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令和4年度映画タイトルギャラリー その4

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新春映画タイトルギャラリー、最終日となりました。
しかし、こうして挙げてみると、去年は映画紹介が多かったなあ。
過去最高の作品数だったような気がします。
■ 「緯度0(ゼロ)大作戦」”Latitude Zero”
日米合作SF特撮浪漫

「海底2万マイルの国」
昔々、アメリカの二人のプロデューサーが、
とても面白いドラマをラジオ番組のために企画しました。

それは、他でもない1870年にジュール・ベルヌが発表した
「海底二万里」を、文字通り「深化」させたもので、この地球の海の下には人類にはまだ知られざる世界、
緯度ゼロの土地が存在しており、高度な文明によって管理された社会で
人々は幸せに暮らしているという設定にはじまっていました。
しかしこの企画はアメリカでは当時相手にされなかったため、
彼らはアメリカ文化偏重でなんでもありがたがる傾向にあった日本に
上から目線で一気に映画化を持ち込んだのです。

アメリカ側から「第3の男」の主役、ジョセフ・コットン、そして
シーザー・ロメロといういい役者をキャスティングし、
日本からは英語の堪能な当時のトップスターを集めたのですが、
さあ撮影開始というところで、このアメリカの制作会社、
倒産してしまいます。

しかし乗りかかった船、日本側は俳優にギャラの支払いを待ってもらい、
コットンやロメロなどが漢気を見せて契約を継続したため、
なんとか撮影することができたのが、本作「緯度ゼロ大作戦」です。

いや、こうして経緯を記すととんでもない詐欺じゃないか、
と思うわけですが、1969年当時、さあこれから高度成長期というとき、
日本人にまだまだ根強かった外国に対するコンプレックスが、
こういう無茶苦茶なビジネスを横行させる理由だったという気がします。


さて、ストーリーは、海底探査船「富士」の潜水球で調査中、
海底火山の爆発に巻き込まれてしまった海洋学者、
宝田明、岡田真澄、アメリカ人ジャーナリスト、リチャードの3人が、
目覚めたら緯度ゼロに位置する海底の国が所有する潜水艦、
「アルファ」号に収容されていた所から始まります。

海底人であり科学者、アルファ号船長の役がジョセフ・コットン。
そして潜水艦乗組の医師が平田昭彦とリンダ・ヘインズ。

このリンダ・ヘインズという無名の女優については、
なぜかその存在に強く惹かれたクェンティン・タランティーノが
引退後を追跡し、本まで記していることをこの映画の解説で知りました。

よっぽど好みドンピシャのタイプだったんでしょうかね。
海底にはかつては艦長の同級生であった科学者、
シーザー・ロメロが率いる悪の一団がいて、アルファ号を襲います。

ロメロは彼の愛人その1(コットンの奥さんが演じている)を侍らせつつ、
その2(黒い蛾という名の日本人)を潜水艦艦長として繰り、
アルファ号にちょっかいを出しまくるわけですが、
この目的は見たところあくまでもコットン個人への攻撃であり、
緯度ゼロの国に対しては何の攻撃も仕掛けてきません。
どうして同じ海底人同士仲良くできないのかというと、
どうもかれらがかつて知り合いであったことに原因があるようです。
「アンダースタンフォード大学」時代、喧嘩でもしたんでしょうか。
緯度ゼロの国の進んだ文明は、実は
地上の科学者の実績をスパイを送って盗んできたり、
死んだと思わせて科学者を攫ってきたりして作り上げてきました。
「護衛艦『いそなみ』の海軍軍人たち」


悪役が自らを悪役たらしめる悪行を行う目的というのは、創作モノでは
得てしてはっきりしない(漠然とした”世界征服”とかね)ものですが、さて、この映画でマリク(ロメロ)は一体何をしたかったのか。

それは遺伝子治療の権威、岡田博士と娘を誘拐してデータを盗むこと。

遺伝子操作で何をしようとしたのかまでは謎、というのもだけど、
自身も地球より進んだ科学を持つ国の科学者であるなら、
遺伝子操作くらい自分の力で何とかしろ、と声を大にして言いたい。

海底の国に連れてこられた地表人トリオは、何の因果もないのに、
ぶっちゃけノリで岡田親子の救出に向かいます。

そこには、マリクが悪ノリして人間を改造して作った大きなネズミやら、
蝙蝠人間やらが待ち構えていますが、彼自身は、
嫌がる「黒い蛾」の身体に禿鷹とライオンの体をつぎはぎにした、
飛ぶライオン「グリホン」に復讐されて因果応報な最後を遂げます。

その後の宝田明他、地表人3人組ですが、緯度ゼロの生活を経験した結果、
あまりにもそこでの生活が快適なのと、岡田真澄のジュール博士は
海底人のリンダ医師といい仲になってしまったこともあって、
ジャーナリストのリチャード以外はそこに残ることを選びました。


