暮地方総監部で行われた恒例の観桜会にご招待を受け、行ってまいりました。
去年は3月末の異例の寒さに見舞われ他だけでなく、空港付近は雪が積もり、
桜もほとんど咲いていない教育隊の体育館で宴会が行われる、という
非常に残念な観桜会になってしまったものですが、今年は幸い
天候も気温も、桜の咲き具合もパーフェクトなタイミングです。
わたしはこの日のために買った(そうなのか?)単焦点レンズを
Nikonの810に装着し、広角レンズを付けたNikon1との2本持ちで、
「桜と錨」を写真に収めるのを楽しみに、その日を迎えました。
早めの飛行機で広島入りして、某所で見学を済ませ、すでに開場が始まっている
呉地方総監部までやって来ました。
受付のテント前にはすでに人がたくさん・・・・
皆自分の受付番号前に並んでいるようです。
「招待状なんてもらった?」
「もらった・・・ような気がする」
「持って来てないの」
「うう・・忘れた」
なんか同じメンバーで前にも全く同じような会話をしたような気がするぞ。
しかしなんだってこう、何度同じことをしても学習しない夫婦なのか。
「仕方ない。こうなったら顔見知りのいつものウェーブさんを探そう」
周りを見回しても見つからず、仕方がないので受付に並んだら、
その探していたウェーブさんがそこにおられました。
彼女はご挨拶するなり即座にわたしたちの名札を持って来てくれました。
なまじこういう行き届いた自衛隊の気遣いが、わたしたちのような
向上心のない人間を一層怠惰にするのではないかと思った一瞬です。
受付終了後、テント受付の近くに、
「地下壕見学をされる方はお申し出ください」
と書かれていたので、わたしだけが見にいくことにしました。
呉地方総監の肝いりで就任直後から取り組まれていた地下壕プロジェクト、
調査を経てのち、地下壕司令室の一般公開を目標にしてきたのですが、
去年の観桜会の時点では入り口の扉の外からしか見学できなかったのが、
今年はついに中に入ることができるまでになったのです。
地下壕はこの道を降りて行って普通に見られます、と言われて、
花見会場であるいわゆる「表玄関」を左上手に見ながら坂を下りて行きました。
赤レンガの庁舎の角の樹木脇にに木の杭があって、
「呉造修補給所開所十周年記念植樹」
と書いてあります。
造修補給所というのは、海上自衛隊における後方支援組織の一つで、
各地方隊隷下に置かれ、造修、すなわち艦船等の修理・整備、
及び各部隊への補給を主な任務とする部隊です。
当初は、造修を主任務とする「造修所」、補給を主任務とする「補給所」
は別々の部隊でしたが、1998年(平成10年)に統合され造修補給所となりました。
この「開所十周年」ということは、2008年に植樹されたということになります。
呉造修補給所は、工作部と吉浦の貯油所に分かれて存在しているようです。
地下壕のところまではこの坂を下って行きます。
坂の上には桜が大きくその木の枝を伸ばし、向かいの桜と手を取り合っているようです。
地下壕の見学については項をあらためるとして。
見学を終わり、会場に続く階段を登っていくと、総監部庁舎の前をぐるりと繞らした
桜の木が、まるでスクリーンのように会場を囲んでいました。
これらの桜の木は紛れもなくここが呉鎮守府となった時代からここに根付き、
毎年変わらぬ色の花を咲かせて来た歴史を持ちます。
おそらく観桜会という催しも、海軍時代から続いていて、
年に一度のその日には、今や歴史に名前を残している海軍大将たちが
同じ場所で桜を愛で、ひとときの宴に興じたのに違いありません。
前にも書きましたが、呉地方総監部の表玄関は、海です。
桜に囲まれたこの前庭からは長い石段が続いていて、今ここに見えている
桟橋の横にある小屋で、将官たちは出航までの時間を待ったのでした。
桜で囲まれた前庭には宴席が設けられ、開始を待つ招待客が
自分に割り振られたテーブルの周りで笑いさざめいています。
