掃海母艦の見学が続いています。
艦橋を見学した後は、一度甲板レベルまで降りてきました。
後部甲板に向かって高速で移動していく案内の副長の図。
っていうか、夜なのですこしでも動いているとぶれてしまうわけですが。
そこで目の前に現れたジャイガンティック (gigantic)なリールに驚愕。
これはウィンチというのでしょうか。それとも普通にケーブルドラム?
夜間のせいか見たところ何もありませんが、写真を検索すると
たまに発見されるこの巻き取り機には、黄色いホース状のケーブルが巻かれています。
デリックに吊られている救命ボートは普通の護衛艦より大型のような気がしますが、
気のせいでしょうか。
副長が次にご案内くださったのは後部甲板。
折しも何やら作業の真っ最中です。
甲板の向こう側に防眩物が見えますが、これは接岸用ではなく、
子供の掃海艇などと接舷するときのためのものだと見た。
何を見せてくれるのだろうと思っていたら、なんと副長、
「甲板のエレベーターで下の階に降ります」
甲板の中央にあって、ヘリコプターを載せるにはやや小さい、
(というか乗らない)ほぼ正四角形のエレベーター。
先ほど搬入されたジュースとともに甲板からエレベーターに乗って降りたばかりですが、
一般見学者にとってはもうワクワクです(アトラクション的に)。
またもや脳内を「サンダーバードのテーマ」が鳴り響く中、エレベーター稼働。
これは、エレベーターがちょうど甲板部分を通過しているところ。
複雑に絡み合ったパイプ、無数のダクト、何一つとして無駄な部分はありません。
ここが甲板下の格納庫。
艦艇一般公開などでは決して見られない部分です。
手前の黄色いリールは掃海具の曳行用電源だと思われます。
甲板の大きな巻き取り機もそうですが、掃海という作業、何しろ
巻き取るもの=索をふんだんに使うのです。
対機雷戦には大まかに分けて、
機雷掃討・・機雷のそばで別の機雷を爆破させ処理する
係維掃海・・錘の先に付けられて海中に浮遊する機雷の糸(維)を切断し、
(けいい) 海面に浮かび上がらせたのち処分する
感応掃海・・磁気機雷に対し、ダミーの磁場を発生させて自爆させる
という三種類の方法が現在行われています。
機雷の種類とその機能によって処分の仕方を変えるわけですが、
このいずれの方法をとったとしても必要となってくるのは「引っ張るもの」=索。
機雷探知機にも、先日お見せした黄色い掃海具にも電源とデータ通信用を兼ねた
長い索がついていますし、係維掃海で機雷の糸を切断するためのロープは
艇から二股に別れたカット用の索を使います。
掃海隊HPより
そして、感応機雷をやっつけるには、掃海索という「船のふりをするための」
曳行具を引っ張る索、そしてダミーの発音をする発音体を引っ張り電源を供給する索が。
つまり、どの方法であっても「索」を必要とするので、掃海母艦にも掃海艇にも
このような巻き取り機がいたるところにあるわけです。
まるで小学生のような観察ですが、(小並観)
掃海については訓練見学の報告の際にもう少し詳しくお話しすることもありましょう。
で、ここにも床のあちこちから鎖で固定されている巨大リールがあるわけですが、
これは何のためのもの?
この前に立った時に、ふと「ジングルベル」が脳裏をよぎったわたし。
なんだろう・・・イメージ的にどうしても「トナカイが引くサンタのソリ」
という言葉が浮かんできて仕方がないんですが、その決定的な理由は、
ソリの上に載っているこの赤い物体が、どうにもトナカイのツノみたいだから。
もちろんそんなことは口に出さずに、説明を聞きながら頷いておりましたが。
というわけで、これはMK-105磁気掃海具といいます。
なんと、ヘリコプターに引っ張ってもらってお仕事する掃海具なんですね。
で、この赤いツノは何かと言うと、ヘリコプターに曳行されている時に
抵抗を減らすための水中翼だそうです。
フロートで海上に浮くはずなのに、その上にあるツノが「水中翼」とはこれいかに。
と思ったのですが、よく見たらツノごと外側に向かって倒れるようになっています。
これ、もしかしたらフロートの真下まで倒れるのかな?
