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Channel: ネイビーブルーに恋をして
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降下降下降下!〜映画「桃太郎 海の神兵」

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さて、桃太郎部隊の空挺部隊がいよいよ出撃することになりました。



映画ではここでいきなりインドネシア、いや「ゴア王国」が、
白人の支配に遭うまでの経緯が説明されます。
南の島々の中にうかぶ宝石のように美しい島。



ある日この島の港に現れた不思議な黒い船。
島はたちまち上を下への大騒ぎに。



船から降りて宮殿に伺候したのは鼻の尖った白人。


 
「わたしたちはこの島の人々と仲良くしに来た商人です。
この島のどこかに休息できる場所をお譲り願えませんか」



「わたしたちの船が積んでいる世界の珍しい宝をお見せするのに、
それらを並べる土地が必要なのです。
何、銅貨ほどの敷地で十分でございます」

王様がそれを承諾すると、

 

「これが我が国の商法でございます」

国土のほとんどが硬貨で覆われてしまいました。



そして彼らの攻撃が始まりました。
戦いの末、ゴア王国は黒船に負け、支配を許してしまいます。



この島のジャングルに深く眠る石碑に書かれて曰く、

「月明明るき夜に東方天子の国より白馬にまたがりたる
神の兵来りて必ずや民族を解放せん」

インドネシアに実際に伝わっていた「ジョボジョボ伝説」というのが、
戦時中からすでに日本の知るところとなっていたことがわかります。



翌日夜明け前。
ただ身じろぎもせず立つ隊員たちのシルエットが浮かび上がります。
流れるのはラッパ譜「君が代」。

しかしこの厳粛な雰囲気も、動物たちが皆で走り回り、

「そらそらかけろそら走れぐんぐんかけろどんどんかけろ皆々かけろ」

という実に妙な歌が流れ、はっきり言って台無しに(笑)

 

いよいよ飛行機にエンジンがかけられました。
降下兵たちが落下傘を背負って次々と搭乗していきます。



飛行機の入口に立ち、一人一人を厳しい目でチェックしているのは
本編主人公(だよね)の猿野猿吉兵曹。



乗り込んだ順にシートに座りますが、やっぱり熊は
でかすぎて皆の迷惑になっております。肩身が狭そう。

実際の空挺部隊の輸送機内での写真を見ると、これどころか
その向かいに座っている者とほとんど膝がくっついています。
激しい緊張の中、この輸送機の中の状態はきつかったと思われます。



降下兵とは違うハッチから乗り込む航空隊員。
本機搭乗員は全員がウサギ。



あのー、イヤフォンが(うさぎの)耳から外れてるんですが・・・。


 
一人が上部ハッチをあけて外を立ちます。
車輪止めを外す、手を交差させてから払うあの仕草をするためです。



地上員たちが車輪止めを外していきます。

「よーそろ!」「よーそろー!」



タキシングする航空機を、地上員たちはじめ駆けつけた
動物たちが見送る中、敬礼を送る搭乗員。

子供向けの動物を使ったアニメなのに彼らの動作はとにかくかっこいい。
これを見た子供たちはこの時期においてなお海軍に憧れたに違いありません。

あー、こういうところが「国策映画」だといわれるんだな。



窓越しに見送る人々に敬礼を送る猿野。



浮き上がる車輪の横を、走って追いかけてくるチータたち。



耳をなびかせ、帽触れで航空機を見送る地上員。



猿は手を、象は鼻を、リスは尻尾を振ります。



ここで軍歌調の歌が流れます。

祖国離れて何千里 海を渡りて敵の陣 鍛え鍛えた鉄の胸 翼頼むぞいざ運べ

本来ならば「空の神兵」を流したいところですが、この曲は
いろいろあって陸軍のテーマソングのようになってしまったので、
海軍としては意地でも使いたくなかったのだと思われます。

古関裕而は大物ですが、それでも映画のためのこの曲には
やっつけで作った投げやりな感じが拭えません。

この名曲を陸軍に「取られて」しまい、実質自分たちの方が早かったのに
陸軍落下傘部隊だけが世間にもてはやされたことを海軍が
よほど悔しく思っていたらしいことがうかがえます。

 

この軍歌に乗って、攻撃隊の様子が活写されます。
お守りの人形をコクピットに下げた搭乗員たち、



互いに肩をたたき合う降下員たち。
その様子を隊長はにこやかに見守ります。

 

援護の飛行機が手を振り基地に帰っていきます。
ところが、このあとにわかに一点がかき曇り、攻撃隊は荒天に苛まれます。

 

基地ではすでに台風のレベル。
そもそも落下傘降下は雨が降った時点で実行不可能です。



攻撃隊の様子を案じて地上員たちはせめてもとてるてる坊主を作るのでした。

 
 
一転、まず搭乗員たちの顔が空のように晴れやかになります。
天佑神助によって空は晴れてきたのでした。



砲塔に登り、銃座を確かめてから見張りを再開する砲手。

メナド降下作戦では輸送機が一機墜落し、乗員が
12名全員戦死しています。

 

雨の間ずっとうつむいて航空機の隙間から入る雨水を避けていた
(っていうか、飛行機に雨漏りがしていたっていう)
乗組員たちはすっかり元気づき、お弁当を広げて腹ごしらえです。




搭乗員も食事を始め、航空員だけの特権?であるキャラメルを
皆に振る舞ったりしているうちに、降下地点まで30分の距離に。

機長からは「みなさんの成功を祈る」というメッセージ。

 

桃太郎隊長の「全員位置につけ」の号令とともに緊張が走ります。



各々が厳しい表情で装具の点検を行い、機内には
金属音だけが聞こえます。



機長によって降下地点上空を知らせるブザーが三度鳴らされます。

「降下あ、よおおおい!」



ハッチに向かう降下員は、一人ずつコクピットの搭乗員に敬礼をしながら。

 

傘を開くための環を外し、それを航空機上部のバーにつけます。
今も第一空挺団が同じ方法で降下を行っています。


 
環をバーに連結した桃太郎隊長、指揮官先頭の海軍は
隊長が真っ先に降下します。



緊張のひと時を前に見張りを行う砲手。

 

ブザーが二回鳴らされ、ハッチがいよいよ開けられます。



機長がブザーを長押しすると同時に、隊長が一声、

「降下アア〜〜ッ!」



続く。


 


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