今年も秋の恒例行事、自衛隊音楽まつりをみてきました。
例年この濃密な2時間を過ごした後は、とてつもない完成度と企画力の高さ、
そして行事を恙なく運営するための多くの自衛官たちの働きに
心から感動して九段の坂を下りるのが常なのですが、不思議なことに
毎年毎年、去年よりもさらによかった、と思わないことがないのです。
おそらく何回行ってもその感動はますばかりなのでしょう。
これもまた自衛隊という組織の底力のなせるわざというべきでしょうか。
・・・というわけで今年のテーマ「音の力」にむりやり繋げたわけですが、
「音の力」というテーマには、自衛隊という「軍隊の力」の誇示も
内包されているのではないか、とわたしは2時間が終わって感じました。
どういうことかといいますと、現在の日本の「国の護り」である自衛隊からの−
ー早々と種明かしをしてしまいますが、「覚悟」とも「決意表明」とも取れる
強いメッセージをわたしはこの2時間の公演から感じ取ったのです。
もうすでにYouTubeで内容は全部見ることができますし、最終日には
実況放送がUstreamなどで行われ、また実際に行かれた方も
多いかと思いますが、ここはひとつ、本ブログに今一度お付き合いいただき、
なぜそう思ったかを説明していこうと思います。
開場は1時間前です。
席に着くとカメラのチェックも兼ねて色々と周りを撮りまくります。
シューアというのは音楽関係者なら誰でも知っているマイクのメーカーですが、
こんな形のマイクがあったとは今日まで知りませんでした。
もちろん開場のいたるところには音を拾うためのマイクが
まるで機雷のようにあちこちに仕込んであります。
一般公演、招待公演どちらも行ったところによると、招待公演は
2階中央の真ん中を偉い人と場合によってはSPが占めてしまうので、
そもそも席が選べません。
入っていった順に誘導されて嫌も応もなく席を決められてしまいます。
ですから一般公演の方が写真を撮りたい人には人気があるようです。
さて、難なく今回も上々の席に座ることができ、まずステージ上方の席に
陸空の自衛官が二人インカムをしてずっと開場を見張っているのをパチリ。
客入れを反対側から監視して、異常があれば対処する係のようです。
同行の方によると、この人があの「あだちビデオ」のカメラマンの方らしいです。
「あだちビデオってことは、もしかしたらあの、レンジャー訓練のビデオを
撮影していたカメラマンてことでしょうか」
「そうでしょうね」
レンジャー訓練が過酷なのは当然ですが、山に入った時の彼らの訓練を
重いカメラを担いで撮ったカメラマンがいるってことよね?
とあのDVDを観ると考えずにはいられなかったのですが、
そのレジェンドとはこんな人だったのか・・・・。
時間があったので、3階の席からどういう風に見えるのか、
空いている時にわざわざ上がってみてみました。
3階中央から下を見下ろしたところ。
確かにここならフォーメーションは見やすいかもしれない。
ただしこの写真は立って撮っていますから、やっぱり少し死角が多いかも。
二人の陸自隊員が指揮台を運んできました。
彼らも出演者としてプログラムで紹介されています。
部隊名は「演技支援隊」。
順番を待つために並んでいたとき、わたしの後ろの人は
息子さんがこの支援隊の方でした。
その後ろの人と話をしていたので知ったのですが。
開演前、会場に向けてビデオが流されます。
例年自衛隊リクルート系と自衛隊音楽隊宣伝系です。
それとは別に一度だけ、本日のテーマを補強するような内容のものが
放映されるのですが、今年は「軍楽隊の成り立ち」でした。
世界における軍楽事始めとそれ以降の歴史の後は、我が国における軍楽隊の
成立とその発展についてです。
薩摩藩軍楽伝習隊の話はかつてこのブログでも扱ったことがありますね。
陸軍と海軍で「お雇い外国人」の国籍が違ったこともあって、
陸軍はフランス式、海軍はイギリス式になったという話。
実は今回の音楽まつりは、いつも恒例として「軍艦」を演奏する海自はもちろん、
陸自は「陸軍分列行進曲」、空自は「空の精鋭」と各自のテーマを演奏しました。
これはわたしの知る限り(って大した回数ではありませんが)初めてです。
ここで陸自のテーマである「陸軍分列行進曲」がお雇い外国人の
フランス人シャルル・ルルーの作曲であることが説明されました。
すると、後ろに団体で来ていたおばちゃんたちが一斉に
「あらーそうなの〜」
「へー知らなかったわ〜」
と感心しきりでした。
(このおばちゃんたちは地方からバスで来た団体だったようですが、
とにかく演奏の間じゅうきゃあきゃあと反応が喧しかったです)
わたしはこの段階ですでにいつもとの違いを感じ取りました。
自衛隊はミリタリータトゥーにも出場する、「軍楽隊」です。
ただ、自衛隊は軍隊ではないとずっと言い続けてきた戦後において、
たとえ音楽隊であってもそれが「軍」であるということを公の場で
どんな形であるにせよ明らかにすることはなかったのが現実です。
自衛隊は「軍楽隊である」とはっきりと表明したこの内容に注目し、
何かが少しずつ変わり始めているのを感じたのは、武道館に訪れた人の中で
少なくともわたし一人ではなかったことを確信しています。
幕が開くと海上自衛隊のトランペット奏者が
「起床ラッパ」を演奏しました。
音に人を動かす力があるという本日のテーマのオープニングです。
そして陸海空部隊がプロローグ演奏を行います。
オッフェンバックの「天国と地獄」や「ウィリアム・テル序曲」の一部が、
戦車の走行音、護衛艦の進水、そして航空機のエンジン音に変わっていきます。
音の持つ力とは力を表す音でもある、という逆説・・・・?とか・・?