桜の木近くの地面に不思議な構造物があるのに気がつきました。
地崩れでも起こしたので補修したんでしょうか。
満開の桜越しに臨む呉の町と自衛艦艇。
教育隊が訓練で使用するデリックが岸壁に並んでいます。
今回の撮影に当たっては、案の定勉強は何もしておりませんが、
とりあえず素人考えでピンクが美しく出るように色度調整はしてみました。
呉音楽隊選り抜きの精鋭チームによるバンドが、時折女性ボーカルも加え、
軽快なボサノバやジャズなどを中心に会場を彩ってくれました。
わたしは習慣でアドリブソロになるどんなところにいても、
何をしていてもなんとなく耳を傾けて聴いてしまうのですが、
ピアノが特に上手いなあと思ってそちらを見ると、なんとクラリネットの奏者でした。
ど〜〜〜〜〜〜〜んと大きな舟盛り。
いわゆるメインテーブルに一隻?だけとはいえ、流石に海自、刺身が豪華です。
鯛は爪楊枝で無理やり口を開けさせられていました(涙)
伊勢海老のお造りに丸一箱の雲丹、イクラ。
ちなみにこの雲丹に最初に箸をつけたのはこのわたしです。
「かしま」のレセプションでは、雲丹はもちろん、刺身もすでにありませんでした。
そもそもここでは開演前に食べ物に箸をつける人など皆無です。
またしても飾りスイカが・・・。
つい先日同じようなものを見たわけですが、明らかに技量はこちらが上。
このバラの花びらの彫刻の繊細なことよ。
しかも別の面にはこれ。
ちゃんと日の丸と旭日の赤が浮き出るようになっているという・・・。
特に旭日の部分のカットにものすごいテクニックが必要ような気がする。
それと、今気づいたのですが、桜の木を立てている鉢もどきは実はかぼちゃで、
こちらにも親の仇のように飾り彫りが!
呉地方隊給養にはとんでもない手練れの”匠”がいると見た。
舟盛りの「幟」には「呉地方隊観桜会」の文字。
TOとわたしは勿体無くも焼きそばの近くに名札を置いていただきました。
結果的に政治家の先生方と同じテーブルを囲むことになり大変恐縮です。
そしてまず呉地方総監池太郎海将のご挨拶。
総監はまず、ご自分が就任されたからのプロジェクトであった
鎮守府時代の地下壕の整備と一般公開についての説明をされました。
ここで地下壕の公開にあたって事前に現地調査を行った方が紹介されました。
各テーブルには例の「愚直たれ」が一つづつこのように置かれていて、
何にでもかけられるようになっていました。
総監の指導方針「愚直たれ」がそのままたれになったという経緯について、
わたしは当ブログでも何度かお話ししてきたわけですが、
激辛カレー味のこのたれを提供する呉市内の店は今では10店舗。
最初は年度末ということなのか、この三月いっぱいまでの契約だったそうですが、
この度池総監の任期中は継続して提供することが決まったということでした。
この「愚直たれ」、テーブルに置いてありましたが、わたしは個人的にこのソース、
実は一番美味しいのはキュウリなど生野菜にドレッシングとしてかける方法、
と思っていますので、掛けたいものが近くになかったのは少し残念でした。
寿司や唐揚げ、しゅうまいやサンドウィッチじゃソースのかけようがありません。
生野菜以外では、やはり愚直たれ掛けオススメはホットドッグです。
今回その噂の「呉総監ドッグ」をいただいてきましたが、その話はまた後日。
左のカメラマンが、総監がメラメラ燃えている「愚直たれラベルコンテスト」の、
右の女性が”たれ”そのもののレシピコンテストのそれぞれ優勝者となります。
このお二人の名前が改めて紹介されました。
続いてこのマイクの持ち方もおなじみ、国会議員寺田稔先生のご挨拶。
国会が長引いて気を揉んだけど、「なんとか間に合った」ということでした。
なんと!呉市長がいつの間にか小村和年氏では無くなっていました。
去年11月の選挙で当選した無所属の新原芳明(しんばらよしあけ)氏は、元財務官僚。
ニコニコと実に嬉しそうに、
