USS「エドソン」の艦内探訪シリーズ続きです。
上甲板から1階下のワードルーム、そして士官用ステートルーム、
給料支払い事務所、人事事務所を前回まで見てきました。
人事事務所を出たところに赤くペイントされた何かがありました。
艦内で赤いものといえば消火関係・・?
■ AFFF ホース リール アッセンブリー
やはり消火関係だったようです。
その隣にあったAFFF ホースは、火災時の初期対応用消火ホースです。
即時に対応できる要員がすばやくアクセスできて取り扱えるように、
そしてその後の本格的な消火のための再突入を強化するために、
このホースは機械スペースの正面玄関近くに設置されていました。
■ 艦内売店
棚の上のスナック菓子は、日本でもお馴染み「キットカット」以外にも、
「ミルクダッズ」(ミルク不発弾)、ネッスルのチョコレートバー、
「ベビールース」はピーナッツのヌガーバーです。
どれをとっても日本人の甘味許容量を軽く倍超えしそうな勢い。
マルボロ、キャメル、ウィンストン、ポールモール、
セーラム、ラッキーストライクなどのタバコ各種。
海軍でも昨今は艦内禁煙が進んでいますが、この頃は無問題。
売店勤務のセメラッド水兵。こっち見んな(笑)
■ クルーズ メス デッキ & ギャレー
クルーメス デッキ(兵員食堂)にやってきました。
ここはギャレー(キッチン)もあります。
右側のトレイとカトラリーを撮ってから左にスライドして
食事を受け取っていくシステムです。
カトラリー置き場にある「本日のメニュー」は、
豆
グリュイエール(チーズのことと思われる)
スパム
イカ
これがマジならあまり美味しくなさそうな・・・。
メインがスパムというあたりがもうね。
サーブしてくれるのは内側に立ったキッチンのクルー。
奥にスキンヘッドのイケメンがいる・・・・。
トースターですが、「エドソン」は今日現在でも
パーティやスリープオーバー(お泊まり)企画で艦を借りられるので、
もしかしたら使うことがあるのかもしれません。
昔テレビが置いてあったかもしれない場所には
薄型液晶があり、かつての「エドソン」の活動が映し出されています。
こちらのキッチンにもスキンヘッドのイケメン、フェレン水兵がいます。
スプーンを一本持って立ち尽くすフェレンくん、
エプロン引きずってますよ〜。
ところで、このフェレン君のように、厨房で働くかどうかというのは
はっきりいって本人の意思でもなんでもなく、
スカウトされて海軍に入った場合、特に選択の余地はなかったそうです。
ここには残飯を処理するという任務?もあるのですが、
当時は海の生態系とか汚染とかが全く問題にもなっておらず、
軍艦は残飯を粉砕機に放り込んで、海に撒いていました。
アメリカ人の基本的なキッチンには、どんな古い家にも
シンクにディスポーザーが付いていて、食べ物のかすは
シンク横のスイッチをオンにすれば、底のモーターがすごい音を立てて
全てを砕いて排出してしまうという仕組みです。
法律でこれを禁じている国からやってきた我々日本人は、何度やっても
これをするたびにものすごい罪悪感が拭えないのですが、
アメリカ人ときたら、キッチンのシンクとは「ゴミ排出所」だと思っていて、
せいぜいその機械が壊れないようにストレーナーをつけるくらいしか
「配慮する」ということをしません。
ですから、軍艦が海軍ぐるみでおんなじことをしていても、全く驚きません。
むしろ、今はそういうことに国際的にうるさくなってきて、
アメリカ海軍はどう対処しているのだろうと不思議です。
とにかく、アメリカ海軍がこうやって残飯を撒き散らすと、
南洋ではおこぼれに預かろうとするサメが集まってきていたそうです。
そうなるとうっかり海に落ちることもできません。
空母など、飛行士が海に落ちる危険性もあるというのに、
もし彼らがサメの餌食になったとしてもそれは
自業自得となってしまう、ということまで考えなかったのでしょうか。
コーヒーサーバーがある「談話室」でしょうか。
「エドソン」現役の頃はカセットテープ全盛だったと思いますので、
ここにあるCDは、現在の艦内企画で使ったものだと思われます。
「007カジノロワイヤル」「プラトーン」「ブリット」
「ラスト オブ ザ モヒカンズ」「センチネル」「レイジング ブル」
「スタートレック」「ダニエルクレイグ 007」
「エドソン」時代の作品も含まれています。
■ ウィッシング ウェル(願掛けの井戸)
「エドソン」にもウィッシング ウェルがありました。
井戸の向こうにある黄色いTシャツは「エドソン」調理スタッフオリジナル。
古今東西古来より、船乗りは迷信深いものです。
航海は常に危険と予測不可能な事態を伴うからです。
第二次世界大戦中の海軍兵士は、戦闘の危害から身を守るために
小さなセント・クリストファー・メダルを首から下げていました。
「守りたまえ」とある
船の進水式には女性が舳先でシャンパンのボトルを割り、
それがうまくいったら幸先がいいという験担ぎをしますし、
水兵が刺青をいれるのも、ファッションというより縁担ぎの意味があります。
設備(荷下ろし用井戸)を利用した展示艦の願掛け井戸は、
これまでのアメリカ国内で見てきたいくつかの軍艦で見てきました。
コインを入れてベル(これがどこにあるかわからなかった)を鳴らすと
