マサチューセッツ・フォールウォーターの海軍艦博物館、
「バトルシップコーブ」に訪れたところから続きです。
ここのメイン展示はなんといっても戦艦「マサチューセッツ」。
展示艦の一番奥に位置する「ビッグ・マミー」から見学を始めました。
さあ、いよいよ「マサチューセッツ」に乗艦です。
ちなみに、わが海軍の戦艦との全長の比較でいうと、
「大和」(263m)>「金剛」(222m)「マサチューセッツ」(207m)
となり、比較的小型の戦艦です。
しかし、実際に甲板に立つとこれより大和はさらに56m長く、
幅も6m大きかったということが信じられないくらいでした。
ちなみにアメリカではこの「マサチューセッツ」の「サウスダコタ型」は
前弩級、準弩級、弩級、ときて次の「超弩級」にあたります。
超弩級の中でも「サウスダコタ」型は「アイオワ級』(270m)
に続く大きな戦艦ということになります。
実はわたくし、先日ついに空母「ミッドウェイ」を見ることができたのですが、
ミッドウェイ級の空母で全長は296mとなります。
このラッタルを登る前に艦尾を真横から撮っておきました。
停泊時に艦尾に揚げるのは、国旗と同じ「軍艦旗」です。
岸壁から長く広いラッタルが見学者のために設えられています。
傾斜をできるだけ緩やかにするために、艦体に対して鋭角に、
さらに長い距離のラッタルを設けてあります。
さすがに車椅子の人は無理でも、年配の人に配慮しているようです。
いよいよ甲板に立つ時がやってきました。
主砲は45口径40.6cm砲が9門。
一番右側の砲だけが少し低い位置にあるのがちょっと粋な感じです。
(個人的意見)
「マサチューセッツ」は1945年7月1日にレイテ湾を出航し、
日本本土に対する終戦直前の攻撃に合流しています。
東京空襲に向かう空母部隊の護衛を行った後、7月14日に釜石を砲撃、
日本で二番目の規模の製鉄所を破壊し2週間後浜松を砲撃、石油コンビナートを破壊。
そして8月9日には再び釜石を砲撃しています、
彼女がこの主砲でそのとき行った砲撃は、大東亜戦争最後の16インチ砲の発射となりました。
今、ここで見ているこの主砲から、わが国の国土を破壊せんとする
砲撃が行われていた、と思うと、何か不思議な気持ちにさせられました。
まず、艦首の端からしらみつぶしに(この表現はあまり適切ではないかも)
見学していくことにしました。
何しろ広い戦艦ですから、甲板の階をくまなく見たら一階上がる、
という風に決めておかないと、どこを見たかわからなくなってしまいます。
後ろから見るとよくわかりませんが、これは
「40mmボフォース機関砲」
Mark2 ”Quad Mount”とあるのは、2門セットのことです。
懇切丁寧な詳細図が掲示してありました。
なんと、「joy stick」(レバーによる方向入力が行えるもの)
のコントロール部分まで。
hydraulic、というのは「油圧」と訳していいんでしょうかね。
「照準と銃の持ち上げに電気を供給する」
とあります。
銃の持ち上げはこれを見る限り手動のような気も・・・。
ちなみに、下のお皿のような部分が座部となります。
こちら左側の銃座。
この部分に立って上を見ると、頭上にこんなものが・・。
艦首部分にかなり大きなクレーン上のものがあります。
クレーンというよりデリックですね。
こちら「マサチューセッツ」での使用例。
帝国海軍で「トンボ釣り」と言っていた飛行機のすくい上げか?
と思ってしまったのですがさにあらず、これは海面の人員を救助するための
救助水上艇を海面に下ろすデリックだったんですね。
フロートはアタッチメントで後からつけることができたようです。
この「キングフィッシャー」が稼働した例として、1945年3月18日、
九州沖で海上に落ちた「フランクリン」の航空員を救助した、ということがありました。
現地には、このときの報告書がパネルにされてあったのですが、
残念すぎることに日焼けで字が読めなくなってしまっていたという(−_−)
変なところが旗の置き場になっています。
向こう側にある弾薬はボフォース機関砲のものにしては大きすぎる?
