ヘロキャスティング、海自的省略による「ヘロキャス」が終わりました。
午前中の訓練の見学はこれで終了です。
自衛隊の組んでくれたスケジュールによると、先ほど水中処分員を乗せるため
ヘリを離着艦させるため投錨して停泊していた掃海母艦「うらが」に、
「えのしま」を接舷し、ツァー参加者ご一行はそちらに移乗することになっています。
掃海艇が母艦に接舷するのも、給油作業と同じく訓練の一環ということになりますが、
我々に掃海母艦の中を紹介し、お昼ご飯をそこでいただくという話でした。
「向こうでカレーが食べられるらしい」という噂に、思わず心が浮き立ちます。
昨夜わたしは特別に掃海母艦「ぶんご」の見学をさせていただいていますが、
予定通り「うらが」に移乗できるとなると、これで掃海母艦見学全制覇!
という快挙になるわけです。(掃海母艦は「うらが」型2隻だけなので)
司令官の椅子に座っているのは、先ほどブリーフィングをしてくれた掃海隊司令。
くだらねー質問にそつなく答えておられましたが、内心を勝手にお察しします。
「うらが」に向かって航行中は、メディアの皆さんはあちらこちらで独自に
乗組員の解説を受けたりして過ごしています。
ツァーの中に、後で話して知ったところによると地方紙の新人記者と
やはり若いカメラマンの男女二人がいました。
航行の間、彼女には乗員のうち一人(ブリーフィングにもいた幹部)が、
特に丁寧に説明をしてあげている様子を、わたしは何度か目撃しました。
やはり自衛官としても、彼女のような若い記者には、より正しく取材してほしいと
思うが故の熱心さなのだろうな、と思いつつ横目で見ていました。
彼女も同行のカメラマンも、自衛官のことを「船員さん」と呼んでいたくらいで、
後で話をしたとき、自衛隊の取材は初めてだと言うことでしたが、ミカさんが
「資料とかちゃんと調べて、正しく書いてくださいね」
と明らかにブリーフィングで質問した女記者を意識したアドバイスをすると、
彼女は素直に、はい、と頷き、その様子に初々しさと熱意を感じたものでした。
ちょうどわたしが艦橋にいると、入港準備ラッパが吹鳴されました。
「どみそどー・どみそどー・どみそどっみそっそそー」(固定ドで表記)
他艦に接舷するときも「入港準備」ラッパを吹くというのは初めて知りましたが、
「これから作業にかかれ」という合図として鳴らされるというなのでしょうね。
隊員の表情が、まるでセッション中のジャズトランペッターみたいでかっこいいぞ。
艦橋の窓から「うらが」が近づいてくるのが見えてきました。
いや、「うらが」ではなく「えのしま」が近づいているのですが。
接舷のときにジャイロレピータの前に立つ艇長。
掃海艇の艇長というのは、大型護衛艦よりある意味職人芸的な操艦を要求されます。
前回、「掃海艇の戦場は後甲板である」と書きましたが、
実際に、掃海艇が 掃海索や掃海電線を艇尾から海中に投入するときには、
後甲板に移動して、海中に入る索具とプロペラの位置関係を確認しながら操艦するのです。
その時には船務長を艦橋に立たせて、伝令が伝える艇長の操艦号令を確認させるとともに、
進行方向 周囲に危険がないか報告させます。
掃海艇の形状というのは、このことを考慮したものになっています。
国産最初の掃海艇「かさど」 型、「たかみ」型までは視界の確保のために煙突がなく、
自動車の排気のように両サイドにパイプで排出していましたが、
海洋汚染防止法の適用でこれができなくなり、煙突を装備するようになりました。
その煙突がどうしても邪魔、ということで「すがしま」型以降の掃海艇は、
煙突を両舷左右に分けて2本煙突にしたため、後方の見通しが良くなりました。
掃海艇の艇長は大航海時代の船乗りよろしく、艦に起こっていることを
逐一確認しながら操艦を行います。
そのためには旗甲板に後ろ向きに立って、後甲板を見ることになります。
後部側を見通す方向に余計なものがあっては困る理由がこれです。
「うらが」が近づいてきました。
この乗組員は頼まれて写真を撮っているのかな?
