台湾のランタン祭りやコムローイに行かれた方、あるいは「ラプンツェル」の
"I see the light" のクリップをご覧になった方は、ランタンが一斉に上がったときの
あの幻想的な光景をご存知だと思いますが、ここ津南のランタン祭りは
あの空を埋め尽くすランタンとは少し違う、しみじみしたものです。
つまり規模が小さいということなのですが、さらにその打ち上げを3回に分けて行うのです。
これにはいろいろと運営の事情などがあるらしいということがわかりました。
打ち上げは何時何分から、ときっちり決まっているので、それまで皆は
ゲレンデに出ている屋台のものを食べたりして過ごします。
食事の後にもかかわらず、お祭りの雰囲気に弱い息子が「何か食べたい」というので、
このスモーク屋で何か買ってやることにしました。
スモークチキン。
この一角はいわゆる”てきや”とか香具師とかの店でした。
今時はインド人の香具師もいて、「ケバブロール」の店を出していました。
ここでも運営の指示により、1と2にグループ分けされた人々は、
ゲレンデの上がグループ1、下に2と場所まで決められてそこで待ちます。
わたしたちはグループ2なので、この辺りで待つことにしました。
「歓迎」のライト付近を見れば、細かい雪がひっきりなしに降っているのがわかります。
ところでわたしはこの日、手持ちのモンクレーのダウンブーツを履いていました。
このブーツ、暖かいことは暖かいのですが、雪仕様じゃないのでもう滑る滑る。
皆が踏み固めてツルツルになった坂を下るときなど、命からがらでした。
で、ここにもちらほらいた、「10センチヒール女」。
ディズニーランドならば愚挙でしかないこの「勘違いお洒落」ですが、
ここでは、ヒールが雪にアイスピックの役目をして機能していることが判明。
札幌のススキノのお姐さんたちは冬場も皆ハイヒールで闊歩している、
という噂がありましたが、たしかに靴底さえ滑り止めをしていれば、
わたしの「なんちゃってスノーブーツ(都会仕様)」よりはよっぽど安全かも。
いよいよカウントダウンが始まろうとするとき、会場上空に
ドローンが現れました。
上空からランタンの打ち上げを撮影するようです。
打ち上げ前、ランタンに点火が行われます。
人々の間にバーナーを持った運営のボランティアが待機していて、
手際よく周りの人のランタンに火を点けていきます。
ランタンは紙でできていて、濡れると飛ばないので、
指示が出てから外側の包装を外して軽く振ります。
関係者の方が、
「だから天候次第なんですよ。雨もだめだし吹雪はもっとだめ。
今まで中止になったことが1度あります」
とおっしゃっていました。
中に火が入ると、ランタンはこのように立ちます。
あとはカウントダウンを待って一斉に手を離すのですが、
必ずフライングで早くあげてしまう人がいます。
手を離してしまったのか、それとも一番乗りするためか。
灯のともるランタンを皆が捧げ持ってそのときを待つ様子は、
まるで真摯な祈りの光景のようです。
周りでも次々にランタンが放たれていきます。
わあっと皆の間から歓声が上がりました。
ランタンを持って記念写真を撮ってから、という人ほとんどなので、
なかなか一斉にというわけにはいきません。
子供にはこれいい思い出になるでしょうね。
左の人はランタンを袋から出して中に風を入れています。
子供だけでランタンを持たせてやるご両親。
「まだ離しちゃだめよ」
ランタンが上がっていく様子は台湾やコムローイほどではないとはいえ、
大変感動的なものでしたが、いかんせんiPadのカメラでは焦点を合わせることもできません。
というわけでこの動画をどうぞ。
どうして一斉に打ち上げを行わないのかというと、それには切実な理由があります。
会場の人が一斉に帰路につくと、シャトルバスや車に人が殺到することになり、
大変な混乱になってしまうので、時差を設けているのです。(多分)
まあ、時差は30分もないので焼け石に水って感じでしたが。
アレンジしてくださった地元の方が、どこからともなくランタンをもう一つ持ってきて、
