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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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イエール大学美術館の「顔」

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ボストン美術館、ニューヨーク近代美術館と東海岸の「大物美術館」
を一度に制覇した去年の夏でしたが、それまで知らずにいたけれどその
莫大な所蔵に驚愕させられたのが、イエール大学美術館です。

ジャンルは多岐にわたり、古典芸術からエジプト出土のもの、アフリカやアジアの民族美術、
そして現代美術にいたるまでをくまなく網羅しています。

こんな充実した展示を一大学が所蔵していて、しかもその美術館は
入場料無料で開放しているのです。

たとえいくばくかのフィーを取ったとしても、これだけの所蔵品を見るためなら
皆お金を払うことに何の依存もないと思われるのですが・・・。

しかも各展示室には必ず何人かの監視員が詰めていて、例えばこちらがカメラを構えると、
禁止されているフラッシュが焚かれないかどうか確かめるために、やってきて、
手元を注視し、その瞬間を見逃すまいと構えているのがわかります。

これだけの人件費だけでも大変なものだと思われるのですが、所蔵品の維持費も含め、
どうやってこれだけのものを無料で運営できるのか不思議でなりません。

さて、そんな話はともかく、今日は私の息抜きと称して、この美術館で見た
「顔」の写真を淡々と貼っていくことにしました。
作品名や作者など、いつもと違って全くちゃんと調べることなく適当に感想をいうだけ。

というわけで、冒頭の写真は、アフリカの民族美術コーナーで見た像。
アフリカの「人を模したもの」は皆何らかの呪術を想起させますが、
それは単なる印象でしょうか。

頭のてっぺんから塔が立っているように何かが直立しているのも謎ですが、
なぜこの人物の左耳が丸く肥大しているのかも激しく謎です。
もしかしたら単に右耳は取れて逸失しただけかもしれませんが、
だとしてもどうしてこんな耳に。



何か生活用具の蓋のようなところに彫り込まれた人物像。
パンツも履かずにラジオ体操の最中です。 



だからアフリカの人物像は怖いんだよ。
ブツブツの無数に浮き出た顔はもしかしてリアリズム?
つまりニキビの多い人だったとか。



草を髪の毛とヒゲにあしらった木彫。

 

熱心に写真に撮っている人がいました。
おちょぼ口を突き出している顔がお茶目です。



あーこんな黒人さんいるよねー。
耳にフックが付いているのは、ここに耳飾りをかけてアクセサリー収納をするための
実用的なインテリアだったのかもしれません。 

アフリカ美術、といってもアフリカ大陸は広く、さらに時代も変遷しているのに
あきらかにどんな作品?にも共通するテーマみたいなものがあるように思います。
そしてアフリカ美術といえばほとんどの人が思うのはこのような木製の仮面。

儀式的な意味があることが多く、実際に宗教的・政治的・社会的なパフォーマンスを
ダンスなどといったプリミティブな形で行うのに仮面はつきものといった印象です。



この絵がなんの一部だかわかる方おられますか?



正解はこれ。

オノレ・ドーミエの「トランスノナン街、1834年4月15日」。

わたしは、こんな有名な絵がここにあったのか!と大変驚いたのですが、
ふと気づくと周りにはドーミエの風刺版画が大量にありました。
つまり版画だからあちこちにたくさん残っているってことだったんですね。

この図は、タイトルの日付の日、トランスノナン街でおこった悲劇を描いたものです。
当時フランスでは労働者の暴動が頻発していたのですが、ある日全く無関係の一家の部屋に
ちょっとした手違いで兵士が乱入し、そこにいた全員を射殺したのでした。

男性の横に老人が倒れていますが、奥の暗がりにも男性の母親の体があり、
さらに寝巻きのまま死んだ父親の右腕の下には、重みで圧死したとされる赤ん坊が見えます。

ドーミエは当時新聞社に勤めており、写真のない時代にこういった事件の様子を
まるで写真のように版画に表す仕事をしていました。
ジャーナリズムが勃興したころの画家は、今のカメラマンのような役割だったのです。



さて、ここからは順不同にいきます。
現代美術の彫塑コーナーにあった「自分で自分の顔をつつく人」。



ヒゲの質感がものすごく嫌な感じ(笑)のおじさん。
実はこの作品は上の作品と同じ作者の手によるもので、モデルは作者自身。

どうみても楽しそうに歌っている最中ですね。



ミロだったと思うのですが、ピエロの口のような顔もさることながら、



この顔がちょっと可愛いのでウケました。



現代彫刻のジャンルに入るのですが、この瞳のつぶらすぎる人は、



椅子と一体化しています。
現代美術というのは概して観るものを妙に不安にさせるものが多く、
それをあきらかな目的にしていると受け手にわかってしまうとそれが
またなんとも言えない「不快感」を感じるというか。

