前回のプラウラーを持ちまして、フライング・レザーネック航空博物館の
展示航空機の紹介を終わったわけですが、ここには
どういう経緯かわかりませんが、航空機以外のものもあります。
まずワイルドキャットの横にあったこれですが、
おそらくこれは何のことはない牽引式のトレーラーです。
向こうには給油用のタンカー車が見えます。
問題はこれ。機銃があったのでそのご紹介をしましたが、
ここには戦車もあったのです。わたしにとって大変難儀なことに、戦車の類に説明がいっさいありません。
タンクの種類には違いないのですが、いかんせん砲が短いので
自走榴弾砲というようなものではないと思われます。
英語でいうところのarmoured personnel carrier、装甲人員輸送車的なものではないかと。
陸自の装備でいうと73式装甲車が一番近い気がします。
これはハウザー(榴弾)的な?
M60パットン戦車
これがパットン戦車であることくらいはわたしにもわかりました。
「パットン」は愛称であり、制式名称ではありません。
M60は46、47、48ときていきなり第二次世代バージョンで、
アメリカ軍では1991年の湾岸戦争まで使われていたそうです。
イランに供与された車両は異端イラク戦争でソ連製戦車と戦闘していますし、
トルコ軍のパットンはなんなら2014年でもISILと戦っていたそうです。
ところで超余談ですが、今回戦車画像を検索していて、
エジプトの自国製戦車の名前が「ラムセス二世」であることを知りました。
あと、カナダ軍は巡航戦車に「ラム」「グリズリー」という名前をつけています。
牡羊に灰色熊。
どちらも強いっちゃ強いですが、野生動物というのがカナダらしいですね。
■ ハンヴィーHMMWVとは
説明なしといえばこんなものもぞんざいに展示されていました。
陸自のLAVと言われる軽装甲機動車に似ています。
アメリカ軍の汎用軍用車のことを
「ハンヴィー」
(HMMWV, High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle,
高機動多用途装輪車両)といいますが、そのどれかといった面持ちです。
ちなみにわたしはつい最近までハンヴィーを車の名前だと思っていました。
現在アメリカ軍は、陸軍、海兵隊、特殊作戦軍統合によるハンヴィーの後の
JLTV(Joint Light Tactical Vehicle, 統合軽戦術車両)
を制定したばかりで、(といってももう6年前ですが)
オシュコシュのL-ATVが2018年以降調達されているはずです。
これはハンヴィーの一部を、より大きな積載量を持つ、
より生存性の高い車両ファミリーに置き換えるという計画です。
■ ドローン・ランチャーRQ-2パイオニア
まず、航空博物館のヤードに、突如レールを乗っけた
迷彩のトラックが現れました。
これは
M939 5tトラック M939 Series 5t Truck
言うて全く普通のカーゴトラックなのですが、問題は
これが乗っけているレールです。
このトラックは実はドローンのランチャー装置を載せているのです。打ち上げるドローンというのがこれ。
AA1 RQー2B パイオニア Pioneer
RQ-2パイオニアは、1986年から2007年まで
アメリカ海軍、海兵隊、陸軍で使用された無人航空機です。
当初は「アイオワ」級戦艦に搭載され、
砲撃スポットを提供するための偵察機としての能力がテストされましたが、
のちにその任務は主に水陸両用部隊のための偵察・監視に発展しました。
開発はアメリカの航空機関連企業であるAAIコーポレーションと
イスラエル航空機産業会社の共同によるもので、
なぜここにイスラエルの企業が出てくるかと言うと、このプログラムが
もともとイスラエル発のドローン機、
タディラン・マスティーフTadiran Mastiff UAV
の実戦運用をきっかけに生まれたことに由来します。
タディラン・マスティフIII
マスティフはイスラエルで製造・運用された無人航空機(UAV)ですが、
アメリカ軍がレバノンに駐留するようになってからは、
何でも欲しがる米海軍が(個人の感想です)興味を示し、
無人偵察機開発の要求を行った結果、イスラエルの製造会社はこれを引き受け、
アメリカ企業がこれに乗っかる形で共同開発という形をとったのでした。
これはアメリカ軍そのものが、外国製品の輸入をよしとしなかったからです。
パイオニアは、海軍の要請により、より大量のペイロードを搭載するため、
このタディラン・マスティフをベースに、
それまでのリンバッハ社製の2気筒2ストロークエンジンから、
フィヒテル&ザックス社製の2気筒2ストロークエンジンに変更しました。
リンバッハ・モーターには、カリフォルニア州サンクレメンテにある
プロペラ・エンジニアリング・アンド・デュプリケーション社の
28インチ・プロペラが使われていましたが、
よりパワフルなフィヒテル&ザックス社製モーターには、
ペンシルバニア州ランカスターにある
センセニヒ・プロペラ・マニュファクチャリング・カンパニー社製の
29インチプロペラ(回転方向が逆)が搭載されました。
USS 「アイオワ」(BB-61)の乗組員がRQ-2 Pioneerを回収している
パイオニアは、ロケットアシスト装置(艦上)、カタパルト、滑走路から発射され、
34kgのペイロードを搭載して最長5時間飛行した後、
ネット(船上)またはアレスティングギアで回収します。
ビデオはジンバル式のEO/IRセンサー、CバンドのLOSデータリンクを介して
アナログ映像をリアルタイムで中継します。
1991年以来、パイオニアはペルシャ湾、ソマリア(UNOSOM II)、