あなたの願いが叶います!と断言されていました。
底をのぞいてみると、なかなかの金額のコインが貯蔵されていました。
■ 乗組員の生活の場
この一帯は乗組員の主な生活に必要な施設が集まっています。
左手のドアを覗いてみましょう。
バーバーショップ
9000-1100、1230−1530の営業です。
三百人以上の乗組員がいるので、毎日誰かが来るのでしょう。
ドアの横の張り紙には、マイケル・フォリーとトーマス・クレート・タボー、
という二人のバーバーが詰めているとありますが、
この名前は、展示の再現に力を貸してくれた人だそうです。
バーバーの制服に、客が掛けるケープ。
後ろには建造中の「エドソン」の写真、
地域出身のベテランの「俺もかつては」的自慢写真が並びます。
ブルーエンジェルスの元メンバーが、引退後にシートに収まる写真もあり。
当時の兵隊のヘアカットは基本的に「ハイ&タイト」とされていました。
クルーカットのミリタリーバージョンとでも言うべきスタイルで、
今でも、そして自衛隊でも、特にヘルメットを着用しがちな職種の方は
てっぺんを残してサイドを刈り上げるこのヘアカットをしていますね。
具体的には、側頭部と後頭部の髪をこめかみの上まで、
通常は1.6mmかそれよりも短く刈り上げます。
頭頂部を残すのは、戦闘用ヘルメットの重量がかかるため、
頭部を保護すると言うちゃんとした理由があります。
そしてなぜか同じ一角に郵便局がありました。
水兵はランチに来て手紙を受け取り(出し)、
散髪もとここ一カ所でいくつものことができたわけです。
ポスト オフィス
郵便は配備中の軍艦の乗組員の士気に大きな影響を与えます。
通常、この規模の郵便局は、NAV X 部門に割り当てられた郵便係
[=PC] の水兵または 3等水兵が運営しています。
もし展開中に艦が数週間郵便物を受け取れなかった場合、
郵便物が溜まって大きな荷物が 10〜15 個一度に来ることもありました。
仕分けが完了し「メールコール」が 「1MC」から発せられると、
部門の「郵便局」がその部門の郵便物を受け取ります。
ちなみに「1MC」=1 Main Circuitとは、艦内放送回路のこと。
一般的な情報や命令を艦内のすべてのスペースとトップサイドに送信し、
すべての乗組員が(通常)それを聞くことができる十分な音量です。
毎日定期的に乗組員に一般的な情報を伝えるために使用され、
艦内各所に設置されたラウドスピーカーを通じて再生されます。
非常時、たとえば対艦ミサイルの飛来、化学攻撃、衝突、
飛行甲板の墜落など、差し迫った特定の危険の際には、
さまざまな警報音を送信するためにこの回線が使用されます。
ポストオフィス勤務だった「エドソン」のベテラン、
トーマス・アラン・カツマ(Katsma)氏の家族は、
2017年に氏が逝去された際、彼の思い出を「エドソン」に残そうと、
かつて勤務していた場所に写真を提供しました。
「エドソン」がベトナム戦争に参加していたとき、
カツマ水兵は20歳だったということになります。
その後の彼の人生が家族に愛され豊かで幸福なものであれかしと祈ります。
■ミッシングマンズ・テーブル再び
ベトナム戦争では多くのMIA(任務中行方不明)、
POW(戦時捕虜)の軍人が祖国に帰ることができませんでした。
ここにもそんな軍人たちを忘れないための「陰膳」的慣習である
「ミッシングマンズ テーブル」
Missingman's Table
があります。
当ブログ的には短期間内での繰り返しになりますが、ここの説明から
ミッシングマンテーブルの「作法」とその意味について書いておきます。
あなたの目の前にあるテーブルは名誉ある場所です
ただ一人用のセッティングです。
このテーブルは、武器を職業として扱うわたしたちの仲間が
わたしたちの中からいなくなってしまった、
という事実を象徴するわたしたちの方法です。
彼らは一般に”POW”または”MIA”と呼ばれ、
わたしたちは ”BROTHERS” と呼んでいます。
彼らは今日わたしたちと一緒にいることができないので、
わたしたちは彼らのことをこうやって思うのです。
【 小さな一人用のテーブル】
抑圧者に対する一人の囚人の弱さを象徴しています。
【白のテーブルクロス】
祖国の武器を取れという要請に応じた
彼らの意図の純粋さを象徴しています。
【花瓶に飾られた一輪の赤いバラ】
信仰を持ち続けて帰還を待っている戦友の家族、
彼を愛する人たちを表しています。
【花瓶に結ばれた赤いリボン】
花瓶に目立つように結ばれた赤いリボンは、
行方不明者の生存情報を要求するという不屈の決意の証である
何千人もの人々の胸元に施された赤いリボンを彷彿とさせます。
【キャンドル】
不屈の精神が、天に向かって到達することを象徴します。
【レモンのスライス】
レモンは彼らの苦い運命を表しています。
【パン皿に置かれた塩】
彼らを待つ家族の涙を象徴しています。
【逆さまに置かれたグラス】
今、彼らはわたしたちと一緒に乾杯することはできません。
【椅子】
椅子は空席です。彼らはここにはいません。
彼らとともに救い、彼らを同志と呼び、彼らの力と援助に頼り、
彼らを頼りにした者たちよ。
忘れないで!
彼らが帰ってくるその日まで、決して忘れないで!
続く。