その後、リチャードが地表にもどったとき、彼が救出されたのは
アメリカの宇宙計画にカプセル回収で参加していた日本国の自衛艦でした。
そこで彼を驚きが待っています。

護衛艦「いそなみ」には、アメリカ海軍司令としてコットン、
「いそなみ」艦長として宝田明、そして宝田のカウンターパートである
アメリカ海軍側の艦長として、ロメロがしれっと収まっていたのでした。

んなあほな、といいたい所ですが、実はわたし、こういう展開が大好物です。
日米海軍の軍人姿の3人を登場させてくれたという、それだけで、
この映画に対する評価が爆上がりしたことを、ここに告白しておきます。


■ 「モリツリ〜南太平洋爆破作戦」MORITURI
極限下における海の男たちの人間ドラマ

「死に往く闘士たちの敬礼」

「モリトゥリ」という肝心の映画のタイトルの意味が理解できません。
まず、MORITURIとは、

「AVE IMPERATOR, (皇帝万歳)
MORITURI TE SALUTANT」

というローマ帝国時代の歴史家の言葉の一部で、
この英訳を英語ではこのようにしています。

Those who are about to die salute you死を前にした者たちがあなたに敬意を表する
わたしは映画の最初にこの文を引用し、映画を解説しながら
この言葉の隠喩するところを解析しようと試みましたが、
結論として「皇帝」の意味するところの存在を映画には見出すことはできず、隔靴掻痒の感のまま、この項を終わることになってしまったのです。

しかし、あれから時間が経ち、今この言葉とストーリーには、
タイトルの「MORITURI」の部分、つまり

「about to die」

という限定された意味だけが重要なのではないかということに思い至り、
なーんだ、とあたかも膝裏かっくんされたような気になりました。
それならば、この映画の出演人物たちは、一人残らず
何かの形で死と直面することになっており、特に主人公の
カイル(マーロン・ブランド)とミュラー(ユル・ブリンナー)は、
それこそ公のために死に行く覚悟で任務を遂行しようとしますから、
このタイトルには何の矛盾もなくなるというわけです。

さらに「皇帝」への忠誠を広義での公を果たすこと、と考えれば、
あれこれと悩むほどのことなどなかったのかなという気もします。
これも個人の感想ですので、正しいか間違っているかはわかりません。


さて、ストーリーは非常に複雑でありながら、荒唐無稽ではなく、
どこかの戦場で本当にあったことだとしても違和感がないくらいリアリティがあって、最後までグイグイとこちらを引き込んでいきます。
そうでない部分があるとすれば、主人公がどちらもドイツ人で、
にもかかわらずセリフが英語であることくらいでしょうか。
舞台となるのは、資源を積んで日本から出港する予定のドイツ貨物船。
貨物船「インゴ」船長は、ユル・ブリンナー演じるミュラーです。

イギリス軍に脅迫されて船の自爆装置を無効化するため
ナチス党員になりすまして「インゴ」に乗り込むカイル(ブランド)。

立場の違う二人の男の間に起こる出来事は、
次第に思想信条を剥ぎ取ったところにある人間性を顕にしていきます。

後編
冷酷で利己的、隙あれば船長の立場を乗っ取ってしまう
副長のクルーゼや、政治犯のドンキー、そして
自分の身を投げ出してアメリカ人捕虜を説得し、
カイルの反乱計画に協力するユダヤ人の娘、エスター。

これらの登場人物の思惑とそれぞれのバックボーン、
信念と正義の希求が織りなす海の上の極限の争い。

出演者の名前に比してあまりに無名ゆえ、全く存在を知らずにいましたが、
出逢えてよかったと、見終わったとき心から思えた作品でした。


■ 「軍医 ワッセル大佐」The Story of Dr. Wassell
実在の軍医をモデルにした戦時プロパガンダ作品

前編
1944年、日本軍が侵攻を続けていたジャワ島に取り残された傷病兵を
軍医として率い、彼らを無事に帰国させた実在の人物、

コリドン・マクアルモント・ワッセル博士
Corydon MacAlmont Wassell 1884−1958

がその功績を大統領に讃えられ、叙勲されたことをきっかけに、
戦時プロパガンダ映画として撮影されたのが本作品です。

ワッセル医師をゲイリー・クーパーという大物に演じさせ、
規模としてもかなり大掛かりな作品でしたが、
肝心のワッセルという人が普通に品行方正、真面目な医師で、
傷病兵部隊を連れ帰った以外に活躍というような活躍がなかったため、
映画では思いっきりあることないこと、たとえば
ワッセル本人やら傷病兵やらのロマンスをふんだんに盛り込み、
(というのが実はアメリカのプロパガンダには重要だったりするのですが)
本人からすればこれ一体誰のこと、みたいな話になってしまいました。

コリドン(変わった名前ですよね)・ワッセル本人は
映画の技術顧問として制作に協力こそしているのですが、
タイトルに名前を出さないように頼んだり、自分の親族にも告げず、
さらに映画で得た収益を全て寄付してしまっています。