「こんな素晴らしい観桜会に来られて、本当に市長になってよかったと思いました」
実感なんでしょうねえ・・(意味深)
宴会が始まると同時に総監や寺田先生の前には行列ができてしまいました。
総監の右側におられるのは確か元海幕長でいらしたかと。
会場から望む休山(ですよね)の斜面にはいたるところ
自生した山桜のものらしいが色づいています。
この日関東では桜はすでに葉桜になりかかっていましたが、
呉では満開のど真ん中という素晴らしい桜日和でした。
この宴会で、わたしは加入している防衛団体の地元地本の自衛官が
着任したばかりということでご挨拶させていただきました。
陸自の方はなんとレンジャー!過程出身でした。
わたしは生のレンジャー隊員とお話するのが2回目だったので、
今までここで書いてきたいろんなことを思い出し、つい盛り上がってしまいました。
「レンジャーのビデオ観たんですけどー」
というと、
「そんなものを観る人って本当にいたんですね」
と呆れたような顔をされました(´・ω・`)
ちなみに蛇は決して美味しくないけど、イノシシなんかより数が多く、
カエルより捕まえやすいから食料にするそうです。
「えっ、養殖の蛇を持っていくんじゃなかったんですか」
と聞くと、
「そんなことしませんよ」
帰りに車で送ってくれた自衛官にその話をすると、
「わたしも養殖の蛇だと聞いたことがありますが」
「あー、その方の頃は野生だったってことなのかも」
野生の蛇を食べて病人がでたから禁止になったとかかしら。
どなたかご存知の方がおられたら・・・・いるわけないか。
それから、地本の海自の方は、花粉症が辛そうにしていて気の毒でした。
聞くと、家族全員がなんらかの花粉症で、しかもアレルゲンが皆違うので、
時間差で誰かが必ず苦しんでいるという悲惨な状況だそうです。
提供されていたカレーは呉教育隊オリジナルでした。
ふと気づくと、太陽が西に沈みかかっています。
落日前の空を撮りたくて、この後人垣の間を縫って、
桜の木の向こうまでたどり着いたのですが・・・・・、
太陽が落ちる最後の瞬間は本当に早く、カメラを構える一瞬前に沈んでしまいました。
皆夕日が沈む瞬間をスマホで撮るためにここまで来ていましたが、すれ違った人が
「鉄塔が邪魔でダメだー」
いや、このマジックアワーに浮かび上がる鉄塔のシルエット、素晴らしいじゃないですか?
ちなみにカメラのホワイトバランスはオレンジを強くしてみました。
呉地方総監庁舎もレンガの色に夕日の残照が溶け込んでオレンジに染まりました。
鉄塔の向こうに陽が沈んだ瞬間は1830でしたが、その11分後、
国旗の降下が行われることになりました。
皆国旗の方向に正対し、「君が代」に耳を傾けます。
後ろから見ていると、明らかに自衛官の立ち姿には一種の緊張があり、
握った拳や伸ばした背筋、肩の線は、一般人と全く違います。
「国家に仕える軍人」
という言葉がなぜかこの時頭をよぎりました。
しばらくすると、桜にライトアップが行われました。
ただし、ほとんど同時にお開きの時間となりました。
以前「北の馬鹿者」発言をされた水交会の会長によるご挨拶で締めです。
人の流れに乗って退出口まで歩いていくと、総監夫妻がお見送りしておられました。
地方総監部庁舎の重厚な石造りのエントランスは、ライトアップされると
まるでギリシャかローマの神殿のような神々しさ。
駐車場からみた庁舎。
こうして見ると、旧海軍の施設は呉にとって大変な観光資源であることがわかります。
地下壕の見学をコースに組み入れた観光ルートをアピールしていこうという動きや、
カレーグランプリや今回のドッグ、タレのような地元とのコラボも相変わらず盛んです。
呉という街が、旧海軍と海上自衛隊にイメージの多くを負っていることを
あらためて思った一夜でした。
最後になりましたが、観桜会の参加におきまして手厚いご配慮いただきました
呉地方総監部の皆様方に心からお礼を申し上げます。
どうもありがとうございました。