そしてヴァン・マッコイ&ザ・ソウル・シティ・シンフォニーの
「アフリカンシンフォニー」が力強いドラムとともに始まり、
いつもと全く違う雰囲気で歩み出てきた三宅由佳莉三等海曹。
まるで歌舞伎の見得を切るような所作、
そして凜とした厳しい表情の新しい三宅三曹です。
彼女が後ろに進むと同時に前進する全部隊。
最後のハイトーンDには思わず鳥肌が立ちました。
つかみはいきなり最高潮。
ただならぬテンションの高さのオープニングです。
続いてセレモニーのために儀仗隊が入場。
純白の制服を着けた第302保安警務中隊の三人が
国旗を真ん中に、2名はそれを警護して入場してくると、
国家斉唱が行われます。
わたしは昔防大の開校記念祭を取材していたマスコミが
国家の時に何もしていないくせに立ちもしなかったことを
口を極めて非難したことがありますが、さすがに音楽まつりの
スタッフはほぼ全員が起立しているのに安心しました。
歌っているかどうかまでは見えませんでしたが。
陸海空自衛隊によるオープニング演奏は「ドラゴンクエスト序曲」。
この日は広角レンズを持っていなかったのでDが撮れませんでした。
「SOUND 」という言葉で始まったプロローグは一文字もサウンドで。
演奏は東京音楽隊長に就任したばかりの樋口好雄2佐です。
ここからが第1章「熱き能動の響き」。
蝉の声がながれ、「あつきのうどうのひびき」
と言われたら、普通「熱き農道の響き」だと思いません?
それはともかく陸自東部方面隊音楽隊のドリル演奏です。
クヮルテットでイントロ風に「夏祭り」の導入。
虫網を持った少年少女?が駆け出てきました。
この虫網ダンスをバックに男性隊員が一青窈の「ハナミズキ」を歌います。
こういう「普通の男の人」の上手い歌が聴けるのは自衛隊音楽まつりだけ!
女性歌手はともかく男性の歌手は同じ人を2度と見たことがないのですが、
いかに人材が豊富かということの証左でしょう。
きっと歌の上手い人が順番待ちをしている状態なのではないでしょうか。
アップテンポになり、皆がてんでに動き回るスタイル。
虫網の人たちはハンカチを持ってダンス。
曲は「睡蓮花 」(湘南乃風だっけ?)
フィニーッシュ!
夏の音ということで、「夏の思い出系」できた陸自東部方面音楽隊でした。
殊勲賞はやはりスウィートボイスの歌手に差し上げたいと思います。
続いては陸自西部方面音楽隊。
最南端にある陸自駐屯地ということで、テーマは「火の国」。
白い半袖のユニフォームで登場です。
陸自のドリルでいつも登場するのが男性のカラーガード。
空自がお嬢さんなのであえてうちは男でいったる、という気概が見えます。
いやーこの無骨なこと(笑)
順番を待っていると、陸自迷彩の数人が外で旗を投げたりして
練習していたのがわずかに見えましたが、あなたがただったのね。
しかしこの男性の旗振り、なんとも言えない趣があって
個人的にわたしはだいすきです。
今回の旗振り男たちは比較的若い人が多いですが、
何年か前の旗振りはおじさんばかりでつい?わくわくしてしまいました。
一番右の人、あぶなーい!
ドリル演奏は「あんたがたどこさ」に続いて「おてもやん」。
火の国のテーマにふさわしく、赤い旗を振る熱い男たちに惜しみない拍手を。
続く。