富士総合火力演習予行、まだ「予行の予行」が続いています。
ところで、この日配られたパンフレットには、戦車教導隊、教育支援施設隊、
特科施設隊、普通科教導連帯などの各隊員が写真付きで紹介されていましたが、
なぜか「施設科」がないのよ。
富士学校音楽隊もちゃんと写真を載せているのに。
なぜですか?(詰問口調)
当ブログでは、旧軍の工兵である施設科について、ことに力を入れて紹介し、
施設科なくして自衛隊の災害派遣はありえないというこの事実、
ある意味陸自の中でもっとも現実に「稼働」している兵科(っていうのかな)
を国民に知らしめるべきだと思っておりますが、
たとえば99式の演習が終了するまで最前列で撮りまくっていた
例の「白レンズの君」も、
施設科がフィールドを整備しだすと、レンズにカバーを掛けて休憩。
まあ、「火力演習」を撮りに来たわけですからそれも当然かもしれませんが。
ええいこの装備をなんと心得る。
施設科の所有するマインスイーパーこと、92式地雷原処理車でい!
兵站を確保するという存在意義を持つ施設科は、第一線に立って戦闘することは
めったにありませんが、敵陣前における地雷原の強行処理のような、
極めて危険な任務を遂行することもあり、必要とあらば近接戦闘も行います。
このマインスイーパーの地雷原処理は、毎年富士山を描く演習にも劣らないくらい
会場を沸かせているというのに・・・・。
陸自広報の中の人、万が一これを見ていたら、来年からは
パンフでの施設科の紹介くらいちゃんとしてあげてください。
工兵を軽んじて兵站の確保ができなかったことが、
大東亜戦争中における南方での敗北の一因であることを、
我々は反省とともに決して忘れてはいけません。←飛躍しすぎ?
それはともかく、地雷原処理車の実演、今年こそちゃんと写真に撮りたいなあ・・。
(さすがにリハーサルではやりませんでした)
さて、当ブログでは警備にも注目してみるのだった(笑)
比較的前方に座っている人はご存知だと思うのですが、
通路の最前列には、一人、警備が客席側に向かって座っています。
小さなパイプ椅子に座っているのですが、立っていると見学の邪魔だからですね。
その隊員が交代をしているところに遭遇しました。
まず、交代にやってきた隊員が正面に立ちます。
きっちりとした動きで場所を交代。
二人が背負っている釣竿のようなものは、昔のトランシーバーで、
先に小さなマイクが仕込んであるものだと推察します。
そのままだとぴーんと跳ねてしまうのですが、ワイヤーで固定して
声を集音する仕組みじゃないかな。
なるほど、これだとハンズフリーで通信することが可能。
って、違っていたらごめんなさい。
「行くのか、どうしても」
「ああ・・・」
「地獄で会おうぜ」
って感じ?
交代位置についてからまた対面。
いちいち儀式みたいなことをせねばならんとは大変だのう。
「1時方向の迷彩柄てるてる坊主がさっきから我々の写真を撮っております。
他は異常なし!」
「了解」
(無線のスイッチを入れて)
「本部こちら警備B地点交代完了」(想像です)
ってなことが目の前で行われるわけですから、外の人にはこたえられませんわ。
予行演習の富士山も無事富士山の形に。
やっぱり破裂する瞬間を撮るのはわたしにはまだむり(笑)
演習の予行は、本番の前段演習の順番通りに行われていたようです。
近距離火力に続いて、ヘリ火力。
アパッチロングボウことAH-64Dが登場し、リハを行います。
アパッチは「戦闘ヘリ」とカテゴライズされています。
そのアパッチの右肩がまず赤く点灯しました。
これ、多分この写真でいうところのパイロットランプだと思うのですが・・。
その直後、下方に向かっておなじみの煙が噴き出します。
写真で初めてわかりましたが薬莢が落ちていますね。
先ほどの同時弾着の煙がまだ残っています。
♪どんどんでてこいはたらくくるま~(中略)
でこぼこじめんをたいらにブルドーザー(ブルドーザー)
おおきないしでもらくらくショベルカー (ショベルカー)
いろんなくるまがあるんだな いろんなおしごとあるんだな
ってことで、(笑)本番までのフィールド整備をしております。
ところで、元防衛大臣の小野寺五典氏がおっしゃっていたことですが、
ハイチで起きたハリケーン災害の時、国連の要請を受けて、自衛隊が行った支援というのは、
ブルドーザーを持って行って被害を受けたところを修復するというものでした。
