垂直降下にはラペリングファストロープという2種類の方法があるということ。
ラペリング(自衛隊ではリペリング) を行うのはレンジャー資格者だけ。
降下訓練始め3回目にして初めて知ったわけですが、これに限らず、
さすがに3回目ともなると今まで見えていなかった細部に気づくことも多々あります。
つまり、何事においても繰り返しと経験はそれなりの意味をもたらすわけで、
だからこそ、いつも同じようなことをやっていると思われる行事でも
毎年参加する価値もある・・・・・ということを確認した今回の降下始め。
ラペリング以降は攻撃のクライマックスに向けて見せ場の連続です。
偽装網の下には、数人の小隊がいて、攻撃の指令を待っています。
ところでこの偽装網、カモフラージュネットという商品名で買えます(笑)
小売でこのくらいの大きさだと16,800円くらい、もっと小さいので
ネットだけだと千円台で手に入ります。
偽装網を何のために買うのか?というと「インテリア」だそうです。
このサイトでは偽装網に限らず、グレネードベストやガスマスク、薬莢など、
何に使うのか何のために買うのかわからないものがてんこ盛りです。
どうもアメリカ軍の兵士が要らなくなったグッズをこっそり売っている模様。
自衛隊員がこんなことしたら大変だ。
フィールドのあちこちでは盛り盛りに偽装を施した高機動車から
砲を下ろしたり、地面に銃を設置したりが始まっております。
ちなみにどこに人がいるのか赤丸で印をつけてみました。
拡大しないとまずわかりません。
車からトランクのようなツールボックスのようなものを外の人に渡しています。
3台の車が縦一列で移動。
この角度だとわかりにくいですが、迫撃砲を各々1挺ずつ引っ張っています。
敵陣に向けて車を駐め、迫撃砲の用意。
真ん中の隊員が抱えているのが偽装網。
迫撃砲の設置は4名で行うことが決まっている模様。
空中では、アパッチがここぞと暴れております。
地上で陣地構築や武器の設置を行っている間は、このようにして
敵からの攻撃を牽制しているという設定だろうと思われます。
これはわたしがカメラを傾けたわけではなく、本当にこういう角度で飛んでいたのです。
操縦者は後席に座っているそうですが、前席の射手は体が前にのめっていますね。
なんでもアパッチの操縦はヘリの中でも難しいらしく、普通ヘリの操縦ができても
さらに1年は訓練をしないとまともに操縦することができないのだとか。
さらに実戦配備にはたっぷり3年はかかるということなので、それこそ
パイロット養成には時間とお金が莫大にかかるというものなのだそうです。
お金がかかるのは養成費だけではなく、その特性に応じた特殊なヘルメットは
パイロット一人一人のために特別誂え。
このヘルメットのゴーグルの右目には計機の数字が映し出されており、
左目で外部を見ながら両手両足全く別の動きで操縦、という、
音楽でいうとまるでドラムのような作業が必要になるのです。
ドラムは下手でも失敗しても死にませんが(ミュージシャンとしては死ぬけど)
ヘリは失敗したら落ちますので、たいへんなんですよこれが。
実はヘリの操縦で一番酷使するのが視神経かもしれない。
右目と左目でいつも違ったものを見て、どちらも認識しないといけないのです。
私事ですが、わたくし今年になって急に(急に出るものらしいですが)飛蚊症になり、
それが「蚊」というレベルのものではなく、先生が「どっかで頭打ちました?」
と聞くくらいの、いわば”飛蝉症”サイズの視覚障害が右目にできております。
たった今も、意識すれば右目で蝉が飛んでいるので、鬱陶しいことこのうえなく、
普通は「治すより慣れろ」と言われるこの症状に対し、手術を勧められています。
片方の目に違うものが見えているだけでこんなにストレスなのに、右目に出てくる数字を
ずっと読みながら、さらに反対側の目で見えていることもちゃんと確認しないといけなくなったら、
とりあえずまず、慣れるより先に、頭痛とか視力低下が起こってくると思われます。
それをしながら自分と射手の命を乗せて飛ぶんだから、こりゃ大変だ。
この話はアメリカのアパッチロングボウのパイロットの話のようですが、
きっと自衛隊のパイロットも同じ事情だと思うんです。
それを考えると、この日見せたアパッチの暴れぶりにも感慨がひとしおではありませんか。
さて、一方その頃地上に降り立ったチヌークさん。
カエルの口から車が出てきました。
「実際見たら思ったより小さい」
というご報告もコメント欄でありましたが、こうしてみても
車が幅も高さもギリギリですよね。
こちらの車には偽装なし。
おそらく盛り盛りにしたらチヌークの中が草だらけになって
掃除が大変だからに違いありません。
降りるときに全部引っかかって落ちてしまいそうだし。
とおもったら、その横を、盛りすぎの車が!
