第1章の「熱き能動の響き」、続いては在日米陸軍音楽隊の出場です。
おそらく米陸軍にも歌手の順番待ちが列をなしているのでしょう。
去年とはまた違うアフリカ系のヴォーカリストが登場。
ディズニーシーで「アラジン」のアトラクションの最後に
ジーニーが歌う「フレンド・ライク・ミー」。
在日米軍は当然のことながらジャズを得意としますが、
ディズニーの曲であればディズニー好きの日本人には知る人も多い、
という情報を得ての選曲であろうと思われます。
なんとなくこの人のキャラもジーニーっぽいような。
ただノリノリで演奏するだけでなく、見て楽しい仕掛けが満載のステージです。
クラリネット奏者がサックス奏者と2人1組になって、クラ奏者がキイを操作。
サックス奏者は吹いているだけなので皆片手を上げています。
楽器そのものは木管と金管の違いがありますが、実は両者は
機構が何かと似ているせいか、プロの口から
「クラリネットが吹けたらサックスも吹ける」
らしいと聞いたことがあります。
運指も似ているのか、こういうお遊びもできたりするんですね。
ヴォーカルのジーニーはクラ奏者かサキソフォーン奏者ってことですね。
客席に拍手を求める音楽隊長マービン・カードー上級准尉。
去年は「エル・クンバンチェロ」で大活躍でした。
後ろの人、なんで楽器を床に置いてるの?
ジーニーを挟んで2人の奏者が火花を散らしてソロ対決。
ランプの精の歌なので、マジックをやっているつもり。
クラリネット奏者が楽器と帽子を持っててもらい、口からなにやら妙な
長いものをずるずると引き出すという体を張ったパフォーマンス。
同僚のアジア系女性クラリネット奏者が呆れています。
必ず米陸軍がやるゆらゆら演奏。
その中に去年もいた美人さん発見。
とにかくジーニーの歌唱力がプロすぎて圧倒的なステージでした。
続いては米海兵隊第3機動展開部隊の登場です。
ご存知の通りこの部隊は沖縄に駐留するのですが、この名称は
正確に言うと
「第3海兵遠征軍」3rd Marine Expeditionary Force: 3MEF
となり、うるま市のキャンプコートニーを本拠地とします。
海兵隊のドラムメジャーの定位置は常にここ。
彼は基本的に仕事しない派で、演奏中ここに立っています。
それもなかなか大変だと思うがどうか。
なんと、海兵隊、今年は「島唄」できました。
「島唄」〜「サマータイム」〜「島唄」
というサンドウィッチ形式での(トリオ形式とも言いますね)
構成で、駐留地と「夏の音」にこだわったようです。
ご存知かと思いますが、「島唄」は沖縄での地上戦を歌ったものであり、
ウージ(サトウキビ)の森で あなたと出会い ウージの下で 千代にさよなら
というのがガマ(洞窟)で自決した二人を意味する、と
作者も自身で語っています。
「沖縄は本土の犠牲になった」
ともこの際言い切ったそうですが、このとき沖縄に上陸し日本軍と
激戦を繰り広げたのは他ならぬこのアメリカ海兵隊であったわけです。
その海兵隊、しかも沖縄を根拠地にする部隊の舞台。
そこには何の怨讐も遺恨もなく、今や強固な同盟関係を持つ両国の
友好の証でもある音楽の祭典において、沖縄戦を歌った「島唄」が奏でられ、
日本人からは彼らに向かって惜しみない拍手が送られているのです。
両国が歩んできた戦後の友好関係の結実を、あの国難とも言える大災害のとき
惜しみなく救いの手を述べてくれたアメリカ軍の姿にわたしたちは見ました。
トランプが大統領選に勝ってからわたしは幾つかの団体の会合で、
防衛省自衛隊の関係者やなんかからこのことについて聞きましたが、
いずれもそれは歓迎を意味するものでした。
理由は様々で、
「トランプは艦艇を増やすということを表明しているから」
といった人もいましたし、
「トランプが在日米軍を縮小するという噂もあるが、これを奇貨として
自主防衛と米国との”円満な離婚”に舵を切ることができる」
という意見もありました。
トランプかヒラリーかではなく、民主党か共和党か、で考えた場合
共和党の大統領なら少なくとも日米関係がが後戻りすることはないだろう、
ということを聞くこともあります。
ただひとつ言えるのは、たとえお互いどんな指導者を戴こうとも、
両国の関係が後退することはあってはならないということでしょう。
