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潜水艦の充電問題とエーテル麻酔のこと〜潜水艦シルバーサイズ

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潜水艦「シルバーサイズ」でもらったパンフレットの中に、
こんな写真がありました。



前回掲載するのを忘れていたわけですが、これは
オフィサーズ・クォーター、実はフォワードバッテリーの左舷天井にある
ベンチレーション・ブロワーだそうです。

フォワード・バッテリーの床にあるハッチを開けると、
そこには200トン(全体量の半分)の電池があるので、
人体に有害なハイドロジェンガスを取り除くために
このような排気システムを備えているということなのでした。

というわけで、今日は潜水艦の充電問題にこだわってみます。

■危険がいっぱい!潜水艦の充電


当時潜水艦がバッテリーを充電するという不可欠な行為は、
敵に海面で遭遇する危険と、その際発生する音が敵を呼び寄せる危険、
それ以上に発生するガスの危険と必ず隣り合わせでした。

アメリカ海軍が、その後潜水艦の動力を原子力推進に変えたのも
当然のことだと思われますが、我が海上自衛隊の潜水艦は
ご存知のように最近まで縁蓄電池を使っていたのです。

その後、アメリカと違って原子力に一切頼ることができない自衛隊は、
浮上しなくても充電ができるシュノーケルシステムを選択しました。

ただ、このシステムも原子力潜水艦に比べれば楽というわけではありません。
なぜなら、充電の際には、シュノーケルだけを海上に出し、
深度を維持したまま航走しないといけないので、操艦の苦労
(といっていいのかどうか)がそれなりにあるわけでございます。

それにシュノーケルそのものが敵に見つからないわけではありません。
潜望鏡だって、時々航空機や駆逐艦から見つかって爆撃されるのですから。

海が荒れた日は、シュノーケルの先から海水が入ってくることもあるとか。

そうなると安全弁は自動で閉じてくれるのですが、今度は
エンジンが艦内の空気を吸い込みがちなので、艦内の気圧が下がり、
乗員阿鼻叫喚、ということもなきにしもあらずだと想像するわけです。


そこで日本国自衛隊としては、2020年に就役した「おうりゅう」から
リチウムイオンバッテリーを搭載するという画期的な変革を行いました。

「おうりゅう」SS-511

リチウムイオン電池を潜水艦に搭載する計画は、
発案から完成までなんと23年の年月がかかっています。

この長い年数が何を表すかというと、これだけ昔から、現場では、
シュノーケルに変わる安全な充電システムが
切実に求められていたということにほかなりません。


■ 海上自衛隊のリチウムバッテリー採用

ところでこのリチウム電池ですが、海外旅行をする人は、
航空会社のカウンターで、
「預けるお荷物の中にリチウムバッテリーはありませんか?」
と聞かれたことがあるかと思います。

アメリカから日本に荷物を送るときも、USPS(米国郵便)では
カウンターの職員が立て板に水のように浴びせてくる質問の中に、
「リチウム電池は入っていないか」
というのがあり、その答えとしてカウンターの機器に表示される
「NO」をクリックしないと、荷物を受け付けてもくれません。

なぜリチウム電池ばかりこうも口うるさく聞かれるのかというと、
それは発火しやすいからです。

10年くらい前に、ボストンのローガン空港に駐機していた機体が
リチウムイオン電池の発火を起こすという事件が起きて以来、
飛行機の機体にリチウム電池を使うことさえも見直されました。

ここでわたしが疑問に思ったことがあります。

一般にリチウム電池の発火の原因は、外部衝撃と異常発熱ですが、
だとすると、そういう条件下に置かれやすい戦闘艦に
なぜわざわざリチウム電池を選んだのか、今更ながら不思議なのです。

リチウム蓄電池にすると、蓄電量は従来の電池の2倍になることから、
潜航時間が大幅に伸び、充電の回数も減りますから、
原子力の手段を持たない自衛隊には願ってもない手段なのは確かです。

しかし、リチウム電池の危険性については誰でも知っていることなので、
発火問題については当然開発段階でも織り込み済みのはずです。

ここは、それらの問題はとうの昔に解決しているが、
潜水艦という特に秘密の多い兵器である関係上、
リチウム搭載の安全対策についても厳重な箝口令が敷かれているせいで
あまり語られることはないのである、と考えることにしましょう。
それにしても、どなたかこの疑問について何かご存知ではありませんか。


■ オフィサーズルームの記念写真

オフィサーズ・ワードルームの一隅には、
二つの記念額が掛けられています。

「シルバーサイズ」が撃沈した日本船の遺留品である浮き輪
(おそらく前にも出てきたことがある『神戸丸』のものと思われる)
に手をかけて、艦上で撮ったと思わしいこの写真の一人、
ロバート(ボブ)ウィリアムズ一等機関兵に捧げられたものです。

U.S.S.「シルバーサイズ」SS 236
ROBERT "BOB" WILLIAMS MM 1st CLASS

第二次世界大戦中の彼の下の勤務において
その哨戒中果たした卓越した働きに対して贈る

U.S.S「シルバーサイズ」SS-236 戦時哨戒8回

U.S.S.「シーオウル」 SS-405 戦時哨戒4回

1992年5月24日
彼のシップメイト、サブマリナー一同、
U.S.S.「シルバーサイズ」&
海事博物館ディレクター一同より
アメリカにはボブ・ウィリアムズという名前があまりに多すぎて、
検索しても、この人についての情報は一切見つからなかったのですが、
書かれていることから推測すると、この人は、
かつては「シルバーサイズ」乗員だったようですが、
1944年に「バラオ」級潜水艦「シーオウル」が就役したとき転勤し、
第二次世界大戦中に「シーオウル」で哨戒3回に参加、
そして朝鮮戦争期間中に一度だけ行われた哨戒に参加したようです。



