昨年の夏、の滞米時、テレビで「ナイトミュージアム」を観ました。
ご存知とは思いますが、夜になると博物館の全てのものが命を持ち、
気ままに動き回るというのがお話のキモになっています。
この映画でセオドア・ルーズベルトのマネキンを演じたのが、ちょうど
その1年前自殺したロビン・ウィリアムスで、わたしはたまたま、
死ぬ直前にファンの女性と撮った、その生気のない幽鬼のような表情を見て
死相というのは本当に表れるものなのだと衝撃を受けたばっかりだったので、
思わず画面をまじまじと見てしまいました。
ルーズベルト(の人形)を演じたこのとき、彼は自分にそんな未来が来ることを
予想だにしていなかったのではないでしょうか。
それはともかく、この夜になったら動き出す展示物には、一体の恐竜の化石もありました。
骨のままぎゃっしゃんがっしゃんと縦横無尽に動き回る化石(笑)
ここピーボディ博物館の生きたときの姿のままに展示された恐竜の化石、
とくにこのブロントザウルスを見たとき思い出したのが、このシーンです。
ここの圧巻はなんといっても中央にあるブロントザウルスの骨。
もしこれに肉付けをしたらとんでもなく首が太いらしいことがわかります。
これは1877年に、 イエール大学の教授である考古学者のO.C.マーシュが
コロラド州で発見したものだそうです。
ところでわたしは知らなかったのですが、いつのころからか、
「ブロントザウルス」というのは「アパトザウルス」のことである
ということに世間ではなっていて、うっかり「ブロントザウルス」と言おうものなら
小学生の子供(自称きょうりゅうはかせ)に
「プロントザウルス?アパトザウルスっていうんだよそれは」
指摘されてしまったりしていたそうですね。
確かにウィキペディアの日本語版はいまだにその様な表記がされているのですが、
実はイエールのHPによると、2015年5月、つまりつい最近になってから、
少なくとも両者の間には7つ以上の相違点が明らかになったことで、
ブロントザウルスは存在するということがわかったと書かれています。
というか、わたしが知らない間にブロントザウルスは存在を否定され、
知らないうちにまた復活していたのでした。こりゃめでたい。
このホールは1926年にオープンし、ステゴザウルスと カンプトザウルスの骨が
ドラマチックに展示されていて圧倒されます。
本当に海を泳いでいたらどんなに怖かっただろうと普通に思ってしまう巨大な亀。
アーケロンといって、現存した最大の亀の骨だそうです。
wiki
こうしてみると普通の亀なんですけど、問題は大きさ。
幅5mはゆうにあったと言いますが、産卵なんかは
やはり砂浜で行ったのだろうかなどと考えてしまいますね。
海に帰る子亀たちの大きさだけでも普通のウミガメくらいだったりして。
重さは2tだったそうですが、 革状の皮膚や角質の板で覆われているだけで、
これでもずいぶん軽量化されていたそうです。
残念なことにその甲に手足を引き込む事が出来なかったため、
捕食者に襲われやすく、脚鰭が一つ欠けている化石も珍しくないのだとか。
進化の段階で必要に応じて「やっぱり手足は収納式」となっていったんですね。
しかし、こんな亀の足とかを食べちゃう他の動物って一体・・・。
亀といえばこんな骨もありました。
レザーバックタートルと説明に書いてありますが、今でも
普通にこの名前の亀の種類はある様ですね。
これも亀の甲羅?・・・・トライポフォビア的には辛いものがあります。
Gyptodon 、グリプトドンという名前で知られている亀的生物の甲羅ですが、
こんな生物だったと考えられています。
きもい。
podocnemis、つまり「ヨコクビガメ属」の骨。
今でもこの種類の亀は卵も含めて食用にもされ、日本では
ペットにもなっているとのことです。
しかし、亀の甲羅って、こんな風にぱかっと外せるものなんですね。
中身ごとお骨におなりになった例。
亀の背骨って細いものなんですね。
こんなのでよく重い甲羅を背負って歩けるものです。
ジャイアントモアの化石。
モアはニュージーランドに生息していたダチョウの仲間で、世界で一番背が高い鳥です。
絶滅した原因は繁殖力の低さに加え、自然環境の温暖化や繁殖力の低さ、
マオリ族による乱獲(砂嚢に小石を溜める習性を利用し、焼け石を呑ませて殺す)など。
「モア」の呼称の由来については、ヨーロッパ人が原住民にモアの骨を集めさせ、
「もっと骨をよこせ」(More bones!)と言ったのを、
原住民が鳥の名前と勘違いしたのだと言う説があるそうです。
なんのために骨を集めたのか謎ですが、いずれにしてもろくなことをしませんね。
世界最古の鳥、つまり「始祖鳥」でいいんですかね?