「三回目のスタッフによる打ち上げの時に上げてください」
とくださったので、わたしたちはゲレンデをスタッフとともに登って行きました。
ちょうどお昼、スノボの試合をやっていたスロープの所まで上がってきました。
つるつる滑る靴底でここまで来るのはたいへんでしたorz
せっかくなので息子とランタンを持ち、放すところを撮ってもらいました。
赤いランタンはスタッフ専用。
スタッフも近隣からわざわざやってきたボランティアなので、
いわば「役得」として最後にランタン打ち上げの権利があるのです。
わたしがこのランタンを撮っていると、山の向こうで・・・
花火が打ち上がりました。
あとで中の人がおっしゃったところによると、
「サプライズなので花火を打ち上げることはアナウンスしなかったんです」
花火を上げるということを言うと、みんなそれを見るために残ってしまうので、
あえて隠していたんだと思うな。
せっかくなので「スノボのジャンプ台」まで登ってきました。
ここから飛び出してほぼ地面と垂直の斜面に着地するなんて、信じられません。
上げてしまったらもう終わりなので、精一杯粘って楽しむ人も。
ジャンプ台の上から見下ろした斜面でも、まだ上げていない人が一杯です。
部屋に帰る前に、案内してくれた方が「知り合いがやっているお店に行ってあげましょう」
とおっしゃるので、そこでカレーをいただきました。
白いのはホワイトソースで、キーマカレーの上にかかっています。
このお店は、テキ屋さんのと違って、農作物などを宣伝する目的で
地元の人たちがやっているものの一つでした。
津南の名産品、甘い甘い人参が溶かさずに乗っているというカレー。
そしてご飯。なんといってもここは魚沼産コシヒカリの産地です。
お腹が空いていたら全部食べられたのにと残念に思うくらい美味でした。
「最初は全部テキ屋の屋台だったんですが、やっぱり地元の産物を
アピールする機会だろうということで、店を出すことにしました」
カレー屋さんの隣の汁物のお店は、商売っ気もなく、
「お金いりませんから飲んで行ってください」
と通りがかりの人たちに振舞っていました。
次の日のホテルの朝食を食べたレストラン。
この時初めて気づいたのですが、天井のいたるところに
ランタンが飾ってありました。
「思い出にどうぞ」ということで一つ1000円で販売していましたが、
ランタンは中国から一つ100円で仕入れているのだということです。
(原価は多分5円くらい?)
きのう打ち上げが行われ、お店が並んでいたところは綺麗に片付いていました。
スノボのジャンプ台もスキー客のために壊してしまうのかもしれません。
こういう仕事は、地元の土建屋の出番だそうです。
雪国の土建屋さんは冬になると仕事がなくなるので、雪かきと雪で設営する
こういった競技用の台を作るのが主な仕事になるのだとか。
あ、転んでる人がいる(笑)
まるで祈りを捧げているようなと言いましたが、この雪まつりは3月12日に行われました。
東北大震災の次の日にあたります。
ここ津南町では当日震度6を記録し、人的被害こそ45人に止まりましたが、
それでも地崩れ、地滑りによる住家及び非住家の被害は、全壊34棟を含む
計2,698棟というものでした。
全体の被害があんなに大きくなければこれだけでも大災害のレベルです。
毎年3月11日に雪まつりを行うことができるわけではないので、
ポスターや宣伝には震災の慰霊というようなことは謳っていませんが、
このように震災復興のメッセージを書き込んだ人もいました。
先日、駐米日本大使館が、アメリカの震災に対して行った「トモダチ作戦」
をはじめとする有形無形の援助に対し、謝意を表すメッセージをアップしました。
Embassy Of Japan In The USA Message Letter
この後半に、津南のランタンの写真が使われています。
「震災」「慰霊」などと声高にいわずとも、夜空を高く登っていく灯りが、
亡き人たちの霊を慰めるものであれかしと祈る気持ちは、
そこにいた多くの人々に共通するものであったと思います。