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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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とある地銀の美術コレクション

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先日、私自身の仕事である地方に赴いた際、
ご縁を得てある地方銀行の会長に
行内にある美術コレクションを観せていただきました。

バブルの時代に安田火災がゴッホの「ひまわり」を買ったという話が、
どちらかというと批判的に報じられていたのは記憶にありますが、
今までこのような機会がなかったので、一般的に銀行というのが
どこもこのようなコレクションをしているのかどうかは知りません。

ただ、この銀行がこのような収集をした原因の一つとして
初代頭取があの大原孫三郎だったということがあるでしょう。

大原孫三郎。

倉敷貿易の創立者で、先日レポートした倉敷の風致地区にある
大原美術館を造った、経済界の神様のような実業家です。

昭和5年の当行開業以来、10年間頭取の任にありました。
そんな人が頭取ですから、その後この銀行がこういった
美術を収集していくのも当然の成り行き。

というわけで、行内のいたるところに価値ある美術品が
まるで美術館のようにさりげなく飾られているのです。

それをわざわざ会長の解説により見せていただけると。
今まで銀行の内部などに入ったことがありませんから、
その意味でも興味津々です。



この地方ではトップの地銀だそうです。
新行屋?は近代的でありながらどことなく古風な
威厳を残したものとなっています。



案内されて、応接室に。
「うぉっほん、ちみちみ〜」
などと息子と「頭取ごっこ」をしていたら、
何人も行員さんがやってこられました。

「すみません!会長が・・・・・・!」

なんと、連絡の間違いかTOの勘違いか、
この日会長さんが我々のホテルまで公用車で迎えに
来てくださっていて、勝手に電車でやってきた我々と
行き違いになってしまったというのです。

「今連絡が取れましてこちらに向かっているそうです!」

ははー。
一行の会長ともあろう方がわざわざお迎えに来てくださっていたとは。

「到着まで代わりにご案内しろとのことでございます」

というわけで代理の方にしばらくご案内いただきました。



くどいですが、ここの超目玉展示?
下世話な言い方をすれば
「ここでもっともお高かった作品」。

平山郁夫の「吉備路緑映」



この作品があまたのコレクションの中でも「白眉」ですから、
その展示の仕方も細心の心遣いが見えます。



このスペースは家具もない、何もない、
立ってこの絵が一目で見渡せるだけの余裕があります。
写真ではわかりにくいですが、バレーボールのコートは
楽に取れそうなくらいの広さです。

それだけでも贅沢なのに、この対面の壁には



先日窯元を訪ねた陶芸家のご尊父である
人間国宝の作品が!!

この陶芸家は
「平山郁夫の絵の正面に置くため」
という依頼を受けてこの作品を捻ったとか。

わたしには陶芸の良さははっきり言って全くわかりませんが、
この壺が「気持ちいい」つくりであることだけはわかります。



絵の一部。
夕暮れで鳥の群れが飛ぶ様子。



平山郁夫の作品は特に好き、というわけではありませんでしたが、
少なくともこれは「気持ちいい作品だ」と思いました。

(なんでもこの一言で片付けるエリス中尉である)

ほら、家の軒の洗濯物とか。
どこにもありそうな民家とか。
藁ぶき屋根の家なんてわざわざ描かなくても十分絵になっているのがいい。



道を歩いている母子の姿。
これは何を隠そう平山画伯の家族。

平山郁夫の夫人というのは東京芸大の油絵科の同級生。
なんでも平山生徒よりも成績はよかったのだそうです。
しかし、結婚してからは自分は絵筆を捨て、
平山の全面的な協力者となって夫の創作を助けました。

ん?

こんな夫婦、漫画界にもいたような・・・。



因みに人間国宝の作品はこんな風に展示されています。



平山の絵の前には、対にこのような作品も。
こちらも素晴らしいですね。
釉薬の緑が平山の絵とリンクしているようで。

どちらかくれると言われたら・・・・
わたしならこっちかな(人間国宝の方すみません)



人間国宝多数。



双鹿図。白川何某画。
金属レリーフ作品。
エリス中尉のシルエットは無視してください。



確か陶器をはめ込んで作ったモザイク作品。
「燦々」藤原何某作。
ちゃんと名前を書け、って?
拡大しても名前の部分が読めないんですよ(T_T)



この銀行のすごいのは、このような美術作品を
会議室の飾りとして普通に壁にかけていること。
まさに美術品の日常使いです。
いや贅沢なことです。



それをさらに実感したのがこの絵。
小磯良平でございますよ皆さん!