これはまた思いっきりデコってますなー。
なんでもこの映像はその日のうちに世界中に配信されたとか。
このYouTubeの「もふもふ」は去年の映像だそうです。
観客が爆笑している音声が入っています。
確かに今年他はちょっと草の盛り方が違いますね。
原型は車なのでスピードは速いんですが、問題は前が見えているかってことなんだな。
この車は73式小型トラック。
多分この人が運転手に指示を与えているのだと思います。
運転操作はその指示だけを頼りにやってるってことですよね。
阿吽の呼吸というか行間を読む文化の日本ならではで、海外では案の定
「さすがニンジャの国」とか言われていたそうです。
この「もふもふ」、YouTubeでは「かえって目立つだろ」と言われていますが、
もちろん動かなければ、草むらにしか見えません。
この偽装、ある程度盛ってから運転手が乗り込み、あとは皆で
寄ってたかって彼の周りに積み上げたのだと思う。
んでもって、結構みんな楽しんだんじゃないかな。
見張り「あああー、それ以上盛ると前が見えませーん!」
「隙間から見えるだろ?まだ大丈夫だってw」
「走ったら少し取れるから、多めにつけとかないとなー」
「そうだ。毎年わが隊の偽装車はいまや世界中に有名になっている。
多少見えないくらいは根性でなんとかせい!」
フィールドの一番向こうにはFH70榴弾砲がセットされています。
迫撃砲と間違えてしまったけど、確かにこれはヘリでは運べそうにない(; ̄ー ̄A
お次にやってきたのはまたしてもヒューイ、UH-1。
機体横に何かつけておりますが、これは、87式地雷散布装置。
日本は地雷を使えない国際法を批准したんじゃなかったか、と思われた方、ご安心ください。
法律にはちゃんと抜け穴があって、日本が批准した条約は「対人地雷を使用しない」
というものであり、戦車や車が対象であれば普通に地雷を撒いても普通にオーケーなのです。
もちろん戦車には人が乗っているわけで、戦車が踏めば人も多分死ぬわけですが、
それはかまわないって、相変わらず国際条約もなんだかなーって気がしますけど。
後ろから見ると、地雷散布装置がどう装着されているかよくわかりますね。
地雷散布装置を装着できるのはUH-1Hの特色。
今から敵陣地の手前に地雷原を構成しようというつもりです。
そして地雷が撒かれ・・・・・ん?
なんか形が不揃いな金属が・・。
廃棄処分にするパソコンの部品とかチューブとか、つまりゴミ?
本来ならば一つのケースの中に対戦車地雷18個が収められているそうです。
地雷の筒状のケースに入れられており、ケース横から入れて、下から落とします。
というわけで、この度は地雷でなく盛大にゴミを撒き散らかして行ってしまいました。
あとでちゃんと片付けておいてねー。
この赤い煙は、「ここに地雷撒いた」という印だと思われ。
このあたりの兵力はずっと膠着状態で前線は動きません。
そこにチヌークが狙撃兵をまとめてけん引してきました。
これが本日タイトルの「エクストラクションロープでの離脱」です。
ヘリから吊り下げるロープのことをエクストラクションロープといい、
つまり一般名称ではあるのですが、自衛隊においてはこのように
兵員を吊って運用するときに限りこの名称を使用するようです。
実際に見ていたら3人かと思いましたが、写真で確認すると4人でした。
数が多いほどお互いの体が重みになって態勢が安定するんですね。
これが一人や二人だったら、ロープがねじれてしまって狙撃どころではないでしょう。
それに、4人だととりあえず全方向に見張りが行き届きます。
ただし、これで敵陣上空付近を移動するのは相当怖いと思われます。
それに、チヌークの動きによってはかなり振り回されるのは必至。
いずれにしてもこれはあくまでも「兵員移動」であって、攻撃ではありません。
たとえばラペリングやファストロープなどでフィールドに降下した隊員が
爆破などのミッションを行った後、緊急にその場を離脱するときくらいしか
需要があるとは思えませんが、なにしろこれをすると会場が湧くので、
降下始めなど陸自の訓練展示では必ず行われます。
続く。