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パシフィックコースト航空博物館~オペレーション・ハブ「イチバン」

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パシフィックコースト博物館シリーズ、
今日でようやく展示機の全紹介となります。

このフィールドの写真の空の色をご覧になっても分かるように、
この日のサンタローザは焼けるような陽射しが容赦なく照りつけ、 
帽子とサングラスなしには数分と立っていられないくらいでした。





T-33A SHOOTING STAR  T-BIRD (LOCKHEED)

この辺りになって来ると写真の撮り方も適当になってきて、
サングラスを外さずにファインダーを見ていたりしたので、
ノーズの先が欠けてしまっています。

ロッキードのT−33については、入間基地の自衛隊機墜落事故を

「入間T−33A墜落事故~流星になった男たち」

というエントリに書いたこともあり、
どうしてもそれを思い出さずにいられないのですが、
あの事故を想起しつつ機体を眺めると、まずその小ささが目につきます。
搭乗者はほとんどゴーカートに乗っているような感覚でしょう。

大きければ恐ろしくないなどとは思いませんが、それにしても
生身の人間が全く保護されていない感覚のまま、その機体が
暴走し出したとき、一刻も早く機を捨ててベイルアウトしたい、
そう思うのが人間の本能だろうと思います。

しかし彼らはそれをしませんでした。
住民の巻き添えを防ぐために、機を完全に立て直しきるまで・・。

話で聴くだけでは実感できない搭乗者のそのときの視点、
そして何より恐怖というものが、実際の機体を見ると
あらためて感覚として真に迫って来るのを感じ、
わたしは入間から遠く離れたサンタローザで厳粛な気持ちに見舞われ、
彼らを思うと、いつのまにか頭を垂れずに入られませんでした。




表示の「Tバード」ですが、これも米軍でのあだなだったようです。
日本ではむしろ「サンサン」と呼ばれることが多かったとか。
これも防衛省は「若鷹」という愛称を公式に制定したのですが、
現場には使ってもらえなかったようです。

「わかたか」・・・・・いいにくいよね(´・ω・`)



翼端に黒い増槽(燃料タンク)がついているのが
デザイン上の大きな特色になっています。

今気づいたのですが、この写真もノーズが欠けていますね。
どうしてこの機体の写真はことごとく同じ部分が写っていないのか、
不思議で仕方ありません。



Tー38 TALON  (NORTHROP)

ノースロップ社は、航空軍事支援プログラムを通じて
西側同盟国に機体を供給するため、操作性に優れた高性能の
軽量戦闘機を製造することにし、1950年半ばに、
民間のベンチャー開発プログラムを開始しました。

米空軍はノースロップNー156Tとして開発された練習機に
興味を示し、YT−38へと発展させて採用することになります。

ちなみにこのときに同時に開発された戦闘機型のNー156Fは、
その後ノースロップF−5の原型となります。




この機体にはステップが掛けられていたので、
上に登ってコクピットの写真を撮ってみました。

 

シート右手に黄色と黒のストライプのレバーがありますが、
これがイジェクトシートの作動レバーだと思われます。

座席になぜか木切れが置いてありますが、これは意味不明。



この機体もトップガンではアグレッサーを務めています。
後ろから突き出したものはマイクでしょうか。

名称の「タロン」というのは猛禽類のカギツメのことです。
双発ジェット練習機としては大変優秀だったため、1000機以上が
生産され、数カ国の軍隊で使用されている他、アメリカでは
NASAが宇宙飛行士の訓練用や連絡用の飛行機として採用しています。

なお、空軍の模擬格闘戦では。最新鋭のF−22に勝ったこともある模様。



UH-1H IROQUOIS  (HEUY)

ヒューイヒューイと呼んでいますが、実はこれも
正式名称は「イロコイ」といいます。

ヒューイというのは最初のタイプ「HU-1」の「1」を「I」と呼んで
「ヒューイ」と呼び出したのが始まりだそうです。
日本軍がP−38を「ぺろはち」(3を”ろ”と読んだ)と呼んだみたいですね。 

この機体は1967年に米軍がベルヘリコプター社から購入したもので、
ベトナムでも配備されたことがあります。
が、ピックアップのときにメインローターが大破するという事故を
2回起こしています。
のみならず、敵の攻撃により、ホバリング中メインローターを2度破損。

もうメインローターのお払いをしてもらった方がいいんじゃないか?
というくらい同じような事故を繰り返しているヘリコプターなんです。

というか、メインローターってそんなに破損し易いんですかね。 



ベトナム戦争終結後は、カンボジアでの作戦に参加。
71年に帰還し、テキサス・ナショナルガード(州兵)の所属に。

その後陸軍に行ったりウェストバージニアのナショナルガードに行ったり、
ローターが何度もやられた割には丈夫であちらこちらたらい回し。

最後にはなんと落雷による損傷まで受けたというのですが、
その後も修理してしれっとカリフォルニア州兵の所属となり、
現在ここで余生を送っています。

まさに百戦錬磨の古兵として引退をしたヴェテランと言っていいでしょう。




背中にスペードをつけた蜘蛛をノーズにペイントしたのは
このうちどの部隊だったのでしょうか。



さらにこれ。
ビートルズの曲、

「Lucy In The Sky With The Diamond」

と、当時の「サイケデリック」なロゴで書かれています。
このロゴを見てもおわかりかとおもいますが、
この曲は「LSD」(幻覚剤)によるイリュージョンを描いた、
といわれており、このヒューイの当時の乗員たちも
悪ノリしてこれをわざわざ機体に描いたのかと思われます。

