若宮防衛副大臣の艦内視察は続いています。
自分がハッチを降りた時のことを考えても、どんなに形だけの見学であっても
最低20分はかかるのではないかと思われたわけですが、
さすがに自衛隊、この間を利用して、自衛艦旗とその授与式典の意義を
アナウンスで説明し始めました。
「自衛艦旗は自衛隊に交付された後、海上自衛隊の編成に加える自衛艦、
すなわち護衛艦、潜水艦、掃海艇、補給艦等に交付されます。
先ほど艦尾に自衛艦旗を掲揚した「せきりゅう」は、自衛艦として
海上自衛隊に編成されると同時に、国際的には軍艦と同等に扱われることとなりました。
ここで自衛艦の位置について簡単にご説明いたします。
国際法である国連海洋法条約29条では、
『軍艦とは一つの国の軍隊に属する船舶であって、
当該国の国籍を有する船舶であることを示す外部標識を掲げ、
当該国の政府によって正式に任命されてその氏名が軍務に従事する者の
適当な名簿又はこれに相当するものに記載されている士官の指揮の下にあり、
かつ、正規の軍隊の規律に服する乗組員が配置されているものをいう』
となっています。
すなわち自衛艦旗はこの条文のいうところの
「国籍を示す外部標識」に相当するのであります。
そして、本式典における自衛艦旗の掲揚をもって、
自衛艦である潜水艦「せきりゅう」は、国際的には軍艦に相当する船舶として、
大きな権利と責任を与えられることになったのです。」
「国籍を示す」というからには日本の旗がその役目を果たすのだろう、
と思っている方もおられるかもしれませんが、艦首旗が掲揚されるのは
停泊している時だけであり、出航ラッパと同時に降下されますから、
外洋では自衛艦旗=国籍旗と認識されるのです。
続いて本式典の執行者について。
「呉地方総監部を司令部とする呉地方隊は、広島県呉市に所在し、
東は和歌山県から西は宮崎県まで、瀬戸内海から四国南方までの警備を担当します。
従いまして、ここ神戸を担当警備区に持つ部隊指揮官として、本日は
呉地方総監が式を執行しております」
和歌山県まで呉地方隊の管轄であることは知りませんでした。
そして、「せきりゅう」という名前についての説明です。
「潜水艦の名称は、海上自衛隊の使用する船舶の区分等、
及び名称等を付与する標準を定める訓令において、
海象、水中動物の名前、めでたいことが起こることの前兆とされる動物の
瑞祥動物の名前が付与されることとなっております。
本艦は、そうりゅう型潜水艦の8番目であり、引き続き、
瑞祥動物の名前から選出することになり、
海上自衛隊部隊から募集されております」
やはり艦名は自衛隊内の応募によるものだったのですね。
ちなみに、募集結果を選考し、最終決定するのは防衛大臣となります。
なお、せきりゅうは南方を守る神聖な龍であるとのことです。
「そうりゅう」型は来年竣工予定の「せいりゅう」の後、
3隻が建造されることが決まっているそうですが、
この三隻に「りゅう」のつく名前をつけたら、そろそろネタが
枯渇するということも考慮されているのでしょうか。
わたしが思いつくのは・・・
「こうりゅう」(咬龍 )
「かいりゅう」(海龍)
「どんりゅう」(呑龍)
まずこの三つですが、実際の甲標的だったり重爆だったりするので、
(特に前二つは潜水艦的には物言いがつきそう)
「しょうりゅう」(昇龍)
「しんりゅう」(神龍)
「すいりゅう」(翠龍)
「ひょうりゅう」(彪龍)
「ほうりゅう」(鳳龍)
一つはこのどれかになるような気がします。
(というか制限がありすぎてこれくらいしか思いつかない)
逆に何があっても絶対に可能性のないのが「ふくりゅう」。
こんなことを考えていると楽しくて(楽しいか?)つい
時間の経つのを忘れてしまうので次行きます。
この後、まだまだ続く防衛副大臣の視察の間、呉音楽隊が
「錨を上げて」など、勇壮なマーチを中心に4曲演奏を行い、
人々は一挙に和んだ空気になりました。
そして、大臣が出てきたところで報告があり、午前の式典は終了です。
控室からここに乗ってきたバスにもう一度乗り込むと、
バスはあれよあれよと敷地を出て、湊区の市街を走り出しました。
「工場内で祝賀会しないんだ・・・どこに行くんだろう」
「まさかホテルオークラだったりして」
そんなことを言っている間に横溝正史の生誕地という碑の横を通り、
バスが留まったのはビルの前。
降りるなり目ざとく「庄や」の看板を見つけたわたしたち。
「まさかあそこで祝賀会をするのでは・・・・」
ここは川崎重工業の本社ビルだったのでございます。
(そして当ビル地下には庄や神戸店が)
神戸クリスタルタワー。
複合オフィスビルで、兵庫県庁なども入っているそうです。
この写真では分かりにくいですが、ビルの頂上付近には
風水を取り入れて穴が穿たれているデザインなのだとか。
窓ガラスのデザインで『T』の字があるように見えますが、これは
たくさんある施工会社のうち「竹中工務店」の密かな自己主張?