ただ、昨年(2015年)の5月、中国の研究者が、
「今まで一番古いとされた鳥よりもさらに500万年昔の化石」
を発見したという話があったようなので、それが本当であればこの展示は
書き換えられなければならなくなりますが・・。
トリケラトプス的な頭蓋の並べられたコーナー。
手前の骨はどこがどうなっているのかもわかりませんが、
左奥のはトロザウルスといい、トロはスペイン語の「突き刺す」と言う意味。
こんなツノを持った動物は獰猛なのではないかという印象がありますが、
実はトリケラは草食動物であり、Tレックス、ティラノザウルスに捕食される方で、
ツノは求愛用だったという説もあります。
先ほどのトロサウルスも草食です。
edophosaurs、エダフォザウルスの化石です。
エダフォサウルスは約3億2,300万 - 約2億5,600万年前に生息していた爬虫類。
小さければペットショップで人気者になりそうですが、
いかんせん体長3mではなあ・・・。
写真を撮りそこなったので何かわかりません。
uintatheres日本語ではウィンタテリウムと言う聞いたことない名前の、
サイ的生物ではないかと思われます。
骨にはツノがないので、トリケラのように頭蓋と一体化していなかった模様。
これはわかる。ムースの先祖ですね。
馬の原型らしき生物。
こちらも馬っぽいですが、先ほどのと違って蹄がありません。
Chalicotheresとありますが、日本でなんと呼ばれているのかはわかりませんでした。
TITANOTHERESとありますが、ブロントテリウム科の生物です。
背中にある扇のような飾り?が骨でできています。
出土された頭蓋骨に復元作業を施す過程を表した展示。
バラバラに出土した頭蓋も元どおりに。フランスで発見されたネアンデルタール人。
左の二つはparanthoropus、パラントロプスの化石。
パラントロプスとは「人のそばに」と言う意味があるそうで、
200~120万年前にかけて生息し100万年前に絶滅しました。
1959年に発見されたこの化石には「ルイス・リーキー」
(発見した考古学者のメアリー・リーキーから)と名前が付いています。
160万年前の地層から出土した若い男性の骨格。
ほぼ完璧に近い形で発見された貴重なものです。
ケニアのトゥルカナ湖の辺で1984年に発見されたもので、
骨格には「トゥルカナ・ボーイ」という名前が付けられています。
当時の人類は今の算定法で類推した数字より8歳は若いらしいこともわかりました。
またここには、人類の起源の発見に大きな発展をもたらした、
エチオピア出土のアファール猿人の骨のレプリカもありますが、
この名前「ルーシー」は、発見当時流行っていたビートルズの曲、
「Lucy In The Sky WithThe Diamond 」から付けられたそうです。
考古学発掘作業の現場を再現した展示。
右上にあるのはトイレットペーパーですか?
知り合いが奈良で発掘のアルバイトをしたことがあって、その話を聞くところによると
「気が遠くなるほど根気のいる地味な作業」
「毎日毎日歯ブラシで土を払い続けるだけ」
で、きっとあの人たち(学者)の脳みそは土色になっているにちがいない、
と、作業以外の彼らの「世間擦れ」に呆れていたのを思い出しました。
「ルーシー」を発見した時、当時の考古学者たちが発見に沸き立ち、
彼女のもたらす人類の起源を解くカギを「ダイヤモンド」に喩えたとしても無理ありません。
土色の脳みそが「サイケデリックカラー」に輝いたからこその命名だったんでしょうか。
儀式のために首狩りされて、縄でゆわえられただけでなく、
頭蓋骨に飾り彫りまでされてしまった方々。
こういう骨もかつては生きていた「誰か」だったんだなあなどと、
考古学者でもないわたしとしては、しょうもないことを考えてしまいました。