そしてその隣の盾には、展示用の改装で張り替える前の
オリジナルの「シルバーサイズ」デッキの木片が飾られていました。

そして、盾には、デッキを修復するために協力した
退役軍人からなるボランティアグループの名前が書かれています。
やはりこういう事業に手を上げたのは、
ほとんどが実際に潜水艦に乗り込んだサブマリナーだったんですね。

彼らの第二次世界大戦中の勤務先(乗り組んだ艦)だけを記しておきます。
USS「SAURY ソーリー」SS-189

USS「BLILL ブリル」SS-150

USS「REDFISH レッドフィッシュ」SS−395

USSOCOM(アメリカ特殊作戦軍
 United States Special Operations COMmand)

USS「BLOWERS ブロワー(フグ)」SS-525

USS「SILVERSIDES シルバーサイズ」SS-236

USS「S-42」SS-153

USS「LAMPREY ランプレイ」SS-372

USS「POLLACK ポラック」SS-180

■ 艦内での虫垂炎手術における麻酔について

「シルバーサイズ」をすっかり有名にした、「虫垂炎切除の手術」
について、私事からちょっと考えたことがあったので書きます。

前回、ファーマシスト・メイトのトーマス・ムーアが
水兵ジョージ・プラターの虫垂切除術を行ったき、
4時間半の処置が終了するより

ずっと前に脊髄麻酔が切れてしまい、
エーテルを使用してなんとか最後まで眠らせた、
ということを前回書いたわけですが、麻酔といえば、
わたし自身がその体験をしたのでちょっとご報告です。

昨年ちらっとブログ上でご報告したわたしの内視鏡手術ですが、
全身麻酔を受けたことがある方ならご存知のように、
エーテルを嗅がされてほぼ数秒以内に意識を失い、
次の瞬間目覚めたと思ったら手術は終わっていました。

通常の手術で患者が意識を失った途端、麻酔医は口から管を突っ込んで
人工的に呼吸を管理し、手術が終わったら患者を目覚めさせます。

施術中眠らせていた患者を起こすタイミングも、上手い医師ならば
ぴたりと終了に合わせることができるそうです。

意識が戻って自発的に呼吸できることを確認したら、
麻酔医は患者に告知確認した上で、口に突っ込んでいた管を
ずるずると引き出すのですが、いやまあ、これの苦しかったのなんのって。

はっきり言って、今回の手術で辛かった&痛かった瞬間ベスト3は、

1、この管を抜く時と、
2、退院の日に鼻からガーゼを抜いたとき、そして
3、退院後検診で残っていた組織の一部を鉗子を突っ込んで取った時
でした。

鼻からガーゼを抜いた時はもう壮絶でした。

「これ持っててください」

と言われて地蔵のように胸元に捧げ持たされた膿盆の上に、
主治医が果てしもなく次々とガーゼを引っ張り出して来るのです。
これが痛い&辛い&終わらない。

永遠に続くかと思った時間が終わり、トレイを看護師さんに渡すとき、

「え・・・っ」

と驚愕のあまり声を発してしまったほど、
その上は大量の真っ赤な包帯による小山ができていました。
昔、自分が出産したばかりの赤子を見た途端、
「こんな大きなものが、今までどうやって体に収まっていたのだろう」
と衝撃を受けましたが、今回もそれに類する衝撃です。

これだけの包帯を詰め込む空間が身体の中(しかも鼻腔)によくあるもんだ。
と今更ながら人体の不思議に目を見張る思いでした。

しかも術後一週間も経っているのに、こんな痛い思いをするのだから、
例えば手術が終わってからこれだけの包帯を鼻の穴につめこむとき、
もし万が一麻酔が切れていたらどんな恐ろしいことになるでしょうか。

長々と語りましたが、要は、患者にとって、
手術中麻酔が切れるほどの恐怖と危険はないということがいいたいのです。
「シルバーサイズ」の例でも、もし開腹中目が覚めてしまったら、
冗談抜きで、患者は痛みでショック死していたかもしれません。

エーテル麻酔に切り替えることを誰がいつ決定したのかは
そこまで記録を確かめることはできませんでしたが、
一つ言えるのは、手術中麻酔がこのままでは切れると分かったとき、
寝ている本人以外の全員が生きた心地もしなかっただろうということです。

そして、脊髄麻酔をエーテルオンリーに切り替えたのは英断でした。

しかしその代償として、潜水中の潜水艦の中に煙が立ち込め、
爆発性の高いエーテルが満ちた潜水艦に、今爆弾が投下されたら、
患者どころか全員が確実に死亡という状態になりました。

結果としてそういう事態にならず、全員が無事で哨戒を終えました。

これはただ単に「シルバーサイズ」が幸運だったということなのですが、
それでも、一人の命を救うためにあえて全員にリスクを負わせる
この決定を下した艦長は、実に豪胆だったといえるのかもしれません。


続く。


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