バスを降りると、ビルのエスカレーターで2階の会議場に案内されました。
会議場といってもそこは大会社ですから、まるでホテルの宴会場のようです。
会場前ホールには自衛隊のイベントらしく、帽子置き場が用意されていて、
すでに到着した陸海空の佐官クラス(陸自は将官)の帽子がおかれています。
海自では「カレー」と言い、アメリカでは「スクランブルドエッグ」という
この金の刺繍は、将官になると密になるというのは分かりますが、
佐官は二佐以上となっており、三佐は尉官と同じ模様なしです。
これには何の理由があるんだろうとかねがね思っていたのですが、
「艦長が二佐以上であるから」
ということらしいですね。
いろんな職種がありますが、海自はやはり「フネ」を基準にものを考えるからだとか。
それをいうなら陸自と空自も二佐からカレー付きになると思うんだけど、
それではこちらの理由はなんなのかが知りたい。
祝賀会の途中で出てきたら、帽子置き場が壮観なことに・・。
こうしてみると白の色、マークの金色でさえ皆少しずつ違うのが分かります。
会場には金びょうぶと看板が設えられ、コンパニオンまでいます。
式典にはアメリカ海軍の軍人さんらしき人々が私服で参列していましたが、
その人たちの係と思われる外国人(白人系)コンパニオンまで投入されていました。
「いずも」の引き渡し式の時のパーティにもコンパニオンが多数いましたが、
三井造船の時には見たことがありません。
それは会場が歴史的な建物で狭いのと、岡山県玉野という土地柄、
パーティコンパニオンなど調達したくともいないからに違いありません。
挨拶はまず川崎重工業の社長から。
「平成27年11月に進水後、その後の艤装工事、建造工程は順調に進捗し、
昨年8月より実施してまいりました海上公試での各種試験におきましても
ご満足いただける成績を収め、本日ここにめでたくお引き渡しができました」
海上公試というのは、当然のことですが、艤装艦長の元で行われるテストです。
船の性能(潜水艦ですから当然潜行含む)をみる艦船公試と、
軍艦の場合は武器公試が行われます。
この海上公試という言葉自体、海軍時代からそのまま使われているものです。
なお、金花社長の
「海上自衛隊の最初の国産潜水艦『おやしお』以降、
当社は(確か)29隻の潜水艦を造ってきました」
という言葉が印象的でした。
そして若宮防衛副大臣。
「このせきりゅうは、探知性能、非探知防止性能の向上により、
広域での情報蒐集、警戒監視や対戦性能など、効果的な遂行が可能となり、
我が国の海上防衛に大きく寄与するものと確信しております」
若宮副大臣は「せきりゅう」の命名進水式で名付けを行い、
この度の自衛艦旗授与式にも出席したことになりますが、
これは同一政権下でも目まぐるしく総理大臣が代わってきた
日本では大変珍しいことなんだそうです。
長期政権となって歴代3位だかになったという安倍政権ですが、
こんなところにも余波があったということなんですね。
乾杯はシャンパンで。
JMUや海自の宴席のように刺身の舟盛りはありません。
しかしさすがは神戸、この組み合わせに中華のお皿(キクラゲやエビチリなど)が
紛れ込んでいて、それが案外イケました。
手前、川崎重工業社旗。
TO共に、まず呉地方総監池海将にご挨拶後、
村川海幕長に改めてご挨拶させていただきました。
村川海幕長には幕僚副長時代に地球防衛協会の会合であいさつし、
一緒に写真も撮っているわけですが、今回改めて、
池総監がわたくしどもを海幕長にご紹介くださいました。
それはいいのですが、
「こちらは(わたしのことね)ブログをやっておられまして・・・自衛隊の」
って総監!いきなり何をおっしゃいますか!
(一応夫婦の間ではわたしのブログはないことになっているので
TOはその間横で地蔵になっておりました)
ともあれ、当ブログはついに海幕長のお耳にまでその存在が達したことになります。
お開きの時間となったので、皆岸壁に戻るバスに乗り込みました。
川崎重工のPRコーナーがあったので、一応撮っておきました。
川崎重工業は、水素を
−253度の超低温で作り
1/800の体積に縮小して運び
1000立方メートルのタンクで貯めて
100%水素発電をして使う
エネルギーとして使用する時にCO2を排出せず、さらには
いろんな物質から生み出すことのできるクリーンエネルギーとして
注目されている水素のサプライテクノロジーを研究しています。
カワサキワールドなる企業ミュージアムのご案内。
新幹線(本物)やバイクが展示されていたり、鉄道模型の走行会が催されたり、
なかなか科学少年少女には楽しいスペースではないかと思われます。
そこで初めて知ったのですが、今回たまたま写真を撮ったこれ、
ここがどうやらそのカワサキワールドらしいことが判明しました。
オレンジの救命艇はその関係だったのかしら。
おまけ* クリスタルタワー向かいのヘーベルハウス展示場に金の象像が。
さて、またしても同じバスに乗り込み、神戸工場に戻りました。
バスガイドが持つような「幕僚なんとか」と書かれた小さい旗を掲げて
歩く自衛官に先導されて岸壁に戻りました。
(後ろでヒソヒソこの旗のことを話していると、振り向いて
『これ、このためにわざわざ作ったんですよー』・・かわいい///)
すると「せきりゅう」の上には、出港準備を整えてライフジャケットを着け、
リラックスした様子で並ぶ乗員たちの姿がありました。
続きます。