それも込みで「芸術」だとするのが現代の美術だというようなこの傾向は、
無意味な音列を音楽と言い張る現代音楽に通じるものがあります。

そういうものじゃない、専門家以外には理解できないだけだ!
という人がいたら、すべての人間に訴えるものがあってこそ、
それは時に耐えうる「芸術作品」と呼ばれるにふさわしいはず、
という言葉を控えめに突きつけてみたいとわたしは思います。

たとえば次の作品を見て人は感動するのかそれとも思わず失笑するのか。



タイトル:

「1日働いてクタクタになって帰ってきたらこんな格好で嫁がテレビを見ていた」



タイトル:

「初心者コースでつったのに話違うじゃん!」



すみません、悪ノリしすぎました。
同じイエスキリスト、別方向から。
「The portrait of an Ecclesiastic」という題名がついています。
なぜキリストを「一聖職者」としたのかは不明。 



イエス・キリストつながりでもう一つ。
十字架を負って歩く姿と磔刑にされている姿を両側に、
茨の冠をかぶり額に血が滴るイエスの肖像・・・・なのですが、 



何百年の時を経て今日残されているという意味での価値はあるとしても、
作品としてみたらこれはいかがなものでしょうか。

イエスキリストをどう描くかというのは画家にとって腕の見せ所だと思うのですが、 
このイエスからはたった一言、「情けなさそうな顔」という言葉しか浮かびません。 

冠のせいで額に滲む血も、想像だけで描かれた子供の絵のような稚拙さ。
細々と描き込めば描き込むほど、どんどんリアリティから遠ざかっていった例。

プロの手によるものではなく、何処かの教会に寄進されたものかもしれません。 



石彫の宗教的作品。
可憐な少女の横にしかめっ面の小さいおじさんがいるのですが
このおじさんの手、 女性の胸に置かれているようにみえます。



我が意を得たりとばかりにほくそえんでいる人。
胸の部分に飾り穴が空いているのは、これがランプだったから? 



日本で出土された埴輪もありました。

「はい、整列したら先生(体育教師)に注目~!」

なんぞこれ。

一目見て思い出したのが「せんとくん」ですが、
共通点は頭から何か生えていることだけ。
せんとくんは一応首から下も人間ですが、こちらは4つ足です。
うしろがどうなっているのか見られませんでしたが、
もしかしたら頭から生えているのではなく、これはしっぽかもしれません。

古代南米でもオッケーの印は指を立てることでした(嘘)
この顔「ご冥福をお祈りします」のAAに似てない?

 

歌ってます。
体つきがかわいい。 

 

耳には穴が空いていて、これもイヤリングが付けられていたらしい。 



この隣にあった人骨。
ただの骨ではなく、骨の表面に細かい彫刻の飾りがあり、祭礼用か
あるいは装飾用に加工されたものだと思われます。
かつては全面にわたって彫刻されていたのだと思いますが、年月が経って
骨の表面が剥離してしまいました。

この写真は不幸にも向こうの壺にフォーカスが合ってしまったため、
どんな彫刻だったかをお見せすることはできません 



後ろ向きで見えませんが、これも強烈に「顔」を感じさせるマグリットの作品。
マグリットの絵は「夢」「無意識」を表した多くのシュールレアリスムの画家と違い、
どの作品も極めて現実的であり(たとえ非現実を描いたものであっても)
画家自身が「目に見える思考」といったように、

世界が本来持っている神秘(不思議)を描かれたイメージとして提示したもの 

(デペイズマン)とされます。

ときおり彼の絵に出現する帽子とスーツの人間は彼自身の姿であり、
彼自身の人生も平凡なものであったといわれます。

つつましいアパートに暮らし、幼なじみの妻と生涯連れ添い、
ポメラニアン犬を飼い、待ち合わせの時間には遅れずに現われ、
夜10時には就寝するという、どこまでも典型的な小市民であった。(wiki)


こんな人物評から、てっきりヌーボーとしたおじさんだと思っていたら、



ビューティフルなマグリット夫妻。
奥さんは幼馴染みとありますが、彼のモデルもしていたそうです。
シュールレアリスム界の「非凡な凡人」の”顔”はかなりの男前だったってことでオチ。

 




 


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