ボスニア、コソボ、イラクの各紛争で偵察任務に従事してきました。
2005年には、海軍がパイオニアを2機(1機は訓練用)、
海兵隊が2機を追加し、それぞれが5機以上を運用している状態です。
外国軍で運用しているのは「発祥」となったイスラエル軍以外は
シンガポール共和国空軍です。
2007年、パイオニアはアメリカ海軍での任務を退役しました。
後継機となったのはRQ-7シャドーShadowUAVです。
イラクで運用中のRQ-7
こちらはアメリカ軍以外ではオーストラリア、イタリア、パキスタン、
ルーマニア、スウェーデン、韓国軍が運用しています。
【日本の無人機】
こういうのがいかにも得意そうなのが日本人じゃないかという予想通り、
日本では無人機の軍運用は大日本帝国軍時代から始まっていました。
完全自動操縦装置(帝国海軍)
海軍航空技術廠(空技廠)兵器部が進めていた完全自動操縦技術の実験で、
1937年(昭和12年)頃には研究が始まっています。
敵機編隊内での自爆攻撃、無人雷撃、新型機の無人試験飛行、
標的機や囮機としての運用などを目的に開発されたもので、中二的命名が好きな軍がなぜかこれには全く名前らしい名前をつけず、「完全自動操縦装置」
というのがこの無人機の名称だったようです。
まあ無人機なんで、かっこいい名前をつけたところで
それを誰が操縦するわけでなし、士気高揚の必要性もなかったってことでしょう。
無線操縦は油圧を介して他の誘導機から行われるという仕組みで、カタパルトで射出するとその衝撃によって時限装置が起動、
補助翼、方向舵、昇降舵の順で離陸前に所定位置に
セットされたクランプが外れていき、羅針儀と速度計の計測を元に、
一定高度まで自動上昇した後に無線操縦に切り替わり、着水も誘導機からの信号を受けてエンジン出力が絞られ、
水面に接触するとスイッチが作動してエンジンが自動停止する仕組みでした。
という感じで大変有用な機体となるはずでしたが、
いかんせん製作費が高すぎて運用できなかったということです。
そのほか、1930年代には個人が発明した
低翼単葉ロボツト機海軍が試作した軍用グライダー
無人標的機MXY3、
一式標的機MXY4などがありました。
日本の無人航空機のリストを挙げておきます。無人標的機 UF-104J/JA(F-104型無人機1997年退役)無人標的機 J/AQM-1空対空用小型標的 J/AQM-2(2012〜)無人標的機 KAQ-1(1950〜生産終了)空対空用無人標的機 KMQ-5遠隔操縦観測システム (FFOS)(陸自・遠隔操縦観測システム)新無人偵察機システム (FFRS)(無人偵察機システム)無人機研究システム(元・多用途小型無人機TACOM 防衛装備庁・富士重工)携帯型飛行体GPSカメラ搭載自律飛行機無人航空機用制御装置球形飛行体JUXS-S1IR-OPVフジ・インバックB2HYFLEX(NASDAによる極超音速実験機)ALFLEX(NASDAの自動飛行実験機)RTV(JAXAの完全再使用ロケット開発実験機)HSFD(JAXA)NEXST-1(NAL/JAXA小型超音速実験機)LIFLEX(JAXA)URAMS(放射線モニタリング無人機システム)S3CM(低ソニックブーム設計概念実証プロジェクトの静粛超音速研究機)McART3RCASS(ヤマハ発動機・農業量無線操縦ヘリコプター)R-50(ヤマハ発動機・無線操縦ヘリコプター)RMAX(ヤマハ発動機・ドローンヘリコプター)RMAX Type IIRMAX Type II GFAZER(ヤマハ発動機・多目的無線操縦ヘリ)戦後ドローン関係だけで日本はこれだけ運用した実績があります。
これはアメリカに次ぎ、ドローンの本場イスラエルより数は多くなります。
JAXAとNASDAがドローンを使った実験を行なっているためです。
【パイオニアの運用】
1991年の湾岸戦争で、アイオワ級戦艦USS「ウィスコンシン」(BB-64)が
発進させたパイオニアは、USS「ミズーリ」が塹壕を攻撃した直後、
イラク軍が降伏したのを確認し、国際的に有名になりました。
戦後、海軍がパイオニアをスミソニアン博物館に譲渡することを申し出たところ、
国立航空宇宙博物館の学芸員は、
「湾岸戦争でイラク軍が投降した瞬間を確認したUAV」
の寄贈をリクエストしたといわれています。
1991年の湾岸戦争では、アメリカ陸軍はアリゾナ州の駐屯地にあったUAV小隊を
三度ホーク作戦に飛行監視と目標捕捉の任務に投入しました。
ちなみに、パイオニアの名称の「RQー2B」の意味ですが、
「R」は国防総省の呼称で、偵察を意味し、
「Q」は無人航空機システムを意味します。
「2」は、目的を持って作られた無人偵察機システムの
これが第2弾であることを意味しています。
主な機能
砲兵の照準・捕捉、近接航空支援の制御、偵察・監視、
戦闘被害評価、捜索・救助、心理作戦
コントラクター パイオニアUAVs, Incorporated、イスラエル航空機産業仕様
全長:4メートル
全高:1.0メートル
重量:205キログラム
翼幅:5.2メートル
速度:110ノット(200km/h)
航続距離:185kmで5時間(100海里)
高度:4600メートル
燃料容量:44〜47リットル
ペイロード デュアルセンサー(12DS/POP-200/POP-300)
在庫数 175台納入/35台就航
オペレーター
アメリカ海軍
VC-6「ファイアービーズ」ノーフォーク海軍基地(退役)
訓練航空団第6UAV分遣隊。海軍航空基地ホワイティングフィールド(退役)
アメリカ海兵隊
VMU-1「ウォッチドッグス」海兵隊航空地上戦闘センター
VMU-2「ナイトオウルズ 」
スリランカ空軍・海軍
続く。