これは本人の控えめで堅実な人格ゆえの行動、と言われていますが、
わたしはむしろ、ワッセル医師が、出来上がった作品を見て、
これが自分のことだなんて、と気恥ずかしく思う気持ちと、
自分がこんな風に語られるのを良しとしたと周囲に思われたくなくて、
できるだけ名前を残さない方法を選んだのではと考えています。
それくらい、この映画における主人公の軍医は、垣間見えるワッセル軍医の実像とはかけ離れているように思えてなりません。
少なくともいくつかの記事を当たった限り、ワッセル医師についての真実は、

アーカンソーで生まれ、しばらく田舎で医者をしていたが、
その後医療宣教師として中国に渡った。

1942年には、ジャワ島にあるオランダの病院で、
約40人の戦傷兵が入院している連絡係として、国連軍の中佐を務め、
その後彼らをフリーマントルまで送り届け、安全を確保することに成功した。
彼は海軍十字章を授与され、大統領によってその行為が賞賛された。
ということに尽きます。
まず、映画では、中国に渡ったのは、新聞記事で見た
マデリンという看護師に写真で一目惚れしたからとされますが、
実際のワッセル医師が医療宣教師として渡中したのは、
最初の妻メアリーと結婚してわずか2年後のことでした。
書かれてはいませんが、中国には妻メアリも同行していたと思われます。

彼女との間には4人子供を儲けていますが、15年間の結婚生活を経て
26年にメアリが亡くなると、ワッセル医師、その年のうちに、
マデリンという映画のヒロインと同じ名前の女性を妻に迎えているのです。

映画が制作された時、ワッセルの妻はすでにマデリンだったため、
制作側としては、配慮してヒロインの名前をマデリンとし、
ついでに中国で出会ったというストーリーまででっちあげました。

しかし、ワッセル医師が巷間言われる通り常識的で堅実な人物であったなら、
特に子供たちがすでに成人して映画を見ることを考えれば、
この展開はいくらなんでも・・・と考えたとしても不思議ではありません。


「軍医ワッセル大佐(改め少佐)」
制作しながら最後まできたとき、ワッセル軍医の着ている制服が
タイトルの大佐ではなく少佐であることに気がついたので、
後編のタイトルで微力ながら訂正を試みてみました。

邦題をつける映画会社の人、ちゃんと映画を見ようよ・・・。

さて、当作品の内容ですが、
実在の主人公からしてあることないこと創作されているくらいですので、
脇役となる戦傷兵や現地のオランダ軍人、看護師など、
その間でいろんな色恋沙汰が展開するのも、当然の成り行きでしょう。

アーカンソー出身のホッピーに執着するジャワ人看護師トレマティーニ、
オランダ人将校と付き合っているのを知らずに、
オランダ軍の従軍看護師を好きになるアンディ、
女とみれば誰でもいい男なども加わって、比較的どうでもいい?恋愛話が、
ワッセル本人が語ったジャワからの脱出劇の間に散りばめられていきます。

わたしは実在の人物をモデルにした物語は好きですが、この作品に関しては、
少なくとも本人が作品化にあまり乗り気?でなかったらしい、
ということを資料から推察したとたん、評価が爆下がりしてしまいました。
世間的にあまり作品そのものが有名でないのも、
あまりの装飾過多が、人心に響かなかったせいかなあという気がしています。



■ 「金語楼の海軍大将」戦後の価値逆転が生んだお笑い軍隊活劇
前編

当時すでに落語界の重鎮だった柳家金語楼が三等水兵となり、
色々あって、海軍大将として陸戦隊部隊の前に登場するという話。

当時58歳の金語楼を主役にするのなら、常識的に考えて、
海軍大将が、何かの弾みで水兵(とは言わんがそれ並の)扱いをされ・・
という方向にまずなりそうなものですが、何を思って映画会社は
こんなキテレツな設定でお正月映画を撮ってしまったんでしょうか。

しかし、それもこれもこれが金語楼だから許されたのかもしれません。
これだけの有名な大物がやってるからもういいや、みたいな。

後編

ストーリーは、中国本土の海軍陸戦隊で、現地の中国人が
坊屋三郎演じる陸戦隊の司令官(海軍大将)を誘拐し、
陸戦隊を爆破しようと企むのを、たまたま身代わりになって捕らえられた
三等水兵金語楼が、何もしないうちにあれよあれよと周りが事件を解決し、
何もしていないのに、最後にご褒美として海軍大将の格好をして
全部隊に号令をかけさせてもらうというものです。

こうして書いただけでも十分にバカバカしい内容なんですが、
そのときそのときの登場人物のドタバタに笑っているうちに、
結局最後まで面白く観てしまう、というあざとい作りとなっています。

わたしとしては、ロケが行われた横浜の埠頭や赤レンガ倉庫、
中華街などの当時の景色を大変興味深く鑑賞できて満足でした。



というところで、昨年度掲載の映画全作品紹介を終わります。

またぼちぼち、映画ログを制作していきますので、
どうか今年もよろしくお付き合い願います。





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