今日は、「シルバーサイズ」シリーズのちょっとした息抜きというか、
潜水艦などで飼われていたペットについて紹介があったので、
船のジンクスと共にこれをご紹介します。
潜水艦の乗組員は(その任務上当然かと思いますが)
「シルバーサイズ」の布袋さんの像のように、ジンクスを担ぎがちでした。
元々船は何かと担ぐ場面が多い乗り物です。
昔から言われる「7つの船の迷信」とは、
1、船に女性を乗せると不吉
このため船乗りたちは航海中は実際の女性を「諦め」、
船に女性のお守りをつけたり、裸体の女性画を飾ったりした。
2、進水式と命名式の神話
古来船の進水と命名には生贄を捧げていたが、
それがいつの間にか血の代わりにワインとなり、
現在ではシャンパンの瓶を割ることになっている。
この時瓶がうまく艦体で割れないと縁起が悪いと言われる。
3、金曜日に出港すると縁起が悪い
キリストが磔にされたのが金曜日だったから。
今ではそんなことわざはどこにも残っていません。
4、船上で口笛を吹いてはいけない
船上で口笛を吹くと嵐を呼び、手を叩くと雷を呼ぶ。
5、船の幽霊と呪い
船で命を落とした人がいるとその魂が留まって、
霊魂が事故や災難を起こす呪いをかける
6、バナナを船に積むと縁起が悪い
1700年代、バナナを積んだ船のほとんどが海上に姿を消し、
目的地にたどり着けなかったことから、
バナナは船にとって不吉なものと考えられていた。
また、船に積んだバナナはすぐに発酵して有毒ガスが発生し、
船乗りの命を奪うという説もある。
さらに、ある種の毒蜘蛛がバナナの房に潜んでいて、
それに刺されて多くの船員が死んだという説もあり、
船にバナナを積むのは縁起が悪いという迷信を強めている。
7、船の禁句
海運の初期から、「さようなら」「溺れる」などの言葉は
船上では使わないこととされていた。
また、「グッドラック」という言葉は不吉をもたらすと考えられていたため、
船員は口にすることができなかったという奇妙な説もある。
万が一、「グッドラック」と言われた場合、その不幸を覆すには、
素早くパンチを繰り出して(相手の)血を抜くしかなかった。
「グッドラック」と何気なく励ましたら、
いきなりゲンコツが飛んできて血を噴かされたら、
本当にたまったものではありませんね。
バナナを乗せない船はもうないでしょうし、
金曜日に出港するなと言われても、戦争中では
そんなこと気にしている場合ではなかったでしょう。
また、ジンクスや「縁起物」は、
その船ごとに伝統的に決まっていた例もあります。
ちなみに、第二次大戦の潜水艦で実際に担がれていた例としては、
USS「フライヤー」ではコーヒーは絶対にヒルズブラザーズ一択でしたし、
USS「レクイン」(ピッツバーグで今回見てきたあれです)では、
ピーナツバターはピーターパンでないとダメ、とかがありました。
ソントンじゃダメなのか
■潜水艦とお守りとしてのペット
かつてこのブログでも戦争と動物というシリーズで紹介しましたが、
そのジンクスの一つに動物があり、
潜水艦にはしばしば動物が持ち込まれました。
「軍艦猫」として最も歴史的に有名だったのが、
かつてこのブログでも紹介したことがある、
「アンシンカブル(不沈の)サム」
と呼ばれた白黒のハチワレ猫に違いありません。
World Of Warships - Head Over Keels: Unsinkable Sam
しかし、ご覧になるとお分かりですが、
「不沈のサム」は船のお守りなどになっておらず、
むしろ彼が乗った船は3隻沈んだわけですから、
最後にはセイラーの間ですっかり怖がられてしまっています。
「シルバーサイズ」と同じ潜水艦USS「シラーゴ」SS-485では、
ハチワレの猫を飼っていたようです。
ちゃんと専用の救命ジャケットも作ってもらっていますね。
ジャケットには彼の「マックス」という名前が書かれています。
特に猫は、古来より「船のお守り」とされてきたので、
ジンクスを何かと担ぎがちなサブマリナーにとって、
ペットというより「守り神」的な意味があったようですが、
(結果的に不沈のサムことオスカーは別ね)
潜水艦に連れ込まれる方もいい迷惑ですが、
ご利益があったのか、「シラーゴ」は無事戦後を迎えました。
