自衛隊音楽まつり参加報告記、3日目です。
留学生がいるからという理由で無理矢理()この第2章
『to Asia』に入れ込んできた防衛大学校儀仗隊による
若々しく凛々しいファンシードリルの演技が終わり、
これは正真正銘アジアからのゲストバンド演奏となりました。
フィリピン海兵隊音楽隊。
去年インドネシアからのゲストバンドがムエタイを披露し、
大きく広げられた両国の国旗は観客を感動させました。
アジアからのゲストは毎年変わりますが、フィリピンからは初めての参加です。
そもそもフィリピンには軍楽隊がひとつしかないそうです。
それだけでもかなり不思議なのですが、wikiによるとフィリピン軍は
統合運用だそうで、それも「陸海空」。
沿岸警備隊はあっても「海兵隊」というのが何処を探してもないのですが、
これは一体どうなっているのでしょうか。
どうやって身体に装着しているのか見ても謎だったグロッケンシュピール。
ソロを取っていました。
演奏曲は
「マラゲーニャ」「ザ・ビギニング」
で幕を開けました。
この軍服はアメリカ海兵隊をかなり意識していますかね。
「ザ・マジックトランペット」のときに取った面白いフォーメーション。
円がだんだん縮んで行き、隣の人の左腿に腰掛けました。
何処に隠し持っていたのか、小さい両国の旗を振りながら退場。
日比友好~~!
続いてはがらりと雰囲気が変わり空自のステージです。
陸上自衛隊中央音楽隊、海上自衛隊東京音楽隊に相当する
防衛省直轄の空自音楽隊は
「航空中央音楽隊」
といいます。
その航空中央音楽隊の演奏、いきなり尺八の音色で始まりました。
尺八を吹いているのは、なんというか陸自にも海自にもいないタイプ。
なんと痩身、眼鏡、口髭の自衛官です。
海自の口髭は古株の海曹長、陸自はコワモテ師団長というイメージですが、
空自の髭は、言っては何ですがまるでジャズ喫茶の粋なマスターみたいです。
そのマスターが奏でる尺八の音は、「オリエンタルウィンド」。
久石譲の曲だったかと思います。
航空中央音楽隊は平成4年、J.P.スーザ財団の授けるその年の
最優秀軍楽隊賞、
「ジョージ・ハワード大佐顕彰優秀軍楽隊賞」
を受賞したという輝かしい経歴を持っています。
続いて演奏された「風薫る」は、航空自衛隊創設60周年を記念して、
航空中央音楽隊所属の田中裕香士長が作曲したものです。
平和な日本の空とその空を悠々と飛ぶ航空機の雄姿をイメージしています。
空自のカッコいい航空機が出て来るこのYouTubeはおススメ。
『風薫る』
「敬礼の仕方」が前エントリで話題になっていましたが、
空自トワラーガールズの敬礼は眉間を押さえるスタイル。
これ、空自の敬礼とも違いますよね。
さて、航空自衛隊60周年を記念して作られた曲は
「風薫る」だけではありません。
続いて演奏された空自の去年の「テーマソング」だった
「翼を下さい」
に続いて演奏された曲もまた、空自音楽隊員の手によるものです。
『蒼空』
航空中央音楽隊所属の和田信2曹が作曲しました。
正面に座っていればよかったなと思ったこの瞬間。
5人の隊員が航空機の描かれた大きな布を楽隊の上に「航過」させました。
そして布のエンドに描かれた「60th Anniversary」
の文字を見せます。
いつも通りスマートな空自のパフォーマンスでした。
続いては、
海上自衛隊!