これもただの会議室にポンと掛けてありました。

わたしは昔から小磯良平が好きです。
神戸出身というので身びいき?しています。



このあたりで「会長が参りました」
と秘書さんが呼びに来られました。
銀行の会長秘書を生で見るのはこれも初めてです。
しずしずとお茶を持ってこられましたが、
ソファにふんぞり返ってそれをいただくのは
「なんか大物になった気分!」でした。

(つくづく根っからの小物である)

このだだっ広いスペースは、いくつかの応接室の扉があり、
そこに行くための単なる「廊下」。
廊下なのに40畳の大広間ほどのスペースがあります。

ここからは会長がご案内説明をしてくださいました。



絨毯ですら美術工芸品。
こんな絨毯にコーヒーでもこぼしたらどうするんだ!
考えただけでハラハラしてしまいます。



この会議室の絨毯も工芸品。
「この部屋のどの美術品より値打ちがある」とか。
瀬戸内の波を表している模様だそうです。

絨毯より価値がないと言われてしまった作品。



これも絨毯以下。
本物の中国出土の古美術のようです。
はっきり言って怖い。

内心「たいしたことねー」と思ってしまった絵。
作家の方すみません。



またもや人間国宝。
日本には人間国宝がいったい何人いるのか。
そして、横に置かれた小石は何か。

でもしかしこの花器はもしくれるならぜひ欲しい。
これに枝もの(満天星躑躅・ドウダンツツジとか)を活けてみたい。

上部が開いているのか、果たして花器なのかも判然としませんが。



真ん中の「輪」がいいですね。
これも好き。



後藤純男さん作。
どうも金箔を使うのが好きな作家さんみたいですね。



エレベーターホールにあったブロンズ作品。
題名「潮風」。
なるほど確かに潮風である。
おみ足がたいへん美しい方ですね。

児島虎治郎作。
この名前に記憶はございませんかポチ三水?
そう、大原孫三郎をパトロンとして多大な援助を受け、
ヨーロッパに留学して大原に絶大な信頼を受けた
その「眼力」で、ヨーロッパの名画を独断で買い付け、
大原コレクションを完成させた洋画家です。

東京芸大を首席で卒業、名画のコピーも上手かったようです。
この作品を見てもルノワールの影響が大きいのがわかりますね。



これなんか、好きな児島作品です。
児島自身は大原美術館の完成を見なかったそうで、
きっと心残りだったことでしょう。

もっと世界的に評価されてもいい画家だと思います。



竹内勇さん作。



応接室にいたにこちゃん大魔王。
怖いよ君怖いよ。



ウサギを抱く少女。(仮題)
ウサギ、嫌がっています。
下のウサギも心配そうだ。



おおここにも例の人間国宝の方の関係者の作品が。
工房で見た備前焼とは肌合いが違う気がするんですが、
釉薬とかかけたらこうなるんでしょうか。



唐突ですが、宅のTO作。
人間国宝の作品との価値の違いが全く分からない
わたしははっきり言ってみる目がありませんか。

これは、TOが単独でここの窯元に行ったとき、
焼かせてもらった作品なのだそうです。
つまり、人間国宝の窯で焼いた素人の作品です。
ただしこれを「本職の陶芸家が焼いたものではない」
ということを証明するために、

「なんでもいいから字を書いてください」

といわれて、TOは字を書きました。

「○○(エリス中尉の名前)、
いつまでも
こんなに
好きで
いさせてくれて
ありがとう」

・・・・・おいっ。

「あの、気持ちは嬉しいんだけど、
もう少し気の利いた文句思いつかなかったの?
『不撓不屈』とか『五省』とか。
わたしならそうするけど。
せめて『にんげんだものくだもの』とか」
「いいの。これしか思いつかなかったから」
「もう・・・・恥ずかしいなあ」

ええ、こういう人物です。うちのTOは。

それはともかく、これにもしこの怪しい字がなくて、
「人間国宝作」と言われれば、へえそうですかと
思ってしまいそうなんですが。

そう思ったっていいじゃないか。にんげんだもの。



お茶を飲んだ応接室の絵。



廊下の絵。
不思議な色遣いの絵ですね。
というか木が不気味である。



同じ名前だと思ったら、児島虎次郎さんのお孫さんらしい。
ドイツプロイセンの兜にインスピレーションを得た作品。
(だと思う)



応接室にアクセスする廊下にあった作品。
道標・鳩 藤原義達作。



荒ぶる獅子。



これもエレベーターホールにあった作品。
モデルはANNさんです。



これも平山郁夫。
ずいぶん手抜・・・、いや何でもありません。
ペンに水彩で色を掛けてあります。



だからといって手を抜かなければいい作品かというと
そうでもないのではないか、ということを立証している作品。

うーん、エリス中尉、この手の絵に対して点が辛い。



まあ、扇子の柄ですから、これでいいんじゃないでしょか。



高山辰雄作。
これなど、近くに寄ってみると大変よろしいかと。



こういう感じ。



ところで当行からは岡山城がこのように見えます。
この日は雨でした。



玄関が広ければ傘立てにいいかもしれない。



ところでこの銀行、昔ここにあった歴史的建造物にあった
建築モチーフをいたるところで再現しています。
ここは劇場ではなく、カンファレンスルーム、大講堂の前の
ホールで、今から社員研修が始まるので人がいるのですが、
この柱の仕様をご覧ください。



まるでギリシャの神殿かはたまたローマの浴場のような柱が!
なんというか、地銀の底力を感じますですね。



このホールにあった巨大な絵画。



壁画もご覧のとおり。



あまり写っていませんが、あたかも塗っているかのような壁。
まるで「カフェ・ラミル」の壁みたいです。
これが銀行だっていうんですから・・・・。

この銀行は、このようにいたるところに美術品を置いているだけでなく、
銀行の資料室というものがあって、歴史的資料を見ることもできます。

それもまた興味深いものだらけ!だったので、
一日かけてお話ししたいと思います。

しかし、この美術品の数々。とにかくすごかった!




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