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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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映画「FBI vs ナチス」〜They Came To Blow Up America

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シカゴのMSIでU-505の分厚い写真本を買って帰りました。
あまりに重いので、どこかで置いていくために全ページ写真に撮り、
あとで資料に引用するときにはデータを見ようと思っていたのですが、
どうしても本を捨てるという行為ができず、持って帰りました。

しかし、U-505のシリーズを掲載していたとき、
本のページをめくって記事を何度も確認しながら、
つくづく、アナログ本の便利さを思い知り、
無理して持ち帰ってよかった、と思ったものです。

さて、この本は、U-505の艦歴からタスクフォースに拿捕されるまで、
タスクフォースの作戦、捕虜について、艦体が博物館に展示されるまで、
そこで行われた同窓会やその後の米独双方の軍人たちの足跡、
巻末には潜水艦の歴史までを網羅した盛り沢山な内容ですが、
(にもかかわらず定価19.95ドル)合間には関連する歴史コラムもあり、
そこで紹介されていた第二次世界大戦中のあるスパイ事件を知りました。


■オペレーション・パストリウス

なぜこのUボート本にドイツ人スパイの事件が載っていたかというと、
それは第二次世界大戦中、ドイツがUボートを使って
アメリカ本土に8名のドイツ人をスパイとして送り込んだからです。
作戦名はドイツ連邦軍長官ヴィルヘルム・カナリス提督によって、
アメリカにおけるドイツ人の最初の組織的入植の主催者である
フランシス・ダニエル・パストリウスにちなんだ命名をされました。

わたしはこの事件について興味深く記事を読みながらも、
U-505そのものにはあまり関係がないように思われたので、
シリーズではこの事件について紹介しないまま終わりました。

ところが、U-505シリーズの作成が終わって映画ログに取り掛かったら、
とたんに引っかかってきた1943年のアメリカ映画。

これが「オペレーション・パストリウス」を題材にした作品だったのです。



映画はいきなり字幕から始まります。

「これからご覧いただく映画は、ナチス破壊工作員 8 人の事件に関する
公式記録から文書化されたものではない。
この事件の記録は機密であり、戦争中は
最高司令官によって封印するよう命じられている。
本作品は、アメリカ人に直面している危険を示すために作成された。」
背景では、模型丸出しの軍事施設が爆破される様子が描かれています。



「奴らはアメリカを破壊にやってきた」
という直裁なタイトルですが、本日タイトル画は、
事件を報じるニューヨークタイムズのヘッドラインから
タイトルの「To Blow Up」をお借りしました。

見出しは、
「FBI 軍事施設を爆破するために、ここニューヨークと
フロリダにボートで上陸した八人の破壊工作員を逮捕」
とあり、写真の上のサブタイトルには
「フロリダビーチにナチスの破壊工作員は爆発物を隠した」

と書かれています。

事件の概要は、ドイツからスパイが密入国を果たすも、
破壊活動を行う前に、うち2人がFBIに自首したため一網打尽となり、
裁判の結果、自首した二人以外全員死刑になった、というものです。
にしても、この邦題、『FBI vsナチス』、
いつものことながら他になんとかならんかったんかというダサさですが、かといって原題の「They came to blow up America」もイマイチです。

名は体を表すという言葉もあることですし、タイトルがこれではと、
この映画の作品としての価値にはあまり期待せずに観ることにしました。



映画はFBIのオフィスから始まります。FBIのチーフ、クレイグは、スパイ8人の裁判の判決を伝えます。
「6人が死刑、2人が終身刑と30年だ」


若い職員は、全員処刑すべきだと息巻きますが、
クレイグはその1人、スティールマンについて何かを知っている様子。
そして彼についてのストーリーが語られるのです。



事件では、実際にも、8人のうち2人が処刑を免れました。

これがその時のメンバーの写真ですが、処刑にならなかったのは
上段のゲオルク・ジョン・ダッシュとエルンスト・ペーター・バーガー2人。
ダッシュとバーガーは上陸後すぐにFBIに駆け込んで自首し、
仲間の居所も密告したため、作戦は発動前に阻止される結果となりました。
なんでも、ダッシュは反ナチズムで、最初から任務を遂行するつもりはなく、
FBIに密告することをバーガーに打ち明け、行動を共にしたということです。

反ナチの人間が、スパイの訓練を受け、しかもリーダーとして
この作戦をオーガナイズしていた、というのがなんとも不可解ですが、
本作は、当時誰もが持ったであろうその疑問の「謎解き」を試み、
ダッシュが実は最初からアメリカのスパイとして活動していたからだ、
という大胆な仮説を立て、それを作品化したものです。


