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メインバラストタンクブロー〜シカゴ科学産業博物館 U-505展示

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シカゴにある科学産業博物館のU-505展示から、
今日は「浮上と潜航」についての操作関係です。

まず冒頭の写真はU-505が実際に搭載されていた装備で、
ユンカース製のエアコンプレッサー実物です。

エアコンプレッサー、つまり空気を圧縮するものですよね。


コーナーの説明には、

「Uボートはどうやって潜航&浮上を行うのか」

とありますが、ここで潜水艦の潜航浮上の仕組みを今一度説明しておきます。

潜水艦の潜航・浮上のために不可欠な働きをする装置はバラストタンクです。
手っ取り早く言ってしまうと、バラストタンクに海水を入れたり出したりして
その重さで潜航したり浮上したりするわけです。


前にもシルバーサイズ潜水艦シリーズで説明しましたが、
潜水艦を潜航させるときには、バラストタンクに海水を注入し、
艦の重量を増加させてアルキメデスの原理的に沈み、
逆に浮上する時には空気を入れて海水を出すのですが、
バラストタンクの海水をどうやって排出させるかというと、
「気畜機」に圧縮されて蓄えている空気を注入するのです。

「気畜機」というのは帝国海軍以来の日本の潜水艦用語ですが、
それがようするに、ここに展示されているエアコンプレッサーです。

このエアコンプレッサーを使った浮上までの一連の動きを、

「メインタンク・ブロー」
といいます。
英語では「メインバラストタンク」ですが、
号令でどのようにいうのかはわかりません。

バラストタンクは「メインタンク」「メインバラスト」などとも称します。

余談ですが、帝国海軍では「メンタンブロー」で通っていたようですね。
航空機畑で「Go ahead」が「ゴーへー」だったみたいなもんでしょうか。



このユンカース・フリー ピストン・コンプレッサーは、
U-505に搭載された 2 つのエアーコンプレッサーのうちの 1 つで、
艦体の後方に配置され、もう 1 つは機関室にあり、
主要なディーゼル エンジン配置の一部でした。


ユンカースのエアコンプレッサーは革新的なデザインでした。
名前にあるように、何が「フリー」かというと、ピストンです。

ピストンはシリンダー内にあり、従来のように
クランクシャフトには取り付けられていませんでした。

これはフリーピストンのエンジンの図です。

ピストンがクランクシャフト等の出力伝達軸に機械的に結合されておらず、
蒸気、燃焼ガス、液体金属等の作動流体を介するというのが定義ですが、
フリーピストン・エンジンのコンセプトが最初に成功したのは、
実fはこのエアコンプレッサーであり、代表的な使用例がUボートです。

このシステムの利点は、高効率、コンパクト、低騒音・低振動であること。
設計がシンプルなので、標準的なコンプレッサーよりも省スペースで、
潜水艦という厳しい重量制限が求められる環境には理想的でした。

しかし、このコンプレッサーの操作は超絶複雑だったため、
U-505 の乗組員は、コンプレッサーをちゃんと操作し続けるためには
定期的な修理が必要であると不満を漏らすレベルだったそうです。

How U-boats Dive & Surfaceシリーズの続きです。

Buoyancy(ボイアンシー) =浮力

という言葉がここのポイントです。

【ボイアンシー・ステーション】

他のタイプのボートとは異なり、潜水艦は
重量を増減することによって浮力 (または浮く傾向) を調整できます。

希望の深度に到達するために、U-505 の乗組員は一連の制御を操作して
潜水艦の重量を変更し、必要に応じて潜水または浮上を行います。

【U-505の潜航と浮上】

潜水艦の浮力が「正」(ポジティブ)の場合、それは浮上しています。
これはつまり艦体が置き換えていた水より重量が軽くなった状態です。

潜航するためには、ベントバルブ(通気弁)を開け、
艦体内側と外側の間にあるバラストタンクの上部から空気を放出すると、
タンクの底にあるフラッドバルブから水が流れ込みました。

潜水艦の艦体に取り込む水は負(ネガティブ)の浮力を生み出し、
それが彼女を水没=潜航、サブマージさせることになるのです。

逆に浮上するためには、ベントバルブを閉じます。
その後圧縮空気がタンクに吹きこまれ、水を排出して艦体が軽くなり、
海面に浮上するというわけです。
【ダイブ・プレーン(潜舵)とトリムタンク 】

