同じ火力でも花火の話題を挟んで総火演についてお話ししていますが、
そもそもこの「火」関係のイベントが毎年同じ週末にあるというのはこれいかに。
大曲花火大会が夏の終わりにある意味は、この大会が花火師の競技会であるからで、
夏の間ずっと彼らは全国各地で請け負った花火の仕事をこなしているのですが、
それがどこの地域もすべて終了してから行われることが決まっているからです。
この大会で優秀な成績を収めた業者は、翌年の夏の仕事の受注が増えるというわけ。
それではどうして陸自の火力演習がこの時期に行われるのか。
●夏休み期間に行うことで学齢期の青少年たちが来やすい
これは大きいでしょうね。
神奈川県の学校で、希望者を募って総火演見学をすることにしたところ、
市民団体がキーキーと文句をつけてきたということがありましたが、
その反対理由が
「社会経験も知識も不十分な子供の心情を引っ張るような教育は正しくない」
だそうで・・・。
これ、そういうものを見たら子供達は自衛隊に入りたいとか言い出す、
って前提でしょうかね。
だとしたらあまりにも子供(中学生でしょう?)を舐めた話じゃないですか。
わたしが最初に総火演を見学した感想というのは、その練度と、イベントの
オーガナイズを含む組織としての手際の良さ、気遣いに感じ入ったのは勿論、
何と言っても実際の武器の破壊力を目の当たりにし、
「戦争だけは何が何でもやっちゃーいかんなあ」
ということでしたね。
彼らはどうして武力の恐ろしさを知る機会すら遮断しようとするんでしょうか。
断言してもいいけど、この反対している連中は誰一人として総火演を
見に来たことはないと思います。
YouTubeの映像などでは決して伺い知ることのできない地響き、
鼓膜が破れんばかりの轟音、そして空気が熱気とともに震える瞬間。
逆説のようですが、それはある意味、得難い「平和教育」となるはずなのです。
まあ、連中はとにかく血気盛んな男子が
「自衛隊かっこいい!よし、俺自衛隊に入る」
となることを阻止したいだけなんだろうと思いますが、それならそれで、
日本には、あなたたちの大好きな憲法によって職業選択の自由というものが(略)
そんな話はともかく、現地について、スタンドではなく
地面である「前面シート」に陣地を構築することになったわたし。
てるてる坊主のような状態のまま、ポンチョの胸元からカメラを出して
リハーサルの様子をせっせと撮りまくります。
総火演の本番、つまり一般公開は23日の1日だけ。
他は全て予行演習であるわけなのですが、さらにそのリハーサルをしとるわけです。
リハーサルならではのサプライズも今回は起こったようですね。
2015富士総合火力演習 オスプレイ登場!
横田基地配備の米軍さんが遊びに来てくれたんですねー。
これ絶対陸自の中の人も知ってたと思うんですが、前もって
「遊びに行くからねー」
みたいな話がどこかにあったんでしょうか。
なんかわくわくするなあ。
さて、わたしが落ち着いたとき、フィールドでは96式装輪装甲車が
リハーサルを行っていました。
96の弾着目標は「緑の台」のパネルです。
本番にはここに白いパネルがはめられます。
見事命中させたのはこの右側の96ではなく、左からです。
写っている96は緑の旗を上げていますから撃ってません。
撃っているのはおそらく96式40mm敵弾銃だと思うのですが、
見た目は細めの銃ですが、40ミリですから、破壊力もご覧の通り。
ちなみにこの96式擲弾銃を調べていたら、これが
「ゲート 自衛隊彼の地にて、斯く戦ヘり」
という自衛隊が銀座から現れた異次元の軍隊と戦うというアニメに
出てくるということを知りました。
勿論出てくる装備はこれだけじゃないんですが。
これなんですが、ちなみにこの広告は、当日配られたプログラムに載っていました。
うーん・・・・・観てみたい(笑)
続いて赤と青の帽子をかぶった歩兵、じゃなくて普通科教導連隊が。
この日は雨のため、望遠レンズ装着したまま一度も付け替えませんでした。
かなり向こうにいる隊員たちの様子もよくわかります。
写真の下の方にうっすらと黄色いロープが写り込んでしまうのは、
座った場所の関係でどうしても避けられませんでした。
赤帽が赤上げて・・、
青帽も赤上げて赤帽は赤上げない。
このあと砲撃が行われたので、青帽の合図が「撃ー!」だと思うのですが、
赤帽の役割が何だったのかはナゾです。
ちなみに歩兵、じゃなくて普通科の攻撃は「目」で行います。
目で行わない砲撃があるのかって?