■親独協会



この夜、息子のカールが久しぶりに帰ってくるのを、
老いた両親は待ち侘びていました。
自慢の息子、カールは鉱業会社の顧問弁護士として
3年もの間南米に赴任していたのです。

愛する息子と囲むために腕によりをかけたディナーの席には、
父の友人で医師でもあるドクトル・ヘルマン・ホルガーもいます。



父親のユリアスはかつてハイデルベルグ大学の教授だった人物ですが、なぜここでは小学校教師にあまんじているのだ、というドクターの問いに、

「明日のアメリカの国を作るために貢献しているのだ」
彼は移民してきたアメリカに忠誠を誓う、根っからの愛国者です。



ゆえに、息子のカールの、鉱山会社はやめて、
今後は親独協会の仕事をする、という言葉に驚愕します。

父親は親独協会が自分たちの嫌いなナチス寄りだと思っており、
いずれは国家によって潰されるという考えです。
息子を諌めようとする両親を振り切るようにカールは家を出ました。

親独協会の会合で、アメリカのヨーロッパ戦線への参加を
なんとしてでも阻止するべきだと演説しているのは、
エルンスト・ライターというドイツ系アメリカ人です。

「アメリカは大西洋と太平洋、広大な城壁に守られているのだから!」
当初アメリカの世論は、欧州の戦争に巻き込まれるべきではない、
という不戦論が、メディアでも優勢だったように記憶しますが、
この時はすでにドイツがアメリカに宣戦布告していましたから、
もはや彼らの言論は「反政府」「打倒政府」と同じです。

ライターは、自分はこれからドイツに帰国して工作員の養成所に入り、
破壊工作に加わるかもしれないとカールに告白します。

ちなみに、英語では破壊工作のことを「サボタージュ」といいます。
日本語の「サボる」などという派生語は、妨害活動のごく一部、
わざとゆっくり作業をしたりすることから生まれましたが、
英語では「破壊工作」が一番先にくる言葉です。

もう一つ余談ですが、「サボ」はオランダの木靴のサボからきており、
これを履くと作業が捗らないからという説や、逆にこれで
機械を破壊することができるからという説などもあるようです。


ちょうどそこに官警の手入れが入りました。

ドイツ人は日系人のように収容所に入れられることはありませんでしたが、
それでも国内のドイツ人の動きは公的機関から常に監視対象でした。


カールはライターと2人で逃げましたが、
後ろにいたライターは射殺されてしまいます。


自宅に逃げ帰ったカールは、両親から自首を勧められますが、もちろん無視。


すると父は、聞き分けのない生徒を叱る時の古式ゆかしい方法発動。
つまり自分のベルトを引き抜いて息子を打ち据えようとするのでした。
とーちゃん、息子はもう叩いて躾ける年齢じゃないんだよ・・。


ニューヨークのホテルに身を潜めたカールの元に誰かがやってきました。
誰か・・・・あれ?この人確かFBIの・・・?


FBIのチーフがどうして死んだエルンスト・ライターの査証を持っている?
しかも、次の瞬間、クレイグは最も簡単に、写真をペラッと剥がして、



カールをエルンスト・ライターに仕立て上げてしまいました。
さすがFBI、やることがエグい。
■工作員養成機関

ここはハンブルグの秘密情報局。
と思ったら、



次の瞬間看板が英語に変わって、「Naval Intelligence」
・・・ってなんでこうなるの?
ここは、

 "Marine Nachrichten Geheimdienst"
(海軍諜報部シークレットサービス)
とせめて看板を一枚にまとめるべき。
というか字幕をつけたつもりだったのかな。



諜報部内に設営された工作員養成コースに、
今やエルンスト・ライターとなったカールがしれっと参加しています。
例によって彼らは全員ドイツなまりの英語で会話しています。
「アハトゥング!」「ヤボール」「ヘア・カピタン」etc.要所要所がドイツ語というあのパターンね。


アメリカで追っ手から逃れてきたライターを皆で英雄扱いしているこちらに、
講習に使うのか、U-26の模型が置いてあります。


そこに「大佐」と呼ばれるおっさんが入ってきて、
これから発動する破壊活動についての概要を話し出しました。

おそらく、これは実在の国防軍情報部の部長で、作戦の名付け親、
ヴィルヘルム・フランツ・カナリス(Wilhelm Franz Canaris)
をモデルにしていると思われます。

そっくり
余談ですが、この人、三国同盟後に日本の陸軍参謀から派遣された
大越兼二と組んで、「対ソ戦、英米との戦争は日独を滅ぼす」として、
その信念のもと、平和主義を貫くべきと結論づけた反ナチでした。