「えのしま」は「うらが」の後方から寄り添うように接舷していきます。
「赤いロープが跳ねた」話をしましたが、実はこのときでした。
「えのしま」の細い赤の索が、このカメラマンに当たったのです。
「大丈夫ですか!」
「はー大丈夫ですぅー」
問題の質問をした地元テレビの女性記者共々、ニヤニヤしているので、
全然大丈夫だったわけなんですが。
索は今彼らの向こうにあります。
手を挙げているように見える隊員は赤い索を持ち上げています。
あー、人がどかないのでとっても邪魔そう。
「はい、索を前に移しますのでご協力お願いしますー」
さて、そんな大騒ぎ?に気を取られているうちに、「うらが」はすぐそこに。
こちらの双眼鏡と何かわからないドラムのようなものに向こうの舷側を取ってみました。
そこでふと気付いたのですが、あれ?向こうでも赤い索を持っている。
そして青い大型洗面器・・・・・・何に使うのだろう。
「うらが」舷側アップ。
ね?細い索持ってますよね。
後ろから見ているサングラスの隊員は、水中処分員らしい。
下の会では何が行われているのかな。
入港作業のときには皆赤いヘルメットをかぶっています。
防眩物の設置みたいですね。
昨夜「ぶんご」を見学したとき、一番最後に見せてもらったのが
この舷側にくりぬかれたような部分のデッキでした。
なんのためにあるのかと思っていたら、ここで稼働例を見ることになりました。
甲板階から渡された索を、この部分のロープ通しの穴から出して、
ここに防眩物を設置しているのです。
ここにも見えるなあ。細い索。
この細い索がどこまで繋がっているのかはこの写真ではわかりませんでした。
そこでこれ。
上の会では何が行われているかというと、細い索の先をさっきから持っていた
洗面器に浸しているように見えるのです。
これは一体なんの作業・・・・_?
上と下の階でこんな感じ。
どなたかこの赤い索と洗面器の関係がお分かりの方おられますか。
というわけで防眩物の用意おけー。
こういうシーンをビデオカメラに撮って、一体何に使うつもりなんだろう。
全国紙の記者。
「えのしま」のスラスターの立てる波が真っ白に見えます。
接舷のときにはスラスターの操作を絶妙に加減してゆっくりと近づいていきます。
ふと気づけば、艦橋には向こうの艦長が出てきていました。
太い索はもやいで、お互いを結ぶためにあるのでしょうか。
直立しているラッタルが降ろされ、両船のデッキをつなぐわけですが、
ラッタルの両脇に、例の洗面器に赤い索を入れている乗組員が二人。
こちらの防眩物は海に浸すのではなく、中腹にぶら下げています。
おそらくここにしないと艦体の形の関係で当たってしまうのでしょう。
明らかに水中処分員みたいな人がたくさんいる!
こ、これはもしかして、向こうに乗り移ったら水中処分員のお話も聞けたりする?
水中処分員の皆さんは、船の上ではすることがないと見た。
サングラス着用が多いですが、何か意味があるのでしょうか。
ところで、彼らの右下に、例の洗面器が見えるぞ。
超拡大。
洗面器じゃなくてカゴですねこれは。
で、先にアイスクリームコーンみたいな物があるんですがこれは。
もしかしたらこれがサンドレットと呼ばれる投げ渡し用の索でしょうか。
いよいよ接舷の瞬間です。
波の高い洋上で、何の苦労もなくこういうことをやっていますが、
これとても、たいした技術なんだろうなと思います。
こちらでも艦服に防眩物の用意。
ところで青と白のチェッカーには何か意味がありそうですが・・。
うおおおおっ、いつの間に!
いつの間に行われたのか全く気づかぬうちに、「えのしま」の艦首部分が
「うらが」ともやいで繋がれていました。
どうやってもやいを受け渡ししたんだろう・・・・。
ちなみにこれが接舷前の「えのしま」甲板。
投げ渡すためのもやいが綺麗に並べられています。
いよいよ接舷の瞬間が近づいてきた頃、こちらにもいつの間にか
舷側に艇長の姿があり、むこうには隊司令も出てきています。
というわけで、この瞬間、接舷成功。
さて、これからラッタルを降ろして、両舷を接続させる作業が始まるのです。
ところで、わたしはめでたくラッタルがかかってから、海の上、
結構な高さのあるラッタルを渡ってむこうに行くのは、おそらく
高所恐怖症ならずとも結構怖いのではないかとここにきて急に心配になりました。
ラッタルには手すりが付いているとはいえ、ご覧の通り舷の高さが全く違うのです。
むこうに移る時にはまだいいとして、帰りは坂を下りることになります。
万が一滑ったりして海に落ちたとしても、海に飛び込んでくれる人が売るほど
たくさん向こうには待機しているとはいえ・・・・。
はたしてどうなるのでしょうか!?
続く。