16インチボフォース機関砲は全部で24門(つまり12箇所)あるそうです。
対空砲ですから、戦艦に隈なく配置されて艦を防御するのです。
実際にお仕事中の写真がありました。
2門の砲の間に立っておそらく
「てー!」
とか言ってるのが、「ガン・キャプテン」でしょう。
英語で「ローダー」と言われる弾を込める係りは各砲に4人ずつ。
この写真でちょうど弾をローディングしているのはファースト・ローダーです。
画面左下で弾を入れているのが「セカンド・ローダー」です。
一番右は「トレーナー」と呼ばれる照準係だと思うのですが、座席に座らず
足を座部に乗せて立ってしまっていますね。
さて、これらの人員配置を上から見てみましょう。
右端の「トレーナー」と左端の「ポインター」の役目の違いが今ひとつわかりませんが、
まあどちらも狙いを定めるという役割だと思われます。
甲板の1階上から見た左舷の砲座。
ボフォースというのはスウェーデンの武器会社なのですが、このコーナーは
まるでABボフォース社が提供しているのかってくらい詳しかったです(笑)
エンジンに続き、マシンガンのとことん詳細な説明図まで・・・。
わたしはこれによって、弾薬を手で装填することと、
一つの弾薬の重さが4.8パウンド(2.2キロ)あることを知りました。
・・でっていう。
実際にはこの一連の銃座展示への寄付は地元フォールリバーの銀行、
元「マサチューセッツ」乗員、篤志家などによって賄われています。
DO NOT CLIMB. 登るな。
どんな当たり前のことでもそう書いていなければ落ちて訴えられるのは
展示している側だから、書いてあります。
飛び込むなと注意がなかったので自宅の浅いプールに飛び込んで死に、
家族がそれを訴えるとか、コーヒーが熱くて火傷したとか、
それで億単位の賠償金が払われることもある、それがアメリカ。
記憶が明らかではありませんが、甲板にあったので、
舫などを出してくるハッチではないかと思いますが自信ありません。
説明がなかったのですが、対空見張りが立つところではないでしょうか。
これ、マジでなんでしょうか。
この後ろ側にこんな認識表が貼ってあったからです。
左上から書き出していくと、
ジーク ジーク オスカー トニー トージョー ジャック
(零戦) (1式戦闘機)(3式戦)(2式戦) (雷電)
ケイト ジュディ ジル ヴァル ソニア
(97式艦攻)(彗星)(天山)(99式艦爆)(99式襲撃)
ルーフェ ジェイク ポール ピート ニック
(2式水戦)(零式水偵察)(水偵)(零式観測艇)(2式双戦闘機)
ダイナ アーヴィング リリー ベティ
(100式司偵機)(月光) (99式軽爆撃機) (一式陸攻)
ヘレン フランシス サリー ネル
(100式重爆撃機)(極光) (97式重爆撃機)(96式陸攻)
トプシー テス チェリー マーヴィス エミリー リズ
(100式輸送機)(?)(99式飛行艇)(97式飛行艇)(2式)(深山)
日本語の航空機名はコードと用途以外覚えるつもりもなかったようです(笑)
ご存知の方も多いとは思いますが、一応照合して機種を書いておきました。
輸送機の「テス」(下段下段左から4番め)だけわからなかったので、
ご存知の方教えていただけると嬉しいです。
戦闘機は男性名、爆撃機は女性名、偵察機、輸送機はどっちもあり、みたいな?
なんと、ここの展示は、日本側が米軍機を見分けるために描いた、
艦艇の上のこんな絵まで見せてくれました。
絵の上手い人がチョークかなんかで描いたみたいですね。
しかも、この艦艇とは戦艦「長門」であったとのこと。
上の段は左から
F6Fヘルキャット、F4Fワイルドキャット、SBDドーントレス、B2C。
下の段は正面からの絵だと思いますが、諸元などに関しては
残念ながらパネルの表面が傷だらけで解読不可能でした。
ここは立ち入り禁止になっていますが、基本的に中に入り、
銃座に座って照準を覗くこともできます。
弾の射出のメカニズムを連続的に説明していました。
こういうのを熱心に読む人もアメリカ人には関係者以外皆無でしょう。
エリコンFF 20 mm 機関砲
だと思われます。
戦艦全体で35門が装備されていました。
現在でも一部は使用が継続されているベストセラー兵器。
これを撃とうと思ったら、身長が最低170センチは必要です。
照準を覗いていたら、赤い綺麗なボートが超高速で川面を航行していきました。
民間の監視艇のようです。
続く。