アメリカの若者のヒッピー文化はベトナム戦争への反対運動として生まれ、
高揚や悟りや覚醒を求めるという手段に薬を用いましたが、
現にベトナムにいる兵士たちがこの曲をシンボルにしていたというのは
戦争に参加している当の兵士たちの間にも「反戦」「抵抗(レジスタンス)」
の空気があったということでしょうか。

現在、アメリカはベトナム戦争でベトナムに負けたのではなく
国内の反戦に負けたとする説もあります。



FIGHTING FALCON  F−16N VIPER

かっこいい飛行機!と思ったら名前もかっこよかったでござる。

ファイティングファルコン!
ヴァイパー!

なんとなく中二病的な匂いさえしてくるわけですが、この名称、
空軍士官学校のマスコットが鷹(ファルコン)であることから
ファルコンにしたかったのだけど、すでにビジネスジェットに
同じ名称が使われていたことから、「ファイティング」をつけ加えました。

ヴァイパーというのはこちらは非公式な愛称、あだ名で、
ヘビの総称のように使われる言葉です。

フライバイワイヤを採用し、軽量の戦闘機として開発されましたが、
対地攻撃にも優れており、「マルチロール機」の走りとも言えるでしょう。

NATO諸国の空軍の「ホットロッド」の海軍版、とあだ名されます。



キャノピーの形状を見て頂ければおわかりかもしれませんが、
全周が視界良好であるため、初めて他の機から乗ったパイロットは、
加速時にまるで振り落とされそうな気がするのだそうです。



ヴァイパーはMig-29にその性能が酷似していたそうです。
もともとこのN型は、アグレッサー部隊の異機種戦闘機訓練用に作られ、
訓練用ということで空対空ミサイルなどは搭載しません。

ぱっと見たときに妙にすっきりしたシェイプだと感じたのは
どうやらこのせいではないかと思われます。

当博物館はF−16Nを所有するたった3つの民間博物館のひとつで、
それというのも米軍、特に海軍からは

非常に高い評価を受けているからである

とHPには誇らしげに記されています。 



F−5E TIGERII

前にも一度ご紹介していますが、真正面から見た
このフェイスがウーパールーパーみたいなのでもう一度。



Tー37B TWEET  (CESNA)

セスナエアクラフトは、ターボジェット駆動の練習機として
軍用規格に対応したこのTー37を開発しました。
「ツィート」とはご存知のように鳥のさえずりですが、
このあだ名は実際にこれを練習機に使用した搭乗員から賜りました。



パイロットとインストラクターが並んで乗る並列複座式。
これは全体から見ると少数派になります。



ノーズ先の尖った部分にはテニスボールが差してありました。



空軍で運用されていた機体ですが、練習機であるせいか、
クッションカバーの選択にのんびりしたものが感じられます。




さて、というわけでフィールドの航空機を全て紹介し終わりました。

滞在時間をできるだけ短縮するため、説明はほとんど読まず、
機械的に写真だけを撮りまくったのですが、それだけでも
たっぷり1時間は要しました。
この建物は、ボランティアのメカニックたちの詰め所のようです。



おじさんたちが4人くらいで昼食中。

 

帰りも売店と資料コーナーのある建物を通ります。
ガレージのようなところには、展示なんだか整備中だかわからないものが。

これはただの箱に見えますが、なんとSR−71ブラックバードの搭載していた

ASTORO-INERTIAL  NAVIGATION SYSTEM (ANS)

つまりナビゲーションシステムです。
下の方に「レーダー」と書いてありますね。
「NO STEP」がなんだかシュールです。



ブラックバードの「おむつ着用問題」について前お話ししたのですが、
どんなスタイルで乗員が乗っていたかwikiで見つけました。
これではまるで、宇宙の旅・・・。



さらに、嘉手納基地に配備されていた頃の

「ハブ作戦」(Oparation Habu)

のポスター。
右下には「ICHIBAN」と書かれています(笑)

いやー、何かと話題の多い機体ですね。ブラックバード。
航空機とその周辺のネーミングについて語ることの多かった本稿ですが、
これをして話題性における優勝としたいと思います。




最後に、当博物館渾身の手作り飛行機。
隣に犬小屋がありますが、これとあわせて

「スヌーピーセット」 

であると思われます。
(ここはソノマカウンティ・チャールズ・シュルツ空港ともいう)


この博物館については、またいずれ館内の資料室について
あと一回お話しして、おしまいにしたいと思います。


続く。




 


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