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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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NYでミュージカルを観た

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随分と時間が経ってしまいましたが、この夏、NYでミュージカルを二本観た話をします。
当初NYまで車で1時間のノーウォークに宿泊して、ニューヨークに行く理由と言ったら
ハドソンリバーのイントレピッド博物館しか当初頭になかったわたしですが(笑)、
ふと、イントレピッドまで行くなら、マンハッタンもブロードウェイもほぼ同じ距離、
という事実に気づき(イントレピッドの場所を郊外だと勘違いしていた)
急遽TO経由で、某カード会社のデスクにマチネーで観られるものを見繕ってもらいました。

インターネットのない時代なら、自分で電話しなくてはいけないところ、
何でもかんでも代わりにやってくれるカードデスクをツァーデスク代わりに使えて、
本当に便利になったものです。

ミュージカルというのは基本夜の9時とかに始まるため、基本お子ちゃま生活シフトの我々は、
2時から始まるマチネでやっているものしか観られません。
従って、何を観ることになるかは本当に運次第だったわけですが、まず一回目は
「シカゴ」を観ることになりました。



シカゴ。そういえば映画を見たことがあるようなないような。
弁護士の役をリチャード・ギア、
女性をレネ・ゼルウィガーとキャサリン・ゼタ・ジョーンズがやってたなあ。



たまたまマチネーをやっていたので観た「シカゴ」ですが、実はNY在住の方に

「今シカゴは大変いいキャストでやっているのでオススメ」

と言われていました。
その「いいキャスト」の一人が、主人公のロキシー・ハート役のブランティ。
グラミー賞を取ったらしいですね。
原作は全員が白人という設定ですが、彼女のようにアフリカ系はブロードウェイには普通にいます。

いないのはアジア系。
そりゃそうですよね。アジア人が欧米系に混じってミュージカルなど無理ですわ。

ウィーン・フォルクスオパーなんかが絶対に白人以外は採用しないのと同じ理由。
差別ではない。これは差異化・区別というやつです。

しかし、ブロードウェイの歴史上、一度だけアジアの、しかも我が日本の女優が
ステージに、そしてこのロキシー役をしたことがあるってご存知でした?

わたしも今回ウィキを見てびっくりしてしまったのですが、2012年に5日間だけ、
米倉涼子さんがロキシー・ハート役でこの舞台に上がっているのです。
日本語版「シカゴ」を演じた際、ロキシー役に惚れ込んで、
米倉さん自身がブロードウェイに売り込んだそうですが、5日という上映日数の短さと、
あまり話題にならなかったことから、おそらく見かけはともかく、
機関銃のような台詞の多いロキシー役としては
英語がなんとかわかるレベル止まりだったのかも、という気はします。

最近では「王様と私」」に渡辺謙が出演したことで話題になりましたが、
こちらはシャムの王様という役柄上、英語の訛りはむしろ好都合だったのだと思われ。



ロキシーの敵役、ヴェルマ・ケリーを演じたベテランぽい女優。
スタイル抜群でそこは日々の鍛錬で全く衰えていませんが、首筋の皺などから見て
もう50台にはなるのではないかという気がしました。

ヴェルマはわたしが昔何かの折に名前を出した「テックス・ガイナン」、
禁酒法時代の女傑をモデルにしています。
ガイナンの決め台詞、「ハロー、サッカー!」(こんにちは、カモちゃんたち)
はミュージカルの第二幕にも登場しました。



「シカゴ」が上映されているアンバサダー劇場内部。
前から5番目くらいの席での鑑賞です。
当日の割にはいい席が取れたのもカードデスク様のおかげ。



大抵のミュージカル劇場は大変歴史を感じさせる重厚な作りです。

 

ストーリーは単純なものです。

ロキシーというコーラスガールが、浮気した恋人を射殺して刑務所に入れられ、
縛り首になることが分かって、敏腕弁護士ビリーに依頼したところ、
ビリーは死刑囚の彼女を悲劇のヒロインに持ち上げる作戦を取り、彼女は一躍大人気に。
ヴェルマは刑務所の先輩ですが、彼女もまたビリーの弁護を受け、
やはり世間の同情を買って同じような人気者となっていました。
人気を争う二人、妊娠と嘘をついてまでトップの座にいようとするロキシー。

次々と新しい「カモ」を演出して自分の名を上げることが目的の弁護士には結局見捨てられ、
出所したロキシーは、ヴェルマと二人で組んで自分たちのショーを作るという話。

裁判のシーンが多く、残念ながらネイティブ以外には周りのアメリカ人が笑っていても
笑うことができないことが多々あり、歯がゆい思いをしました。
せめてストーリーをよくわかってから行くともっと理解できたんでしょうけど。



「シカゴ」は歴史が古いのでもうピークを過ぎており、それで
チケットも安めだそうです。
「マンマミーア!」は新しいかな。



そして、もう1日、今度チケットが取れたのは「オペラ座の怪人」でした。
ロイド・ウェーバーの作品はどれも音楽が素晴らしく、耳慣れたものばかりですし、
ストーリーもどれも知っているものばかりなので、決まった時には快哉を叫びました。



マジェスティック劇場がこの「オペラ座の怪人」を最初に上演したのは
ロンドンのウェストエンドでの初演の2年後の1988年。
以来27年間もの間、1日も休まずに上演され続けています。



