さて、潜水艦「シルバーサイズ」の魚雷についてお話ししています。
■2種類の魚雷
「シルバーサイズ」は蒸気式と電動式、2種類の魚雷を搭載していました。
Mk.14が蒸気式、Mk.18が電動式とご理解ください。
「シルバーサイズ」がMk.14をどれくらい搭載していたのかわかりませんが、
少なくとも、潜水艦「ティノサ」のように、
撃っても撃っても艦体に突き刺さるだけで全く爆発せず、
おかげで相手はまるで花魁のかんざしのように魚雷を突き刺して帰還した、
というような特殊な例には遭遇しなかったのは確かです。
これは、魚雷の当たる角度に助けられて、
信管の故障を疑うほどの失敗に至らなかったせいかもしれません。
残念兵器とまで言われているMk.14ですが、「ティノサ」の例は特別で、
少なくとも「シルバーサイズ」では普通に搭載していたようです。
そして、この後魚雷を装填してから何が行われるかの説明となりますが、
「蒸気式」とあることから、Mk.14についてのものだと思われます。
長さ22フィート、重量3,000ポンドのスチーム「フィッシュ」は、
時速45マイル、有効射程は2,000ヤードを超える
350馬力のアルコール・タービンエンジンを搭載しています。
魚雷は装填されてから、発射管の外側にある各種レバーによって、
●深度(逆回転プロペラの横にあるベーンによって制御)
●速度(高速か低速か)
●ステアリング ジャイロ(ラダーを制御する)
の設定を行います。
トーペックス(torpex、torpedo Explosive)爆薬
は艦首の近くにあり、その後ろには大きな圧縮空気ボトルがあります。
この圧縮空気で、高圧を発射管に送り込むのです。
これが発射バルブとなるのですが、発射バルブを開くのは、手動か、
ソレノイド(導線を巻いたコイル)と呼ばれるレバーを使います。
魚雷プロペラは指示方向と逆に回転します。
ちなみに電気魚雷と蒸気魚雷の違いは、速度です。
電気魚雷は遅いのですが、蒸気の跡が残らず、
音響ホーミングヘッドを取り付けることによってステルス性は高くなります。
コンパーメント内に、親切なことに魚雷発射についてわかりやすく、
何が起こっているか書いたパネルがありましたので、それを書いておきます。
フロアデッキの下にはメイン バラスト タンク(MBT)#1、
ウォーター ラウンド タンク(WRT)、
さらにフォワード トリム タンクがあります。
MBTは潜水・浮上装置の一部、WRTは魚雷発射管への注水用水、
前部トリムタンクは魚雷発射後の重量減少を調整するためのものです。
では、魚雷はどのように発射されるのでしょうか?
まず、魚雷発射口を閉じた状態で、魚雷をローラーに載せて
ブロックとタックル(ロープ的な)で魚雷管内に引き込む。
その後、ブリーチドア(後部ハッチ)が閉じられるとチューブベントが開き、
チューブとWRTの間のドレインバルブが開き、
WRTが加圧されて水が引き込まれ、魚雷発射管内は浸水する。
コニングタワーの魚雷データコンピュータで決定された速度、深度、
ジャイロ角度を、チューブ側面の格納式ピンで設定する。
魚雷発射は、コニングタワーから電子制御で行われ、
発射ドアが開き、魚雷が発射される。
魚雷はプロペラに引き継がれる前に、圧縮空気を吹き付けて発進させる。
発射管から出ると、魚雷は正しい深度と速度を想定し、正しい方位に旋回し、そこからはひたすら直進する。
管内に別の魚を再装填するには、外扉を閉め、ドレーンバルブを開き、
管内を加圧して管内の水をWRTに押し流し、ブリーチドアを開ける。
他のコンパートメントと同様、前部魚雷室は窓もなく、
窮屈で混雑した暑い作業空間でした。
この部屋を見ていると、ここで勤務していた乗組員の勇気、技術、
献身にただ驚かされるばかりです。
文章で理解するのが面倒!という方にはこれを。
最初はマーク14型の残念ぶりを説明していますが、
7:00~からは構造と発射の仕組みが
↓【ゆっくり解説】欠陥魚雷Mk14・構造としくみ
ところで、前方魚雷室は、圧力船体の前方40フィートを占め、
ボートが水面にあるときもほとんどは水中にある部分です。
ほとんどの潜水艦のコンパートメント同様、
このコンパートメントにも特に重要な部位がぎっしりと詰め込まれています。
先ほど、「前方にチューブは6つある」と書きましたが、
「ガトー」級潜水艦の、前部コンパートメントの断面図をご覧ください。
6つのチューブの後部3分の1だけが見えており、
残りは前方のトリムバラストタンクに埋まっています。(黒部分)
また、潜舵、バウ・プレーン・ティルトのシャフトは、
ティルトの機構とともにチューブの上にあります。
これが正直どこを指すかよくわからんのですが、おそらくチューブの上の、
白くて大きな管の内部にシャフトがあるのではないでしょうか。
(ちょっと適当)
また、魚雷チューブの上部をご覧ください。
クロム製のベントとブロー・マニフォールドというものがあり、
これで魚雷発射前に管から空気を排出して、管の内部を水で満たします。
魚雷の間にはグリーンの小さなスツールがありますが、
レバーの管理をする乗員の定位置です。
また、高圧空気弁は、発射後に管から水をブローつまり吹き飛ばします。
一発撃つごとにこれだけの準備と、撃ってからも一定時間を必要とするので、
一方の魚雷発射室には6基ものチューブが必要になってきます。
チューブの後ろには、長さ22フィート(約670cm)の魚雷ラックがあります。
ご覧の通り、魚雷発射室は乗員の寝室を兼ねていて、
魚雷の上下にバンクと呼ばれる兵員用ベッドが配置されています。
ウォー・パトロール、戦時哨戒に出発するときには、
合計18基の魚雷を満載していくのが通常だったので、
乗員は別のところ(どこだろ?)で寝なくてはなりませんでした。
部屋の中央頭上に配置されているのは、
油圧モーターを駆動するための電気モーターです、
これらの油圧モーターは、前方の潜水面を傾けたり、
あるいはリグを出し入れしたり、錨を上げ下げするのに使われます。
そして、その後方に、写真には写っていませんが、ここにも
エスケープ・トランクがあります。(図の甲板に続く部分)
沈没した潜水艦から脱出できる耐圧コンパートメントで、
「シルバーサイズ」には二箇所これがあります。
また、この後方には、魚雷を甲板から前部コンパートメントに積み込むための
装填ハッチ(トルピード ローディング ハッチ)があります。
装填ハッチの下が、これ。
そう、ヘッドとシャワー室です。
その他、二つのクロム超音波ソナーシャフト、
多数の電子制御および機械制御がぎっしりと詰まっています。
続く。