今年は床にプロジェクタを投影するという技を取り入れたので、
たとえば日本の地図の部隊所在地に隊員が立っていたり、
ゲストバンドの国旗が大きく写されたり、このように人文字で
「M」、フロアに残りの「aritime」を映すという演出がありました。
下の回の右寄りからだと、文字がわかりませんね。
やっぱり上の階の方がよかったのかな・。
「アジア」を意識した海自のオープニングは
「シルクロード」 喜太郎。
ドラムメジャーは前嶋淳1等海曹。
去年とは違う人です。
ドラムメジャーとは隊長の指揮下で楽器演奏の指揮をとる隊員です。
軍隊的にいうと、指揮をするのは必ず1尉以上の幹部自衛官であり、
ドラムメジャーを行うのは曹と決まっています。
ちなみに、プログラムには指揮とドラムメジャーの名前だけが記されます。
たとえ独唱をしたとしても歌手の名前は載ることがありませんが、
これは「軍楽隊の慣例」によるものです。
指揮は音楽隊長ではなく、1等海尉が行いました。
2番目の曲は海自らしく、
「マゼランの未知なる大陸への挑戦」
海上自衛隊東京音楽隊 Tokyo Band マゼランの未知なる大陸への挑戦
ブラスバンドの楽曲というのはその中でのみ有名なものが多いのですが、
これもそういう中の名曲の一つです。
つまりブラバン出身なら誰でも知っている曲です。
海自はやはりこのテーマに親和性を感じてか、この曲をしばしば
演奏会レパートリーにしており、かつ得意曲にしている模様。
そして、三曲目。
海自は唯一音楽隊に専門の歌手を持っています。
ご存知三宅由佳莉三曹そのひとなのですが、自衛隊まつりでは
彼女の歌手採用以来、必ず「歌付きプロ」がスタンダードになりました。
今回歌ったのは「STAND ALONE」。
NHKドラマ「坂の上の雲」のテーマソングです。
この選曲はつまり海軍軍人が主人公ということからですね。
平成26年度 自衛隊音楽まつり 三宅由佳莉三等海曹
海上自衛隊音楽隊の重要な任務の一つに
「遠洋航海への乗り組みと停泊地での演奏」
というものがあります。
プロジェクタに映し出されていたのは5月の遠洋航海出航式典ですが、
このときに旗艦「かしま」にも音楽隊が乗り組み、約6ヶ月の航海中
至る所で必要な式典、祝賀、親善、儀式の演奏を司りました。
これも恒例、行進曲「軍艦」に乗せて行われる錨のフォーメーション。
一回転して定位置です。
「歌手」と「軍艦」。
もちろんどちらも、特に海自のファンには水戸黄門の印籠のような
「待ってました!」
という高揚と興奮をもたらすもので、決してそれをすることに異論はありませんが、
これを必ずやるという「縛り」は、ただでさえ時間が短いパフォーマンスの
文字通り「縛り」にならないかなあということを、なぜか今年は考えてしまいました。
何故そう思ったかと言うと、おそらく次の陸自中央音楽隊の演奏が良すぎた?からです。
陸自の選曲は
「おお、運命の女神よ」(オペラ:カルミナブラーナより、オルフ作曲)
「カッパドキア」(八木澤教司作曲)
「2002年ワールドカップ アンセム」
という、知っている人なら渋い!とうなる通好み。
とくに吹奏楽曲作曲家の八木氏の作品「カッパドキア」は、
聴いていただければわかりますが、楽器によっては「苦しくて死ぬ」
と中高生ならいうくらい息を使う曲。
これを完璧に演奏しつつそのテンポでステップ踏みまくりーの隊形変えまくりーの、
おそらく中高生ブラバン部員が見たら「神」と称えるであろう完成度の高さ。
これも巻末に演奏を挙げておきましたので、とくにその点を見てください。
陸海空各音楽隊には明らかに「カラー」があって、たとえば空自が
ひらひらしたものを持って踊る女性トワラーに代表されるなら、
陸自には全くイメージ通りの「地に足の付いた」剛健さを感じます。
「カッパドキア」のリズムはまさに陸自らしさが遺憾なく発揮されており、
そういった点からも最高の選曲であると思われました。
自衛隊の音楽隊というのは「基本ブラスバンド」ですから、ブラスバンドとしての
完成度を追求するこのようなステージ運びは、望むところというか、
プロ吹奏楽団である彼らにとって「会心」のものになったのではないでしょうか。
陸自には歌手もトワラーもいませんが、その代わりに
純白の制服に身を包んだ長身イケメン集団()の第302保安警務中隊がいます。
彼らの儀仗演技を「花」としてそれに相応しい凛とした楽曲を選ぶ。
これが陸自音楽隊の本領(カラー)なのだと思わされました。
2002年ワールドカップのために作られたアンセム演奏中。
「アンセム(Anthem)」とは「讃歌」「応援合唱詩歌」とか「~を代表する歌」
という意味です。
もともとは「聖歌隊の賛美歌」という意味ですが、「国歌」のことは
「ナショナル・アンセム」といいますね。
この場合は「讃歌」でいいと思います。
FiFa World Cup Official Anthem (2002)
美しい曲ですね。
あのワールドカップは史上最低だったといわれていますが()
「おお、運命の女神よ」「カッパドキア」「2002年W杯アンセム」
陸上自衛隊中央音楽隊
わたしが今年最も評価した陸自音楽隊のステージ、
よかったら動画で確かめてみて下さい。
続く。