古来より、猫は船のラッキーシンボルとされ、
厄除けや幸運をもたらすとされてきましたが、
より実際的な理由としてはネズミの発生を抑えるためでした。
黒死病の発生には、船内のネズミが原因とされていました。
現在のアメリカ海軍は条件付きで船猫を許可しています。
まず第一に、その猫がすべての予防接種を終えていること。
次に、艦内の獣医治療施設に登録されていること。
そして最後に、指揮官がその猫を承認していること。
艦長が猫嫌いだったらアウトって話ですか。
これらの条件をすべて満たせば、艦猫は米海軍の艦艇に大歓迎されます。
最も海軍の船と一言で行っても大きさも機能も様々で、
ペットを飼えるスペースがある船もあれば、そうでない船もあるので、
この質問に対する明確な答えはありません。
ただ、言えるのは、艦内でペットを飼っている人は、
確実に海軍の規則には反しているということです。
というわけで、現在アメリカ海軍では猫を配備していませんが、
第二次世界大戦中は、猫を潜水艦に正式に「装備」しました。
もちろん任務は潜水艦の中をパトロールしてネズミを獲ることです。
猫がいないと、ネズミが食糧を食い荒らし、ロープを噛み切り、
船内に病気を蔓延させる可能性があるので切実だったのです。
現在、海軍の船に猫を乗せることは無くなりました。
現代の海軍の船には、すべての人員の動きを追跡する
高度な生体認証セキュリティシステムを搭載していて、
すべての乗員が記録されているのですが、猫を承認しない限り、
緊急時に猫の居場所を確認することができなくなり、
生存を追跡することは困難になってしまったからです。
もちろんこれは海軍だけの傾向で、普通の船には案外多くの猫が
船員たちの友人として、乗り込んでいるものです。
ところで第二次世界大戦中、海軍の艦艇における猫は大変人気があり、
この時期、多くの潜水艦にマスコットとして犬や猫が配備されました。
「ペニー」という黒い犬がいたのは、
USS「ガーナード」(Gurnard SS-254)
7回の哨戒を成功させ、叙勲もされた優秀艦です。
戦没しなかったのは黒犬のご利益でしょうか。
犬もペットとしてだけでなく、役目がありました。
巡視船が外国の海を航行する際に、
危険を知らせたりするなどの番犬としての任務です。
「ホランド型」という最初のアメリカの潜水艦のタイプ、
この31番艦USS S-31(SS-136)です。
この潜水艦にもペットを連れ込んだ人がいて、
その名前が「ザ・マリオット」であるというのですが、
猫?と思ったらキツネでした。
キツネもお守りになったのか、S-31はホランド型ながら
第二次世界大戦で8回もの哨戒に出て生き残りました。
驚くべきことに、「シルバーサイズ」にも、その時その時で
多数のペットが持ち込まれていたという記録があります。
まず、前部魚雷室で飼われていたのが、ネズミ。
これは、潜水艦の中に発生したネズミを捕まえてペットにしたのではなく、
「飼い慣らされた」とされています。
が、捕まえたネズミを飼い慣らした可能性も微レ存。
歴史的記録?によると、(つまり正式な文書に残っているらしい)
犬が乗っていたことが2回あったそうで、
一匹はエアデールテリア、もう一匹はジャーマンシェパードの雑種。
どちらかはわかりませんが、ちゃんとラッタルを登って「乗艦」し、
どちらの犬にも「アドミラル」という名前がついていたそうです。
(ありがち。南極探査船に乗船した三毛猫も船長の名前をつけられていた)
潜水艦は甲板に乗艦してからが大変だと思うのですが、
そこから先はやっぱり人間が抱いて下ろしてやってたんだろうな。
これはアメリカ海軍の公式写真として残されている、
USS「ホエール」Whale SS-239の、まるでモップのような犬と水兵さんのツーショットです。
「ホエール」もこのモップ犬のご利益か、11回の哨戒を生き抜き、
11個の殊勲章を授与されました。
これもUSS「ホエール」ですが、なんと雄鶏を飼っていたようですね。
いや、これ・・・本当にペットだったのか?
まあ、いつもふんだんに食べ物が食べられたアメリカ海軍潜水艦だもの。
クリスマスの日でも、彼が丸焼きになってテーブルに乗ることだけは、
決してなかった。
と信じたい。
続く。