U-505を操舵するには、ボートの可動式潜舵を調整して、
潜水および浮上時の艦体の角度を制御します。

潜水艦が目標の深度に達すると、艦体の平衡を維持するために
ダイブプレーンを水平にします。
トリム(日本では”ツリム”だった模様)という言葉は、
艦体の前後の傾きという意味であり、艦体前後に二箇所設置され、
艦体のバランスの微調整は、それらの浮力比を操作して行います。


ここで、アメリカ海軍の初年兵への教育用に製作された、
例によって大変わかりやすい映画をご覧ください。

Submarine Ballast Tanks

バラストタンクも皆が同じ場所にあったわけではなく、
アメリカ海軍では、潜水艦の型式で形状も違っていたようです。

■ バラストウェイト



展示の片隅にひっそりと置かれていた実物のバラストウェイト。

この写真に見えるのは・・・バラストではないでしょうか。

場所がどこだか説明がないのですが、潜水艦の艦底が見えているような。
作業をしているのはシップビルダーで、乗組員ではないので
船舶の建造中の写真だと思われます。

バラストウェイトは、ボートを水中で直立状態に保つものです。
前後ではなく、左右に傾かないようにするものですね。

すべての船は、この目的のために一定量の固定バラストを搭載しています。
一般的に設置するバラストの重量は、船舶の内容物の重量と、
重心への近さによって決まってきます。
Ballast Operation

一般の船の場合。

バラストウェイトの重さのおかげで、たとえ強風で海が荒れても
船が転覆したり、またが沈みすぎたりすることがありません。
ちなみに、映画「Das Boot」(『Uボート』)でも描かれていた、
急速潜航のときに手の空いた乗組員が、だーっと前方になだれ込んで
重力を前に傾ける「人間バラスト」になっていたシーンですが、
この鉄のバラストは、バランスを取るために最初から装備してあるので
動かすことはできません。
■ 浮上チャレンジ Buoyance Challenge
博物館にはここに「浮上チャレンジ」という体験コーナーがあります。



操作パネルと浮上する潜水艦の模型の入った水槽(状のタワー)、

左側にはエアーコンプレッサー、右側にはバラストウェイトがあります。
しかし、このバラストを見て、気がついたことが。

この写真は博物館のHPのものですが、
わたしが見に行った2022年の夏には、
バラストウェイトは4つしか置いていませんでした。

写真を撮った時にはこんなたくさんあったのに、
いったいどこに分散してしまったのでしょうか・・。



わたしが通りかかった時には、例によって誰かが操作中でした。

こういうとき、空くのを待って何がなんでもトライしてみたい、
という前向きな好奇心をいっさい持たないわたしは、
ここにある体験コーナーのどれも写真を撮るだけで通過しました。
このコーナーは、U-505がどのようにして深度を調整できたか、
それをシミュレーションで理解するというものです。
自分の調整を試すことができるのは高さ3mの水槽(状のもの)。
ここでU-505のカットモデルやバラストタンクを駆使して、
浮力調整にチャレンジしてみましょう、というわけです。



わたしが見ていたチャレンジャーは、U-505の浮上に成功したようです。

Uボートはさまざまな制御装置を操作することで、海上で体重を変化させ、
必要に応じて素早く潜水や浮上を行うことができました。

で、どんな複雑なものかと思ったら・・・・・。
これはつまり「メインタンクブロー」か「ベント開け」をボタン一つでできると。

あなたのミッション:
下のライトに点滅されている水深ポイントで
ニュートラルな浮力を維持してください

任務が完了したら、緑のランプが点灯する仕組みです。

公海では(high seasと表現されている)、たった一つのミスで、
ボートの潜航を瞬間遅らせてしまい致命傷になったり、また、
潜航の時間が少しでも長すぎると艦体をクラッシュさせることになります。
つまり、Uボートのバラストタンクには、いかなるときでも
その状況、その時その時の潜水艦の目的ー潜望鏡深度、潜航深度、
平衡浮力に対し、適正な割合の水と空気がなければなりません。


右側のプラズマスクリーンには、自分が操艦しているボートの状態が
刻一刻と映されているので、こちらも確認しながら行います。

そして、ミッションをやり遂げたチャレンジャーは、スクリーンに映し出される海上の自分の船の姿に、
成功の合図(どうするのかはしらんけど)を送るというわけです。


続く。


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