この日は少し小降りになったと思ったらまた再び篠突くような雨、
といった具合に一日中傘をささねばならない天気で、
人々はざあっとくるたびに
「うわ・・・酷いですね」
「せっかくの日なのに散々ですね」
と顔を見合わせては繰り返していました。
しかし、前項でもお話ししたように、決して傘をささない軍人たる自衛官たちは
こんな日でも(一部を除いて)微動だにせず、式典の間直立しています。
彼らの雨水を弾いている制服と染み込んでいる制服の違いは、実は
防水スプレーをどれだけふったかによるそうで、それでいうと
本日最も丹念にスプレーを制服にかけていたのは艦長の北御門二佐らしい、
というところまでお話ししました。・・・・違ったっけ。
彼らが直立不動で待機する間、我々招待された観覧者はバスでドックまで運ばれ、
それぞれ割り当てられた天幕の下の椅子に座り、約40分待ちました。
(その遥か前から隊員たちは整列していたことに注意)
そして1200(ヒトフタマルマル)、引き渡し式開始です。
式に先立ち、本日の引き渡し式ならびに自衛艦旗授与式の執行者、
そして主要出席予定者が黒塗りの車で入場してきます、
執行者は三井造船の社長(引き渡し式)、呉地方総監(護衛艦旗授与式)。
防衛省の代表として防衛大臣政務官の若宮健嗣氏。
若宮政務官は一般人なので傘を差し掛けられての登場です。
海上幕僚監部代表として海上幕僚長河野克俊海将。
この後の祝賀会でご挨拶し名刺を戴いたのですが、
河野は「こうの」ではなく「かわの」とお読みすることがわかりました。
防衛事務官で装備施設本部代表の鎌田氏(だと思う)。
ふと護衛艦上に背広の二人がいるのに気づきました。
はて、なぜ一般の社員がここに乗っているのか。
そうこうするうちに式典開始。
まずは防衛省事務次官による巡閲が始まりました。
わたしの席は丁度この写真の右にあり、何が起こっているのかは
左手の大きなスクリーンでないとわかりません。
もうすっかり(わたし的に)おなじみの「巡閲の譜」を呉地方音楽隊が奏でる中、
政務次官が巡閲を行っているわけですが、この栄誉礼、こういう場合は
「ふゆづき」の乗員ではなく、儀杖隊に対して行われるらしいですね。
わたしの隣に座っていたやたら詳しい方の弁によると
「どうも私、この巡閲に納得いかないんですよ。
だって、実行部隊で実際にフネにのる乗員じゃなくて儀杖隊を観閲するんですよ。
儀杖隊というのは、いろんなところから少しずつ集めて来たわけで、
この護衛艦の専属というわけではないのに、意味が無いんじゃないかと」
まあ、おっしゃることはよーくわかりますが、「儀式」ですから・・・。
その間ずっと敬礼を続けている「ふゆづき」艦長以下幹部。
この間、観閲官たる栄誉礼樹齢資格者に敬意を表するため、栄誉礼、
または頭中(右・左)の敬礼で答えているのです。
護衛艦の指揮形態は、艦長以下副長、分隊の長となります。
艦長の後ろが副長、その後ろが砲雷長、船務長、航海長、機関長、
補給、衛生、整備長。(順不同)
この敬礼している袖を見て思ったのですが、指揮系統の上から4人が二佐。
護衛艦は戦闘艦であるため、そのなかでも砲雷長と船務長が、
航海長と機関長よりも指揮系統は上になります。
航海長の後ろ(前から4番目)は雰囲気から言って衛生長かな?
ところで。
皆さんが巡閲を受けている間、その他起立を要求されていないときも、
こんな風に自衛官幹部と同じことをしていた陸自幹部あり。
わたしの前に座っておられました。
全員が企業関係省庁関係のこのテントに(エリス中尉除く)、
只一人だけどうして陸上自衛官がおられたのかわかりませぬが、
後から写真に写った階級章を見たところ、なんと陸将補殿でした。
陸将補殿はお一人でわたしたちの前に黙って座っておられましたが、
わたしとI氏、そして右側の方の雑談を聴いておられたようで、
何度か話に反応し(笑)、自衛隊の中の人しかわからないことが話題に出ると
振り返って気さくに教えてくださいました。
退場してバスに乗り込むとき、同じテントにいた人がこの方に傘を差し掛けて
「どうぞお入り下さい」
というのを滅相も無い!という感じで断っておられました。
案外世間の人って、自衛隊員がどんなときにも傘をささない、
ということを知らないみたいですね。
そしてその巡閲というもの、何をしているのかわからなかったのですが、
こうやって後からスクリーンを見ると、
儀杖隊員の間を若林氏とおそらく呉地方総監が歩いていますね。
巡閲が終わり、続いて護衛艦の引き渡し式に入ります。
今このとき、まだ「ふゆづき」は建造した三井造船の所有であるという印に
まだ社旗を掲げてあります。
それが降納されていきます。
本来ならばここで旗が翩翻と翻る予定なのですが、本日は雨天のため
旗が全くなびきません。
いったい何の旗を降ろしているのか、さっぱりわかりません。
このとき、音楽隊は聴きなれない曲を演奏し始めました。
「この曲なんですかね」
周りの誰かがささやいたのですが、わたしがふと
「三井造船の社歌じゃないでしょうか」
というと、みんな、ああ・・と納得していました。
たぶん正解だと思います。
この社旗を降納していたのが、先ほどから乗り込んでいたこの二人。
なるほど、誰かと思えば、旗下し係の社員だったのか。
わざわざ白手袋着用の上、自衛隊員でもないのに傘もささずご苦労様です。
ただし、ここには国旗も自衛艦旗も上げないので、そのかわり、
画面に見えている小さな8条旭日旗を揚げるようです。
そして、正確にはここからが自衛艦旗授与式の始まりとなります。
かつて自分でアップしたエントリに
「自衛艦引き渡し式は、造船所と防衛省の間で行われる儀式であり、
船を建造した造船所の社長から防衛省代表に引き渡される」
とも書いてあります。(笑)
この画像では、防衛省代表から艤装員長に護衛艦旗が授与されている瞬間です。
今この瞬間、艤装員長は護衛艦旗を受けて「初代艦長」となります。
ところで。
今回、望遠レンズでは護衛艦は写しにくかった、と書いたのですが、
望遠レンズならではのこんな瞬間も撮れました。
まだ観覧客がそろっていない頃、航海艦橋にちらちらと人影が見えていたので
思いっきりズームしてみました。
携帯で写真を撮っている人、あり。
なんか楽しそうでいいですね。
艦内帽も何も被っていないので、自衛官ではない可能性は高いと思いますが。
(続く)