キーボードは沖縄三味線の「三線」の音をうまく再現していました。
ところで彼らは「島唄」の歌詞に隠された意味を知っていたのでしょうか。
真顔で最後まで立っているのがお仕事のドラムメジャー。
名前に「三世」がつくという人でした。
(ジェームス・R・ホルト三世)
ジュニアは普通によくありますが、さすがに三世は珍しい気がします。
今回の自衛隊音楽まつりのプロモーションビデオで
陸自のピッコロ奏者が「抜刀隊」のメロディを無伴奏で吹いているのを
見たことがある方がおられるかも知れません。
昔は陸軍の、そして現在も陸自の行進曲として使われている
シャルル・ルルーの「陸軍分列行進曲」は、二つの曲を合わせたものです。
「我は官軍 我が敵は 天地容(い)れざる朝敵ぞ」
という部分の「抜刀隊」、そして最初の部分の「扶桑歌」。
どちらもルルーの作曲で、「扶桑歌」は前奏のみ採用され後半は消えました。
ルルーが作曲したのは1886年(明治19年)のことです。
戦時中も使われ、あの雨の神宮球場での学徒出陣式でのフィルムには
軍楽隊が奏でる「陸軍分列行進曲」が残されており、
わたしなど最初にこの曲が現在も自衛隊で使われていることを知ったとき、
心の底から驚いたものですが、いずれにせよ、この曲の格調高く、
人の心を惹きつけてやまないある種の哀愁と心を鼓舞させる
メロディの輝きは130年を経過した今日も全く変わっていません。
「扶桑歌」のイントロとともに純白の儀仗隊を先頭に、
「陸軍分列行進曲」の響きに乗って入場してきた陸自中央音楽隊。
背中がビリビリと震えるくらいの感動を覚えたのはわたしだけではありますまい。
演奏の間も上のスクリーンではこういうファン狂喜の映像が流されます。
陸軍分列行進曲に続き、ステップを踏みながら演奏するは
「乱世の神威 幸村」(樽屋雅徳)
この作曲者の別の曲に「マードックからの最後の手紙」があります。
美味しいソロをとるユーフォニアム奏者。
一列になって歩むフォーメーションは「島唄」のときにも
「しまうーたよかぜにのりー」
の部分で使われました。
吹奏楽のクライマックスにはこれを想定して作曲してあるのが
はっきりとわかる曲がありますが、これもその一つです。
こういうフォーメーションをマーチング用語で
「 カンパニー・フロント」(company front)
といいます。
中央音楽隊のドラムメジャーはこういうときにも参加する派。
第302警務中隊と一緒にドリルを行えることは
陸自中央音楽隊にとって大変な強みであるとこういうのを見ると思います。
指揮は志賀亨2等陸佐、ドラムメジャーは馬場英一2尉。
さて、ここで第1章出演部隊の合同演奏となりました。
全部隊の前に出てきたヴォーカリストは4人。全員男性です。
「千と千尋の神隠し」の挿入曲「あの夏へ」のイントロに続き、
全員で歌う嵐の「ふるさと」 です。
先ほど「ハナミズキ」を歌った陸自東部方面音楽隊の歌手。
ジーニーも別人のような神妙な雰囲気で(笑)日本語の歌詞を披露します。
ピッコロの美人隊員が現場の動画でもアップになっていました。
動画のカメラマンも綺麗な人をどうしても狙ってしまうのね。
西部方面音楽隊の歌手。
この間朝霞の観閲式でわたしもお世話になった1トン給水車!
正面の壇上にはコーラス隊まで出動しています。
どちらにも女性が一人ずつ加わって。
こちらは中央音楽隊。
海兵隊の歌手は2番の頭の部分のソロを取りました。
中央音楽隊。とにかくみなさんお上手です。
歌手としてのステージングも堂にいったもの。
あ、この人もしかしてカラーガードをしていた隊員?
会場のモニターでは、災害派遣の現場で、被災者の気持ちに寄り添って
救助活動をしてきた自衛隊に対する、感謝のメッセージが映し出されました。
メロディの美しさ、歌手たちのパフォーマンスの素晴らしさ、
そしてこの映像の与える感動で思わず瞳がうるんできたわたしです。
こうして子供に感謝の意を表すことを教える先生やお父さんお母さん、
そして周りの大人がいる限り、日本はまだまだ大丈夫だと思えます。
「いつもおふろ ありがとう
おおきくなったら じえいたいになります。」
会場からは暖かい笑いと、そして拍手が湧き上がりました。
続く。