自衛隊のブルドーザというのは普通の「はたらくくるま」と同じブルドーザです。
しかし、施設科が先ほども書いたように「いざとなれば近接戦闘も行う」
という関係上、銃を持っていて、それを立てかける棚が付いているわけです。
たとえ銃は持って行かずとも、そういう仕様だとブルドーザが「武器」と見なされるのですね。
そうなるとわざわざ官房長官談話を出して、
「このブルドーザーは武器輸出三原則の原則外でいいんですよ」
として持って行かなくてはいけませんでした。
中国での遺棄化学兵器の処理に必要な防護服なんかも「武器輸出」にあたりました。
これくらいは瑣末な弊害で、このしばりが影響して、日本はこれまで
新しい装備を開発するのに、国際間の共同生産に参画できなかったのです。
アメリカとはできるのですが、多国間との共同生産となると、
武器輸出の原則に抵触してしまっていたからなんですね。
そこで大変損をしたと言われたのは、次期主力戦闘機のF-35の場合です。
この開発に日本は加わっていません。
生産に加わっていないけれども、いろいろ考えて次期戦闘機にしたのですが、
そうなって改めてスペックを見ると、
日本が開発した様々な技術がいつの間にかその中に活かされていて
大変悔しい思いをすることになったのだそうです。
たとえば複合材の技術。
これは日本がF-2戦闘機の時に開発した技術で、今ではこれが
ボーイング787に導入されているというのは有名ですが、
これがいつの間にかF-35に導入されていたそうです。
あるいはステルス性を持つ塗料の技術も日本が開発したのですが、
これもちゃっかりF-35が取り入れているんだそうです。
もちろんお断りナシで。
日本は「武器輸出三原則」に縛られて国際的な共同生産に加われないのに、
気づいたら他の国が日本の技術を取り込んでしまっていたりしたんですね。
近年政府は「防衛移転の新しい原則」を見直ししました。
これによってどうなっていくかといいますと・・・。
F-35を日本が買うと大変高くなるのですが、ライセンス生産の際、
部分は基本的に他の国で作ったものを持ってきて組み立て、
最終的には数十機という数を揃えることになります。
本来、もし日本が最初からこの計画に加わっていれば、
その部品の中には日本の技術も使われているわけですから、
世界で数千機と予想されるF-35のこれからの需要のうち、
一定の割合を日本企業が作ることができるわけです。
そうなると、将来的には日本のF-35もコストダウンが図れるのです。
日本独自のものしか作れないとなると大変高価につきますが、
世界中で使われているものの部分を日本が請け負っていた場合、
日本の装備として取得する場合大変おやすくなるというのです。
小野寺氏が防衛大臣のときにこういった原則の改正が行われたので、
これからは流れも変わっていくだろうということでした。
ブルドーザの話からすっかり脱線してしまいましたが、安倍政権になって
国家安全保障会議という機関ができ、こういうことも含めていい方向に
動いていっているというのが小野寺氏の感じるところだそうです。
わたしがそんなことを考えている間も(←嘘)、会場では
本番の為の整備が着々と行われております。
人員輸送用のトラックが停まったと思ったら、
標的を「本番用」に交換する作業です。
肉眼ではどんなものが置かれているかわかりませんでしたが、
写真に撮ってアップしてみると詳細が判明。
これは硬化ゴムかなんかの素材でしょうね。
車両から下ろした標的をゴムの前にセットしていきます。
真ん中に十字のついた標的。
写真を見て、肉眼では白いラインに見えていたものが、
なんと土嚢を並べたものであることに初めて気が付きました。
こちらでは標的の黄色いバルーンをセットしています。
なんと、セットした後の標的の表面を布でぬぐって汚れを取っております。
さすがは自衛隊。
というわけで、普段表舞台に出ることのない施設科の隊員の
「はたらくおじさん」ぶりをどうぞ。
整備と射撃砲撃の標的の用意が全て整いました。
いよいよ本番が始まります。
続く。
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平成27年度富士総合火力演習 ブルドーザーと武器輸出三原則
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