係に陥るという展開にはなりませんが、
わたしが思うに、そのせいでどうにも画面に緊張感が感じられません。
共演後に結婚に至るならともかく、すでに連れ添って長い二人が共演しても
映画はあまり成功しないというのはあながち嘘ではないと思いました。
「SAVE THE CATの法則」に外れた映画はヒットしない


映画がヒットするには、「セーブザキャットの法則」が必要と言われています。
そこで当ブログでは、この映画がヒットしなかったわけを、
この猫救いの法則に照らしてみました。

すると、その結果、主人公があるきっかけで行動を起こす前に、それに対して
抵抗したり逡巡したりする、という過程が欠けていることがわかりました。

つまり、マーフィーがなぜ偏執的な復讐者となったのかについて、
全く躊躇いも自省もなかった、というわけで、そんな人物描写の雑さが
観ているものに共感を与えにくいという結論に至ったのです。

”危険物は必ず落ちてほしくないところに落ちる”


終戦になったという言葉を聞いてマーフィーがいう、

「あいつらの戦争はな。俺のはまだだ」
は、この映画を象徴する台詞の一つでしょう。
相棒だったルイにドン引きされて見捨てられたマーフィーは、
その後海底に沈没したUボートにとどめを刺そうとして、
自分も命を失うという、後味の悪いエンディングで映画は幕を閉じます。
たまたまテレビで再放送をしていたとかならともかく、
わざわざお金やましてや時間を使って観るべき映画ではありません。
最後に、わたしがここまでこの映画を嫌うのは、
主人公マーフィーに対する、拭い難い嫌悪感が大きな理由でした。だって共感できるポイントがたった一つもないんだもん。




「オキナワ」神風との対決 OKINAWA
超低予算ニュースリールツギハギ戦争映画
エド・ウッドの低予算映画?


映画史から全く顧みられることもない、世紀の駄作にも光を当てることで、
映画という映像芸術のある意味深淵に迫ってみた挑戦的な試みです。
苦心して探し出した映画サイトの本作品感想欄はどれも痛烈で、
その中から、「(酷すぎて)エド・ウッドの戦争映画かと思った」
という名言を見つけた関係で、知らなくても人生に何の影響もなかった
ハリウッドの反天才監督、エド・ウッドなる人物の存在を知ってしまったほどです。
ストーリーなんてのはこの映画にはなく、ただひたすら
ピケット艦である駆逐艦「ブランディング」の砲兵たちと幹部が、
神風特攻に怯えながら配置と解除を繰り返し、
その間愚にもつかん無駄話が甲板とバンクで垂れ流され、
ついに特攻に激突され、死者を一人出して最後に祖国に帰るところで終わります。




ブログの編集画面が変わって、1日で終わらすつもりのログが
字数制限を超えて二日に分けざるを得なくなったため、
最初に制作したタイトル絵を二日分に分けて書き直すことになったのですが、
他の映画紹介では全く苦にならないこれらの作業も、
あまりに映画がくだらなかったので腹立たしくさえ感じてしまいました。

ただ、彼らが勘違いして航空特攻だと思って採用した
陸軍の義烈空挺隊の特攻出撃シーンが映像として結構な分量収録されており、
ここだけが映像作品として後世に残す意味を持っていると言っておきます。

本年度扱った中で紛れもなくその低質さ、くだらなさ、志の低さ、
低予算においてナンバーワンの駄作だと太鼓判を押します。


というわけで、旧年度の映画紹介を終わります。
今年も継続していろんな戦争関連の映画をご紹介していければと考えておりますので
よろしくお付き合いください。



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