さて、というわけでいよいよ「シルバーサイズ」に乗艦です。
■入艦
階段を数段降りたところにエスケープ・チャンバーがあり、
ドアを開けて中が見える状態になっていますが、中には入れません。
急いでいたこともあって、この中の写真(特に天井とか)
を撮らなかったことは痛恨の極みです。
(痛恨の極み多すぎ)
「シルバーサイズ」のパンフレットでは、その名も「BELOW」としてこのような構造図を紹介しています。
この「ビロウ」はあの「ビロウ」とは別だと思うのですが、
映画にかけた可能性も微レ存。
ここで水密コンパートメントの解説があります。
「シルバーサイズ」には、9つの水密コンパートメントがあります。
各コンパートメントは、防水ハッチによって
隣のコンパートメントから隔離されています。
以下の図はこの区分を図に表しています。
そして、下の潜水艦図に示されている区画のほとんどを
あなたはこれから歩いて通過していくことになります。
1. フォワード・トルピード(前方魚雷室)
2.オフィサーズ・ワード(士官居室)
3. コントロール・ルーム(制御室)
コニング・タワー(司令塔)
4. クルー・クォーターズ(乗員食堂)
5. フォワード&アフトエンジン(前後方エンジン室)
6. マニューバリングルーム(操作室)
7. アフター・トルピードルーム(後方魚雷発射室)
「シルバーサイズ」のスペックも一応書いておきます。
全長 95.02 m
全幅 8.31 m
排水量 1,526トン(水上)
2,426トン(水中)
乗員:士官8名 兵員72名(平時)士官、兵員70名
(戦時)士官、兵員80-85名
起工(keel laid)1940年11月4日
就役(Commissioned)1941年12月15日
退役(Decommissioned) 1946年4月17日
除籍(Stricken from Naval Resister)1969年6月30日
国定記念物指定(Declared a National Landmark)1986年
マスキーゴン係留(Relocated to Muskegon)1987年
「シルバーサイズ」鑑賞のポイント:
USS「シルバーサイド」SS-236は、
第二次世界大戦で生き残った最も有名な潜水艦です。
彼女は非常に多くの船を撃沈しました(30隻沈没、14隻撃破)。
また、2名のアメリカ軍パイロットを救出し、
個々のパトロールでは16基もの機雷を敷設しています。
「シルバーサイズ」は盲腸の切除手術をその管内で、
しかもファーマシストメイト(薬剤科員)の手によって行った
史上唯一の潜水艦として有名であり、このエピソードは
ケーリー・グラント主演の映画、
「デスティネーション・トーキョー」
の中でも描かれています。
また、映画「ビロウ」の撮影にも使われました。
そういえば「デスティネーション・トーキョー」、
まだ取り上げたことがなかったですね。
検索してみたら、ちょうど盲腸患者が出るシーンが見つかりました。
Destination Tokio (1943) - Cary Grant
ファーマシストが俺が手術してやる、というと、
盲腸患者の水兵は痛み以上にドン引きしています。(4:08~)
実際の彼も、このときもう俺オワタ\(^o^)/と思ったに違いありません。
階段を降りながら写真を撮りました。
前方魚雷室(Forward Torpedo Room)です。
最初の区画ということで、注意書きがあります。
内容は、上にあったのとほぼ同じで、
USS「シルバーサイズ」(SS-236)へようこそ!
注意
「あなたとわたしたちの安全のために、
バルブ、レバースイッチなど、機器を操作したり、
ハッチやキャビネットを開けたりしないでください。
この潜水艦に搭載されているすべての機器はまだ稼働しています。
メインエンジンやその他の機器も定期的に作動させています。
作動イベントのスケジュールはギフトショップでお求めください。
保護者と成人の方はお子様から目を離さないようお願いします。
皆様のご協力により、この歴史ある潜水艦を
後世に残すことができるのです」
■前方魚雷室
私がここに降りたとき、ちょうどここには
「CREW」と背中に書かれたボランティアらしい若い人(高校生?)
が魚雷チューブの前に佇んで何かをしていました。
そのせいで、近くに行って中を覗き込んだり、
その天井部分の写真を撮ることができませんでしたが、
これはもう致し方ないでしょう。
最初のコンパートメントである前方魚雷室には、
前方の先に6つの磨かれた真鍮の魚雷発射管があります。
魚雷の後ろにあるのが長さ22フィートの
Mark XIV(14)魚雷のラックで、これが魚雷の乗った状態でです。
Mk.14は大戦始まりからずっと使われていた魚雷ですが、
何かと問題が多く、ある日撃っても当たってもさっぱり不発の魚雷に、
こんな魚雷で戦えるかあ!と、業を煮やした
ガトー級潜水艦「ティノサ」のローレンス・ダスピット艦長が
ニミッツ提督に直訴して、改良されたものが普及するようになりました。
意外と温厚そうなダスピット少将(最終)
第三図南丸花魁事件
ちなみにこの第三図南丸を攻撃した時の、
絶望を感じさせずにはいられない不毛な魚雷攻撃は、
ダスピット艦長によって次のように報告されました。
「ティノサ」が5本の魚雷を命中させているのに、
全く沈む気配のない船に全員が『?』となってからの記録です。
10時11分:8本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
10時14分:9本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
目標は潜望鏡の視界内にあり、魚雷は正しく航跡を描いている。
ネットの有無を観測したが見当たらない。
10時39分:10本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
10時48分:11本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
この魚雷は船尾側によく当たり、そのたびに水柱を作っている。
そのあと、タンカーの船尾方向に右へと曲がり、
100フィートほど水面上に出る様子を観測した。
私はこの様子を見ているが、納得することは難しい。
10時50分:12本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
11時00分:13本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
反対側で射撃を行っているようだ。
11時22分:高速のスクリュー音を探知。
11時25分:艦首正面方向に、接近しつつある駆逐艦のマストを発見した。
11時31分:14本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
11時32分30秒:15本目の魚雷を発射。命中。何ら影響は見られない。
駆逐艦が1000ヤード以内に入ってきたため、深深度潜航に移る。
魚雷は確かにタンカーに命中し、航行する音も止まったことを確認した。
潜望鏡も下げたが、まったく爆発しなかった。
基地で検査を行うため、最後に残った魚雷を保持することとした。
これはどんな温厚な人物でも激怒しますわ。
写真の印象のみならず、ダスピット艦長は実際にも冷静で、
日頃動揺のかけらも見せないタイプと思われていたのですが、
その彼に直接キレちらかされた太平洋艦隊潜水部隊司令官、
チャールズ・A・ロックウッド中将も、
「ダンの怒りは相当なものだったように思う」
と(控えめに)述べています。
結論としては、Mk.14型魚雷の磁気信管と爆発尖の不良が原因で、
ターゲットに直角かそれに近い角度で命中すると、
雷管につながるピンが折れて爆発しなくなることがわかりました。
これを受けてアメリカ海軍では早速改良を行うわけですが、そういえば、この魚雷改良についてのエピソードも、
過去当ブログで取り扱った潜水艦映画で取り上げられていましたよね。
(ジョン・ウェインの「太平洋機動作戦」”Operation Pacific”)
アメリカの戦争映画のエピソードは、戦中戦後問わず、実際の
世間の耳目を集めた軍事ストーリーを取り入れがちなんですね。
ただし、この改良は最後までうまくいかず、結局「シルバーサイズ」も
おそらくMk.18という電気魚雷を採用していたと考えられます。
後半では魚雷発射のメカニズムについて概要をお話しします。
続く。