ブロードウェイでもっとも長い歴史を持つミュージカルで、この仮面は
ブロードウェイのシンボルにもなっているくらいですから、いかに人気があるかということです。



このミュージカルに出ようと思ったら、ほとんどの役にはオペラ的発声、つまり
クラシックの声楽の素養が求められるという意味でもキャストにとっては
大変な大役であるということになるのですが、さすがはアメリカ、
このミュージカルに出演できる人というのが掃いて捨てるほど?いるわけです。

アメリカのクラシック音楽はヨーロッパに比べて問題にならないとよく言われますが、
わたしはアメリカの「才能」はクラシックではなく、すべてブロードウェイに集中していて、
ここで分厚い層を作っているのだと聴いていて感じました。
アメリカの音楽芸術、そして舞台芸術は、間違いなくミュージカルを頂点とします。

しかもオペラと違って、出演者は人並み以上の容姿を求められます。
ワーグナー歌いのように、全員がどすこい級で、上演が終わって指揮者が上に上がったら
全く人種が別に見えるくらい痩せて見えた、などということは決してありません。
その点、オペレッタ専門のウィーン・フォルクスオパーと似ているかもしれません。

 

「オペラ座の怪人」は、オペラ座に棲む怪人(といっても顔が奇形なだけ)が、
コーラスガール、クリスティーンに恋をし、彼女に歌を教えてプリマドンナにしたてあげたところ、
劇場のパトロンである若き子爵が彼女、クリスティーンが幼馴染であることに気づき、
クリスティーンを取り合って怪人と子爵が争う、というお話(大体そんな感じ)。

オペラ座で演じられる架空のオペラはまるでモーツァルトのそれのようで、
うちのTOなどは、

「あの劇中にやってたオペラって本当にあるの?」

と惚けたことを聞いておりました。・・・なわけないじゃん。
いずれにせよ、舞台の華やかさ、音楽の良さ、ドラマチックなストーリー、
どれを取ってもどれか一つ観るならこれ、と自信を持っていえるミュージカル。



マチネーの客は観光客で他州からきた人が多いように見えました。
わたしの周りには少なくとも3組くらい日本からの観光客もいました。
中国人は2日通じて一組も観なかった気がします。



わたしの前はラッキーなことに子供が座ったのでおかげで視界抜群。
TOの前には彼の太ったお父さんが座ったため、邪魔だったそうです。
子供はおとなしく見ていましたが、途中で寝てしまいました。
劇場の冷房は強く、わたしは足が冷たくて仕方がなかったのですが、
よくこんなところで寝られるなと思いました。
アメリカ人って寒いの平気なのは知ってましたが、子供の頃からそうなのか・・。

 

オペラ座の怪人を観たことがある方はこれがなにかご存知ですね?
導入部のオークションのシーンでで大変重要な役割をしていた大きなシャンデリア。
この上から怪人が顔を出したりもします。



マジェスティック劇場ができたのは1927年。
もう100年近く経とうとしているというわけですが、これまで、
ガーシュウィンの「ポーギーとベス」、「南太平洋」「屋根の上のバイオリン弾き」
などがここで上映されてきました。

それはそうと、冒頭の漫画なんですけどね。

ミュージカルの上映が終わって余韻も醒めやらぬまま、TOと
あれこれ感想を語り合っていたところ、彼がこんなことを言いだしました。

「クリスティーンって、ファントムのこと好きなんでしょ?」

まあ、ラウル・シャニュイ子爵が幼馴染であることがわかった日、
彼女は怪人にさらわれて、なんとウィキによると「一夜を共にした」ってことになってますな。

「だったらなんで怪人の仮面いきなり外すのよ。それも二回も」

「え?」

「これって、他人のカツラをいきなり外すみたいなもんでしょ?
人としてどうなのよ。失礼じゃないのって思うんだけど」

「確かに。二回目は外しておいて顔見て悲鳴あげたりして」

「でしょ?なんで仮面の下なんて見る必要あるの」

まあ、言われてみたら、ひどい女だよな。
一度ならず二度までもいきなり仮面を外すという暴挙に及んだばかりか、
顔を見てきゃーきゃー叫ばれた日には、そりゃ怪人だって人の一人や二人殺しても仕方が
・・・なくないか。

とにかく、怪人は大変気の毒だ、クリスティーン天然、という結論に達したのでした。

 


上映中は写真一切禁止ですが、カーテンが降りた後もオケピットは演奏を続けています。
人の流れに逆らって、オケピットまでたどり着き、演奏を聞きました。

ミュージカルのオケ指揮も大変なスキルが必要なんですよね。

少し若い頃のカラヤンに似たスマートな指揮者に、終わってから
周りにいた全員が盛大な拍手を送っていました。

ちなみに息子はこの時ニューヘイブンでキャンプに参加していたのですが、
キャンプのイベントで3回くらいはニューヨークに来て、
この「オペラ座の怪人」も観たそうです。
なんと親子で同じオペラを別の日に見ていたってことです。

というわけで、ニューヨークのミュージカル初体験は、エキサイティングでした。
一生に一度はぜひ(劇団四季のではなく)本場で観るべき芸術だと思います。





 


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