これが実際どのように曳行されるのか、動画がないか探してみましたが、
もしかしたら特定機密にあたるのか全く見つかりませんでした。
ところでこの掃海具のメインは、フロートの上に神輿のように担がれているもので、
これがエンジンであり発電機でもあります。
先ほどの「感応機雷」の理屈と同じになるかと思うのですが、これで発電した電流を
電線ケーブルに流して海中に磁場を発生させる事により、敷設された磁気機雷に
「船が通った」と勘違いさせて爆発させるわけです。
実際はヘリに曳行されたこのソリ(じゃないけど)が、さらに電線で
磁場を作っているだけなので、爆発させて処理をすることができるというわけ。
掃海母艦に搭載して現場まで運び、海に下ろしてからヘリがこれを曳行します。
ヘリと索で繋いでから海に降ろすのか、それとも
海に下ろしてから結索するのかどうかまではわかりませんでした。
曳行するヘリは掃海ヘリであるMH-53Eです。
このように航空機によって曳行する掃海具を「航空掃海具」といいますが、
航空掃海具には他に、
バーモアと呼ばれる係維掃海具Mk-103
ベンチュリーと呼ばれる音響掃海具Mk-104
があります。
掃海具格納庫からみた甲板。
いまわたしはMk-105とリールの間に立っています。
ふと甲板上の乗員を見ると、何もせずにこちらを見ている様子・・・。
もしかしたら、わたしたちが見学をしているためにお仕事ができないのでは?
ただでさえ非常識な時間に見学を強行していただいた上、
作業を中断させてしまったのだとしたら、これは申し訳なさすぎる。
後からミカさんに聞いたところによると、わたしたちが後甲板にいったとき、
やはり乗員の皆さんが何か作業をしていて、副長が
「エレベーター動かして」
とオーダーすると、現場の隊員が
「今電源を何々に使っていて(エレベーターを動かせない)」
といったそうなのですが、にもかかわらず副長は鶴の一声で
電源を切り替えさせて(たぶん)動かしてくれたというのです。
わたしはそれを聞いていなかったので、後からこの写真を見て恐縮しまくりました。
もちろんわたしは海上自衛隊の偉い人から、さらに掃海隊の一番偉い人を通じて
この訓練を見学させてもらっているわけで、決して副長が自分の利益のため、
ぶっちゃけて言えば仲のいい人にいい顔をするために中を見せているのではありません。
ですが、時間がイレギュラーすぎたことと、わたしの風体がどう見ても政治家とか、
地域の有力者とか、そういう「無理を言われても仕方ない相手」には見えないことで、
もしかしたらそのせいで副長が誤解されたりしなかったか、今でも気にしています。
しかもエレベーター下ろしている間は夜なのにこんなロープまで
当直士官が張ってくれていたと・・・。
あああ、やっぱり作業していた人、エレベーターが上がるまで何もせずに待ってるよお。
うーん、この電源と関係あったのかな。
しかし、この話を後で聞いて思ったのは、やはりフネというものは、いちどきに
電気を同時にあっちこっちで使うことができないようになっているらしいということでした。
このあと甲板レベルの格納庫の中も見せてもらいました。
信じられない長さの細いロープが、絡まない方法で束ねてあります。
そしてここにももう一基の掃海具MK-105が。
こちらには「2」とあるのですが、下の子が「1」なんでしょうか。
横の黄色い物体は下にもあった巨大リールだと思います。
というわけで、このとき後甲板で作業していた乗員の皆様方。
その節は本当に(文字通り)お邪魔致しました。
続く。
追加:お節介船屋さんにMk-15のYouTubeを教えてもらいました。
ここでもあげておきます。
何が特定秘密だ(笑)
機雷爆破
MK-105 live sweep mine explosion
曳行されている様子がよくわかる映像
MK-105 Mod 4