最終的には反逆者としてヒトラーに処刑されてしまったのですが、
情報部長時代は「スパイマスター」とまで呼ばれていました。

今回のスパイ作戦立案も出所はこの人だったとされます。


■ヘルガとの出会い

同僚と洋品店に買い物にでかけたカール、いやエルンスト・ライター。
そこで俺好みの美女に目を奪われます。


配給の割り当て(ストッキングは2足まで)を使い切ってしまい、
お目当てのシルクのストッキングが買えずに出ていく美女を見て、
チャーンス!とばかり自分の配給分でストッキングを購入。
「君が履くのか?」


揶揄われながら彼女をお茶に誘い、ブツをプレゼント。
「美脚の女性にはシルクのストッキングが相応しい」
エルンスト(英語なのでアーンストと言っている)は、
美女、ヘルガの名前を聞き出すことができました。

しかし直後、エルンストは情報局のティーガー大佐の口から、
ヘルガ・ロレンツがレジスタンスの疑いのある人物だと忠告を受けます。
そして、そこまでやるならついでに親しくなって尻尾を掴め、と
スパイ任務まで任されてしまいました。


養成コースの講義が行われています。
今日のお題はピッチ爆弾について。


ピッチ爆弾は前もって設定した周波数に感応して爆発を起こす装置で、
周波数の設定はダイヤルで行います。
時計をセットして時限爆弾としても使用可能。


教室内で実際に爆発させて音への感応具合を見せてくれました。
車の爆破もこれがあれば簡単です。
習ったことは覚えておこう。あとで役に立つから。

エルンストはヘルガとのデートを重ねます。
彼女の尻尾を掴むという大義名分もありますしね。

彼女の部屋にいると、キルシュナーと名乗る人物が訪問してきました。
彼は停電したので蝋燭を欲しい、と頼んできます。



ヘルガは蝋燭を数本持たせてやりました。
しかし、残りの蝋燭に何気なく火をつけたところ、いきなり炎が消えました。

コーヒーを淹れている彼女の目を盗んで蝋燭の内部を点検すると、
中から情報メモが出てきました。

「ナチスが祖国を破滅に追い込もうとしている!
巨額の財産が党幹部によってスイスとイタリアの銀行に蓄財されている!」


彼はメモを見つけたことを即座に彼女に報告しました。
そして彼女が内偵されていること、自分が探れと言われたことを告白し、
その上で街を離れて逃げることを勧告します。
彼女をすでに愛し始めているようですね。

ところが部屋を出るなり、彼は2人の男に脇を挟まれてしまいます。
彼らは蝋燭のことも知っていました。彼女の部屋は望遠鏡で監視されていたのです。


問答無用で彼女は捕えられ、ダッハウ収容所に送られることになりました。エルンストは、彼女との付き合いについて問い詰められ、
「言われた通り親密になって、蝋燭の件も報告しましたが何か?」
と平然と答えます。
まあその通りっちゃその通りなんですが、ヘルガはそれを聞いて
エルンストに裏切られたと思い、絶望の表情を浮かべます。


いつの間にかヘルガを捕らえられたのは
彼が密告したからだということになっていました。
■救出



その夜、エルンスト・ライターは密かに情報部の敷地に忍び込みました。


何をするかって?
授業で習ったことをさっそく実習しようとしているのです。
っていうか、教材とはいえ爆弾をなぜ一学生が持ってるのかって話ですが。
彼はそれをヘルガを護送する車に取り付けます。



車に乗っているのは運転手と護送係。
幸い女性であるせいか、手錠も腰縄もされていません。


しばらくいくと、道を塞ぐ形で車が停められていました。



車をどけようと降りてきたところを、彼は銃で脅して地面に伏せさせ、



ヘルガを乗ってきた車に乗せて全速力で疾走。どうして、と尋ねる彼女に、こう答えるのでした。
「君を密告したと言わざるを得なかった。
共倒れを避けるためだ」
「いつか他のことも全て終わったら話したい」
そして、ひたすらアクセルを踏み続けます。
かれらの車に75マイル出させるために。


ドイツならこれはキロメーター表示のはずですが、まあいいや。
時速75マイル、つまり120キロですね。
アウトバーンならともかく、クネクネの山道でこの速度は難しい。
75マイルに達すればどうなるのでしょうか。



はいご覧の通り。
携帯電話も写メも車載カメラもない時代なので、
エルンスト・ライターが犯人であることはもはや誰にもわかりません。
それにしても真面目に授業を受けておくものですね。
本人も言ってます。
「先生の言うことを注意深く聞いておいてよかったよ」

彼女をレジスタンスの同士が脱出させるため、
船を用意して待っているところに送り届けた彼は、
再会を期して最後の抱擁を交わすのでした。


エルンスト・ライターにはこれからするべき任務が残されていました。

続く。

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