あるんだなそれが。
わたしはこの総火演を見に行ったあと、たまたま歩兵出身の方と
話をする機会があって、感想を聞かれたのでいろいろとしゃべっていたところ、
その方がそうおっしゃったのでメカラウロコでした。
しかし、目で行うということは雨の日でも全く平常通りの状況が可能。
雨の日で視界が悪いと、特に訓練では寸前に中止される砲撃もあるってことです。
というわけで120ミリ迫撃砲のリハーサル終了。
お片付けです。
砲身を触っていますが、ちょっと撃ったくらいでは
熱を持ったりしないんですね。
・・・・カバーの用意?
牽引する車が到着。
牽引車は、迫撃砲が軽いので普通の車でOKだと思うのですが、(たぶん)
一応専用の高機動車があります。
あれ?猫車みたいな2輪のトロッコがどこかにいってしまいました。
迫撃砲は牽引時、車についている専用のフックに引っ掛けます。
120ミリ迫撃砲は普通科教導隊の重迫撃砲中隊が所持しています。
ちなみに普通科の中隊というのはどのくらいの人数かというと、
第二中隊で35人、第4中隊で32人といったところです。
片付け終了。
いつの間にかもう一台車が来ていました。
迫撃砲を牽引している車に全員が乗り、一台には指揮官が乗っているのかも。
そしてどうしても写り込んでくる白レンズの君(笑)
同じく歩兵じゃなくて(しつこい)普通科教導連隊の、
89式装甲戦闘車のリハーサルが始まりました。
ちなみに防衛省の決めた愛称はライトタイガー、通称はFV。
さきほどの96式もクーガーというかっこいい名前がありますが、誰もそう呼んでません。
装甲戦闘車の定義というのは、
「歩兵が所有し、戦車に随伴する装甲車」
ってことなんですが、こんなところにも防衛省の妙な配慮がありまして、
このFV、最初は
IFV(Infantry Fighting Vehicle)
だったのが、「歩兵」を意味する「infantry」がまずいってことで
「I」を外してしまったのです。
わたしがなぜしつこく「歩兵」を連呼するかわかっていただけます?
「撃ーー!!」
FVは、日本で最初に作られた歩兵戦闘車(つまりIFV)です。
機関砲、機関銃以外に対戦車砲を所有します。
この時撃っていたのはたしか対戦車砲だったと思う。
車両の両肩に備わっているのがそれですよね?
退却のときにも砲塔は敵のいる方向を向いたまま。
移動しながら撃ったのではなく、排気だと思います。
続いてリハーサルは特科教導隊の番。
特科教導隊は教育支援部隊であり、野戦特科学生に対する教育支援や戦術の研究、
教範の作成支援などを行い、全野戦特科部隊の範となるべく創設されました。
この99式自走155ミリ榴弾砲を所有するのは第一及び第二中隊です。
停止した榴弾砲に、隊員が一人駆け寄ってきました。
後ろの小さな扉から中に入っていきます。
彼は偵察かなんか?
狭そう・・・・・。
入ったらちゃんと自分で扉を閉めます。
そして撃ー!
演習場には各ポイントに名前が付いています。
榴弾砲が砲撃を行ったのは三段山です。
何台かの種類の違う榴弾砲が時差を変えて同時に着弾させるという演習です。
お見事。
榴弾砲の射手を直後に大アップしてみました。
会心の一撃であったのか、口元が緩んで歯が見えています。
白レンズの君がどうしても・・・・邪魔で、
FH70、155ミリ榴弾砲の全容が写せませんでした。
これは、チャイコフスキーの「序曲1812年」の演奏の際、
フィナーレの「大砲」としてよく登場するので、このブログでも
何度となくご紹介してきました。
同時弾着の演習にはこのFH70も参加していたようです。
どこに動力があるのかという形態ですが、ちゃんと自走します。
砲身が後ろを向いているので写真では分かりにくいですが、
自走する際にはこの隊員の座っているところが前になります。
ところで、このFH70の名称ですが、
Field Howitzer 1970s
の略なんですね。
このHowitzerを息子共々「ハウイッツァー」と読んでいたわけですが、
(っていうか、英語読みだとこうですよね?)なんのことはない「ハウザー」
であることを知ったあの夏から、もう4年経ちました。
早いものです。
・・・と遠い目をしつつ、次回に続く。